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医務室に入るとフカフカのいすに優しそうなおじいさんが座っていた。
「おやおや、こんな時間にどうしたのかな。」
「コリウス先生、こんばんは。こんな夜更けに悪いがこの子を診て欲しいんだ」
「アルバート様でしたか。女性連れとは珍しいですなぁ。どれどれ、そこの空いてるベットに寝かせてあげなさい。」
ようやく、この恥ずかしい体制から解放されると思うと少し嬉しかった。
ふかふかのベットに優しくのせてもらうとコリウス先生がケガの治療をしてくれた。
いつもは薬草や薬を使って傷を治していたけれど、コリウス先生は全く違っていた。体に両手を近づけて、暖かい光が手から溢れだした。やがて体すべてを包み込んでいく。その優しい光がまた眠気を誘う。
「これで朝までぐっすり眠るだろう。それにしても治癒魔法は初めてなのかな?とても驚いていたよ。傷は治せたけど、栄養失調だね。朝まで点滴をしておくよ。」
「ありがとうございます。先生はやはり国一番の治癒師ですよ。俺も朝までここに居ていいですか?」
「おやおや、珍しいねぇ。エリク君がケガしたときはすぐに置いていってしまうに。
アルバート様も少しは休んだほうがいいと思うよ。ここには夜勤も常時いるからね。朝になったらこの子の食事をもってお見舞いに来て下さい。」
「エリクは丈夫だからいいんですよ(笑)わかりました。では朝またここに来ますね。」
アルバートが部屋を出て行くと、コリウスが慣れた手つきで点滴を付けていく。
「若い女の子がこんなに傷だらけで、辛かっただろうに…
それに珍しいものが見れてまた長生きしてしまうな。彼女がいい変化を起こしてくれそうだねぇ。」
---朝になり、両手のおぼんにのりきれないほどの食べ物を持っているアルバートが廊下を歩いていた。
「リーは何が好きかわからないからなっ!栄養があるものを色々、食べさせてあげよう!!!」
ドンドンッ!!!!!バン!ドンドン!!
「おい!!!触るな!!!誰だ!!!!」
「おい!どうした!今、リーの声が!」
医務室の扉を開けるとリーが若い治癒師に枕を投げていた。
「アルバート様!!!彼女が目を覚ましたのですが、混乱しているようで鎮静剤を使おうとしたのですが、、、」
「わかった。ちょっとこれ持っててくれる?」
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目が覚めると知らない男と目があった。
「あ?目が覚めた??」
この男は誰だ?それに腕になにかささっている。なんだか記憶が曖昧だ。
アルが助けにきてくれて、檻から出て、優しいおじいさんの手から出た優しい光に包まれたところまでは覚えている。
男が私に触れようとする。
「おい!!!触るな!!!誰だ!!!!」
思わず声を荒げてしまう。
怖い。怖い。コワイ。
男が針を持ってこちらに近づいてくる。
怖い。怖い。コワイ。
また檻に入れられていまうのだろうか…
「…リー!!!」
「ア、、、ル、、、??」
そこにはアルがいた。あの暗闇の中から助けてくれたアルがいた。
「そうだよ。リーもう大丈夫だよ。大丈夫だから」
そう言って、抱きしめながら背中をさすられている。
少し時間を置くと記憶が戻ってきた。
「ハァハァ、、、怖かった。」
「一人にしてごめんね。もう大丈夫だから。ここは安全だよ。」
アルのおかげで少し落ち着いた。
針を持っていた彼は、私の心配をしていただけだったみたいだ。
「怖がらせてごめんね。」
「こっとこそ、すまない。」
「さぁ!リーも落ち着いたことだし、朝ご飯にしよう!!!栄養をつけなきゃと思って色々持ってきたんだ!」
「アル、、、、こんなには食べれないよ。」




