~視覚~
彼女の身体能力の紹介です。
彼女の世界は全て平面だった。
眼に異常があるのか、脳に異常があるのか、神経に異常があるのか。
視力に異常はなかった。
基本的に利き目でモノを見ていた。
利き目では視野に入らない箇所を見ようとしたら、そこで逆の目がやっと映像を脳が把握出来る。という具合である。
ガチャ目になる、と病院で言われ、矯正用の眼鏡を進められたが、彼女の母親は
「見えてるんだし、お金ないから今のままでいいか」
と、それ以降病院に見せようとはしなかった。
利き目側の視界が遮蔽物などで遮された場合、自動でメイン映像は逆の目になった。
これだけの説明だと何だか高性能な気がするが、全て平面である。
球体を見ても円形としか認識出来ないのである。
人間も動物も植物も全て平面である。
全て平面なのだから、距離感というのも皆無である。
その上、片目がほぼ見えていない状態なのだ。
結果、彼女はよく壁にぶつかり、人にぶつかり、何かに躓いた。
何せ、道かと思ったら壁だったり。
材質が同じな場合、壁なのか道なのか見分けがつかないのである。
階段も横線が入った床にしか見えないのである。
段差や高さもわからない。
昇るのは適当に足を上げればいいからまだマシだった。
下りは足の裏の感覚で段差を感じ取るしかなかった。
運動もダメだった。
距離感がわからないので、球技は全て勘でやるしかないのだ。
腕の長さも、相手との距離も、ゴールの高さ、距離、全てわからないのである。
某バスケ漫画で、怪我で片目が見えないのにシュートを決めた人気キャラがいた。
「凄い!!」と話題になったが、彼女にはソレが当たり前である。
空を見ても、水色に木や建物が埋まってるようにしか見えないのである。
どうやら、大きいモノの方が近くにある。と認識しているらしい。
開放感など無縁である。
常に周りに風景というなの絵や写真が描かれた紙やら壁に囲まれて生活してる、と言えばわかりやすいだろうか。
その癖、どうやら他の人が見えないモノを見えている時があるらしい。
「何もない空間をまるで何かが動いているように目で追っている。猫か。」
そんな彼女を見た親の発言である。
ナニを見てるのか、誰も追求しなかった。
だって、なんか怖い。
結果、周囲はドジっ子。というレッテルを貼った。