〜足音の秘密〜
母親目線。
最近、娘が転ばなくなりました。
躓いても、バランスを崩す事がなくなった。
……相変わらず、躓くのは改善されてないけど。
あと、物に激突する回数も減りました。
目隠しされて歩いてる人みたいに、
両手で手探りで歩く。という方法を見つけたらしい。
足音は相変わらずだけど。
「どう歩いてるの?」
「?ふつうにあるいてるですの。」
私は足音を立てない歩き方なんか教えた事ない。
「足音立てないのは?」
「?ふつうですの。なんでおとがするですの?」
うん。私じゃ翻訳出来ない。
今日はパパがお休みなので、パパに解読してもらおう。
「と、いう訳で、どういう理屈か説明プリーズ」
「唐突にも程があるな。」
「気にならないの?」
「まぁ、興味があるっちゃ、あるが…」
「?ふつうですの。」
アンタの普通は私には不思議の宝庫よ。
「ほうこのつかいばしょがまちがってるですの。
たからじゃないですの。」
人の心読むな。そして突っ込むな。
「ふむ。チビ助。ちょっと、その辺を軽く走れ。」
「いいんですの?ごきんじょさんにめーわくですの。」
「今だけ特別に許す。」
「わかったですの。」
トトトトトッ
「よし。もういいぞー。こっち来い。」
「はいですの。」
「もうわかったの?」
「なんとなく。チビ助、走ったり歩く時に踵を地面に付けないな?」
「あたりまえですの。つけるひつよーがないですの。」
アンタの中で何がどーなって当たり前になったの?
「足音を立てない為か?」
「ちがうですの。それはダメってゆわれてないですの。」
ダメっていう一般家庭がどこにあるの?
忍者一族?暗殺者一家?
「じゃぁ、なんの為だ?」
「ころんだりしないよーにきをつけてるですの。」
意味わからん。
「衝撃はどう消してる?」
「ひざをやわらかくするですの。」
誰に教わったの。それ。
「おそわってないですの。ふつうですの。」
だから読むなと。
「ふむ。わかった。」
「今のでわかったの?!」
「あぁ。お前だったら、恐る恐る怖い所を歩かないといけない時、どう足を出す?」
へ?うーん…。
「爪先でゆっくり慎重に。」
壊れそうな吊橋とか、高い所とかそうなるわね。
「そうゆうことだ。ついでに、予想以上に地面が沈んだり、低かった時に対処出来るように、膝を使う癖が付いてるな。」
「えーと、つまり、日常的に抜き足差し足状態と?」
「まぁ、そんな感じだな。どっちかと言うと、義経の舟跳びのが近い気がするが。…義経だったか?孫市だったか?忘れた。」
……常に目隠しされてるような状態プラス、足場の悪い舟の上を跳び渡るような感覚でいる、と?
つ…疲れそう。
そうか、この娘の外出嫌いと、
逃げ足の速さと脚力の理由もわかった。
…何処で習得してくるの?
謎が増えた…。
足音がしない理由でした。




