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~名前~
二児の父となった男は悩んだ。
産まれた末子は男児の筈が女児だった。
名前は数ヶ月前から決めていた。
だが、女の子につけるには少々…無理のある名前だった。
男は再び頭を捻る事になった。
どうしても自分の名前の一字を含ませたいが女の子らしい文字が一文字もなかった。
三択まで絞ったもののだいぶ悩んだ。
母の名前から取るか。
静かで優しい子。という意味があるらしい名前にするか。
頭文字が自分と同じで、賢い子。という意味があるらしい名前にするか。
最終的に三番目を選んだ。
後に母親は学校の宿題で”名前について作文を書け”という課題を抱え質問した彼女にこう話した。
「お父さんは一晩寝ないで貴女の名前を考えたのよ。」
と。
彼女は呆れた。
顔にも口にも出さなかったが。
「それ、ただの一夜漬けじゃ……?」
父親が友人達と家で徹夜麻雀を楽しんでいた姿を思い出しながら
「自分の名前には大した意味も価値もないらしい」
と認識したのは仕方なかったのかもしれない。