~パズル~
祖母目線です。
今日はいよいよ孫達を預かる日だ。
お兄ちゃんは素直で大人しい。
妹は基本的には静かで大人しいらしい。
「基本的」って言葉が怖い。なんでもよく泣くらしい。
そして反応が大抵、予想斜め上を行くんだとか。
どうやら二人とも人見知りが激しいらしく、家に来ると大抵は二人固まって静かにしている。
うちの娘は遊びに行くのが久しぶりで嬉しいのか、さっさと預けると出掛けて行った。
二人とも借りてきた猫よろしくちょこーんと座っている。
小動物感が満載でとっても可愛いらしい。
兄の後ろから妹がこちらの様子を伺っている。
色素の薄い瞳に感情はなく、見定められている気分になる。
いやいや。あの子はまだ幼児。そんな馬鹿な。
あ。視線が反れた。なんだか身体が軽くなった気がする。
何かしら。「フン。相手にする価値はないわ」みたいな雰囲気が伝わってきたんだけど。
気のせいよね。うん。気のせいだと思いたい。むしろ思わないと今日半日もたない。
娘が嬉々として出掛けた気持ちが少しわかったような気がする。
毎日あの子に見つめられ、相手するのは正直キツイ。
私には人見知りしているせいか、口を開かないけれど、娘から聞く限りかなり口が達者らしい。
うん。想像しただけで嫌だ。このまま私には慣れないでいて貰おう。
とりあえず、飲み物を与えておこう。
今日のためにオレンジジュースを準備しておいたのよ。
「ありが「とう」」
うん。お礼が言える良い子って事でいいわよね。
後半だけ声被せてる気がするけどね!
いいの。この子はいつも家に遊びに来る時もそうなのよ。
お兄ちゃんの声に最後だけ被せるのよ。
「おじゃまし「ます」」って・・・。
お兄ちゃんはコクコク飲んでる。うん。可愛いわー。和むわー。
妹は兄が飲んでるのを観察してから、クンクン。匂いを嗅いでいる。
毒なんて入れてないわよ;しばらくしてやっと飲み出した。
どうしよう。途方に暮れそう。ジュースあげただけなのに。
途方に暮れていた時、ちょうどテーブルの作成途中のパズルに興味を持ったみたい。
ちょうどいいわ。これで遊びましょう。
二人を手招きしてテーブルの前に座らせた。
その際、妹の反応や仕草はあえて見ない。気にしたら負けだ。
ピースの形を説明して、持たせる。
外枠は完成しているし、そこまで難しくもない。
お兄ちゃんは持っては嵌めてみて、合わないピースは別の場所に一箇所にまとめていた。
絵柄は見てないのね。まぁ、園児にそこまで求めるのは難しいかしら。
紅葉の風景写真のパズルだし。子供にはちょっと難しいかもしれない。
妹は、ピースを色んな方向から見ている。初めて見たもので不思議なのかもしれない。
ひっくり返したりしている・・と思ったら。
パクっ
「?!!」
慌てて口から出させた。
口内の唾液分泌量が少ないのか、幸いにしてピースはほとんど濡れていなかった。
子供はなんでも口に入れると言うけど、オレンジジュースに警戒してた癖にピースはためらう事無く口に入れるの?
え。どうしよう。意味がわからない。
反応が予想斜め上ってこういう事?斜め上処じゃないんだけど!?
とりあえず、妹には改めて説明してみた。食べちゃダメよ、と。
美味しくなかったのね。頷いてた。うん。素直だわ・・・。
そしてどこに置くのか決めたらしい。グイグイ力任せに押し込んでる。
うん。パズルってそういうのじゃないからねー?
「そこは違うんじゃないかなー?ピースの形をよく見てねー?」
じっ
「・・・・・・・・・。」
プイッ
うん。一言も喋らなかったけど、指図しないでちょうだい!って幻聴ががががが。
お兄ちゃんが教えてる。渋々納得したようだ。
でも同じことを繰り返していた。
やっぱり幻聴が聞こえる気がする。
「あたしがここって決めたらここなのよ!大人しくはまんなさい!!」
隣のお兄ちゃんがはまる場所とピースを見つけたらしい。
妹にピースを渡して、嵌める場所を指している。
優しいお兄ちゃんだわ・・・。何かしら。涙が出そう。
妹がはめた。サクっとはまる。
「・・・・・・・・・。」
妹が挙動不審になった。
そして、箱の表紙をじっと見つめている。
散らばっているピースを見つめ、未完成のはまり済みのパズルを眺めている。
さくさくと分別していく。
どうやらピースの絵柄でどの辺りか中りをつけているようだ。
いやいやいや。待って!ほんと待って?!お願いだから待って!!!?
幼児だよね?!本当に幼児だよね?!
しかもパズル初めてなのよね?!なんなの?!その手馴れた動き?!
私でも家事の片手間とはいえ何日も掛かるパズルだ。
いくら半分近く完成しているとは言え、幼児がさくさくと出来るものじゃないよね?!
「え・・と、お兄ちゃん?この子、突然動き出したけど、どうしたの?」
「?あぁ。得意だから。パズルとか。はまったのが楽しかったんじゃない?」
え?ほんとに理解してやってるの?
得意とかいうレベルじゃないわよ?!
楽しかったから出来るとかいう問題なの?!
それで納得しちゃうの?!
お兄ちゃんはすっかり傍観体勢だ。
そして夕方に娘が迎えに来て無事帰って行った。
テーブルには完成したパズルが置いてあった。
お昼寝の時間もバッチリ取ったにも関わらずパズルは完成していた。
あの子怖い!!
女王様気質もあったらしいです。




