第一話 秀吉
戸沢一真23歳。職業ハッピーマクド店員。趣味サバゲー、PCゲーム(○○の野望など)。乗馬。
俺は毎週末、近所のフィールドでやっているサバイバルゲームに参加している。
今日も痛い目に遭ってきた。BB弾満載の手榴弾を使ってくるとは思わなかった。
爆弾飛んできて、拾って目の前で爆発させてしまうなど
スター○ォーズに出てくる機械の兵隊みたいだ。
予想以上に終わるのも遅くなり、このあとの乗馬には間に合いそうにない。
俺は家に帰ることにした。
「じゃあな戸沢!」
同じサバゲーチームの小久保だ。
自転車にまたがりながら、笑顔で手を振っていた。
「あぁ…じゃあな…」
俺は暗い表情で自転車にまたがり、
手を振り自転車をこぎだした。
刺激のない毎日。俺は刺激を求めて
友人の勧めを受けてサバゲーを始めた。
当初は楽しくて仕方がなかったが、
最近は全く楽しくない。
女性に振られたわけでも、親が亡くなったわけでもない。
いや。俺にはもう親はいないんだった。
小さい頃に死んでしまった。
かれこれ30分。俺はボーッとしていた。
キキーッ!!!!!
どうやらはねられたようだ。
俺は頭を強く打った。血が出る。
目の前が暗く・・・
ピーポーピーポーピーポー
けたたましいサイレン音・・・
死んだ・・・わけではないのか・・・?
「・・・・かっ!輸血を急いで!」
ピーッ
戸沢一真 2014年3月2日 6時50分 死亡
・・・・・・・・こ、ここは?
あの世なのか・・・?
いや。違う・・・誰かいる・・・
俺は飛び起きた。
「うわ!だ、誰だ!!!」
目の前には綺麗な女性がいた。
「こ、これは殿方。」
女性は正座をしながら頭を下げた。
「私は羽柴秀吉の妻。おねにございます。」
羽柴秀吉・・・のちの豊臣秀吉だな。
おねはのちの高台院だ。
「は、初めまして・・・戸沢一真です・・・」
おねは驚いた顔で、
「そのようなお召し物をしておられるので南蛮の方かと思いました。」
と、言った。無理もない。現代の時と同じ服だからな。
「ち、違います・・・あなたと同じです・・・」
日本人であるということを伝えているとふすまが勢いよく開いた。
「おね!!!南蛮人は目を覚ましたか!」
元気よく身軽そうな人が入ってきた。
「おぉ!!!目を覚ましておるではないか!おね!なぜ申さない!」
するとおねは頭を下げた。
「して、お主の名は?」
おそらく俺に聞いているんだろう。
「戸沢・・・一真です・・・」
おねに続き、秀吉もびっくりした顔で答えた。
「お主!南蛮人ではなく武士なのか!」
そうか・・・名字を名乗ったからなのか?
「いえ。一真です。」
俺は首を振り、名前を訂正した。
「一真とな?変わった名前じゃな。しかも変わった身なりもしておる。」
秀吉だからな。もしかしたら理解してくれるかも知れない。
本当のことを打ち明けてみるか。
「な!なにぃ!お主は未来からやってきたというのか!!!」
何もそんなに驚かなくても・・・
いや。俺も未来から人がやってきたら驚くか。
「はい。平成という時代からやってまいりました。」
秀吉は身を乗り出しながら聞いてきた。
「天下は誰がとったのじゃ!!!信長様か!」
まずいな・・・真実を言ったら歴史を変えてしまうかもしれない。
俺は嘘をついてしまった。
「お、織田信長です。」
すると秀吉は笑顔になった。
「信長様か!!!ハーッハッハッ!!!嬉しいのぉ。わしも天下統一したときはいたのか?」
「もちろんです。ポンポンポンと出世していきました。」
秀吉はさらに笑顔になった。
「わしはお主が気に入った!!!信長様にも気に入られること間違いなしじゃ!
どうじゃ!信長様に謁見してみぬか?」
織田信長・・・気に入らぬものは叩き切る男と小学校の先生が言っていたな。
しかし秀吉の機嫌も損ねる訳にはいかない。会ってみるだけ会ってみるか。
「はい。是非とも。」
秀吉は立ち上がり、配下に馬を用意させた。
「清洲城へ向かうぞ!!!」
すごい機嫌が良さそうだ。
「お主。なかなかやるな。平成でも馬に乗るのか?」
秀吉は不思議そうな顔をしながら聞いてきた。
「いえ。乗馬が好きでしたもんで。」
すると秀吉は「先に行け!!!」と叫び、
俺が乗っている馬の尻を叩いた。
馬は勝手に進み始めた。清洲城へ向かって。。。