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スクールガーディアンズ  作者: 雪野
第1話   1年編
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「今宵も月が、まんまるいー」

 のんきに歌っていたら、背中をつつかれた。

「恥ずかしいわね、せめて鼻歌にして」

「いいじゃない、誰も聞いてないんだし」

「そうかしら?」

 意味ありげなサトミの笑みに、私は取りあえず振り向いてみた。

 いる、何人もいる。

 こっちを見て、くすくす笑ってる。

「な、なんで」

「夕暮れ時はいいデートスポットなの、屋上は」

 そんなの縁遠いから、知る訳無いじゃない。

 西の空へ沈む夕日に向かって叫ぼうかと思ったが、さすがに止めた。



「それより、自警委員会の総会はどうだった。次の委員長決めたんでしょ」

「ええ。あなたが退学にした、委員長の代わりをね」

「私達、と言って」

「とにかく、委員長は決まったわ。例によって、生徒会の局長に」

 名目上各委員会は生徒会から独立した組織で、その委員長も委員の投票によって決められる。

 だがそれは、名目上。

 生徒会は10名で構成される各委員会に、4人の指定枠を持っている。

 だから投票ともなれば、必然的に多数派である生徒会が委員長職を獲得出来る。

 また生徒会はその委員会を管轄する局の局長を送り込むため、余程の例外がない限り委員長と局長は兼任となっている。

 サトミは、その事を言ってるのだ。


「ふーん。どうでもいいけどね」

「何それ。人がわざわざ教えに来たのに」

「だって、今までと何か変わる訳でもないんだし。そうでしょ」

 するとサトミが、またもや意味ありげに微笑んだ。

 ん、何かあるのかな。

「今度の委員長は、私達と同じ1年なの。つまり、自警局長ね」

「すごいね、それ。入学してすぐ局長なんて。よっぽど出来る人のかな」

「さあ。それは、これから分かるわ」

 サトミはため息を付いて、私の肩に手を置いた。 

 妙に重いな。


「今すぐにでも、分からせてあげましょうか」

「ああ?」

 サトミの後ろから声がする。

 何だと思って見てみると、男の子がこっちに歩いてきてる。

 七三の髪型、銀縁眼鏡。

 学校指定の制服を着て、しかもきっちりネクタイまでしてる。

 悪い事じゃないし、制服は私も着ている。

 でもこの人のは、妙に堅苦しい感じだ。

 それに気のせいか、表情が険しい。

「あの、あなた誰?」

 怪訝な顔で尋ねてみると、男の子は眼鏡を指先で押し上げて私とサトミへ向かって交互に視線を送ってきた。

 今時メガネというのも、結構気になる。

 ファッションでやってるとも思えないし。

「今回自警委員長に就任した、矢田(やだ~です。遠野さんから聞いているだろうけど、自警局の局長も兼ねています。僕は高校から、この学校に編入したんですけどね」

「それはどうも」

 よく分からないけど、取りあえず頭を下げた。

 向こうも一応は、会釈を返してくる。

「君がエアリアルガーディアンズの代表、雪野さんですね」

「ええ、そうよ」

「色々と噂は聞いています。それに早速事件を起こしたというか、僕が自警局長に就任する原因を作ったというか」

 初対面なのに、嫌な事言うな。

「そうじゃないわよ。あれは、前の局長が悪かったんじゃない。私達はそれを、告発しただけなの」

「確かに、報告書でもそうなっています。しかし、君達が事件に関わったのは事実です。そうですね」

「そ、そうよ。だったら何だって言うの」

 私が目をむいたら、新局長は眼鏡を押し上げて鋭い眼差しを送ってきた。

 この人。

 細っこいけど、妙に迫力がある。

「君達の職務は学内の警備及び治安維持であって、事件を起こしたりそれを解決する事ではありません。中等部では随分派手に暴れたようですけど、これからは大人しくして貰いますよ」

「な、何その言い方。あなた、幾ら局長だからって……」

「ユウ、落ち着いて。話は承りましたから、局長もそろそろお引き取り下さい。これから、総務局の会合があると伺ってます」

 私の肩にそっと手を置き、サトミが上手くフォローしてくれる。

 その言葉が効いたのか、局長も軽く頷いてきびすを返した。

 あー、早く帰った帰った。

 と思ったら、すぐに振り向いたよ。

「とにかく、揉め事は起こさないように頼みます」 

「はいはい。分かりましたよ、局長様」

 わざとらしく敬語を使って大げさに頭を下げたら、またもや鋭い眼差しで睨まれた。

「……明日メンバー全員を揃えて局長室へ来るように。あなた方とは、じっくり話し合う必要がありそうです」

「え、ええ?」

 局長はもう二度と振り向く事無く、階段へと続くドアに消えていった。


「あ、あの。サトミさん」

「説教されるわよ、絶対。あの人、すごい真面目なんですって」

「ちょっとからかっただけじゃない。何で、あれくらいで」

「私に怒らないで。全く、局長があなたに会いたいって言うから連れてきたのに。少しは私達の立場を理解しなさい」

「あ、あのさ。ショウ達には黙ってて。私が怒らせたっていうのは」

 するとどうだ。


 サトミは軽く後ろに飛び退いて、手を横へ広げた。

 舞い上がった艶やかな黒髪が、夕日を浴びてきらめきながら彼女を包み込む。

 思わず見とれてしまったら、サトミはきょとんとして私を逆に見つめてきた。

「どうしたの?」

「べ、別に。それよりさっきの話……」

 そうしたら、また後ろに飛び退いた。

 あ、また。 

 ちょっと、どんどん離れてくじゃない。

「遊んでないで、話を聞いてよ」

「嫌です。だって私も一緒に怒られるのよ。それはどう思ってるの」

 ドアまでたどり着いたサトミは、腕を組んで私をじっと見据える。

 私の言葉を待っているとも言える。

「そ、それはその。……カルボラーナの美味しい店があるのよ」

「ラザニアも付く?」

「つ、付く」

「ならいいわ。ティラミスってまだあるのかしら」

 誰がデザート頼んでいいって言った。

「どうしたの、その顔。何かご不満かしら」

「いえいえ、滅相もございません。ささ、お嬢様。お先にどうぞ」

 もう知らない。

 私はドアを開け、揉み手をしながらサトミを促した。

 ……でも、ここまでやる必要があるのかな。

 だってショウ達が、そんなに怒らなかったら馬鹿みたいじゃない。

「ほらユウ。早く行くわよ」

 ドアをくぐったサトミが、階段の踊り場から私を見上げてる。

 してやったりという笑みで。

「あ、あなた。分かっててっ」

「さあ、何の事かしら。モトも誘うから、あの子の分もお願いね」

 サトミはお上品に笑いながら、階段を下りていった。

 夕闇に立ち尽くす私を後に残し。



 友情。

 何にも代え難く、何よりも尊い物。

 この間までは、そう思っていた。

 つい、さっきまでは。

 多分これからも、そう思い続けるだろう。

 今の、この瞬間を除いては……。




                           第1話 終わり




 第1話  あとがき




 何と言いますか、設定が相当いい加減です。

 大体、学校の名前もまだ決めてないくらいですから。

 生徒会の各局や、学校全体の生徒人数、ガーディアンの人数、授業、教師達・・・。

 考えてある物もありますが、これがなかなか。

 ぼろが出ないように、どうにか書いていきます。


 で第1話は、メインキャラ4人とサブキャラの紹介ストーリーですね。

 後、学園内の各組織の紹介です。

 ストーリー的には相当に無理があり、こういう謎解きみたいな話は苦手です。

 じゃ書くなと言われそうですが・・・、済みません。

 ただここでの内容は今後への軽い伏線で、一応の意味はあります。

 ネタバレと言うほどでもありませんが、そういう事です。


 また各キャラについての設定を、その内書こうかと思ってます。

 取りあえずは、メインの4人を軽く。

 一番のお気に入りは、やはりユウ。

 書いていて、自分で笑うくらいです。

 元気で頑張り屋で前向きで、ちょっと子供っぽい体型(失礼)ですけど、いい子なんです。

 サトミは、目立ってくるのはもう少し後からです。

 大人びた態度と見た目。でも、この子も熱いんです。

 4人の中では突っ込み役で、少しお姉さんです。

 ショウは、格好いいですね。

 最初はもっと軽い性格にしようかと思ってましたが、知らない間にかなりシャイでストイックになりました。

 まあ、これも悪くないかと。

 ケイ・・・。この人は、コメントがしずらいです。

 無茶苦茶な事ばかりして、それを気にもしません。

 私としては、好きなキャラですが。


 なお自HPでは、第51話で完結しています。

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