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スクールガーディアンズ  作者: 雪野
第49話
561/596

49-5






     49-5




 全員で訪ねた先は、総務課課長執務室。

 同じ自警局内とはいえ正直縁のない場所で、今まで中に入った事も数える程度。

 それに関しても、良い記憶はあまりない。

「……私だけど。……ええ、お願い」

 モトちゃんが通話を終えたと同時に開くドア。

 一応ショウを先行させ、私はしんがりを付いて行く。

 何も無いとは分かっていても、この辺は昔の癖が抜けきれない。



 室内は、生徒会の幹部にありがちな雰囲気。

 調度品が揃い、整理整頓がされ、静かで空気も引き締まっている。

 これは生徒会という事もあるが、部屋の持ち主の影響も大きいと思う。

「忙しいところを悪いんだけれど、ちょっと話を聞きたくて」

「何かしら」

 机から顔を上げずに尋ね返す北川さん。

 ますますサトミじみてきたな。

「最近小谷君と真田さんに、話をした?彼等の将来や、勤務態度について」

「常日頃から、そういう話はしているわよ」

「私達と絡めた話は?」

「する時もあるでしょうね」

 消極的に認め出す北川さん。

 それでも顔は上げないか。


 モトちゃんは机に手を付き、北川さんの頭の上へ視線を落としながら話し始めた。

「あの二人が、どうも先走ってるのよね。独断で行動してるとでも言うのかしら」

「自立するのは良い事ではなくて」

「それは勿論。なんなら私は今すぐ引退して、全て彼等に委ねても良い。実際後2ヶ月もすればそうなるんだから、問題は無い。制度的にはね」

 少し低くなるモトちゃんの声。

 北川さんもようやく顔を上げ、彼女と視線を重ねる。

「自立するのは構わないし、自分の考えで行動してもらうのは構わない。周りに迷惑を掛けないのであれば」

「そういうタイプでは無いでしょう」

「私もそう思ってたし、そうでないと思いたい。でも、私達の私物を勝手に運び出したの。置いておいた私も悪いけれど、それを不要と判断するには材料が足りない状態で。それについてはどう思う?」

「例えが漠然とし過ぎて、コメント出来ないわね」

 逸らされる視線。

 彼女が何らかの関わりを持っているのは間違いないようだ。



 サトミなら机の一つも叩くところだろうが、そこはそれ。

 モトちゃんは小さく頷き、机から距離を置いた。

「多少行きすぎではあるにしろ、今の状況が悪いとは私も思わない」

 その言葉に反応したのは、むしろサトミの方。

 つくづく困った性格だな。

「後輩の指導に関しては、私達も至らなかったのは認める。悪かったわね、色々と」

「何が」

「色々と」

 にこりと笑い、部屋を出て行くモトちゃん。

 私達もすぐにその後を追い、半ば呆然とした顔をしている北川さんに別れを告げる。




 どたばたと。

 実際はどたばたしていないが、印象としてそんな具合にモトちゃんへ詰め寄るサトミ。

「あれで終わり?」

「彼女を追求しても仕方ないでしょ。それに私達へ敵意を持っている訳でも無いんだから」

「経緯や感情ではなく、大切なのは結果でしょう」

「だったらサトミも、感情を先走らせなくても良いでしょう」

 軽くやり込めるモトちゃん。

 彼女は私達の顔を見渡し、苦笑気味にケイへ笑いかけた。

「もう一段階あると思う?」

「当然あるだろ。北川さんの単独犯である可能性の方が薄い」

「犯人じゃないわよ。それで?」

「気は進まないけど、矢加部さんに聞いてみるか」

 聞かなくて良いんじゃないのかな、その辺は。




 当然私の感情は考慮されず、総務局へと移動。

 受付で矢加部さんがやってくるのを待つ。

「黒幕でもいるっていう話?」

「さっきも言ったように、北川さんが曲解してる可能性もある。もしくは対抗心かな。自警局は人材こそ揃っていますが、後輩の教育はおろそかになっていますね。せっかくの才能が生かされないのは残念な話です。とか、言われたんじゃないの」

 見てきたように話すケイ。

 確かにそう言われれば、何かアクションを起こしたくはなる。

 相手に、どんな意図があったかどうかはともかくとして。

「どういったご用件でしょうか」

 耳元の髪をかき上げながら洗われる矢加部さん。

 ご用件はございませんと言いたいが、それは私の話。

 モトちゃんは柔らかく微笑み、静かに切り出した。

「最近、北川さんと矢田君って何か話をした?職員がいるような場所で」

「先日、何かの会合で言い合っていたのは知っています。後輩がどうとかと」

「なるほど」

 同時に頷く私達。

 会話の内容ははっきりしないが、ケイの推測を裏付けるような証言。

 台詞はともかく、似たような会話がされたんだろう。


 矢加部さんは何がという顔で、モトちゃんへ強い視線を向ける。

「ああ、ごめん。急に後輩達が張り切りだしたから、どうしたのかなと思って」

「そういえば自警局は人材こそ揃っているけれど、教育がどうとは言ってました」

 今度は視線がケイへと向けられ、彼が鼻で笑う。

 どうも、矢田君の事を何か言いたいらしい。

「何か、仰りたい事でも」

「矢田君も意外に熱いと思っただけだよ。それって矢田君からの挑発?」

「そこまでの意図は無いと思いますが、現状として自警局の存在がかなり大きいですからね。実際人材も揃ってますし。……1、2年に関しては」

 何故か私を見ながら話す矢加部さん。

 相当失礼だな、この人。

 でもって、何も間違えてはいないが。



 ただこれを聞く限り、北川さんの先走り。

 それを受けた小谷君達がさらに突っ走っているだけ。

 行動こそ問題だが、背景は大した事では無い。

 少なくともケイの言っていた、黒幕説は消えた。

 彼も、本気言ってなかったにしろ。

「自立した行動をするのは、良い事だと思いますが」

「私もそう思う。程々に行動してくれるなら」

「何か問題でも?」

「大した事無いわよ。結局は自警局内の、簡単なトラブル。私達は困るけれど、外部には影響しない」

 あっさりと言ってのけるモトちゃん。

 しかし発言も度量も、大物の一言。

 つくづくサトミとは違うんだな。

「何よ」

「別に。でもそれって、矢田局長は悪意もなく言ったの?いや。発言は良くないけど、北川さんを焚きつけようとか。自警局を揉めさせてやれって意味で」

「先程も述べたように、矢田さん自身はこれといった意図は無いと思いましよ。とはいえ自警局が混乱すれば、最優秀生徒の選考にも関わってきます。彼の気持はともかくとして、総務局内に彼を推す人間は当然多いですからね」

 また出てきたな、この単語。 

 こうなると総務局長執務室を訪ねたくなるが、さすがにそうするだけの根拠が薄い。

 今の状況を聞く限りでは、過剰に反応した北川さんに問題があると言われても仕方がないんだから。


 それと、もう一つ確認をしておくか。

「最優秀生徒は、モトちゃんで決まりなの?」

「私はそう聞いています。ただ生徒会の一部にはそれに不満があるようで、巻き返しを図っているようです」

「それが矢田局長?」

「今言ったように、総務局内にそういった雰囲気はあるでしょうね」

 そこは曖昧にする矢加部さん。

 少し分かったというか、怒りの向ける先だけは確定出来た。

 今はまだ、北川さんや小谷君達の暴走で片付けられる。

 ただこれ以上何かあるようなら、私もスティックを抜く事をためらいはしない。

「短慮に走るおつもりですか?」

「おつもりはないけど、相手の出方によっては走るかもね」

「その行為自体が、元野さんの選考に影響が出るんですよ」

「だったら、やられるままにしろって言うの?」

 矢加部さんの言いたい事は分かるが、私にだって我慢の限界はある。

 でもってその限界は、非常に低いと来ている。


 なんて思っていると、モトちゃんが私の頭を軽く撫でた。

「私はその選考から漏れても構わないし、他にふさわしい人がいるのならそちらを選ぶべきでしょ。ユウは好きにすれば良いから」

「はは、やった」

 思わず彼女の腕にすがり、一人でにやにやする。

 この言葉を聞けただけで、もう十分。 

 充実した一日を過ごしたと言ってもいい。

「そういう甘さが、付け込まれる……。もう良いです」

 ぷいと顔を背け、総務局の奥へ引っ込む矢加部さん。

 最後の台詞は少しなるほどと思ったが、これはばかりは今更改められる物でもない。

 つくづく耳が痛いとは思うにしろ。




 そんな矢加部さんと入れ替わるようにして、人をぞろぞろと連れた矢田局長がやってくる。

 彼に悪意がないのは分かってきたが、それは彼の意志。

 忖度とでも言うのか。

 周りの人間が、先走った行動を取らないとも限らない。

「落ち着けよ」

 軽く私の肩に手を置き、動きを制してくるショウ。

 そこまで短慮には走らないと思う、今は。

「どうかなさったんですか」

 若干ぎこちない口調で尋ねてくる矢田局長。

 本人も、思い当たる節はあるようだ。

「ちょっと見に来ただけ。私達も卒業だし、たまには生徒会内を見回っても良いかと思って」

 そう言って薄く微笑むモトちゃん。

 矢田局長も固い笑顔を浮かべ、適当な相づちを打った。


 その後ろにいる生徒達はくすりともせず、姿勢を正して待機中。

 固いというか、遊びの部分があまりない。

 彼の取り巻きは私達への敵愾心を剥き出しにするか、恐怖心を前面に出すかのどちらか。

 そうでないという事は、取り巻きとはまた違う人達か。

「彼の身内ではなくて、単なる後輩なんでしょ」

 耳元でささやいてくるサトミ。

 なるほどねと思い、確かに自警局とは違うなとも思う。


 無論私達の後輩達も礼儀正しいが、杓子定規ではない。

 先輩の言う事は絶対で、その命令には絶対服従。

 絶対的な上下関係といった物が存在しない。

 先輩と後輩としての立場は守られるが、一人の人間として相手を尊重するのが私達の基本。

 少なくとも私はそう思っている。

 ただここにいる人達は、どうもその絶対的な部分が強そう。

 その方が組織としては良いかも知れないが、私には合いそうにない。

「……軽く突いてみるか」

 小声で呟くケイ。

 大丈夫かと思うが、その声が聞こえたはずのモトちゃんは反応無し。

 積極的にではないが、ゴーサインは出たようだ。



 一歩前に出るケイ。

 自然と身構える矢田局長。

 これだけでも、お互いの相性が理解出来る。

「最優秀生徒って知ってる?」

 単刀直入な質問。

 矢田局長はぎこちなく頷き、警戒した視線をケイへと向ける。

「それにはうちの元野さんが、候補の筆頭に挙がってるらしい」

「選考過程は明らかになっていませんが」

「事前の予想と、今までの業績を踏まえてだよ」

 あくまでも自分の意見を述べていくケイ。

 普段はもう少し持って回った言い方をするだけに、少し珍しいとは思う。

「身内が表彰されるなら、当然こちらはそれをバックアップする。つまり、妨げるような真似はされたくない」

「選ばれるなら、でしょう」

「俺達は主観的に、選ばれると確信してる。もう一度言うよ。妨げられる真似は非常に不快で、それに対しては断固とした処置を執る。我慢出来ないからね」

「そう、ですか」

 若干ぎこちない返事をする矢田局長。

 彼に意図は無くても、周りの人間の意図はまた別。

 案外その辺で苦労をしているんだろうか。



 当然ながら気まずくなる空気。

 ケイはそれに構わず、彼の後ろに控えている生徒達を指さした。

「誰」

「1年生。つまり来期からは2年生です」

「後輩の指導結構。下を育てるのは上の者の役目。偉いよ」

「何か言いたい事でも」

「どう言えばいいのかな。今の話に関連するけど。人間は縄張り意識がある。グループとで言い換えても良い。それを脅かそうとする存在も、我慢ならない。人の頭越しに後輩へ圧力を掛けるとか」

「困った話ですね」

 曖昧な言い方をする矢田局長。

 ケイも鼻を鳴らし、軽く頷いた。

「無論学年としてみれば、誰もが後輩と先輩。その範疇においてなら、指導も叱責も構わない。逆に言えば、余計な口出しをされると気分が悪い」

「そういう事もあるでしょう」

「本当に」

 最後は薄く微笑み、後ろへ下がるケイ。

 いつにない直接的な指摘で、ただその方が楽なのか矢田局長の動揺は薄く見える。



「話は終わりかしら」

「元々僕からは、これといってありません」

 モトちゃんの質問に素っ気なく答える矢田局長。

 私達とは関わりたくないと言った雰囲気がありありと伺える。

「分かった。私達は戻るから」

「お疲れ様でした」

「お疲れ様。みんなも、仕事頑張ってね」

 矢田局長の後ろにいた子達へ声を掛けるモトちゃん。

 それに彼等が照れながら頷いたのを見て、彼女はきびすを返して歩き出した。




 自警局への帰り道。

 そのモトちゃんの隣へ並び、疑問をぶつける。

「あれだけで良いの?」

「殴り倒す理由でもあった?」

「無いけどさ。北川さんとの話をもう少し突っ込んでも良いと思って」

「北川さんを焚きつけたのならともかく、それは彼女が誤解した部分もあるんでしょ。だったら、矢田君に言う事なんて無いわよ」

 正論過ぎる正論。

 それは分かるが、小谷君は私達にとっても後輩。

 その辺をかき回されるのは、正直良い気分はしない。

「一言くらい言っても良いと思うんだけど」

「良くないの。それに後輩の面倒を見てるなんて、立派じゃない」

「それもそうだ」

 妙に納得をするショウ。

 裏切り者だと言いたくなったが、モトちゃんの台詞も最も。

 私達は指導どころか、仕事を放り出してこんな所まできてしまっているんだから。



 ただそれはモトちゃんの意見であったり、ショウの意見。

 私やサトミの意見ではない。

「面白く無いわね」

 苛立った視線を廊下の壁へと向けるサトミ。

 怒りの持っていき場が無いだけに、苛立ちばかりが募るようだ。

「元々あんな物でしょ。それと彼も、悪意を持って北川さんや小谷君を焚きつけた訳でも無いでしょうから」

「だとしても、あの態度はどうなのかしら。私達の意図には気付いてるのに、言い訳もしないのはどういう事?」

「本音をぶつけ合っても仕方ない。そこはお互いに妥協して生きていかないと」

 いつも通りの、大きな視野に立った発言。

 間違っても短慮に走る事は無い。

 サトミもそれが正しい。もしくは冷静な判断だと分かっているからこそ、さっきも黙っていたんだろうけど。

「第一モトや私達に不満があるなら、直接言うべきではなくて?」

「噛み付かれるのが分かってるのに、虎へ手を伸ばす人はいないでしょ。……ご苦労様」

 自警局の受付にいる女の子へ声を掛け、カウンターの前を通り過ぎるモトちゃん。

 彼女はさっきの件を、もう引きずってはいないようだ。

 サトミは怒りが増幅したという顔しかしてないが。




 私もあまり気分は良くないが、モトちゃんの言うように妥協が必要なのも理解出来る。

 分かりやすい敵でもなければ状況でもないので、もやもやした気分が募るだけにしろ。

「あーあ」

 例のソファーへ座り、テーブルにあったペットボトルを引き寄せる。

 中身は家から持って来たお茶。

 浮いたお金は貯金へと回っている。

「最近、慎ましいな」

「将来を考えて」

「なるほど」

 苦笑して、貯金箱に小銭を入れるショウ。

 殆ど貯まってはいないが、毎日わずかずつでも蓄えていけばそれなりの額にはなっていく。

 どこかで反動が来て、貯金箱ごとお店へ駆け込む不安がない訳ではないが。



 モトちゃんは仕事に戻り、サトミはその手伝い。

 後は暇をもてあました人間が残る事となる。

「さっきは、随分はっきりと言ったね」

「ねちねち責めるばかりでも仕方ない。緩急だよ、緩急」

「それに意味はあるの?」

「後輩も聞いてた手前、下らない手は使いにくくなる。俺が言った事を否定してる訳だから。それと何度も言うけど、矢田君に悪意があるとは限らない。むしろ小谷君の暴走って気もするんだよな。都合良く曲解してるのかもしれない。取り巻きが何を考えてるかまでは知らないけどね」

 よく分からないが、色々と考えてはいる様子。

 それがいい事かどうかは、ともかくとして。



「最優秀生徒って、そんなにすごい物なのか」

 ハンドグリップを握りながら尋ねてくるショウ。 

 それは私も少し疑問に思っていた。

「その年の卒業生で、最も優秀な生徒って肩書き。栄誉だけとはいえ、当然企業も大学も評価はしてくれる」

「そういう意味か」

「栄誉の部分も大きい。学校で一番優れた生徒、なんて言われたらどう思う」

 どう思うと言われても、言われる可能性がないから思いようがない。

 ただ嬉しいのは確かで、誇らしくもあるだろう。

 私には縁遠くて、いまいちイメージが湧かないが。

「世の中、そういうのが好きな人間も多いんだよ」

「栄誉で飯は食えないぞ」

 ぽそりと呟くショウ。

 これにはケイも、何がという顔をする。

「俺の家も勲章はあるけど、あれは何も生み出してない」

「それはお前の父親や伯父さんが特殊なだけだ。普通はああいう物をもらえば棚に飾って、パーティーやら何やらに出席して悦にいる」

「そんな物か」

「もう良いよ。北川さんの片付いたんだし、ちょっと丹下の様子を見てくるか」

 それは私も気になるな。




 今度は3人で、自警課課長室執務室へと移動。

 沙紀ちゃんの元を訪ねる。

「何かあった?」

 書類越しに私達を見てくる沙紀ちゃん。

 忙しいかなと思いつつ、さっきまでの出来事を彼女に話す。

「暴走?」

「そこまでではないんだけど、ちょっと気持ちが前のめりになってる気はする」

「そこまでは言ってないんだけどな」

 沙紀ちゃんは書類を机へ置くと、口元を押さえて思案の表情を浮かべた。

 北川さんよりも過敏な反応で、どうやら彼女の方が小谷君達にプレッシャーを掛けたのかも知れない。

「なんて言うのかな。昔の私は人の顔色を窺って、人の後ろについて行動してたの。だからそうならないようにって思って」

「自立って事?」

「ええ。ただ暴走するほど意見したつもりはないんだけど」

 今度は頭を押さえて唸りだした。

 こういう姿を見ると、つくづく真面目なんだと思う。


「どのくらいの問題になってる?」

「サトミは角を生やしてる」

「え」

「いや。あの子の私物を勝手に持ちだしたから。沸点が低いんだよね、結局」

 目の前にいなければ、好きな事を好きなように言える。

 いても言うけどね。

「……大丈夫なの?」

 下からお伺いを立てるように尋ねてくる沙紀ちゃん。

 サトミの名前は、本当周りに影響を与えるな。

「気にする事無いと思うけどな」

 適当な調子で答えるケイ。

 沙紀ちゃんの表情が緩んだのもつかの間、ショウがそれに言葉を繋ぐ。

「どうかな、それは」

「何が」

「サトミって、6年前の話を今でも持ち出してくるぞ」

 妙に真に迫った顔で語り出すショウ。


 6年前と言えば、私達が出会った頃。

 私が覚えているのはそういう大きな出来事くらい。

 後は殆ど記憶になく、言われても分からない事の方が多いと思う。

「すごいぞ。俺が言った台詞を、一字一句間違えずに話してくるからな」

「どうして間違えてないって分かる。お前も覚えてるのか」

「たまたま録音したDDがあって、それを再生したらサトミが言ったとおりの台詞だった。多分記憶力が根本的に違うんだろうな」

「単にしつこいだけだろ」

 嫌な結論を得るケイ。

 とはいえサトミがねちっこいのは確か。

 6年前はともかく、数ヶ月の間なら普通に私の行動を並べ立てる。

「だ、大丈夫?」

 かなり不安げな様子で尋ねてくる沙紀ちゃん。

 私からすればしつこかろうが角を生やそうが、正直言えば大して気にはしない。

 さすがに慣れたというか、耐性が付いて来たから。

 ただ沙紀ちゃんからすれば、それこそ鬼か般若かといった心境なんだろう。


「サトミの事は、気にしなくていい。根に持っても実害は少ない」

「じ、実害?」

「それより、小谷君に何言った?」

「大した事は言った記憶がないんだけど。単純に私達も卒業するんだから、後はみんなで頑張って。くらいの話」

「あれは裏を読みたがるタイプだからな」

 腕を組んで苦笑するケイ。

 今の沙紀ちゃんの台詞は、言ってみれば普通の励まし。

 実際彼女に含む部分はなく、裏も表も何も無い。

 しかしケイが指摘したように深読みしたら、色々な解釈も生まれてくるだろう。

「裏ってなんだ」

「後はみんなで頑張ってね。ああ、これは俺達への試験だ。それも生半可な物じゃない。俺達に後を託すための試験。だったら、中途半端な事は出来る訳がない」

「意味が分からん」

「俺だって分かってない。例えばの話だよ」

 そう言って苦笑するケイ。

 また話を取り違える。勘違いする過程は、大体そんな物。

 小谷君がどういう発想をしたのかは分からないが、何らかの飛躍があったのは間違いないだろう。



 どうにも困った顔で机を撫で始める沙紀ちゃん。

 サトミの件に加えて、小谷君の件。

 責任を感じているのかも知れない。

「気にしなくても良いと思うよ。どのみち私達は困ってないから」

「私物の件は?」

「元々片付けるつもりだったし、全部は混んでもらったから手間が省けた。サトミは吠えてたけど、大した事は無い」

「小谷君は」

「あの子も悪い事をするとは思えないからね。多少やり過ぎても、私達がそれを受け止めれば良いだけでしょ」

 目を輝かせ。私の勘違いでなければ尊敬の眼差しを向けてくる沙紀ちゃん。

 あまり自覚はないが、どうやら良い台詞を言ったようだ。

「それに荷物を運び出されるくらいなら、別に……」

 着信を告げる端末。

 何となく静まりかえるみんな。

 タイミング的に、少し嫌な予感はしなくもない。


 端末を取り出し、通話ボタンを押す。

 相手はサトミ。

 伝わって来るのは声だけだけど、角がちらちら見える気もする。

「……いや、大丈夫。……まあ、問題かもね。……分かった、すぐ戻る。……分かったって」

「……どうかしたの?」

「モトちゃんの仕事を、全部小谷君が片付けた」

 それ自体は特に問題は無く、よく頑張りましたと言っても良いくらい。

 今、このタイミングでなかったら。

「わざと?」

「何も考えずにやるとは思えないからね。何を考えてやってるかは、全然分からないけど」

 言ってみればサトミへの挑発。 

 またモトちゃんから釘を刺されたばかり。

 それでも敢えて手を突っ込んでくるところに、小谷君の覚悟が窺える。


「やっぱり、私のせい?」

「大丈夫だって。それに北川さんも、小谷君に何か言ったらしいし」

「だけど、でも。どうなの?」

 かなり冷静さを欠いた態度。

 もう少し大人なんだと思っていたけれど、余程サトミが怖いと見える。

 もしくは、何か違う理由があるかだ。

「この件はケイがどうにかするから」

「おい」

「横綱相撲で受け止めるって言ってたじゃない」

「それはモトが受け止めるんであって、俺は何も知らん。大体放っておけば良いんだよ。騒いでるのはサトミだけで、小谷君が何をしようと俺は困らん」

 言い切ったな、この男。

 ただ実際に今まで小谷君がやってきた事は、私にとってもそれ程の影響はない。

 サトミだから咎めているだけで、私からすれば良くやったという部分も無くはない。

「だったら、何をやられたら困るの」

「何をされようと困らないって。俺はこの学校に籍を置いてるだけで、そもそも草薙高校の生徒でもない。極端な事を言えば、ここにいる理由も無い」

「逃げるつもり」

「まさか。とにかく俺は何をされようと……」

 今度は彼の端末に着信。

 つまりは、嫌なタイミングと言える。


 全員の注目を浴びながら通話に出るケイ。

 表情に変化はなく、ただわずかにだが苛立ちが垣間見える。

 付き合いが長いからこそ分かる、微かな程度に。

「……いや、構わないよ。好きにやってくれて結構。……それは当然だろ。……リスクを負わずに出来る行動なんて、なんの価値も無いよ」

 随分物騒な台詞。

 ケイは通話を終え、突然ショウのお腹に裏拳を放った。

 それは当然あっさりとブロックされ、腕が強く握りしめられる。

「何がやりたいんだ、お前は」

「小谷君が勝手に、ガーディアンのシフトを組み始めた」

「それは何か問題なのか」

「ガーディアンの運用は、自警課の専権事項。緊急時でない限りは、局長でも好き勝手には動かせない。それを彼は、俺達の頭越しにやった訳ですよ」

 今は明らかに見て取れる苛立ち。

 この人さっきまで、困らないとか言ってなかったか。

「……なんだよ」

「怒ってるじゃない」

「訂正する。困りはしないけど、不快な場合はある」

 本当、みんな自分の事になると感情が露わになるな。



 わざとやっているのか、それとも盗聴器でもあるのか。

 今度はショウに着信。

 彼は普通に端末を取り出し、通話を始めた。

「……ん?……ああ、構わんぞ。……好きにやってくれ。……ああ、ご苦労様」

 ごく普通に終わる通話。

 特に怒りを押し隠している様子もなく、苛立ちも何も感じ取れない。

「なんて言われたの」

「俺が提出するはずだったレポートを書いてくれたらしい。良い奴だな、あいつ」

 もう一度ケイの裏拳。

 今度は、かなり本気だったと思う。

「なんだ」

「お前は空気を読め。良い奴だな、がははじゃないんだ」

「誰も、がははとは言ってない」

「この馬鹿」

 ショウは元々怒らないタイプ。

 特に自分への出来事は、受け流すか耐える事が出来る。

 彼に関しては、相手が悪かったと言えるだろう。



 となると順番的には私。

 端末を事前に取り出し、机の上に置いて着信を待つ。

「来るかな」

「来るさ。雪野さんの貯金箱を邪魔だから片付けました。なんて言ってくるかも知れない」

「あはは」

 思わず乾いた笑い声を出し、室内の空気を凍り付かせる。

 そんな事をした日には、私も自分の感情を制御出来ない。

 今期中は顔を見ないようになると思う。

 精神的にも、物理的にもだ。

「怖い女だ」

「あれは私にとって、本当に大切な物なの。もしあれを処分するような事があれば、あー」

 叫び声に重なる着信音。

 すぐに通話へ出て、相手の声に耳を澄ます。


「……貯金箱は無事?……いや、こっちの話。……ああ、そういう事。……困ると言えば困る。……分かった、一度戻る。……貯金箱は無事なんだよね。……分かった、分かったって」

 何か言っているサトミの声を途中で終わらせ、端末をポケットにしまう。

 最悪の状況を仮定していただけに、気分は少し軽い。

 間違っても、浮き立つような気分でもないが。

「どんな話だった?」

 やはり不安げに尋ねてくる沙紀ちゃん。 

 その内胃薬が欲しいとか言い出しそうだな。

「大した事無い。直属班の子達を一般のガーディアンに編入させたって」

「それは問題でしょ」

「問題だけど、特に困らないよ」 

 そう。

 仕事の上で、また組織的には問題。

 ただいなくて私が行動出来なくなる訳では無く、その意味では困らない。

 ケイが言うように、頭越しにやられるのはともかくとして。

「とにかく、一度戻る。小谷君に話も聞きたいし」

「わ、私も行く」

「仕事はいいの?」

「緒方さんに任せるから」

 そう言って通話を始める沙紀ちゃん。

 声がか細いというか、今にも消え入りそうだな。



 小さく開くドア。 

 その隙間から様子を窺う緒方さん。

 虎の巣穴を覗いている心境なのかな。

「私に、何か」

「ちょっと出かけるから、後をお願い。仕事は、この前伝えた通りの手順でやってもらえば良いから」

「私は、小谷君の件に関わってませんよ」

 まずは自己防衛から入る緒方さん。

 余程サトミが角を生やしているか、小谷君が突っ走っているかだな。

「大丈夫だって。と言うか、小谷君って何がしたいの?」

「責任感が強いから、色々考えてるんじゃないんですか。実際来期からは彼が同じような事をする訳だから」

「ふーん。そう考えると偉いよね」

「私なら怖くて出来ませんけどね」

 そう言って、沙紀ちゃんから譲られた席に収まる緒方さん。

 ケイは横にすっと移動し、腕を組んで彼女を見下ろした。

「まさかと思うけど、小谷君に組みしないよね」

「まさか。契約も結んでないし、彼に賛同する理由も無いですよ」

「契約を持ちかけられたら?」

「結ぶ結ばないは私の自由ですけど、今はメリットもありませんからね」

 はっきりと否定する緒方さん。

 ケイは深く頷き、冷めた視線を彼女に注いだ。

「今回の件は、正直大した話じゃない。暴走といっても、ルールに則った上での行動。感情論以外での問題は無い。ただ」

「なんですか」

「俺達は今まで、比較的感情を大事にして行動してきた。それを逆撫でされるような行為は、非常に我慢しがたい。つまりルールは関係無いんだよ、俺達にとって」

 一瞬身を震わせる緒方さん。


 普段はケイに対しては強気に出る彼女だが、それはやはり普段の場合。

 こういう時のケイと、直接対峙すれば分かるだろう。

 それこそ、その存在すら意識をしたくないと。

「理屈とか規則とかルールとか。俺達はそういう事よりも、感情を大切にして行動してきた。勿論、今更その考え方が変わる訳もない」

「そう、ですか」

 かなり固い口調。

 視線は卓上端末の画面から離れず、ただキーボードに置かれた手は少しも動いていない。

「そういうつまらない人間なんだよ、俺達は」

「つまらなくはないと思いますが」

「という訳で、後はよろしく」

 もう一度身を震わせる緒方さん。

 ケイは彼女に薄く笑いかけ、ドアへ向かって歩き出した。




 早足で廊下を歩くケイに追いつき、今の件を問いただす。

「恫喝してどうするの」

「盗聴器を仕掛けてあるか、俺の話を直接報告するのか。舐められても困る」

「緒方さんが?」

「あの子も、伊達に傭兵をやってないよ。怯えてるのも、案外ポーズじゃないのかな」

 さらりと答えるケイ。

 もしそうなら相当な演技派。

 私は簡単に騙された事になる。

「なんか、納得いかないんだけど。色々と」

「納得する必要はない。後輩は、俺達に歯向かってる。その事実があるだけだ」

 今回はいつに無く積極的というか、攻撃的。

 本人が言っているように感情を余程逆なでされたか、それとも彼なりの意図があるだろうか。



 私も怒ろうとは思ったが、周りが盛り上がりすぎて少し出遅れた気分。

 今更爆発しても、ちょっと恥ずかしい気がする。

 その分冷静さが保て、全体を見る余裕も生まれている。

 もしくは私が、成長したかだ。

「でも歯向かうって、小谷君達をどうにかする気?」

「来るのなら、何もしない訳には行かない。向こうもそれを承知で行動しているんだから」

「大人げないと思うけど」

「残念ながら、俺はまだ大人じゃない」

 なるほどね。

 実際年齢は、せいぜい18才。

 成人ではあるにしろ、それは法律において。

 精神的には、やはり子供の域を出ないと思う。


 対してショウは普段通り。

 さっきの台詞ではないが、後輩もよく頑張ってるなくらいの態度を示している。

 この人の場合、自分に敵意を向けられても余り反応をしないからな。

「ショウは、小谷君達に理解があるよね」

「自立するのは良い事だろ。多少やりすぎの気はするが、何もしないよりは良い」

「反抗的でも?」

「人間、そういう時もある」

 さすが経験者は言う事が違う。

 ただあの時はそれ程良い結果には結びついておらず、むしろ失敗と言って良いくらい。

 今回がそうなるとは限らないが、とにかく相手が悪い。



 サトミとケイにここまで直接的に反抗する人は、今まで見た事が無い。

 外部の人間ならともかく、私達の身内では。

 また彼等の事をよく知る人なら、余計に。

 つまりそれだけの覚悟があっての行動。

 行動の善し悪しはともかく、その点については関心をする。

「大丈夫かしら?」 

 今日何度目かの同じ台詞を告げる沙紀ちゃん。

 表情は至って真剣で、余程この件を気に病んでいるようだ。

「問題ないと思うけどね。モトちゃんが言ってたように外へ迷惑を掛けてる訳でも無いし」

「でも、元野さんや遠野ちゃんに反抗してるんでしょ」

「それはあまり気にしなくて良いと思うんだけどな。そのくらいの度量は、モトちゃんにはあるし」

「遠野ちゃんは?」

 それはどうにも答えようがない。


 度量というのは、多分彼女に最も当てはまらない単語。

 人間が小さいと言うより、許容範囲が非常に狭い。

 ある意味厳格だが、それは自分のルールに対して。

 逆に言えばそれ以外の解釈を認めず、受け入れない。

 あの性格が今後治るとは思えず、少なくとも本人はそれを問題と思ってないだろう。

「まあ、大丈夫でしょ。基本的に、あの子も身内には甘いから」

「本当に?」

「本当に」

「本当か?」

 私が肯定したところを、敢えて被せてくるショウ。

 確かにこの人の場合は、例外か。

「実害は無いでしょ」

「無い?」

 声を裏返されても困るんだけどな。




 いまいちぱっとしないまま、自警局へと戻ってくる。

 沙紀ちゃんは重い表情。

 ショウは納得しない顔。

 ケイは戦闘態勢といった具合。 

 これでは、感情を増幅させに行っただけの気もしてくる。

「来たわね」

 仁王立ちで出迎えてくれるサトミ。

 この人の気合いも、なかなか元に戻らないな。

「何か進展はあった?」

「別に。それより、少し落ち着いたら」

「私はいつでも冷静よ」

 通路の真ん中に立って、腰に手を当てながら言う台詞でもないと思う。



 そのまま私の執務室に引き込まれ、戻ってくるまでに起きた出来事を逐一聞かされる。

 暇な主婦って、こんな事をしてるのかな。

「聞いてるの?」

「聞いてるというか、さっき端末で聞いた」

「より詳細な情報を伝達してるのよ。今後の方針を決めるためにも……。誰」

 机の上にあった卓上端末が告げる、来客の合図。

 それとほぼ同時にドアが開き、バトンを背負った渡瀬さんが入って来た。

「お邪魔でしたか?」

「全然。私達に気にせず、使って良いよ」

「済みません」

 サトミの視線をかいくぐりながら、それでも執務用の席に座る渡瀬さん。

 バトンは壁に掛けられ、それ以外の私物は机の上に乗せられる。

「少し慣れるようにした方が良いと言われたので。雪野さんは普段、ここで何をしてます?」

「私は何もしてない。例のソファーで過ごす事が多かったから」

「基本的に仕事はないと」

「デスクワークはそれ程無いと思うよ」

 そう答え、サトミからすごい目で睨まれる。

 どうやら今のは、色々と失言だったらしい。



 意外と図太いのか、平然と書類を読み始める渡瀬さん。

 小谷君達と違い明確な反抗でもないし、敵意も当然感じない。

 サトミも突っ込み所が難しいのか、何か言いたげではあるが言葉は出てきそうにない。

「沙紀先輩、この部分ですけど」

「運用に関しては自警課が代行をするから、チィちゃんは何もしなくて良いわよ。ただこのケースだと総務局の範囲だから、事後に連絡は来ると思う」

「分かりました。結構面倒ですね、このポジションも」

 沙紀ちゃんに話を聞きながら、難しい顔で書類を読み進める渡瀬さん。

 何が面倒なのか私にはよく分からず、そんな事もあるのかと今知ったくらい。

 私の場合は全てサトミに丸投げしていたので、仕組み以前に役割自体も未だに良く分かっていない。

 そう考えると渡瀬さんがここを使うのはむしろ当然。

 私が占有する事自体おこがましいとも言える。


「随分熱心だね」

「少しでも雪野さんに追いつこうと思いまして」

 笑顔で答える渡瀬さん。

 その途端吹き出すケイ。

 失礼だな、気持ちは分かるけどさ。

「だ、誰に追いつくって」

「雪野さんにです」

「冗談は程々にした方が良い」

 脇腹でも掴んでやろうと思ったが、すでにドアの前まで逃げた後。

 とはいえ渡瀬さんには、とっくの昔に追い越された後。

 今更追い越すもなにもない。

「私を追いかけても、何も無いと思うよ」

「まさか。それに小谷君も、皆さんを尊敬してるからこそああいう行動をしてるんじゃないんですか」

「そういう見方もあるの?」

「好意的に解釈すれば、ですけどね」

 ちょっと冷静な返事。


 つまり追い越したいからこその背伸び。

 少し無理をしてでも、その背中に追いすがるための努力か。

 そう言われて見ると、何となく頷けなくもない。

「渡瀬さんはそれより、沙紀ちゃんを追いかけた方が良いじゃないの」

「タイプが違うかなと思いまして」

「タイプ」

「私は生真面目でもないですし、それ程物事を深刻に考えませんから」

 結構えぐるな、この子も。

 他意がないだけ、余計に。


 これでは沙紀ちゃんが一層沈み込むのも頷ける。

 とはいえそれも生真面目さ、物事を深く考える故の事。

 私も内向的な部分はあるが、生真面目さとは無縁。

 渡瀬さんの言葉も、もう少し慎重に考えた方が良さそうだ。 












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