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スクールガーディアンズ  作者: 雪野
第6話
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エピソード 01   ~玲阿家編~






   絆




 廊下に落ちる幾つもの影。

 磨き込まれた床には、影を落とした当人達の姿も映り込む。

 年配の男性と女性が一人ずつ、後は同年代らしい若者が数名。

「何とか、助かったわね」

「ええ。これも、シスター・クリス達のおかげです」

 黒髪を短く刈り上げた、精悍な顔付きの少年が頭を垂れる。

 その隣にいたショートカットの可愛らしい少女も、すぐそれに倣う。

「いえ。これはなるべくしてなった結果です。あなた達がお礼を言う必要は、どこにもありませんよ」

 柔らかさの中に、強い意志を湛えた声。

 誰かが冗談でも言ったのか、笑い声が起きる。

 理事達との懇談を終えた、シスター・クリスと優達。

 全員表情は一様に明るく、交わされる会話も声のトーンが高い。 


 彼等は来客用の部屋に通され、くつろいだ時を過ごしていた。

 栗栖親子は言うまでもないが、軍人である山峰中佐も表情は穏やかである。

「君達への褒賞に付いては、いずれ軍から正式にさせてもらう。と言っても、せいぜい賞状程度だろうが」

「それで十分です」

 ショウははにかみ気味にそう答え、優と目を合わせた。

 彼女もまた、可愛らしく頷く。

「済まない。怪我への金銭的な補償は、後日連絡するから」

 断る素振りを見せたショウに対して、山峰は彼の肩を叩く事で応えた。

「人の好意は、素直に受ける物だ」

「あ、はい」

「よし」

 もう一度彼の肩を叩き、嬉しそうにする山峰。

「それと、君とお父さんの話なんだが。時間はいいかな」

「あ、はい。彼女も同席してよろしいですか」

「ああ、かまわない。シスター・クリスはどうなされます」

「プライベートな事でしょう。私達は、遠慮致します」

 栗栖の視線が、一瞬ショウへと流れる。

 彼を気遣ったというよりは、何か知っているような様子で。

「あなたも、彼の名が玲阿だと知っているでしょう」

「ええ。その名に興味を覚えてここへ来た事は、否定しません」

「え?」 

 戸惑った声を上げる優。

 勝手に話題となっているショウは、さらに戸惑っている。

「あの。ショウの事、何か知ってるんですか。それとも、お父さん?」

「お父さんというか……。誰か来たな」

 ノックされたドアに歩いていく山峰。

 そして壁際に張り付き、身を引きながらドアを開けた。

 しかし開いたドアの向こう側に、人の姿は見えない。

「お、お化け?」

「まさか。父さんだろ」

「さすが息子。俺のやる事はお見通しらしい」

 忍び入るように、スーツ姿の男性が入ってくる。

 またその後から、もう一人。

「彼等の事で、学校へ意見する必要は無い。すでにこちらで処理してある」

「いや、俺はあなたへ会いに来ただけだから」

「私もです、山峰さん。今回は、四葉君がお世話になったようで」

 固い握手を交わす、山峰と男性達。

 一人はショウの父親である、玲阿瞬。

 息子をさらに精悍にした、凛々しい顔立ち。

 もう一人は彼の兄。ショウの伯父にして、玲阿流師範である玲阿月映れいあ つきえ

 精悍さよりも穏やかさの優る顔立ちである。



 その兄弟は、感慨深げに山峰を見つめている。

 そして手にしていたコートらしい物を机に置き、空いている席へ着いた。

「突撃隊で軍にまだ残ってるのは、もう数えるくらいだ。追撃隊の連中は、終戦後にほぼ全員が退役してしまったし」

「臆病者が軍に残ってもな」

「君が臆病者なら、我々全員はどうなる。最初に突撃隊へ志願したのは、君達だろ」

「え?」

 顔色が変わるショウ。

 優も、戸惑いがちな表情を浮かべる。 

「まあそれはともかく。学校に聞いたら、ここへ来てると言われてな。四葉、休んでなくていいのか」

「俺とユウは、大した事無い。ただサトミとケイは体調が悪いから、今寮で休んでる」

「なるほど。で、山峰さんはどうなんだ」

 笑顔で話しかける瞬。

 山峰は太股辺りを叩き、軽く足を振り上げた。

「歩く程度なら何とかなる。どちらにしろ、わざわざ親が来なくてもいいと思うが」

「各方面へご迷惑をお掛けしたので、その謝罪を兼ねまして。軍にも、いずれお詫びに伺います」

「月映さんに頭を下げてもらう必要はありませんよ。それにあなたの甥は、誰にも迷惑はかけてませんから」

 苦笑する山峰。

 月映は朗らかに笑って、栗栖の傍らに立った。

「お久し振りです」

「こちらこそ。甥御さんだったのですね。リストには「Reia」としかなかったので、どちらのお子さんが分からなかったのですが」

「俺の息子ですよ」

 誇らしげにショウの肩を抱く瞬。

 ショウは痛そうにしながらも、はにかんだ笑顔を浮かべる。

「知り合い、なんですか」

 遠慮気味に、優が尋ねる。

 それに瞬と月映は、同時に頷いた。

「俺と山峰さんは、同じ中隊に属してたんだ。兄貴も、一時期山峰さんと同じ隊にいた事がある」

「特に瞬と山峰さんは、北陸防衛戦で一緒に戦った仲です」

「大体あんた。中佐どころか、そろそろ将軍じゃないのか」

「お偉方が辞めない限り、私はしばらく佐官さ。それにまだ、現場にも未練はある」

 盛り上がる3人。

 瞬と月映はすでに退役しているが、古き戦友と出会った事で自然と気分が高揚するのだろう。



 ひとしきり話が進んだところで、もう一度優が尋ねる。

「あの。栗栖さんとも、知り合いみたいなんですけど」

「彼等は、私の命の恩人です」

「私を除いてだが」

「山峰さんも、関係してるだろ」

「間接的にはな」

 不思議そうにする優達に、苦笑気味の表情を見せる栗栖。

「ある峡谷で私を守って下さったのが瞬さん。その後ヨーロッパでの逃避行を助けてくださったのが月映さん。それらの計画や手配を手伝ってくださったのが山峰さんです」

「栗栖さん。それはいいって」

 ぶっきらぼうに遮る瞬。

 月映と山峰も、はにかみ気味に顔を背けている。

「彼等は自分から話したがらないでしょうから、僭越ながら私が説明して上げますね」

「あ、はい」

「分かりました」

 よく分からないまま頷くショウ達。

 瞬達と栗栖は、意味ありげに目線を交わしている。

 クリスチナも知らないらしく、優達同様不思議そうな顔だ。


「先程も申し上げましたが。私がここへ来たもう一つの理由は、生徒の名簿を見たからなんです」

 栗栖の視線が、ショウへと向けられる。

 優しさと暖かさが織り込められた、それでいて懐かしげな眼差し。

「……デスバレーで私を守って下さった、10名の戦士達」

「え?」

 戸惑う私達をよそに、栗栖が話を続ける。

「前回の大戦の折り。私が馬鹿げた提案をしたのです。ある峡谷で対峙しあう両軍に対して、その間を無事に通り過ぎたら軍を引くようにと。ちなみにその距離は、10km近くありました」

 苦笑する栗栖。

 瞬達も、おかしげに笑っている。

 今度はもう、それを遮ろうとはしない。

「いざ私が渡ろうとすると、数名の兵士が駆けて来ました。両軍から5名づつ。私を守るために、自らの意志において」

「それが君の父親という訳だ。軍では命令違反としか記録に残ってないが」

「結論から言えば私と彼等10名は戦闘中の10kmを歩き通し、両軍も兵を引いて下さいました。私が終戦に関係しているという噂は、おそらくそれでしょう」 

 唖然とするショウ達。

 しかし、話はそれだけでは終わらない。

「その件で私には、一種の権威が付与されたのです。戦いを終結に導いた聖なる修道女などともてはやされ、平和の象徴扱いもされました。ですが戦争の続行を望む人達はそれを疎ましく思い、私の暗殺を謀ったのです」

 彼女の視線が、それとなくシスター・クリスへと向けられる。

「アジアからヨーロッパ。身分も素性も何もかも隠して、いつ襲われるかも知れない危険と共に私は逃げました。またその際にも両軍から5名づつの方が、私を守って下さいました」

「その一人が、ヨーロッパでNINJA部隊に参加していた君の伯父さんだ。無論これも命令違反と処理されたが」

「まだ幼いクリスと共に。長い旅でした」

「え、私が?」

 戸惑いの表情を浮かべるクリスチナ。

 栗栖さんは彼女の手をそっと握り、月映と目を合わせた。


「私はデスバレー近くの村で、一人泣いていたあなたを授かったのです。その旅や月映さん達との出会いは、あなたは幼過ぎて覚えていないでしょうが」

「うっすらと、何人かの大人に囲まれている事しか。たき火が、空を焦がすんです。みんなで、それをずっと眺めていました。私は、夢だとばかり……」

「確かに、夢のような日々でした。修道女の道を歩みかけていた私には、何もかもが」

 親子は遠い眼差しを、月映へ向ける。

 でもそれは彼をすら通り過ぎ、古い記憶へと辿り着いているのかも知れない。


「あ、あの」

 非常に遠慮気味に、ショウが手を上げる。

「どうした、四葉。俺は、何も答えんぞ」

 ぶっきらぼうに言い放つ瞬。

「違う。ちょっと、俺の知り合いを呼びたくて」

「この話に、関係ある人なんですね」

「ああ。その人のお父さんは、北陸防衛戦で戦死してるんだ」

 大人達全員の顔が、微かに固くなる。

 だがショウは、意を決したように言葉をつないだ。

「名雲さんっていう俺の先輩。詳しい事は彼も知らないけど、突撃隊に参加してるとか」

「名雲っ?」

 突然立ち上がる瞬。

 月映と山峰さんも、息を飲んでいる。

「親父は、名雲清蔵かっ」

「そうだったかな。何興奮してるんだ」

「ば、馬鹿野郎っ。お前、何でもっと早く知らせないっ?」

「父さん、ずっと仕事に出てただろ。家にいなかったじゃないか」

「だ、だからって、これが……。いい、とにかくその子を呼べっ」

「あ、ああ」



 少しして、顔にガーゼを貼った名雲がやってきた。

 ショウから話は聞いているのだろうが、不安さは隠しきれない。

「あの。俺が名雲ですが」

 すると玲阿兄弟と山峰が、彼を取り囲む。

「お父さんの名は、名雲清蔵かな」

「ええ。玲阿君が言っていたように、北陸防衛戦で戦死しましたが」

「そうか……」

 感極まったように天井を仰ぐ彼等。

「まさか、名雲のとっつぁんの子供と会えるとはな」

「はい?」

「あの人を知ってる人は、敬意と親しみを込めてそう呼んだんだ。そうか、子供か」

 瞬は言葉がないのか、ただ名雲の肩に手を置き続けている。

「っと、肝心な奴を忘れてた。ちょっと待ってくれ」

 端末を取り出し、どこかへ連絡をし出す。

「……俺だ。……いいから、早く学校へ来いっ。……あ?……名雲のとっつぁんの息子がいるんだよっ。……おおっ、そうだっ。……またなっ」

 端末をしまっても、瞬は興奮醒めやらぬという様子である。

「ユンファ(潤和)もすぐに来る。あいつも、とっつぁんには世話になった人間だ」

ユンさんも?」

「来たら、その時話す」



 それから待つ事しばし。

 息も切らさないでユンファが飛び込んできた。

「君か……」

 そして名雲の肩へ手を置くや、言葉を詰まらせる。

「俺は尹潤和ユン ユンファと言って、君の父さんには大変世話になった人間だ。勿論俺だけじゃなくて瞬、四葉君のお父さんもな」

「は、はあ」

 その勢いに押され、相当に戸惑う名雲。

「瞬。黄隊長は」 

「香港外区へ買い付けに行ってる。取りあえず、連絡だけはしておいた」

「まあ、帰国したらまた会いに行けばいいか」

「ああ。とにかく、会えて良かった」

 瞬とユンファは、もう一度名雲の肩に手を置いた。

「あ、あの。俺の親父と皆さんは、親しかったんですか」

「士官学校出たての若造だった俺達に、軍隊の事を一から教えてくれたのが名雲のとっつぁんだ」

「俺と瞬が友達だなんて言ってられるのも、あの人のおかげさ。こうして生きてられるのもな」

「え?」

 名雲だけでなく、ショウと優も表情を変える。


「つまりは、北陸防衛戦での話だ。血の気が多かった俺とユンファは、真っ先に突撃隊へ志願した。でもそれを止めたのが、とっつぁんって訳だ」

「俺達には子供がいるからって、殴って止められた。あの人にだって、君がいたのに……」

「いつも死ぬのは馬鹿だ、危なくなったら真っ先に逃げるとか言ってた人なのに。あの時だけは、自分が一番危ないところへ突っ込んでいったんだ」

「あそこで死んだのは、本当は俺達だったんだよ。君のお父さんではなくて」

 低くささやかれる、瞬の言葉。

 名雲は唇を噛みしめて、その話に聞き入っている。

「そしてその時、彼と同じ小隊にいたのが私だ」

「あなたが?」

「ああ。最後に、彼を看取ったのも」

 淡々と語る山峰。

 その煙るような眼差しは、遙か彼方へと向けられている。


「はっきり言えば、突撃隊は死ぬために構成された部隊だ。万全の準備をして待ちかまえている敵陣へ特攻していったのだから。一歩進むたびに、味方が減っていく。叫び声も聞こえず、姿だけが消えていった」

「親父もそうだったんですか」

「彼は最後まで、名雲さんだった。傷付いた仲間と敵兵をかばい、塹壕へと彼等を押し込めた時に被弾した」 

 山峰の声だけが、室内に響く。

 静かに、ひそやかに。

「彼を担いだ時には、もう事切れる寸前だった。その時私は、彼からの伝言を受け取っている。祐蔵君と、君のお母さんに」

「俺へ……」

「済まない、と。自分は死んでしまうけど、恨むなら敵じゃなく自分を恨んでくれと」

 思わず天井を仰ぐ瞬達。

 名雲は拳を固め、必死で唇を噛みしめている。

「俺はこの先も、ずっと未希みきと祐蔵を愛している。そう言い残して、彼は私の背中で息を引き取った……」

 口元を抑える山峰。

 ショウ達も、こみ上げてくる涙を抑えるので必死なようだ。

「親父は……。母さんと俺を……。最後まで……」

 拳を固く握りしめる名雲。

 頬を伝う光の筋。

 彼はそれを手の甲で拭い、何か言おうとした。

 でも言葉はつながらず、頬を涙が伝っていくだけだ。

「私は、結局彼を助けられなかった。済まない」

「それは俺も瞬もだ。謝って済む事ではないと分かっているが」

 名雲に向かい、深く頭を下げるユンファ達。

「い、いえ。親父は自分で、自分でその道を選んだんですから。親父は……」

 やはり言葉にはならなくて、名雲は涙を流し続ける。

 その肩を、山峰が力強く抱く。

「今の私には、こんな事しか出来ないが」

 そして彼の頬からも、一筋の光が伝う。

「……父さんっ」

 名雲はそう叫び、山峰さんの厚い胸元に顔を埋めた。

 そこにはもう、言葉はいらなかった……。




 ようやく落ち着きを取り戻した名雲の顔に、笑顔が戻る。

 ショウと優は、こここらは遠慮すると言い残し、一足先に帰っていた。

「大体君は、お母さんにちゃんと会ってるのか」

「え、ええ。それは」

 ユンファの問い掛けに、名雲は曖昧な返事を返した。

「私が先日実家を訪れた時には、墓参にも来ないと嘆いていた。父を目指すという目標は立派だが、お母さんを大事にしないと駄目だぞ」

 笑い気味に指摘する山峰。

 瞬とユンファは破顔して、大きく笑った。

「当分は、この学校にいるんだろ」

「一応、そのつもりです」

「だったら、未希さんをこっちへ呼べ。遺族補償金や優遇措置で、住む所は簡単に借りれらる」

「し、しかし」

「決定だ」

 強引に話を締め、ユンファは端末で連絡を取り始めた。

 話の内容からいって、役所に手続きをしているらしい。

「……さて、これでいいとして。墓はどうする」

「彼の遺体は、他の戦死者と同じで水葬にした。あそこには墓標しかない」

「なるほど。じゃあ、位牌だけ持ってくれば良いんだ」

「あ、あの」

「いいから」

 勝手に物事を進めていく瞬達。

 名雲は止める事も出来ず、ただおろおろするだけだ。

「なんなら祐蔵君は、俺の実家へ住み込みに来るか。玲阿流宗家へ」

「ええ?」

「馬鹿野郎。そんな三流古武術をとっつぁんの息子に教えられるか。俺が借力を教えてやる」

「それこそ、インチキ呼吸法だろ。大体お前は、我流じゃないか。ハングル語も喋れないくせに」

 突然立ち上がり構えを取る二人。

 焼け付くような闘志が発せられ、拳が微妙な動きを見せる。

「あ、あの。俺は軍へ進むつもりですので」

「悪いな二人とも。彼の事は私が責任を持つ」

「なっ」

 微笑む山峰と、叫ぶ瞬にユンファ。


「皆さん、子供では無いんですから。彼も困っていますよ」

「だって栗栖さん」

「ユンファさん。あの峡谷で私を子供だとたしなめたのは、どなたですか」

「そ、それは、俺ですが」

 身を縮め込ませた彼に、月映が穏やかに声を掛ける。

「デスバレーで借りたマントはどうしたんです」

「家にありますよ。瞬が連絡で、とっつぁんの話しかしなかったから」

「いいんですよ、あれはあなた達が持っていて下されば」

 悪戯げに微笑む栗栖。

 男性達は苦い笑みを浮かべ、その顔を見合わせた。

「何かあったら、また俺達20名を呼ぶ気ですか?」

「別れ際にそう仰ってくれましたよね、みなさん。それにそんなわがままは、今まで一度もしてませんよ」

「あなたの結婚式を除いては、ね」

 山峰の呟きに、栗栖は素知らぬ顔をする。

「本当に、結構な修道女ですよ」

「ユンファさん、私の生き方に何か問題でも」

「いえいえ。なあ、月映さん」

「私に振られても」

 困惑気味に首を振る月映。

 その肩を、瞬が力強く抱く。

「義姉さんに聞かれたらまずいもんな、兄貴」

「君だって、大陸に渡った後の……」

「わー。山峰さん、あんた何言ってんだっ」

 まるで子供のようにはしゃぐ男達。

 名雲はそんな彼等を、じっと見つめていた。

 憧憬と、どこか懐かしさのこもった顔付きで。



 今はもういない、強く優しい父を見るように。

 その面影を彼等に重ねるように。

 強く、優しい男達に……。





                                       了














     エピソードo1 あとがき




 本編とは殆ど関わらない、大人達のストーリーです。

 そのため第話には、oldのoを付けています。

 今回は玲阿兄弟(ショウの父の瞬、伯父の月映)とユンファの過去を少し明らかにしました。

 作中にもありますように第6話でシスター・クリス(クリスチナ)を護衛する生徒達が付けていたマントは、彼等が栗栖を護衛する際に身につけていた物です。

 ちなみにデスバレーでの護衛とヨーロッパ逃避行の護衛のメンバーは、ダブっていません。 

 この辺りは別な外伝にしたい所ですが、戦闘の記述が出来ないため書けません。

 銃や兵器類、戦術や戦略の知識が全くありませんので。

 もし書くとしたらヨーロッパ逃避行、月映達と栗栖親子達の話でしょう。

 また私がある程度の知識を得たら、デスバレーや北陸防衛戦のエピソードも書けるかも。

 ご希望があればの話です・・・。



 今回の登場人物について、若干の整理を。

 その内キャラ紹介に書きますが、概略だけ載せておきます。


 ・ショウの父、瞬。

 北陸防衛戦とカスピ海攻防戦を戦い抜いた、軍の英雄。

 現在はセキュリティコンサルタントとして、ボディーガードに近い仕事をしている。

 息子によく似た精悍な顔立ち、体型では追い抜かれている。

 軽く突っ走りがちな性格。

 一時期玲阿流から破門されていたが、現在は復帰。

 子供は、流衣と四葉ショウの二人。

 名前はそのまま「瞬」という意味が込められています。


 ・ショウの伯父である、月映。

 玲阿流師範、前大戦ではヨーロッパでの破壊工作に携わったNINJA部隊に情報将校として所属。

 相当な巨体と、精悍さより穏やかさの優る顔立ち。

 性格も穏やかだが、玲阿流師範の名は血統だけではない。

 子供に、師範代である風成がいる。

 ちなみに月映の名は「月を映すがごとき澄んだ(研ぎ澄まされた)心」という意味が込められています。


 ・尹潤和ユン ユンファ

 前大戦で瞬と同じ小隊に所属していた。

 国籍はツインコリアでテコンドーの使い手。

 終戦後に軍を退役して、現在はステーキハウスなどのオーナーをやっている。

 引き締まった長身、精悍な雰囲気を持つダンディな男。妻子あり。

 ユンの漢字を「伊」と思ってたのですが、「尹」だったのでそれに統一しました。

 苗字を尹にしたのは何となくで、深い意味はありません。

 名前のユンファ(潤和)はJドリーム(塀内夏子さん)に登場する、「崔潤和チェ ユンファから取りました。


 名前のみ出てきた「黄隊長」は、瞬とユンファが所属していた小隊の隊長。中華連邦の軍人です。

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