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スクールガーディアンズ  作者: 雪野
第41話
472/596

エピソード(外伝)   ~緒方さん視点~






     傭兵




 ガーディアンのシフトを組んでいると、渡瀬さんがちょこちょこと近付いてきた。

「緒方さん、手伝って」

「何か仕事?」

「仕事というか、問題があって」

 示されるいくつかの資料とデータ。 

 そして目立つのが、「打倒文化祭」というポスター。

 そう言えば、何か言っていたような気もする。

「これがどうかした?」

「誰が書いたかを調べて、取り締まりたい」

「警察じゃないんだから」

 そう言って、モニターのシフト表へ視線を戻す。


 ガーディアンは治安維持の権限はあるが、捜査権は無い。

 言ってみれば、対症療法的な存在。

 根本からトラブルを根絶するには不向きである。

「そこを曲げて」

「どうして曲げるのよ。というか、放っておけば」

 わざわざこうして書く時点で、相手の程度が知れる。

 本気で事を成すなら絶対に公言せず、結果を残しても口外しない。

 それが基本だと思う。


 しかし渡瀬さんは、なおも食い下がってくる。

「だって、文化祭だよ」

 何がだってか分からないし、ただの文化祭だ。

 そもそも、文化祭って何だろうか。

 こちらは元々傭兵で、学校を渡り歩いていた立場。

 知識としての文化祭はあるが、経験としての文化祭は乏しい。

 ただ彼女には私とは違う思い入れがあるようで、例のポスターへ刺すような視線を向けた。

「みんなが楽しもうとしてるのに、それを邪魔する権利は無いでしょ」

「権利は無いけど、大した事をする相手でもないと思うわよ。事前に犯行声明を出すなんて素人じゃない」

「もっと、意見言って」

 誘導されたのか。

 それとも、私もちょっと熱くなったのか。

 まずは深呼吸。 

 少し冷静になろう。



 シフト表を組み終え、冷めた紅茶を一口。

 データを送信し、端末の電源を落とす。

「正直言って、文化祭に興味はないの。それに大した事にはならないから、大丈夫」

「言い切れる?」

「大丈夫」

「根拠は」

 しつこいな。

 だが、ここでカッとなると売り言葉に買い言葉が出てきそうだ。

 落ち着いて、冷静に振る舞おう。

「さっきも言ったように、気付かれるようにやるのは素人。仮にこういう連中が何かやっても、今の草薙高校なら普通に対処出来る」

「そうかな」

「そうよ。話はこれで終わり。どうしてもと言うのなら、他の子を当たってみたら」

 空のマグカップを持ち、キッチンへと向かう。 

 後はもう少し仕事を片付け、寮へ戻って一休み。

 今日も一日、よく働いた。




 寮の玄関前に揺らめく影。

 落ち着いた佇まい。

 ただその前を素通りするのをためらうような、独特の雰囲気も併せ持つ。

「お帰りなさい」 

 気のない調子で挨拶をしてくる真田さん。

 それへ適当に返し、足早に前を通り過ぎる。

 どう考えても良くない兆候。

 言ってみれば、逃げるに限る。


「逃げるの」

「そう、逃げるの。文化祭に興味はない」

「だったら、契約しましょ」

 さすがに足を止め、ため息を付いて振り返る。

 言いたい事はいくらでもあるが、それは取りあえず我慢しよう。

「もう一度言う。文化祭に興味はないし、あんなのを書いてる時点で小物。相手にする必要もない」

「だから、契約」

 渡瀬さんは情。

 こちらは理屈。

 どちらも厄介この上ない。



 ひたひたと後を付いてくる真田さん。

 それを無視して部屋に入り、着替えを済ませて食堂に向かう。

 予想通り部屋の前で待っていたが、それも無視。

 相手にして良い事は無い。


 唐揚げを頬張っていると、書類がトレイの横へ滑ってきた。

「破格とは言わないけれど、報酬は出す」

「出さないでどうするの」

「友情のために、無償で。なんて言うかと思って」

「……契約ね」

 次に来るのは、多分もう一度渡瀬さん。

 その時に協力すれば、そういう話も出てくるだろう。

 相手が友人だろうと誰だろうと、仕事は仕事。

 それは厳格にしておかないと、いざという時に身の破滅を招く。

 過去、そういう人を何人も見てきた。



 結局書類にサイン。

 前金で半額を受け取り、改めて状況の説明を受ける。

 分かっているのは、「打倒文化祭」のポスター。

 それを貼ったらしい人物と、貼られた時間。

 学内。

 つまり生徒であるのは間違いないらしい。

「目星は付いてるの?」

「まだこれから」

「それと、文化祭がどうしたの?第一この程度の相手、本当に気にするまでもないわよ」

「気にする気にしないは、相手を特定してからでしょ」

 逆にたしなめられた。

 良く分からないが、これが普通の生徒の感覚なんだろうか。


 少し滅入りつつ中華スープを飲んでいると、小谷君が苦笑気味にやってきた。

「契約、済んだ?」

「済んだわよ。早く捕まえて、処分するわよ」

「そうも簡単にはいかないんだ」

「何が」

「この件は、元野さん達も関係している」

 関係。

 彼女達が首謀者という意味ではないだろう。

 一人、関わりそうな人間はいるが。



 場所をラウンジへ移動。

 紅茶を飲みつつ、事情を聞く。 

 どうやら元野さん達にもこの件が報告され、渡瀬さん主導で捜査が進められるという流れになったらしい。

「つまりだよ。結果を出す必要がある」

 真剣な顔で語る小谷君。

 元野さんは厳しい人間ではないし、私達に成果ばかりを求めはしない。

 人の成長をちゃんと見てくれるし、努力も理解してくれる。

 ただ、彼の言う事も分かりはする。


 私達もすでに2年。

 ぼんやりと、先輩の言うがままに動く時期はもう過ぎた。

 自分達の手で成果を残し、物事を完結するのもそろそろ必要。

 元野さん達に報告が言っているとなれば、余計に。

「それで、犯人の目処は」

「大体は付いてる。誰がというより、どういう連中かって意味で」

「続けて」

「打倒文化祭。それで困るのは誰か。もう少し言うと、混乱した時誰が対応に当たるか。その責任者は?」

 困るのは生徒、及び学校全体。

 対応に当たるのはガーディアンや警備員。

 責任者は、元野さんや校長。

 そしてポスターを貼ったのが生徒である以上、これは生徒間の話。

 となれば、元野さんへ恨みを持つか面子を潰そうとしている人間か。


 その認識は二人もあるようで、私の答えに黙って頷いた。

 この二人は知性派。

 もしかすると、相手についてもある程度は目処が付いているかも知れない。

「大丈夫かしら」

「少し調べて、相手を特定。捕まえて終わりでしょ。ガーディアンを少し動員してもいいのよね」

「構わないけど、相手はおそらく生徒会よ」

 やはり出てくるこの名前。

 ガーディアンは言うまでもなく、生徒会傘下。

 今回の仕事がガーディアンの権限から逸脱している以上、腰が引ける者もいるだろう。

 だとすれば、腰が引けない人間で行動すべき。




 男子寮に向かい、事情を説明。

 協力の確約を取り付ける。

「相手が分かったら教えてくれ。すぐに捕まえる」

 トンボでも捕まえるような口調で話す御剣君。

 人間性はともかく、戦闘能力は桁違い。

 後は彼に任せて、こちらは犯人の特定を急ぐとしよう。

「それとこれは、私達の問題。元野さん達の協力は仰がない」 

 ぽつりと呟く真田さん。

 それまで気楽にお茶を飲んでいた御剣君の表情が硬くなる。

「……元野さん達も知ってるって事か」

「ええ」

「まずいぞ、それは。どうする。どうしたらいい?」 

 途端に落ち着きが無くなり、ペットボトルを空にして自販機に走っていった。

 そしてペットボトルを持って来て、それもすぐに空にした。


 彼女達が犯人と聞かされた訳でも無いのに、この慌てよう。

 意味が分からない。

「どうしたの、急に」

「分かってないのか。これは大問題だぞ。絶対に結果を残さないと。いや、元野さん達が納得する結果を残さないと、ひどい目に遭う。ひどい目にだ」

「二回言わないで。それに、元野さんはそんな事しないでしょ」

「元野さんはしない。でも、する人はいる」

 ポイントは、元野さん達。の達。

 この場合挙げられるのは、彼女の仲間。

 雪野さん、木之本さん、浦田さん。

「遠野さん?」

「そうだ。あの人に言い訳は通じないぞ。少しでもミスがあって見ろ。地獄を見るぞ。地獄って、俺達のすぐ後ろにあるんだぞ」

 何を真剣に言ってるんだ。

 思わず振り返ったじゃない。



 落ち着き無く歩き回り出す御剣君。

 何もそこまでと思うし、遠野さんにしろ鬼ではない。

 と、思う。

「どうかしたの、あんた達」 

 何故か木刀を担ぎ現れる神代さん。

 御剣君がそれへ過敏に反応し、大きく構えて敵意を剥き出しにする。

「し、刺客だ」

「何言ってんの」

「だ、だったらどうして木刀なんて持ってるんだ」

「ポスターだよ」

 テーブルの上に置かれる木刀。

 ではなく、ポスター。


 広げてみると、文化祭の告知を告げる内容。

 どうやら私も、過敏になりすぎていたようだ。

「寮にも一枚貼るよう頼まれた。どこでも良いんだよね」

「……罠じゃないかしら」

 小声で呟く真田さん。

 神代さんは何がという顔で、彼女を見つめる。

「誰から受け取った、これ」

「総務局の誰か。名前までは知らない」

「水を掛けたら違う図柄が現れるとか、そういう事は無い?」

「さっきから、何言ってるの」

 なるほどと思い、事情を説明。

 彼女の協力も得る事にする。



「事情は分かったけど、こんなの誰も得しないでしょ」

「根拠は」

「自警局って、つまりはガーディアンじゃない。血の気の多い人もいるし、退学したって平気な人もいるんだよ。そんなの相手に戦いたいなんて思う?」

「それは理屈よ。常軌を逸した人間は、得てして極端に走りたがる。今回のように」

 冷静に語る真田さん。

 どちらの言い分も最も。

 ただポスター以外の証拠がない以上、こちらとしては行動のしようもない。

「で、肝心のチィは」

「いないわね」

「だったら解散しましょ。こんなの、下らない……」

 私の話が終わる前に現れる渡瀬さん。

 彼女も木刀を担ぎながらやってきた。

 今度は正真正銘の木刀を持って。


 それがテーブルの上へ置かれ、ペットボトルが添えられる。

「殴り込みにでも行くの」

 嫌そうな顔で尋ねる神代さん。

 外観は派手だが、性格は至って慎重かつ穏健。

 いわゆる真っ当な部類に属する。

「行かないよ。相手が分かれば行くけどね」

 揺るがない答え。

 ある意味清々しいとも言える。


 みんなで意見を出し合うが、結局は推測の域を出ない。

 それが間違っているとは思えないものの、裏付ける証拠は何も無い。

「やっぱり解散ね。文化祭当日に暴れた馬鹿を捕まえて、適当に絞れば分かるでしょ」

「その前に捕まえるよ」

「そうだ。そうしないと、地獄を見るぞ。地獄は本当にあるんだぞ」

 真顔で語る御剣君。

 もう、二人でやってくれないかな。




 それでも話が進展しないので、結局解散。

 男の子二人は男子寮へ帰り、真田さんも勉強をするといって部屋へ戻っていった。

「どこ行くの」

「部屋へ帰る。私も勉強しないと」

「冗談ばっかり。行くよ」

 何が冗談か知らないし、どこへ行くのかは言って欲しい。



 やってきたのは草薙高校正門前。

 すでに門は閉まっていて、隣の小さな通用門も閉まっている。

「あたし、寝たいんだけど」

「すぐ戻るから」

 そう言って、通用門から入って行く渡瀬さん。

 神代さんは文句を言いつつ、それでも彼女の後を追いかけた。

 二人は門の向こう側。

 今なら引き返しても気付かれないだろう。

「緒方さーん。早くー」

「来ないとひどいよ」

 ため息も漏れないな、これは。




 薄暗い通路。

 風に揺れる街路樹。

 明かりは街灯と月明かり。

 薄い影が頼りなく揺れ、葉擦れの音が時折届く。

 正直、この時点で地獄。

 泣きたくなってくる。

「浦田さんが言うには、悪い連中は夜活動するんだって」

「あたし達も夜活動してるよ」

「それもそうだね」

 軽く流す渡瀬さん。

 ひどいな、この子も。



 警備員の尋問を受けつつ、一般教棟内へ足を踏み入れる。

 ここはここで薄暗く、非常に気味が悪い。

 足音が廊下にこつこつ響き、窓には自分達の影が映る。 

 最悪としか言いようがないな、もう。

「あんた、元傭兵なんだろ。こういう事は慣れてるんじゃないの」

「傭兵をどう考えてるか知らないけど。夜中に学校へ忍び込む意味がないわよ。それに私は、情報を扱うのが主な仕事。こういう事はしないの、元々」

「意外と普通なんだね」

 意外は余計だ。


 薄暗い廊下を歩いていくが、成果は特になし。

 気味が悪いのと、時折巡回の警備員に会うくらいで。

「何も無いね」

「無くて結構。帰りましょ」

「私も夜に仕掛けてると思ったんだけどな」

「仮に仕掛けてるにしろ、それに出くわす可能性なんて皆無でしょ。仮に出くわしそうになっても、向こうは警戒してるから姿を隠す」

 喋った後黙ると、静寂がより一層強調される。

 自分の唾を飲み込む音が聞こえそうなくらいに。

 こんな夜中に何かをするなんて、正気の沙汰とは思えない。

「やっぱり何も無いね。帰ろうか」




 成果も何も無く、寮へ帰還。

 さすがに私も部屋へ戻る。

 お風呂に入って体を温め、軽くスキンケアの手入れをしてベッドに転がる。

 後はテレビでも見ながら眠るだけ。

 平穏で、何の憂いも無い日々。

 身に危険が及ぶ事もなく、神経をすり減らす必要もない。

 いつからだろうか、これが当たり前になったのは。


 草薙高校にやってきたのは去年から。

 潜入当初は神経を研ぎ澄ませていたし、そうする必要もあった。

 周りは敵にしか思えず、自分の居場所はどこにも無かった。

 それが今は、普通に草薙高校の生徒。

 その草薙高校のために行動をしている自分が当たり前にいる。


 金銭的な面を考えれば、傭兵の方が圧倒的に恵まれていた。

 ただ生活の面。精神的な部分に関しては、今の方が気楽。

 同じ場所にずっと住み続け、敵に怯える事もなく、庇護も得られる。

 こんな生活があったんだと、今更ながらに気付かされた。

 だったら傭兵の時の自分は何だったのか。

 そもそもどうして、あんな生活を送っていたんだろうか。


 普通に進学して、普通の学校生活を送る選択肢もあった。

 傭兵にならなければならない理由は無かった。

 ただそう考えると、この学校に留まる理由もなかったはずだ。

 だけど今の自分は、草薙高校の生徒。

 あの混乱の後も、ここに残り続けている。


 今更傭兵に戻るつもりはないし、それこそ理由が無い。

 だけど、ここに留まる理由も見いだせない。

 気付けば流され、それに慣れていた自分。

 私とは一体何なのか。

 答えのでない質問が、頭の中で繰り返される。




 下らない事を考えてしまったせいか寝付きが悪く、朝から気分は最悪。

 授業も殆ど頭に入らず、気付けば昼休み。

 渡瀬さんが新しいポスターを持って来て何か言っているが、それにも興味が湧いてこない。

「どうでもいいじゃない。適当に脅して回れば、犯人も出てくるでしょ」

 投げやりに答え、ポテトサラダを口へ運ぶ。

 たかがポスター。

 たわいもないいたずら。 

 大した事を出来る連中とは思えず、わざわざ犯人を捜すまでもない。

「どうでも良くないよ。文化祭が台無しになる」

 そこにこだわる渡瀬さん。

 ただ私には文化祭のイメージはいまいち湧いてこないし、やはりどうでも良い。

 言ってみれば、たかが文化祭。

 それがないからといって、この世が終わる訳でもない。


 私の気持ちが伝わったのか、少し真剣な表情になる渡瀬さん。

 ちょっと素っ気なさ過ぎたか。

「去年の文化祭にはいた?」

「ええ」

 彼女達と出会ってはいなかったが、すでに草薙高校には潜入していた。

 またこの学校以外の文化祭も、経験がない訳ではない。


 模擬店があって、イベントがあって、生徒がはしゃいでいる。

 楽しいには楽しいが、それまでの話。

 特別に何かがあるような物とも思えない。

「自分の学校だと、多分考え方が違うと思うよ」

「そうかしら」

「そうだよ」

 常に言い切るな、この子は。

 根拠もなしに。




 会合は不調のまま、放課後を迎える。

 犯人捜しの前に、自警局としての仕事がある。

 いつものように卓上端末の前へ座り、いつも通りの作業をこなす。

 気付けばこれが当たり前の毎日。

 ずっと昔から、こうしていた気もする。

「頑張ってるわね」

 私の肩を後ろから揉んでくる丹下さん。

 そう言えばこの人は、渡瀬さんの中等部からの先輩。

 あの子に関しても詳しいはずだ。


「済みません。渡瀬さんなんですけど。昔から、ああなんですか」

「ああ、とは?」

「突っ走るというか、我が道を行くみたいな所です」

「昔よりは収まってるとは思うけど。確かにそうね」

 あっさりと認める丹下さん。

 ただ彼女が言うように、私が知り合った頃と比べてもかなり落ち着きは出ている。

 雪野さんだったらもう相手をなぎ倒して、別な獲物を探してる所だろう。

「それともう一つ。学校への思い入れって、どの程度ありますか」

「言葉にすると難しいわね。ただ、そこは理屈ではないと思う」

「と、言いますと」

「考える前に決まってるって事。言うなれば無条件で行動するのが確定してるわね」

 丹下さんはどちらかと言えば穏健で、無難なタイプ。

 その人ですら、この発言。

 だとすれば、渡瀬さんが短慮に走りがちなのも頷ける。



 なるほどと思い頷いていると、目の前に影が差した。

「順調かしら」

 丹下さん以上に落ち着いた口調で語りかけてくる北川さん。

 張り詰めた空気と厳しい眼差し。

 自然とこちらも姿勢を正す。

「北川さん、脅さないで」

「私は何も。ただ聞いただけじゃない」

「威圧感があるのよ。ねえ」

 ねえと言われて、はいと答えられる訳もない。

 意外と天然だな、この人は。

「私の事は良いの。それより、渡瀬さん達はどう」

「どうと申しますと」

「ポスターを貼った犯人を捜すと言っていたでしょ。その進捗状況は?」

 それこそスケジュールを示しなさいとでも言いそうな雰囲気。

 知らないと告げ、深く関与していないとも付け加える。


 北川さんは私の話を聞き終え、机に手を付いて顔を覗き込んできた。

「間違っても短慮に走らないでね」

「渡瀬さんに言ってもらえますか。それと、御剣君」

「御剣君が、どうしたの」

「雪野さん達からのプレッシャーを恐れているようです」

 正確には遠野さんからだが、そこは禁句。

 迂闊に口を滑らせては、どこからどう伝わるか知れた物では無い。

「雪野さん達には私から言っておく」

「い、いえ。それは結構です。余計彼女達に火がつきそうな気もするので」

「そういう事もあるのかしらね」

 簡単に認める北川さん。

 丹下さんは笑うだけで、特に何かを言う素振りはない。

「良いんですか、このままで」

「今まで問題は無かったんだから、今回も大丈夫よ」

「問題がなかった?丹下さん、あなた何言ってるの?」

 今の一言が、北川さんのスイッチを入れてしまった様子。 

 ここは退散した方が良さそうだ。




 噂をすればではないが、廊下を歩いていると元野さんが反対側から歩いてきた。

 その左右には雪野さんと遠野さん。

 最強の布陣とも言えるし、今の私からすれば最悪とも言える。


 挨拶だけして通り過ぎようとしたが、遠野さんがそっと肩に手を置いてきた。

「あの、なにか」

「期待してるわよ」

「え、何を」

 それには笑って答えない遠野さん。

 触れられた肩から伝わる冷気。

 体重が10倍になって、床にめり込んでいきそうな感覚。

 これが、御剣君の言っていた事か。

「私は協力するだけで、基本的には渡瀬さん主導ですから」

「何の話?」

「例のポスター。彼女達が犯人を捜して、懲らしめてくれるんですって」

 勝手に話を作り上げていく遠野さん。

 そこまで言われては、こちらはその成果を出すより仕方ない。

 なんだか、胃薬でも欲しくなってきた。


 雪野さんは小さく頷き、私の肩に手を触れた。

 遠野さんのような圧力は何も感じず、親しみだけが伝わってくる。

「頑張って。何かあれば、私も協力するから」

「ありがとうございます」

「そもそも文化祭を打倒するとか言ってるけど、そんな事出来る?この規模だよ」

 そう言って、床を指さす雪野さん。

 つまりは、草薙高校の規模を示しているのだろう。


 敷地面積が半分になったとはいえ、依然広大。

 建物の数も、大規模な物だけで10はある。

 イベントはその全ての箇所で行われ、動員される人数も相当になる。

 それを打倒するとなれば、かなりのエネルギーと能力が必要。

 だからこそあのポスターは、単なる悪戯。

 仮に実行されても、小さな花火で終わる気がする。



 それまでにこにことしていた元野さんが私の手を取り、じっと目を見つめてきた。

 遠野さんとはまた違う、透き通った眼差し。

 穏やかだが、人の心の奥を見通すような。

「分かってるだろうけど、無理はしないで。私の体面とか、そういう事はどうでもいいから」

「ですが」

「誰かが暴れたくらいで傷付く程、柔な立場でもないの。それだけの実績を私達は積み上げてきてる。私達の事より、自分達の事をまずは考えて」 

 思わず顔が熱くなり、黙ってその言葉に頷き返す。

 元野さんは最後ににこりと笑い、私の前から去っていった。




 格の違いというのだろうか。

 根本的に、何もかもが違っていた。

 こうなると手の上で踊らされている所の話ではなく、私が存在出来ているのも彼女がいるからなんて思いそうになってくる。

「どうかした」

 怪訝そうに私を見つめる渡瀬さん。

 いつの間に来てたんだ。

「どうもしない。それで、目星は付いた?」

「生徒会なのは分かったけど、ガードが堅くて。聞いて話すような性質でもないし」

「あなたは素人だから」

「緒方さんはプロなの?」

 プロとは言わないが、元プロくらいは名乗って良いと思う。

 それに一応は契約を交わした立場。

 何もしないのも気が引ける。



 怪しいと目された人物を教棟の裏へ呼び出し、話を聞く。

 そっと身を寄せて、背中に手を回し、耳元にささやきかけながら。

 当然向こうから伸びてくる手は巧妙にかわし、触らせはしない。

 そういう事がしたいなら、お金を払って見せに行けばいい。

「ねえ。あなたって普段どんな仕事してるの?」

「め、名簿の管理だよ」

 随分枯れた仕事だな。

 ただ、だからこそという部分もある。


 頬から首筋に掛けて指を這わせ、改めて耳元に息を吹きかける。

「最近、忙しい?」

「ん、ああ。転校してくる生徒が多くてね」

「へぇ」

 少し甲高い声。

 興味を持ったというサインを相手に与える。

「ただ、あまり良い生徒ばかりじゃないよ」

「どういう意味?」

「傭兵って言うのかな。学校外生徒が多いから」

 予想通りの答え。

 データの閲覧は可能で、絞り込むのも容易。

 ただいわゆる差別を無くすため、学校外生徒かどうかまでは記載されていない。

 いっぽうこの男はより上位のデータを管理していて、身元も把握している。

 後はそのデータを手に入れるだけだ。



 ハッキングも良いが、手間が掛かるしリスクも高い。

 何より、相手が持ってくるならそれを見るだけで済む。

「……名簿」

 平坦な声を出す渡瀬さん。

 どうして手に入れたかまでは尋ねてこない。

 人の善意を信じるタイプなので、不正な手法で入手したとは分かってないのかも知れない。

「どうも、学校外生徒みたい」

「悪い人ばかりじゃないよ」

「良い人ばかりでもないわよ」

 学校外生徒が何たるかは、自分が一番よく分かっている。


 彼女は舞地さん達を身近に見てきたので、学校外生徒に大して良い印象を抱いている。

 ただ、彼女達は例外。

 能力も人間としても優れた人達で、そもそも学校外生徒でなくても普通に過ごせたはず。

 学校を転々とするしかなかった者とは、本質的に異なる。

「この中にポスターを貼った人間がいるの?」

「主犯か教唆か共謀かは知らないけど、関わった人間はいるでしょ。私は現役じゃないから、誰がどういう人間かは分からないけど」

「分かった。ちょっと聞いてみる」


 彼女に呼ばれてやってきたのは真田さん。

 人を見る目に優れていると聞いた事は無いが、その代わりに分厚い書類の束を机の上に置いてきた。

「最近学内でマークしてる生徒の資料。その名簿と合致する人間がいれば、ほぼ特定出来るはず」

「こんなデータ、自警局にあった?」

「個人的な資料よ」

 どういう資料かは知らないが、便利は便利。

 そういえば、内偵が得意とか誰かが言ってたな。


 書類と名簿のリストを付き合わせ、数名をピックアップ。

 その中でも露骨に怪しい人間を抜き出し、情報局に問い合わせる。

「……お答え出来ませんって言われたわ」

「言うでしょうね。私達は一介のガーディアン。情報を要求する権限が無い」

「どうするの」

「ある人を呼べばいいわ」


 次に現れたのは小谷君。

 初めから、全員集めたらどうだ。

「……情報局、ね。……総務課課長補佐、小谷です。今からお送りする生徒のデータを全てお願いします。……ええ、自警局としての要請です。……はい、よろしく」

 あっさり了承される要請。

 彼女達も自警局所属だが、自警局としての要請ですと言える程の立場ではない。

 それだけの権限と自信。

 実績を、この男の子は持っている訳か。

「データが来たね。分析は任せるよ」

 卓上端末に表示される生徒のプロフィール。

 加えて所属するグループ。

 それと真田さんの資料を重ね合わせ、周辺の状況を探る。


 首謀者は総務局の生徒。

 何人かの傭兵が雇われ、自警局に批判的な生徒が数人参加。

 具体的な情報は掴めないが、この辺が犯行グループなのは間違いない。

「捕まえてくればいいの?」

 警棒を握りながら尋ねてくる渡瀬さん。

 そうだと言いたいが、それは考えのない行動。

 雪野さん的な行動とも言える。

「まずは証拠。その後で捕まえる」

 冷ややかに告げる真田さん。

 地球が二つに割れても、平気でお茶を飲みそうなタイプだな。



 証拠、か。

「大切だぞ、それは。根拠もなしに捕まえてみろ。遠野さんが何を言うと思う」

 いきなり出てきて、この台詞。

 どれだけ遠野さんが怖いんだ。

「だったらどうするの。盗聴でもする訳?」

「それは任せる。俺は捕まえる」

 都合の良い事ばかり言って。

 そう言えば、もう一人が顔を見せてないな。

「神代さんは」

「ナオは元野さん達を手伝ってる。仕事だって」

 警棒を磨きながら答える渡瀬さん。

 すると何か。

 私達はずっと遊んでるという事か。




 まずは真田さんに身辺調査を改めて依頼。

 小谷君には情報局と自警局に情報を要求してもらう。

「俺はどうする」

「ポスターの犯人を捜して回って。分かりやすくね」

「陽動か、任せろ」

 そう言って飛び出していく御剣君。

 粗暴に見えるが、雪野さん達と常日頃から行動してる人間。

 この辺の飲み込みは早い。

「私は?」

「お茶を飲んでなさい」

 不満顔で見つめてくる渡瀬さん。

 しかしここで彼女を野放しにしたら、それこそ雪野さん状態。

 むしろ彼女は最後まで囲い込み、成果だけを持って行ってもらうに限る。


 もしかしてこっそり逃げ出すかと思ったが、意外に大人しくしている渡瀬さん。

 彼女も高校2年生。

 みんなが言うように、落ち着き始める時期なのかも知れない。


 とんとんと鳴り出す机。 

 いや。机自体が音を出す訳はない。

 鳴っているのは、それを叩いているから。

 叩いているのは渡瀬さん。

 それで、誰が落ち着きだしたんだろうか。

「静かにして」

「我慢出来ないの」

「何が」

「何もかもが」 

 返事のしようもない答え。

 しかし、ここに閉じこめておくのも限界か。




 彼女を伴い、始めにポスターが貼られた場所へとやってくる。

 私からすれば、たかがポスター。

 たかが文化祭。

 今回の連中にしろ、多少の騒乱を起こしてすぐに捕まるだけ。

 それが文化祭がその前かの違いでしかない。

「前も言ったけど、文化祭は大切だよ」

 私の心を見透かしたような台詞。

 何も不必要とは言わないが、大切とまでは思ってないのも確かではある。


 大勢の人が準備をして、その日のために努力をして。

 当日は華やかさと楽しさだけで構成される一日。 

 それが良い事なのは理解している。

 これといった実感も感慨も。

 何より、思い出もないが。

「そうかも知れないけど。ここだけの話。証拠も何も私からすれば関係無いのよね。リストアップした連中を捕まえて、適当に脅せば済む話でしょ」

「対処療法的には」

 意外と冷静な答え。

 むしろ、自分の雪野さん的発想が恥ずかしくなる。

「だからって、その連中を結局は捕まえる訳じゃない。どう違うの」

「順序立てて、規則通りに、手順を踏んで捕まえる」

「そんなものかしら」

「私も時間が掛かるなとは思う。でも、それはそれで大切だよ」

 心の中でもそんな物かしらと思い、行き交う生徒達をぼんやりと眺める。


 すでに授業は終わり、今は放課後。

 それでも大勢の生徒が学校に残り、生徒会活動やクラブ活動に励んでいる。

 他校ではあまり見られない光景。

 生徒の自治という制度が、彼女のような発想を生み出すのかも知れない。

「自治も大切なの?」

「それは私も、よく分かってない。自治とは何かと聞かれて、理屈は答えられても実際何かは難しいから」

「あなた、中学校から草薙グループなんでしょ」

「私は北地区。自治がそれ程は根付いてないから」

 淡泊に答える渡瀬さん。

 根付いてない学校出身の彼女ですら、この熱意。

 根付いていたらどうなるのかは、あまり想像をしたくない。

「それこそ私には難しいわ。文化祭も自治も、何もかもが」

「その内分かるよ」

「分かる内に卒業するんじゃなくて」

「大丈夫」

 根拠を言って欲しい。




 数日後。

 証拠が集まり、候補者を全員特定。

 確証が得られた者から個別に接触をする。


「俺が、どうして」

 まずは否定をされる。

 次に集めた証拠を突きつける。

「捏造だ」

 言葉は違うが、内容は毎回同じ。

 さらに明確な証拠。

 写真や録画に録音、メールのコピーを突きつける。

「いや。俺はそうじゃなくて。違うんだ。俺は騙されて」

 そして言い訳。

 すでに口調も態度も弱く、ほぼ自白したような物。

 リストの名前にチェックを入れ、残りの生徒数を確認。

 この調子なら、今日中に方が付くだろう。



 初めてみれば簡単で、ただこんな手順を踏まなくても拉致して軽く拷問すれば同じ結果が得られると思う。

 ガーディアン的に。草薙高校的にはそういかなくても、傭兵的にはそう考えてしまう。

「面倒そうって顔ね」

 リストを眺めながら呟く真田さん。

 実際面倒なので仕方ない。

「証拠がなければ、連中が言うように捏造と同じ。力尽くで言わせても意味はないわ」

「言う言葉が同じだとしても?」

「ガーディアンでなければ、それで通用するでしょうね。もしくは、草薙高校でなければ」

 その言葉に肩をすくめ、積み上げれた書類の束を見つめる。

 この中で実際に使用したのは、表層のごく一部。

 中には徹夜で調べ上げたデータもあるが、この調子だとそれは使わないで終わりそうだ。

「気持ちは分かるけれど、このプロセスは重要よ。相手に後から反論されないためにもね」

「反論出来ないくらい痛めつけるのは?」

「浦田さんは、そういうのが好きだと思う」

 この考えは、二度と口にしないでおこう。




 生徒会の終業時間前にリストアップされた生徒全員と接触。

 同時に全員の自白も得て、煩わしかった手続きもようやく終わる。

「後はレポートを作成。これは、私がやっておくわ。みんな、お疲れ様」

 書類の山越しに声を掛けてくる真田さん。

 さすがにそこまでは付き合いきれず、真っ先に部屋を出る。


 廊下で、熊みたいな大きい伸びをする御剣君。

 この子の行き方や行動には合わない仕事の気もするが、それ程不満を表してもいない。

「面倒だとは思わなかったの?」

「殴って終わせるのは、確かに簡単だ。でもそれは、後で面倒になる」

「相手が後から意見を翻すから?」

「それならもう一度殴れば良いだけだ。さてと、肉でも食うか」

 かなり馬鹿げた言葉を残して、足早に掛けていく御剣君。

 隣にいた渡瀬さんはくすりと笑い、肩をすくめている神代さんの腕に触れた。

「私達も、ご飯に行こうか」

「真田さんはどうするの」

「ハンバーガーでも買って、戻ってくればいいよ。さっきの連中が戻ってこないとも限らないしね」

 愛らしい笑顔の奥に見える、鋭い眼光。

 この辺りはさすがとしか言いようがない。

「私は帰るわよ。もう付き合いきれない」

「お疲れ様。また明日ね」

「あたしも帰りたいよ」

「今日は徹夜よ」

 朗らかに笑う渡瀬さんと、肩を落とす神代さん。

 だけど何処か楽しそうな二人。

 私には眩しく、少しの距離を感じるような。




 翌朝。

 いまいち寝付きが悪く、結果寝起きは最悪。

 重い気分のまま、それでも真っ先に自警局へと向かう。

 予想通り元野さん達が勢揃い。

 彼女達は真田さんから受け取ったらしい書類に視線を落としていたが、私を見つけると柔らかく微笑んできた。

 ただ。柔らかく微笑んだのは元野さんだけで、隣にいた遠野さんは数度温度が低い気もする。

「ご苦労様。どうもありがとう」

 ねぎらいの言葉を掛けてくれる元野さん。

 それにみんなが和んだのもつかの間。

「80点」

 ぽつりと呟く遠野さん。

 めまいとは、多分こういう時に感じるんだろう。

「えと、その点数は一体」

「聞きたい?」

「いえ、結構です。この件は、これで終わりですか」

「ええ。手順さえ踏めば、相手が誰だろうと憶する事は無い。生徒会でも学校でも、誰でもね」

 にこりと笑う丹下さん。

 それに笑顔で応える渡瀬さん。

 彼女が形式にこだわったのは、ここにあったのか。


 ただ時間と手間が掛かったのも確か。

 遠野さんが80点と評したのも頷ける。

 無難にまとまったとはいえ、雪野さん的手法の方が迅速かつ滞り無く処理出来た気もする。




 疑問を抱きつつ、文化祭当日を迎える。

 綺麗に飾り付けられた教室。

 華やかな服装。

 笑顔と笑い声が重なり合い、学校全体を幸せが包み込むような空気。

 しかしそれへ浸りきる事も出来ず、真田さんの言葉に生返事で答える。

「つまらなそうだね」

 ゴム風船で遊びながら声を掛けてくる神代さん。

 この中では草薙グループ以外からの出身者。 

 学校への思い入れは、渡瀬さん達とは違うはず。

 それでも普段の彼女から、そういう部分が垣間見える事は無い。

「慣れてないから、こういう事に」

「経験はあるんでしょ、文化祭の」

「渡り歩いてれば、昨日も文化祭、今日も文化祭、明日も文化祭って時もあったわ」

「退屈だよね、やる事が無いと」

 当たり前の話。

 改めて指摘されるような事でも無い。


「ただ、さ。だから良いんじゃないの」

「何が」

「する事がないから。今のこの場の空気を楽しめば。それが出来ないなんて、意外と真面目なんだね」

 この人に言われたくはないが、確かにその通り。

 文化祭を冷ややかに見ているというよりは、常に警戒をしていたような気もする。

 何も考えず楽しむ意識は、少なくとも持ってはいなかった。

「でも私達はガーディアンでしょ」

「たまには羽目を外すのも必要なんだって」

 にこりと笑う渡瀬さん。

 自分で言うかと思ったが、きっとそうなんだろう。


 彼女が事前に片付けたかったのは、何も当日に遊ぶためではない。

 何の憂いも無くこの時を過ごせるようにしたかったから。

 自分も、今この場にいるみんなも、この学校にいる生徒達もが。

 それがきっと、学校への思いなんだろう。

 それが分かる私も、少しはこの学校への愛着が芽生えてきているのだろうか。




 レポート作成のために学校へ残った彼女達。

 その場から立ち去った時に感じた微かな寂しさは、彼女達への思慕が私にもあるという事なのだろうか。






                                  

                         了








     エピソード 41 あとがき




緒方さんは、元々請われて草薙高校に来た生徒。

地元でもなければ、どうしても草薙高校に入学したいと思っていた訳ではありません。

草薙高校の知名度は知ってましたが、そういう学校もあるんだろうくらいの意識。

ただ長く通う内に、自分でも気付かないほどの愛着を感じてたんでしょうね。


それでも元が傭兵。

どちらかというと、馴れ合うのは苦手なタイプ。

心の壁が高いというか、固い方。

また何かをするには報酬を受け取るべしといった、傭兵時代の感覚が抜けきれないようです。


この小説に登場するキャラクターの中では、ケイに次ぐ現実主義者かも。

感情やその時の状況に流されず、冷静に事態の推移を観察出来ます。

もしくは、自分に取っ手の利害で物事を判断しています。

その辺が他の人から見ると、冷たかったり独善的に感じられるのかも知れません。


とはいえなんだかんだと言っても、現2年の仲間とは良い関係。

またそれも悪く無いと、彼女本人も思っているようです。

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