37-8
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柔らかくて暖かくて。
幸せが形になって自分を包み込んでいるような気分。
思わず笑いがこみ上げ、両手を広げてそれに自分からも抱きついていく。
「きゃっ」
突然の悲鳴に目を覚まし、口元を手の甲で拭う。
何なのよ、一体。
「つ、冷たい」
人を雪女みたいな目で見てくる神代さん。
冷たいって何よ、冷たいって。
……ああ、この事か。
口元を改めてティッシュで拭き、周りを見渡す。
見慣れない高そうな家具と見慣れない毛布。
昨日は結局帰らず、マンションに泊まったんだっけ。
「もう朝か。少し走ってくる」
「あたしは、シャワーを浴びる」
「走ってきたの?」
「そうそう」
後ろから脇腹を両方掴み、悲鳴を上げさせて着替えを探す。
よく考えたら、服も持ってきてなかったな。
「まあいいや。とにかく外へ行ってくるから、みんなのご飯の用意でもしておいて。何かあったら、買ってくる」
「毎朝走ってるの?」
少し感心したような視線を向けてくる神代さん。
それに気分を良くし、胸を張る。
「毎日、よだれを垂らしてるの」
とりあえず、もう一度寝てもらおうか。
朝の冷えた、清澄な空気。
自分の靴音が路地に響き、新聞配達のスクーターが通り過ぎていく。
茶色の犬を連れた老夫婦。
足早に急ぐスーツ姿のサラリーマン。
私が見ている人はいつも違うかも知れないが、その光景はいつも同じ。
それに自然と気持ちが落ち着き、心が澄んでいく。
朝の冷たい風に身も心も引き締めつつ、軽快な足取りで歩いていく。
そのまま少し足を伸ばして、学校へと向かってみる。
卒業式は明日で、ロックアウトの件も多少気になる。
もしかすると、夜の内に何かされているのかもしれない。
塀沿いに歩いていくと、トラックのような影が行く手に現れる。
昨日のトラックにしてはかなり大きく、トレーラーのコンテナくらいのサイズ。
確かに正門を塞ぐにはもってこいの大きさ。
それに腹を立てつつ近付いていくと、思わず言葉を失った。
正門の前に置かれたコンテナ。
トラックの部分はどこにも無く、正門の地面に直接コンテナが並べられている。
当たり前だが私一人で動かせる訳は無く、こればかりは人間が何人いようと無理な話。
コンテナとコンテナの間はかろうじて人一人が通れるくらいの隙間が作られ、そこを抜けるとようやく正門。
ただし門は今日も閉まっていて、手前にはバリケードも置いてある。
バリケードで左側は塞がれ、自然と詰め所側に誘導されるようになっている。
コンテナの下は当然くぐれず、上を通ろうにも見上げんばかりの高さ。
ふつふつと怒りがこみ上げるが、相手がコンテナではどうしようもない。
「水」
マンションへ戻り、ぶっきらぼうにそう告げて玄関にしゃがみ込む。
ちょうど私と目が合った真田さんが、すぐにグラスで運んできてくれた。
「どこまで行ったんですか」
「学校の周りを一周した」
大きく喘ぎ、とにかく今は水を飲む。
それも高等部だけならまだしも、中等部との間の路地が封鎖されていて中等部も含めて一周する羽目になった。
「全部の門にコンテナが置いてあった」
「全部って、見て回ったんですか」
「回った」
「分かりました。後は元野さん達と相談しますので、シャワーを浴びてきて下さい」
ごく冷静に話す真田さん。
私の憤りとはまるで違う態度だが、それを彼女に求める必要は無い。
私は怒っている。
今はそれだけで十分だ。
シャワーを浴びて気持は良くなったが、気分は最悪なまま。
TVを付けると、朝の情報番組がいつものように草薙高校の話題を扱っていた。
とりとめも無い、高校生が無意味に暴れているという内容。
もう電話をする気にもなれず、床に寝転び目を閉じる。
今はとにかく体を休め、回復を待つとしよう。
「ご飯出来たけど」
控えめに声を掛けてくる神代さん。
一旦体だけ起こし、テーブルに並んだ食事を見てお茶だけを飲む。
「食べないの?」
「それどころじゃない」
びくりとしてキッチンへ消える神代さん。
彼女を脅しても仕方無いが、とにかく今は感情のコントロールもままならない。
「どかします?」
遠慮がちに話しかけてくる緒方さん。
どかすと言ってもコンテナの数は多く、位置としては学校の敷地内。
機材の手配も含め、そう簡単には行かないだろう。
「いや、いい。私も少し考える」
「お茶、どうぞ」
空になった湯飲みへお茶を注ぐ渡瀬さん。
どうもみんなに気を遣わせているようで、少し反省をする。
「ごめん。ちょっといらいらしててさ」
頭を下げ、改めてお茶を飲む。
微かな苦味と、鼻に抜けていく爽やかな風味。
それが心に響き、少しだが落ち着きを取り戻す。
「少し寝る。さすがに疲れた」
「ご飯は?」
「おにぎりだけ後で食べる」
そういって床に寝転び、近くにあった毛布を体に掛ける。
何しろ朝からかなりの距離を走り、しかも下らない怒りを爆発させ続けた。
一回眠りに付いて、リセットし直した方がいいだろう。
半分寝ているところに、モトちゃん達の会話が聞こえる。
「重機の手配は木之本君に……。運転する人はいる」
「場所は矢加部さんに相談して……」
「寮に連絡……」
「おにぎりは小さめ……」
最後の一言で、ようやく意識が戻ってくる。
「起きた?」
笑い気味に声を掛けてくるモトちゃん。
それに頷き、毛布を畳んでTVを見る。
今週は晴れとの予報。
卒業シーズンに涙雨とはならないようですと、キャスターが笑顔で話している。
雨も風情はあるが、実際降られればやはり厄介。
晴れの舞台というくらいだし、晴れた方がいいのは間違いない。
「木之本君は?昨日から見ないけど」
「ヒカル君と何かやってるみたいよ」
「ヒカルと?」
この時点で不吉な予感ではないが、あまり良いイメージが湧いてこない。
いや。彼自身は決して悪い事はしない人。
ただ、あまり理に叶った事をしない人でもある。
「今、どこに」
「寮でやってると思う。重機の件もあるから様子を見てきて」
という訳で、朝から男子寮へとやってくる。
普段なら学校へ行く生徒達でごった返す時間だが、玄関前に生徒の姿はまばら。
中に入っても、パジャマ姿や下着姿の生徒がだるそうにうろつきまわっているだけ。
女子寮だとこういう光景は華やかに感じるが、男子寮ではむさくるしいだけだな。
そこに現れる、白いシャツにジーンズ姿のショウ。
普通と言えば普通の恰好だが、その辺は周囲との差が如実に表れる。
少なくとも、私の中では。
「木之本君は追い出されなかったの?」
「期限はまだだろ」
「ああ、そうか」
私達が少し焦り過ぎていたらしい。
ただ寮にいるよりは快適な部分もあり、何より不用意な衝突は避けられると思う。
昨日の紙袋の一件が、その最たる例だろう。
部屋の前から端末でコール。
すぐに返事がある。
「……開いてるって」
「開けない方が良いと思うぞ」
そう言いつつ、ドアを開けるショウ。
彼に続いてドアをくぐり、靴を脱いで部屋へと上がる。
綺麗に片付いた、物の無い部屋。
以前は工作道具が壁に掛かり、床にも何かのパーツや模型が転がっていた。
だけど今は、布団が部屋の隅においてあるだけ。
後は、カーテンのような布が部屋の真ん中に畳んである。
「おはよう」
多少疲れ気味の顔で挨拶をしてくる木之本君。
彼の正面でミシンを操っていたヒカルは、満面の笑みを浮かべて挨拶をしてくる。
「学校の門に、コンテナが置かれてた。場合によっては重機で動かすから、手配の準備をしておいてだって」
「分かった。それはやっておく」
「ありがとう。で、こっちは何」
「横断幕」
そのラフ画らしいスケッチを見せてくるヒカル。
絵は何点かあり、正確には建物が何パターンも書いてある。
寮、正門、教棟、講堂内。
「……卒業式に、こんなのやる習慣はないでしょ」
「やってやれない事は無いよ」
それはそうだ。
などと納得している場合じゃない。
「ちょっと待って。さすがに卒業式では問題でしょ。……謝恩会。謝恩会なら良いと思う」
「なら、そっちの方向で」
あっさりと同意するヒカル。
木之本君は露骨にほっとした顔で、ミシンを解体し始めた。
「寮の前で振るとか初めは言っててね。どうにか、横断幕にまで落ち着いたんだ」
「まあ、悪くは無い考えなんだろうけど」
「気持はね、気持は」
ため息を付き、解体したミシンをケースへ収める木之本君。
ヒカルは横断幕を広げ、そのもう片端をショウへ渡した。
部屋の左右へ広がる二人。
現れる文字。
特におかしな事は書いていなく、謝恩会でなら問題は無いだろう。
何のためにこれを作ったのかという疑問は永遠に残るが。
ただそれは、手伝わされた木之本君が一番思ってる事か。
「コンテナって、簡単に動かせる?」
「結構手間だと思う。それと置き方によっては、大きな重機が必要だからね。時間も機材も場所もいるよ」
「だから夜の内に置いたのか」
改めて怒りがこみ上げ、拳を固く握り締める。
しかしそうなると、車や人の往来が激しい正門のコンテナの移動は難しそう。
北門東門は、まだ可能。
西門は道路を封鎖してあるので確認出来なかったが、もしかするとそちらから生徒を入れるつもりかもしれない。
「学校に行こう」
「またコンテナ?」
「いや。西門を見に行く。……横断幕も持っていく気?」
「いつ追い出されるか分からないからね」
そういって横断幕を抱える木之本君。
こういう人の良さが、横断幕を作り上げたと言う訳か。
サラリーマンやOL、他校の生徒達を車の窓から眺めながら正門へとやってくる。
朝見た時も大きいと思ったが、改めて見ると威圧感すら漂っている。
歩道や道路にはみ出してはいないが異様な光景なのは間違いなく、正門前を通り過ぎる人達は怪訝そうな顔でコンテナを見つめる。
「どかせそう?」
「出来なくは無いけど、時間が掛かるよ。専用のクレーンとトレーラーで作業する必要があるし、正門前の道をふさぐ必要があると思う」
「分かった。ショウ、西門側へお願い」
一旦正門は留保。次の目的地である西へと向かう。
すぐに塀が途切れ、道路を挟んで塀が現れる。
道路の向こう側は中等部で、手前が高等部。
その間を道路が縦断をしていて、今は立て看板が置かれている。
「工事中。通行止め。草薙高校。……私有地だったんだ、ここ」
ただ、良く考えればそれ程不思議でもない話。
東と西は学校の土地。
その間を利用する理由は大抵の人にはないし、もっと広い道路は他にもある。
実際ここを使っているのは、業者や職員くらいだろう。
「看板をどかすから、門の前まで行って」
「よくやるよ」
げらげら笑ったケイを車の外へ押し出し、看板をどかさせる。
これ自体は軽い物らしく、不満そうな彼が雑に扱っても簡単に脇へどいた。
「通っていいのか?」
「私の車じゃないから大丈夫」
「この車の所有者は困らないのか」
そう言いつつ、ケイが乗り込んだのを確認して車を走らせるショウ。
左右の塀から木々がせり出しアーチ状になっている道路。
少し趣があって、木漏れ日が優しく行く手に降り注ぐ。
今まで何年も通ってきたが、こんな場所だとは全然知らなかった。
ある意味、正門よりもこちらの方が卒業式の雰囲気には合っているかもしれない。
「コンテナは無いな」
そう言って、ギアをバックに入れるショウ。
コンテナは置いてないが、警備員と職員が一斉にこちらへ視線を向けてきた。
「……おい、後ろから来たぞ」
鼻で笑うケイ。
ナビの映像を確認すると、軽トラックがが列を成して後ろからやってきた。
「前に出るしかないな。……一応、身元は隠すか」
さっきの横断幕を、後ろ側の窓ガラスに貼り付けるケイ。
「卒業」という文字が外へ向けられ、挑発としか思えない。
「わざとじゃないぞ。これよりはましだろ」
彼が指を差した、シートで丸まっている部分。
そこには、「塩田さん」という文字がある。
「前からも来たよ」
ため息混じりに呟く木之本君。
私にも、黒塗りの高級車がはっきり見える。
すかさず横断幕を引っ張り、今度はフロントガラスを覆い隠す。
「運転出来る?」
「どうにか、透けて見える」
目を細め、横断幕を睨むショウ。
私には、「塩田さん」と言う文字の「塩」の部分が見えている。
「進退窮まったな」
人事の様に呟くケイ。
しかしここで捕まれば、退学させられるには十分な内容。
何より塩田さんにも迷惑は掛かるはず。
「どうする?」
「どっちかが避けるだろ」
「言い切れる?」
「たまには、夢見がちな事を言いたいんだ」
彼の祈りが通じたのか、それとも相手が私達の不審な行動に危険を感じたのか。
前方から来ていた黒塗りの車が下がりだした。
後ろから来ていた軽トラックは、西門の前で停止。
後ろには下がれないが、前には出られる。
「刺激しないでよ」
「十分刺激してるよ」
苦笑気味に呟く木之本君。
それもそうかと思い、ナビのカメラで前の映像を確認する。
青い顔の運転手と、後部座席でわめいている理事。
この時点でアクセル全開にしたくなる。
「俺の足は踏むなよ」
「それ以前に届かないだろ」
振り返ってケイを睨み、ストレスを逃がす。
もっともなだけに、反論のしようも無いけどさ。
「でもこの道って、狭すぎない?これだと、普段もすれ違えないじゃない」
「今来た方向からの一方通行なんだよ、ここは。前の車がルール違反なんだ。私有地だから、法律的にはどう走ろうと問題は無いけど」
「ほう」
思わずそう声を上げ、窓を開ける。
「雪野さん」
「分かったわよ」
スティックでフロントガラスくらい割ろうと思ったが、木之本君が怖い顔をするので窓を閉める。
彼にすれば、ここに侵入してる事自体胃が痛いのかもしれないな。
やがて車は路地から大通りへと抜け、相手はバックで器用に右へ逃げる。
こっちも素早く路地を出て、ショウは右へと逃げていく。
左の方が出やすいけど、右に逃げれば向こうは向きが違うので追っては来られない。
あっという間にバックミラーから黒塗りの車が遠ざかり、さすがに横断幕も後ろのシートへ戻す。
「偵察成功だね」
「何が、どう成功したんだ」
「いいじゃないよ、細かい事は」
ケイのクレームにもごもご答え、音を立てた端末を取り出し通話に出る。
「……サトミ?……いや、知らない。……知らないと思う。……そういう事もあるかもね。……男子寮?……分かった」
「なんだって」
「塩田さんが呼んでるって」
サトミの指示通り車をマンションへ戻し、歩いて男子寮へとやってくる。
その玄関前に待っていたのは塩田さん。
腕を組み、目を尖らせ、唇を噛み締めて。
今にも火を吹きそうな目で私達を睨んでいる。
「全員正座だ」
「あの。下は地面なんですけど」
「だったら、雪野だけ浦田の上着に正座だ」
「ああ?」
「二度とは言わんぞ」
低い、刃物みたいな声を出してくる塩田さん。
それを聞いただけで普通の人なら腰を抜かしそうだが、そこは付き合いの長さかケイは逆に睨み返してそれでも上着を脱いだ。
「さっき、理事会の人間が飛んできたぞ。俺の名前入りの車が西門を襲撃したって」
「そ、それで?」
「俺はこの場にいたから、俺個人の嫌疑は晴れた。相当、教唆を疑われたがな」
「実際あんた、昨日爆弾を送り返したんだろ」
「それはそれ、これはこれだ」
「卒業式はどうでもいいって、昨日言わなかったか」
「言いましたよ。でも、それは塩田さんの考えですよね。私は、違う考えで行動してますから」
「お前、熱でもあるのか」
非常に冷静な顔で指摘された。
確かに言ってる事は矛盾してるが、自分が間違っているとは思っていない。
私が望むのは彼等に卒業式へ出席してもらう事。
それを彼等が望む望まないに関わらずだ。
第一それを言うなら、去年屋神さんを出席させたのだって同じ話になってくる。
「式と退学と、どっちが大切なんだ」
「今は式を大切にしてるんです」
言葉は違えど、一斉に同じ事を言う私達。
塩田さんは少しだけ口元を緩め、私達に背を向けて寮へと歩き出した。
「中川さん達が呼んでたぞ。中にいるから、会って来い」
「塩田さん」
「俺から言う事は何も無い。今はただ、お前達に従うだけさ」
遠ざかる背中。
小さく振られる手。
熱くなる胸の中。
やっぱりあの人は、私の先輩なんだと心の底から思う。
先輩でよかったと、強く思う。
指定された多目的室へやってくると、天満さんと中川さんが笑顔で出迎えてくれた。
正座をしろとは言わず、当然椅子を勧めてくれる。
「学校へ殴りこんだんですって。相変わらず、無茶苦茶ね」
「そこが雪野さんのいい所よ」
褒められた。
何だ、やっぱり私は間違えてないじゃない。
木之本君とケイの刺すような視線はこの際無視して、テーブルの上に置かれた紙袋の中を見る。
「卒業祝いで企業からもらった分。賄賂性は低い物に限ってるけど」
「もらっていいんですか?」
「仲間じゃない」
優しい笑顔でそう言ってくれる天満さん。
塩田さんは中等部からの先輩で、今まで色々世話になった。
ただ高校に入ってから誰の世話になり助けてもらったかと言えば、やっぱり天満さんだと思う。
色んな物を融通してくれたり、便宜を図ってくれたり、私達が活躍する場所を与えてくれた。
彼女にとって、決して得にならない時ですら。
それを考えると彼女達には、やはり最後の恩返しがしたい。
「それと私の方は、もう少し違うんだけど」
中川さんが出してきたのは一枚の書類。
文面は素っ気無く、時間と場所が書いてあるくらい。
ただし書類の下には署名があり、理事会となっている。
「多分これが最後のチャンスだと思う。まとまるとは思えないけど、一応ね」
「出席すればいいんですか?」
「元野さんと遠野さんには連絡してある。私は卒業後も草薙グループの情報管理に関わるから、一応義理があってね」
多少言いにくそうに語る中川さん。
彼女は、前の予算編成局局長。
学校への資金や物資、物の流れを生徒の中では一番知りうる人物。
サトミが言うには話されては困る情報も多々抱えているらしく、彼女を囲い込む格好で将来に渡り草薙グループに所属させるらしい。
「という訳で私の立場はちょっと微妙なんだけど、お願い」
「話し合う事自体は構いませんよ。それで解決するのが1番ですし」
「しないだろ」
そう呟き、紙袋の中を漁るケイ。
多分それはこの場に居合わせる誰もが思っている事。
これこそセレモニーかもしれない。
私達と学校が決裂するという事への。
「それはともかく、集まった?」
「集まる?……ああ、そっちの事ですか」
天満さんに指摘され、今頃思い出した。
彼女達の分もありがたく受け取り、ただ少しかさばってきたので保管方法を考える必要がありそうだ。
「なかなか面白いアイディアよね。私も一枚噛みたいくらいだわ」
「はは」
天満さんと二人でそう笑い、これが最後かなと思う。
いつまでも彼女の力に頼れないという事ではない。
卒業式前までの事だから、彼女も参加出来るしこうして協力してくれる。
それでも時間は永遠ではない。
これを集める事自体、全てを終わらせる事だから。
学校と決着も。
そして彼女達を気持ちよく学校から送り出す事ともつながっている。
「下に紙袋とかダンボールがあったから、多分あれが全部そうね」
「多いんですか?」
「署名を集めたって言ってたでしょ。当然紙よりは厚いし一人ずつだから、結構な量じゃないの」
「分かりました。とりあえず、保管場所と保管方法を考えます」
「大事な物だし、鍵が掛かる方がいいでしょ。予算編成局にお金を運ぶためのアタッシュケースがあるから、それを借りてくる」
「済みません」
最後の最後までお世話になってしまう。
ただこのくらいは甘えても良いと思う。
これが最後なんだから。
もうこの先は、彼女達には頼れない。
だから今は、少しでもその力を借りていたい。
とりあえず男子寮に集まっていた分を、御剣君に頼んで例の倉庫へ運んでもらう。
これが結構な量で、まだ増えるかと思うと少し背中が寒くなってきた。
私達はそのまま女子寮へ移動。
こちらでも、ダンボールと紙袋のお出迎えを受ける。
「……御剣君。今度は女子寮に。……多分、今のと同じくらい。……ええ、お願い」
この量を見てると少し失敗だったという気がしないでもない。
何より、まだ署名が片付いてなかったな。
「帰ってきたわね。理事会の事は聞いた?」
紙袋の山を見ながら話すモトちゃん。
これをどうすると言ってこないので、まだ助かる。
「中川さんから聞いた。署名を渡してもいいんだよね」
「ええ。そのために集めたんだから。制服に着替えてきて」
「制服」
私はブルゾンにジーンズ。
何も着替える必要はないと言いたいが、サトミがカードを数えだしたので自分の部屋へと向かう。
多少荷物は持ち出したが、制服はまだ何着か残っていたはずだ。
とりあえずいつものブレザーに着替え、その上からコートを羽織る。
「どこで会うの?」
「ホテルを指定してきた。神宮駅前だから、車ね」
「分かった。・・・御剣君、一度作業止めて。……いや、署名を持って今から転送する場所へ運んできて。……玄関で待ってる。……はい、お願い」
後は車か。
今朝乗ってた車は、さすがにまずいだろうな。
「誰か、車は?」
「メガクルーザーを駐車場に停めてある。シートの位置を変えれば、全員乗れるだろ」
「じゃあ、それで行きましょう」
モトちゃんの宣言を受け、名雲さんが運転してきたメガクルーザーへと乗り込む。
「今から、何を話し合うんだ」
「妥協案を示してきてるんじゃないんですか」
素っ気無く返事をするケイ。
名雲さんは鼻を鳴らし、強引に車線を変えてきたベンツの後ろにぴたりと付いた。
普通ベンツに割り込まれれば、仕方ないと思うか逃げるはず。
しかし今回は、ベンツの方が慌てて車線を変えていく。
車体の大きさはこちらがやや大きい程度だが、向こうがドーベルマンならこっちは狼。
逃げない方がどうかしてる。
「今朝も、これで行けばよかったのに」
のんきな事を言い出すヒカル。
確かにこれなら威圧感もあるし、安全面にも優れている。
ただこの車を所有している人間を探し出すのは相当に簡単で、あまり現実的ではない。
やがて車はホテルの玄関前に到着。
すぐに制服姿の女性が近付き、ショウからキーを預かった。
「それでは、お預かりいたします」
私達が見送る中、軽いハンドルさばきで車を走らせていく女性。
そしてすぐに、ドアマンの若い男性が近付いてくる。
「元野様でいらっしゃいますか」
事前に情報は伝わっている様子。
さすがに高級ホテルといったところだが、知らない人に顔が知られているのは少し怖い気もする。
「ご案内しますので、こちらへどうぞ」
足の長い赤のカーペット。
壁際は額にはめられた油絵が何枚も飾られ、通路のところどころに置いてある大きな壷には綺麗な花が活けられている。
マンションに匹敵するほど静かなエレベーターで上の階へ向かい、指定された階で降りる。
人の気配はまるで無く、思わず罠かと疑ったくらい。
それだけ人をシャットアウトしているという事か。
「こちらへどうぞ」
通されたのは広い会議室。
これなら学校と同じだが、今はロックアウトされている状態。
そのためこのホテルを使っているんだろうけど、こういうお金はどこから出ているのかと言いたくもなる。
会議室で待ち構えていたのは例の理事。
ただそれだけではなく、以前会った若い教職員の姿も見える。
「席へどうぞ。時間もないので、早速始めます」
すでに席には書類が配られている。
小冊子が一冊と、書類が数枚。
サトミは素早くページをめくり、モトちゃんの耳元でなにやらささやいた。
それにモトちゃんは微かに眉を動かし、小さく頷きサトミが指定したページをめくる。
「端的に言えば、妥協案です」
席を立ち、書類を片手にそう説明する若い男性。
やや早口で告げられる、妥協案の内容。
その間理事は、苦い顔でタバコをふかせている。
「当然あなた方にも譲歩をしてもらいますが、こちらとしても最大限の譲歩はします。内容は小冊子に書いてある通り。スケジュールは、別な書類を参考にして下さい。今回お呼びしたのは、明日の卒業式に間に合わせるためである事をご了承下さい」
「どういう事」
「かなり意外ね。私達が指摘した部分をほぼ飲んでる。勿論規則は厳格なままだだけど、問題点はクリアされてるわ」
「本当に?」
「だからああいう顔なんでしょ」
サトミの指摘通り、苦い表情を崩さない理事。
確かに文章読むと、サトミ達が指摘していた部分は全て改正するとなっている。
規則の厳格化や生徒会の縮小も盛り込まれてはいるが、おおむね生徒の意見に沿っていると言っても問題ない。
「ご了承頂けたでしょうか」
「少し話し合う時間を下さい。この場にいないメンバーの意見も聞く必要があるので」
「分かりました。1時間後に改めてうかがいます」
書類を持って会議室を出てく職員達。
理事はそれを押しのけ、何やらわめきながら部屋を跳び出て行った。
ただそれは、今となってはもう関係の無い話。
この妥協案が本当なら、私達はそれに同意すればいいだけだ。
「……北川さん?……ええ、今ホテルにいる。……私はこれで同意しても良いと思うけど。……分かった。……丹下さんや黒沢さんは?……了解。・・ええ、分かった」
端末をしまい、大きく頷くモトちゃん。
その顔に浮かぶ満足げな表情。
今までの努力が報われた。
払った犠牲も大きいけど、私達はそれを勝ち得る事が出来た。
今はただそれを喜ぼう。
「本当かよ」
冷や水を浴びせるとは、まさにこの事だと思う。
冷静で、感情の変化など一切感じない醒めた口調。
ケイは小冊子を適当にめくり、それをテーブルの上へ無造作に放った。
「これが嘘だとでも?」
「書いてある事は本当で、実行もするんだろ」
「だったら、問題は?」
モトちゃんの追及にケイは鼻で笑い、天井を指さした。
ただ彼が示したのは天井ではなく、もっと違う意味があるらしい。
「そんな甘い話があるのなら、屋神さん達の代で決着が付いてる」
「具体的な内容を私は聞いてるの」
「誰も気付いてないかな」
私達を見渡し、反応を待つケイ。
視線を逸らしたのはサトミ一人。
彼女はケイの言う疑問を理解してるという事か。
「今後の協議により改正は随時行うという部分?」
「それもだけど。根本的に、日時が書いてない。いつ告示していつ施行するかって」
「即日告示、即日施行でしょう」
「そんな事は誰も言ってないだろ」
明確に否定するケイ。
モトちゃんは口元を抑え、改めて端末を取り出した。
「……北川さん。……施行する日時は聞いてる?……分かった。……ええ、そうね。……はい、そうする」
「隙を突くには良いやり方だ」
人事のように言ってのけるケイ。
ただこの冷静さが私達を救ったのは確かで、今はそれを褒める時だろう。
つまりはモトちゃんですら舞い上がってしまうような状況。
サトミも、多分大丈夫だろうと思っていた。
それでも彼は、最後に歯止めを掛ける。
空気を壊そうとも、相手の気分を害しようとも。
だからこそ、彼は信頼に足る。
「ケイ君の予想は?」
「告示と施行は、合意がされれば即実行される。ただ、年度一杯という期限を付けて。とか言い出してくる」
「それで」
「来年度は新しい生徒会長の元で改めて協議する。で、生徒会長って誰」
言うまでもない、今の委員長。
理事が最大の敵であり障害だとすれば、その実行役であり現場の責任者。
二人の仲は決して良くは無いが、意思の疎通はあり上下の関係を保ってもいる。
以前ならまだ執行委員会という曖昧な立場に抗議は出来たけど、正式に生徒会長となれば異議は唱えにくい。
いや。唱える事は簡単だが、それは今まで以上に認められはしないだろう。
「どうする気」
「署名は?」
「ああ、忘れてた」
「……御剣君?……俺だけど、署名のダンボールを一つ、軽いのでいいから持ってきて。ああ、どれでもいい」
「どうする気」
「ユウが今集めてる分の露払いかな。軽く仕掛ける」
言ってる意味は分からないが、表情は一気に悪くなってきた。
相手にすれば非常に厄介で、ただ味方にすればこれほど頼もしい人もそうはいない。
すぐに御剣君が、小さなダンボールを抱えて会議室へとやってきた。
ケイはそれをサトミに見せ、署名の人数を計算させる。
「1枚10人として、これに200枚でしょ。つまり、このダンボールには2000人分入ってる」
「他のと合計では」
「簡単じゃない。軽トラックに乗っていた体積を、このダンボールで割れば人数は出るでしょ」
「じゃあ、出してくれよ」
「簡単な計算なのに」
確かに公式としては簡単だが、トラックの体積なんて知らないしこのダンボールがどれだけの体積かも見て分かる物ではない。
大体体積を求める公式って何だった。
「大体80万人かしら」
「嘘」
「数えても良いわよ」
かなりの自信を持って語るサトミ。
まさか本当に数える訳ではないだろうが、多分一箱は間違いなく数えてるだろうな。
「署名はケイ君に任せる。他に問題は」
「学校も明日は相当警戒をする。それぞれ、身辺には気を付けた方が良い。俺なら、確実にさらうから」
確実にと言われても困るが、言いたい事は分かる。
学校にとってもっとも厄介な存在は私達。
式への乱入というケースも想定しているだろうし、私もアイディアの一つにある。
「家に押し入っては来ないと思うけど、警戒はした方が良い。警備についてはショウのおじさんに頼んでも良いし、俺も当てはある。それと、例のディフェンス・ラインも協力してくれる。後は、ここを出る時も気を付けた方が良い」
「俺はどうしましょうか」
「ドアを確保。場合によっては、強行突破する」
「待ってました」
すぐにドアへ張り付く御剣君。
何を待ってたのかは知らないが、これで退路は確保出来た。
ホテル内で私達を拘束するとは考えにくいが、監禁するための部屋はいくらでもある。
何より、今までの相手の行動を考えれば警戒しすぎてしすぎる事も無い。
「お待たせしました。では、さっそくサインをお願いします」
会議室に入ってくるや、早口でまくし立てる若い男性。
時間が押しているのは私にも分かる。
彼がすでに合意を前提として話をしているのも。
ただそれは、残念だが彼の思い込みにしか過ぎない。
本当に、残念だが。
「サインをする前に質問を」
「ええ、どの箇所ですか。施設管理の業者委託と権限委譲は問題ないですよね。出席率は70%。これは許可を得れば、一週間単位でオンライン授業に振り返られますし。ガーディアンの縮小ですか?」
「ここに書かれている事については、おおむね受け入れる用意があります。ただ、これはいつから施行されますか」
「合意と同時に、即時告示即時施行ですよ」
早口で話す若い男性。
モトちゃんは対照的に間を置き、テーブルに肘を付いて指を組んだ。
「ではこの合意事項は、いつまで有効と考えればよろしいのでしょうか」
「今年度一杯。今後の規則に付いては来年度以降、生徒の代表と協議します」
「生徒の代表とは」
「生徒会長ですね……」
なんとなく小さくなっていく男性の声。
静寂に包まれる会議室内。
理事のふかすタバコの煙が、だらしなく天井へと吸い込まれていく。
「今年度は実質的に終わっています。そして生徒代表が生徒会長なのは私も認めますが、生徒会のみと協議をするのなら今までと何も変わりません」
「時間が無いんですが。卒業式は明日ですよ。お分かりかと思いますが、これは明日の式を開催するための交換条件だとも考えて下さい」
「考えた上で発言をしています。先輩方には大変申し訳ないですが、彼等の思い出よりも私は後輩達の未来を優先します」
凛とした口調。
揺らぎ無い自信と誇り。
男性は頼りなくため息を付き、崩れるようにして椅子に座りだるそうに書類をめくりだした。
「では、どうしろと」
「合意事項に付いての期限は設けず、今後の規則改正に付いては一般生徒の意見も参考にする。規則の採用に当たっては、全校生徒を対象にして投票を行う。そして、卒業式は全員出席とする」
「元野さん」
「無理な事は、何も言っていないと思います」
「言ってはいないですけどね」
それは認め、しかし受け入れはしない男性。
話し合いは膠着し始め、空気が淀み出して来る。
「茶番だな。私は帰るぞ」
そう言って席を立つ理事。
茶番を仕掛けたのはどちらかと言いたいが、この男とは口を利くのも気分が悪い。
「ああ、帰る前に一つ」
ケイの制止を受け、露骨に蔑んだ目で彼を振り返る理事。
それを全く意に介さず、ケイは理事の前まで歩いていって例のダンボールを手渡した。
「規則改正に異議を申し立てる署名だ。現在80万人分集まってる」
「それがどうした。学内の生徒はせいぜい3万。つまり部外者がどれだけ署名をしようと、何の意味も無い」
「生徒が署名をしたら」
「名前を書くだけなら誰でも出来る。そんなものに何の意味も無い」
苛立ち気味に答える理事。
ケイは大げさに頷き、理事が捨てようとした署名を奪い取った。
「言いたい事は分かった。だったら、署名以外で意見を集約出来る物が集まったらどうする」
「下らん取引をする気は無い。第一学校に逆らう生徒は、お前達くらいだ」
「その程度の見通しで、良く理事がやってこられたな」
「……いいだろう。署名より有効な意思表示があるのなら、見せてみろ。その時は、お前達の言う通りにしてやる」
余裕。それともこれを逆に攻撃材料とするつもりか。
意外と簡単に挑発へ乗ってくる理事。
実際署名以上の意思表示はそう簡単には思いつかないし、学校への明確な反抗の証拠ともなる。
その意味では、理事の言っている事は悔しいが間違ってはいない。
「今の内にせいぜいあがいていろ。自主退学するのなら、推薦状くらいは書いてやる」
「自分こそ、私物の整理をしておいた方がいいぞ」
「お前だけは、警察に引き渡してやる」
「鏡でも見てるのか」
鼻先でそう笑い、署名を職員達に渡すケイ。
彼は残りの分がトラックで下に停めてあると告げ、理事の前から立ち去った。
「こんな真似をして、全員ただで済むと思うな。人がせっかく温情を掛けてやったというのに」
「ご配慮痛み入ります。ただ犬や猫でも、飼い主が横暴なら反抗もしますので」
「なんだと」
「ご心配なく。私達は犬や猫ほど強くはないので。手も噛みませんし、引っかきもしません。本当に、ご心配なく」
口元だけを緩め、理事に冷たい視線を送るモトちゃん。
あからさまな反抗の態度に理事の顔色が赤くなり、口元が小さく動く。
「貴様等、覚悟しろよ」
「お引取りを。後は私達で話し合いますので」
「父親もただで済むと思うな」
「教育者らしからぬ発言ですが、それは聞かなかった事にしましょう。どうぞ、お帰り下さい」
全く挑発には乗らず、余裕の表情でドアを示すモトちゃん。
理事は激しく足を踏み鳴らし、突き飛ばすようにドアを開けて出て行った。
「挑発しないで」
呆れ気味に呟くサトミ。
モトちゃんは書類をまとめ、その下にあった大きな封筒にそれをしまって立ち上がった。
「たまにはいいでしょ。優等生が怒ったって」
「誰が優等生よ。……それで、この後はどうするおつもりでしょうか」
一転厳しい声を出し、職員達を見据えるサトミ。
彼等は全員が首を振り、やはり書類を片付けて立ち上がった。
「悪いけど、俺達にもあれが限界でね。合意さえしてくれれば、まだ調整の余地もあったんだけど」
「私達は余地ではなく、確実な改善を求めています」
「分かるけどね。所詮平の職員や教師には、これが限界だよ」
「私達は、ただの生徒にしか過ぎません」
「なるほどね」
一本取られたとばかりに大笑いする教職員達。
話し合いは決裂し、何の解決も見出せなかった。
何一ついい結果は出ず、最悪の状況のまま明日を迎える事になりそうだ。
でもこうして、話し合い分かり合える人達も向こうにはいる。
今は駄目でも、まだこの先に希望をつなぐ事は出来る。
例えそれが私達の代ではないとしても、いつかみんなが幸せで楽しい学校生活を送れる日が戻ってくる。
そのためにも、私は自分に出来る事を精一杯頑張りたい。
幸い廊下で襲われるという事は無く、ただあちこちから視線や気配をはっきりと感じる。
監視されているのは明らかで、これはホテルを出ても続くだろう。
「お茶飲んでいく?」
エレベーターに乗ったところで、「最上階・喫茶室」と書いてある部分を指差す。
「高いわよ、こういうところは」
「最上階だからね」
真顔でそう答えるヒカル。
確かに高層ビルではあるが、サトミもそういう意味で言った訳ではないだろう。
「構わん。ツケだツケ。あの理事のツケにすればいい」
「大丈夫なの?」
「俺達が会議室で会ったのは、ホテルの人間も分かってる。後は阿吽の呼吸って奴さ」
どんな奴かは知らないが、あの理事のお金でお茶を楽しむというのはどうかと思う。
飲まない理由にもならないけどね。




