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スクールガーディアンズ  作者: 雪野
第5話
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5-9






     5-9



 良く晴れた青空。

 秋の冷たい風はなく、緩い日差しが木々の影を路面に投げかける。

 歩道沿いには塀がどこまでも続き、その途中に大きな門が見える。

 その前に佇む、数人の男女。


「来たようですね」

 グレーのスーツを着た大山が、塩田に笑いかける。

「俺が呼んだんじゃないぞ」

 無愛想に答える塩田。

 パーカーに綿パンという、いつも通りのラフな格好。

 表情には、やや厳しさが見える。

「照れないの。いい年して」

 オーバーオールの中川が、その肩を叩く

 塀にもたれている沢は、黒のジャケットにジーンズ。

 塩田とは対照的に、落ち着いた雰囲気を漂わせている。


「おまたせ」

 爽やかな笑顔と、鈴の音のような澄んだ声。

 優しげな、穏やかな顔立ち。

 ブルーのワンピースが、その清楚な雰囲気によく似合っている。  

「いや。俺達も、今来たところだから」

 素っ気なく呟く塩田。

「本当?、みんな」

 大山達は、彼女の笑顔にただ笑うだけだ。

「久し振りね、水葉みずは

「ええ、凪も」

 軽く抱き合う中川と女性。

「……このメンバーも、懐かしいわ」

 水葉と呼ばれた女性は、感慨深げな表情で塩田達を見渡した。


「杉下さんは、今東京へ行ってるって」

「残念。せっかく会えると思ったのに。嶺奈ちゃんは、入れ違いだし」

「いいじゃないですか、彼氏がいるんだから」

 ぐいと塩田を押し出す大山。       

 水葉は素っ気なく肩をすくめ、薄く微笑んだ。

「先週会ったばかりよ」

「愛想ないな」

「あなたには負けるわ」

 ひとしきりの笑いが起き、水葉が再び視線を動かしていく。

「三島君は?屋神君も」

「俺は、会わないぞ」

「塩田君、うるさい」 

 中川はため息を付いて、彼女の肩を抱いた。

「まだ屋神さんの事怒ってるのよ、この人」

「いい加減、機嫌直したら?」

「向こうが謝るまでは……」

 沢が塩田の腕を取り、後ろに廻す。

 そしてその前を、大山が歩き出す。

「仕方ありません。こちらから会いに行きましょう。先に、三島さんも行ってますし」

「お、おい。沢、痛いっ」

「腕を極めてるから、当然だよ」

「もっと強くやっちゃって。全く、子供なんだから」

 楽しげに騒ぐ一群の姿は、校門の中へと消えていった。



「……いますね」

 行く手にあるロビーを見て笑う大山。

 そこには、ベンチに座って向かい合う大きな男の人が二人。

 向こうもこちらに気付いたようで、おもむろに立ち上がる。

「よう」

 屋神が軽く手を上げる。

 鋭い眼差しと研ぎ澄まされたような雰囲気。

 威圧感すら感じさせるその顔が、微かに和らぐ。

「ここへは、もう来ないかと思ってたぜ」

「少しは吹っ切れたのよ。休みの日に、遊びに来るくらいはいいって。屋神君こそ、まだあんな所にいすわる気?」

「俺は、お前達を裏切った人間だ。今さら表に出る気もない」

 後ろの方にいる塩田が、鼻を鳴らす。

「お前は裏切ったんじゃない。俺達のために……」

「三島、下らない事言うな。なあ、大山」

「私からは何とも」

 大げさに肩をすくめる大山。

「……元気そうだな、代表」

「代表はあなたでしょ、三島君」

「俺は今でも、代行だ。君の代わりに過ぎない」

「真面目なんだから、三島さんは」

 くすっと笑い、彼女の肩を抱く中川。

 三島は、真摯な態度で彼女を見つめている。

「君も、何か言う事があるじゃないのかい」

 壁にもたれていた沢が、からかうような笑顔を塩田へと向ける。

 一転して静まり返る空気。 

 その静寂に耐えかねたのか、水葉が遠慮気味に彼へ近付く。 

「塩田君……」

「俺は、来たくて来た訳じゃない。水葉さんには悪いけど」

 ついに背を向け、廊下を引き上げていく塩田。


「変わらないな、あいつは」

 苦笑する屋神。

 その彼を、咎めるようにみつめる一同。

「笑い事じゃないですよ。あなたから、一言言えば済む事なんです。あの時は、ああするしかなかったんですから」 

「大山。俺は自分のために、学校側に付いただけだ。それ以外の理由はない」

「杉下さんも同じ事を言ってました」

「さあな。とにかく、俺に会いに来たらお前らの評判が悪くなるぞ。何たって、この学校の悪を束ねる親玉だからな」

「下らない」

 呆れた顔で中川が首を振る。

「それと俺達をこんな馬鹿騒ぎに巻き込んだ男は、何やってるんだ」

「今は九州に行っているはずよ。私はこの間会ったけれど、相変わらず元気だったわ」

「学校辞めると、そういうのんきな事も出来るのか。俺も、退学すればよかった」

「まだ間に合うよ、屋神さん。何なら、僕が退学申請を出しておこうか」

「フリーガーディアン程度が、随分口きくな」

 鋭い笑みで沢を睨む屋神。

 沢は穏やかな笑みで、それに応えた。


「二人とも、そのくらいにしなさい。ねえ」

「子供なのよ、結局」

 仕方ないという顔で見つめ合う中川達。

 三島と大山は、それを見守っているという様子だ。

「天満はどうした」

「私と入れ違いに、静岡よ。ね、三島君」

「俺に振られても」

 重々しく首を振る三島と、鼻を鳴らす屋神。

 涼代はおかしそうに、そんな二人を見守っている。



 彼等はユウ達に何を託したいのか。 

 そしてユウ達は、その期待に応えられるのか。

 正しいと言い切れるのか。

 真実はどこにあるのか。

 思いと思惑は重なっていく……。






                 第5話 終わり












     第5話 あとがき




 今までで、一番長い話になりました。

 実際は5-1~5-5と、5-6~5-8。そして5-9の三つに分けてもいい内容ですが。

 四つ葉のクローバーを公園に探しに行って、デジカメに撮ったり。

 刺繍キットを買って、あっさり諦めたり。

 下らない事もしました。


 今回のメイン、遠野聡美。

 主人公雪野優に次ぐヒロインであり、このスクールガーディアンズを書く以前から私が使っていたキャラクターです。

 その時のキャラとは性格が多少違っていますが、外見や能力はほぼそのまま。

 私にとって、思い入れの強いキャラです。

 ようやく彼女らしい一面を書く事が出来て、少し満足といったところ。

 無論この先も、今回に負けないくらいの活躍をします。

 いつか彼氏である光絡みの話も書こうかと。

 また中等部編での、ユウ達との出会いとか。



 

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