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スクールガーディアンズ  作者: 雪野
第35話
399/596

エピソード(外伝) 35-5   ~ケイ視点・カジノ編~





     虚実




     5




 穏やかな時は一瞬で。

 世界は嵐の中にある。 

 もしくは、俺の周りだけかもしれないが。


 休日明けの学校。

 だるい体を引きずりつつ学校に来ると、正門に熊が立っていた。

 正確には朝日を浴び、腕を組んで正門の隅で仁王立ちする男が。

 本人は目立たないようにしてるつもりだろうが、戻って確認する生徒まで出る始末。 

 この時点で引き返したくなるが、明らかに目が合い手招きをされた。

「おはよう」

 低いが良く通る声で挨拶をしてくる三島さん。

 こちらもそれに挨拶を返して、正門を通り抜けようとする。

 しかし襟を掴まれ、子猫さながらに引き戻された。

「風紀委員。風紀を乱してる人間がいるんだけど」

 こちらを見ないどころか近付いてもこない風紀委員。

 彼らに付随している警備員は完全に背を向け、微動だにしない。

 一瞬でも、彼らに頼ろうとした俺が馬鹿だった。

「ちょっと、何とかして下さい」

 以前から正門に常駐している方の警備員に頼むも笑うだけ。

 彼らは三島さんの存在を知っているので怯えはしないが、俺を助けようともしてくれない。


「何か、用事でも」

「書類を取りに来た。以前学校とトラブルを起こしたせいで、オンラインでは受け付けてくれない」 

 確かに、そんな話を聞いた事はある。

 ただ、それと正門で仁王立ちするのとどういう関係があるのかは不明だが。

「玲阿君は」

「俺より早いですよ、あいつは」

「どこにいる」

「教室でしょう」

「案内してくれ」



 畏怖、驚嘆、恐れ、驚愕。

 形容する言葉は幾つもあるが、俺としてはいたたまれないの一言。

 廊下を歩く生徒達全員の視線が向けられ、中には写真を撮る馬鹿までいる。

 サーカスの団長って、こんな気分かもしれないな。

「ここで会わなくても良いでしょう」

「迷惑か」

「迷惑です」

 はっきりと告げた途端、背中に悪寒。

 耳の真横を戦闘機が通ったら、こんな感覚がするかもしれないな。

「ちょっと」

「蚊がいた」

 真冬だ、今は。

 この熊、後で鍋にしてやろうか。

「空気が重いな、少し」

 彼に対する驚愕の叫び声や呼びかけはあるが、それは俺達の周囲だけ。

 外側には無関心の層があり、さらにその外には敵意を向ける人間がはっきりと存在する。

「正門にいた風紀委員が幅を利かせてませましてね。最近は、警備員付きでうろつきまわってます」

「困ったものだ」

「元はといえば三島さん達が」

 再び耳元を戦闘機が掠めていった。

 それもさっきよりも、かなり側。

 これが直撃したら、俺は死んだ事も気付かないんじゃないだろうか。


 教室に入ると、反応は廊下以上。

 歓声、握手、記念撮影。

 中には抱きついてくる子までいる。

 ただこの教室は、元野シンパであり雪野シンパ。 

 系統で言えば、塩田さんや三島さんシンパでもあるので当然か。

「玲阿君、ちょっと」

 まさに熊のような手で手招きをする三島さん。

 ユウの手の軽く倍はありそうで、俺の首をもぐのも軽そうだ。

「何か」

 姿勢を正して、彼の前に起立するショウ。

 あくまでも真摯に、かつ敬意を持って接する態度に今日室内の空気も変わる。

 しかし熊相手に礼儀が。

 首筋に悪寒が走ったので、あまり余計な事は考えないでおこう。

「色々、迷惑を掛けてるみたいだな」

「俺は特に、そういう気は無いんだけど。周りで、そう指摘する人はいる」

「大物だな」

「君に負担を掛けているのは済まないと思っている」

 素直に頭を下げる三島さん。

 ショウはそれを制止せず、黙って受け入れる。

「結局狙われる立場だからな、学校最強と呼ばれても。辛い事も、色々あるだろう」

「はぁ」

「ただ逆に、こちらへ目が向いている間は周りへ被害は及ばない。そういう利点もある」

 利点か。

 自分の利点ではないのに、さらっとこういう事が言える人なんだな。


 ただ学校最強という呼称も立場も、三島さんなり塩田さん達の身勝手から来ている事。

 自分達にとっての都合がいい後継者。

 使い勝手がいい存在を探し、それがショウだった。

 そこまでの極論ではないが、そういう面はある。

 三島さんが頭を下げた理由もそこに行き着くんだろう。

 ショウが気にしているかどうかはともかく、彼の気持ちを受け入れているのは確か。

 重みも責任も背負い、それでも前に進もうとする。

 俺には真似どころか、理解すら出来ない。

「雪野さんは」

「遅刻かもしれません。探してきます」

 一礼して教室を出て行くサトミ。

 出て行くきっかけを探していたとも言える。

 教室へ一番早く来るのは彼女で、遅れるなら真っ先にサトミかモトに連絡が入る。

 それが無いのは遅れる理由があるはずで、ただサトミは素直に探しにいけないだけ。

 微笑ましいといえば微笑ましいんだが。


「君の調子は」

 なぜか俺に矛先を向けてくる三島さん。

 彼を刺激するような事は特にしていないし、接点も無い。

 学校最強には最も程遠く、SDCとも関係は薄い。

 流れで話し掛けたというところか。

「特に、これといって」

「ブックメーカーと接触しているようだが」

 ここは顔を寄せて、声を潜める三島さん。

 自分も行きたいと言う訳ではなく、少し嫌な気がしてきた。

「大学の知り合いから、相談をされた」

「借金ですか」

「分かってくれればいい」 

 何も分からないし、どうするか言ってくれ。

 以心伝心って間柄でもないだろう。


 そう思った途端、肩に熊の手がどしりと置かれた。

 このまま床にめり込んで下の階まで抜けてもおかしくは無いくらいの威圧感で、背中に背が吹き出てきた。

 人に頼みごとをするのに、この態度か。

 やっぱり熊は。

「よろしく頼む」

 ショウへの謝罪とはまるで違う、脅しにも似た口調。

 俺が一体何をしたって言うんだ。

「何か、言いたい事でも」

「いえ、別に。大学に戻らなくてもいいんですか」

 黒板の隣に掛かっている大きな時計を指差し、帰るよう促す。

 過去の英雄なんて百害あって一利なし。

 「やっぱり、三島さんの方が頼りになるわよね」

 なんて話になると、こっちの体制が揺らぎかねない。

 なんならここで軽く燃やして。


 心が読めるとは思えないが俺の腕はポケットに入った時点で掴まれ、手首に指が差し込まれた。

 電流の走るような痛みが肩まで抜け、そのまま床へしゃがみ込む。

 しかしこここそ、絶好のポジション。

 真正面からよりも勝機はある。

 そう思った途端、膝が鼻の前にやってきていた。

 でもこれって、膝というより鉄柱だな。

「帰らないんですか」

「気配には敏感に反応するよう出来てる」

「気配とは」

「敵意だ」

 つまり俺が何かを考えるたび、三島さんはそれに反応するという訳か。

 俺へではなく。

 俺の敵意に。


 そう好意的に解釈し、とにかくここにいられるとまずいので正門まで送り出す。 

 今日は彼を知る3年がいないので、熱狂的とも呼べる程の歓迎ではなかった。

 もしかするとそこを気にして今日という日を選んだのかもしれないな。 

「……あれは」

 三島さんの視線の先にあるのは、腕を組んでいるサトミの後姿。

 その黒髪がなびき、彼女の怒りを現すように空へと漂う。

 彼女の視線の先には、地面へしゃがみ植え込みに顔を突っ込んでいる子供がいる。

「最後に、良いものを見せてもらった」

 皮肉ではなく穏やかな口調でそう呟き、正門を駆け抜ける三島さん。

 ユウはまるで気付いていなく、「なーなー」言いながら植え込みに首を突っ込んだまま。

 俺もこれ以上はついて行けず、首を振って教室に戻る。

 確かにほのぼのした光景ではあるが、知り合いがやってるともなれば話はまた別だ。



 その数日後。

 無事かどうかはともかく、体力測定は終了。

 端末でブックメーカーの結果を確認し、配当金を別口座に振り返る。

 手入れが入れば、口座の金は全額没収。

 こまめに資金は動かすに限る。

「何か面白い事でも」

 俺がいるのは、自警局の片隅にある応接室。

 受付からすぐ近くで、人の往来もある場所。

 そこに俺がいるのは問題も多いんだが、小谷君は咎めるでもなく俺の前で仕事をしている。

「緒方さんから、お金もらってない?」

「食事を何度か奢ってもらいました。お土産に、松坂牛とか」

「なるほどね」

 とりあえず還元はしているようで安心した。

 自分で全部を溜め込むタイプとも思わないが、今彼女が手にしているのはかなりの額。

 気の迷いが起きないとも限らない。


「真田さんが、怒ってましたよ。バニーガールの件で」

「小谷君は」

「俺も真田さん寄りですね。浦田さんの言ってる事は理解しますが、区別をする問題では無いと思います」

 意外に熱い発言。

 見直したというか、自分の馬鹿さ加減に呆れた。

 三島さんも怒る訳だ、これは。

「ただ、確かに渡瀬さんを店に出すのはどうかとも思いますが」

「池上さんでも良かったんだけど、面が割れてるしやりすぎる可能性があった。悪いね」

「いえ」

 俺の前で仕事をしてるのはそのせいか。


 でもって俺は、ブックメーカーの配当を確認しているという有様。

 間違いなく、天罰が下るだろうな。

「浦田さんは危険じゃないんですか」

「ブックメーカー?安全ではないだろうけど、今更別に」

「では、それに関わる人間は。緒方さんはどうなんです」

「危険は承知の上だろ」 

 何を言ってるんだと思ったが、小谷君は真剣そのもの。

 今すぐ殴りかかってきてもおかしくないくらいの顔で俺を睨みつけている。

「あなたのやり方が必要なのは分かってます。ただ、それを誰もが理解出来る訳ではないし納得もしていない。説明責任も果たしていない。一言、こう思ってると伝えるのも大切なんじゃないですか」

「説明って、別に」

「独断専行の方がやりやすいのは承知してますし、こうしてバックアップもしています。ただ、それが常に正しい方法とは限らないでしょう。今回の件にしろ、真田さんに一言話せば違う方法があったかもしれないじゃないですか」

 机を拳で叩く小谷君。


 俺はそれに反発するでもなく、ただ視線を伏せるだけ。

 正しいのは彼で、間違った事は何一つ言っていない。

 理屈としても、感情としても。

 100人いれば、100人とも彼の意見に賛成するだろう。

「批判をしてるんじゃないんです。ただ、もっと周りを信頼して下さいと言いたかっただけです」

「ああ。悪かった」 

 これ以外に言葉は出てこず、またこれ以外の言葉は発しようがない。

 小谷君はまだ何か言いたげだったが、俺の後ろに向かって一礼すると荷物をまとめて席を立った。

「今の話、よく考えて下さいよ」

「ああ」

「では、失礼します」




 下からは突き上げられて。上からは押さえ込まれて。

 仲間からは疎外されて。

 居場所も無ければ立場も無い。

 いっそ、失踪するべきか。

「……あまりへこんでないわね」 

 小谷君が座っていた、俺の正面へと腰を下ろす天満さん。 

 彼が頭を下げたのは、彼女に対してか。

「仕事はいいんですか」

「局長室も、もう明渡してるの。後は、私物が少し残ってる程度ね」

「お疲れ様です」

 俺が色々と無茶をして、それを支えてくれた数少ない一人が彼女。

 物資の面、人材の面ではとにかく彼女に頼っていた。

 度が過ぎた事にも笑って応じてくれ、それに何度も救われた。

 先輩と呼べる存在は少ないが、もし呼ばせてもらえるのならそれは間違いなく彼女だろう。


「疲れる程、大した実績も残してないけど。彼、何を怒ってたの?」

「独断専行のやり方が良くないって」

「確かに褒められた事ではないわね。杉下さんが、ちょうどそうだった」

 懐かしそうに語る天満さん。

 自分一人の判断で学校に付き、情報を流し、最後には退学をした人。

 確かに一言言えば済む話で、ただ言ってしまえば周りを巻き込む。

 彼が独自の判断で行動した理由はそれもあるだろう。

「君も、退学願望が?」

「無くは無いですよ」 

 素直に認め、配当金の分配を終える。


 学校との対立によっては、退学も十分視野に入れるべきだろう。

 どうしてもこの学校に留まらなければならない理由は無いし、居場所があるとも思えない。  

「残された側は辛いわよ。それこそ、自分を否定された気になる」

「全員退学になるよりはましじゃないんですか」

「杉下さん達や河合さん達はそう思ったんだろうけど。今思うと、あの選択が正しかったとは思えない。あくまでも今、ここで考えればね。当時の状況に置かれて私が2年生だったら、彼らと同じ事をしたかもしれない」

 寂しげに呟き、シャギーの入った髪を撫で付ける天満さん。

 普段の快活さは陰を潜め、ただ過去を悔いる少女が目の前にいた。

 俺もいつか、ユウ達にこういう思いをさせるのか。

 それとも、全くなんとも感じないのか。

 後者なら、余程俺も気楽に行動出来るんだが。

「何にしろ今は君達に任せてるんだし、好きにやって。現時点で脱落者は一人もいないんだから、少なくとも私達よりは優秀よ」

「だといいんですどね」

「それとも、逃げられないようなしがらみでもあるのかしら」



 自警局のブースを出て、天満さんの言葉を思い返す。

 逃げられないしがらみ、か。

 良く言えば友情。

 悪く言えばもたれ合い、絡み合い。


 共依存ではないが、お互いの関係が屋神さん達以上に近いのは確か。

 彼らはあくまでも、管理案反対を目的に集まったグループ。

 個々に知り合いであったり名前は知っていても、友人関係はごく一部の人間同士。

 逆にユウ達は、中等部からの付き合い。

 丹下達は1年からにしろ、核となるのは旧連合の幹部。

 天満さんの言う通り、降りられないような関係が築かれている。

「何してるの」

 明るい笑顔で声を掛けてくる丹下。

 彼女はG棟隊長なので、自警局に顔を出す機会も多いはず。

 逆に俺はここでは異端どころか、完全な敵だ。

「ちょっと用事があって」 

 彼女の後ろから感じる強烈な敵意。

 その神代さんから逃げるようにして背を向ける。

「今、忙しい?」

「特に用事は無いけど」

「少し、教えて欲しいの。ちょっと来て」



 自警局自警課課長執務室。

 応接セットのテーブルに置かれるカード。

 俺の前に一枚カードが置かれ、北川さんが自分の分を取る。

 次に俺のところへカードがもう一枚。 

 合計で「18」

「これで」

「20。私の勝ち」

 どういう細工をしたのか知らないが、テーブルの上に置いた金を持っていく北川さん。

 俺のギャンブル運などこの程度で、勝った記憶はあまり無い。

 あのブックメーカーで連戦戦勝なのは、あれがギャンブルではなく事前にどれだけ策を練るかというゲームだから。

 それならこちらにも手の内はあるが、こういった運も絡むものとなれば話は別。

 勝つのは詐欺師か、天性の能天気者だ。


「お金を賭けるのよね」 

 非常に根本的な事を聞いてくる丹下。

 だったら、貞操でも賭けろっていうのか。

 さすがにそんな事は言わず、まだ怖い顔をしている神代さんも座らせる。

「ギャンブルは?」

「そういう事に興味は無いんです」

「それが一番だって、そっちの人に言ってくれ」

 少なくとも今睨まれる理由は無いし、俺がそそのかしてる訳でもない。

 ただ神代さんからすれば、緒方さんの一件は許しがたい部分があるらしい。

「丹下さん。あたしは反対なんですけど」

「元々は私にも原因があるのよ。だったら、私もリスクを負うべきじゃないの」

 リスクは負わなくていいんだ。

 人が言った事を聞いてたのか?

「でも、どうしてお金を賭けるのかしら」

「溶ける感覚がたまらないって人もいるらしいわよ」

「溶ける?」

「負けてお金が無くなるって事。そういうのに、カタルシスを感じるんですって」

 何やら怖い話をし出す北川さん。

 でもって丹下が、まさかという目で俺を見てきた。

「そういう性癖は無い。前言ったように、お金は賭けない、俺の言う事を聞く。余計な事はしない」

「分かってる」

 すね気味に答えてくる丹下。

 当日は、目を離さない方が良さそうだ。




 結局ババ抜きなんて訳の分からない事をして、寮へ戻る頃にはすっかり夜が更けていた。

 女子寮と違って門には警備員の姿はなく、監視カメラが申し訳程度にトレースしくるだけ。

 襲撃という事に関してだけ言えば男子の方が発生率は高いんだが。

 一応は辺りを明るく照らす街灯の下を歩き、寮の建物へと向かう。


 借金を帳消しにするため、ブックメーカーから刺客が放たれる可能性もある。

 ドラッグの件で、俺を恨んでいる連中もまだいるだろう。

 退学させた、生徒会の関係者。

 中等部以来俺達が倒してきた連中。

 考え出すときりがなく、今ここで襲われても。

「天誅っ」

 何やらすごい言葉と共に、背後に殺気。

 しかし俺の胴体が両断される事はなく、代わりに地面へ紺のブルゾンを着た男が組みひしがれていた。

「大丈夫?」 

 男の腕を取り、背中に回しながら俺に笑顔を向けてくる柳君。

 何故と言いたいが、陰ながら俺を護衛してくれていたらしい。

「俺は問題ない。そっちは、どうか知らないけど」

 おぼろげに記憶のある後ろ姿。

 足元に転がっている木刀。

 天誅という言葉。

 多分、間違いはないだろう。

「柳君。いいよ、手を離して」

「分かった」

 あっさりと手を離す柳君。

 しかしすぐに俺を背中にかばい、腰を落として左足を浮かす。

 倒れている男が少しでも不審な真似をすれば、一瞬にして砕け散る。

 膝が砕けるか顎が砕けるか、それ以外の場所が砕けるか。

 俺もあまり知りたくはない。


「姉ちゃんをたぶらかすな」

 かなり頭の痛い台詞を吐いてくれる、丹下の弟。

 姉思いなのは知っていたが、こういう行動に走るまでとは知らなかった。

 どうも、誰かが情報を流したな。

「俺は何もしてない。いつまでもお姉ちゃんに付いて回っても仕方ないだろ」

「姉ちゃんを守るのは、俺の役目だ」

「格好良いんじゃないの」

 くすくすと笑い、木刀を足で拾い上げる柳君。

 彼はそのまま木刀を弟へ放り、手の平を上に向けて彼を手招きした。

「浦田君に話があるなら、僕が聞く。今度は、手加減しない」

 全身から発せられる強烈な闘志。

 かばわれている俺にとっては何より頼もしい、しかしそれを向けられている弟にとっては失神しかねないくらいの迫力。

 立っているのがやっとという顔で、またそれだけでも十分称賛に値するんだが。



「何してるの」

 落ち着いた、親しみを感じさせる声。

 ふと振り向くと、永理が小首を傾げて立っていた。

 こんな時間まで、なに遊んでるんだ。

 などという資格は全く無いので、周りに男がいないかだけを確かめる。

 彼氏なら別に文句は無いが、それ以外の男だったらこの場で消えてもらうだけだ。

「友達とちょっと」

「友達。……初めまして。浦田永理と申します。一応、珪君の妹です」

 一応ってなんだ。

 違う場合もあるって言うのか。

 しかし弟。つまり丹下の弟は反応なし。

 棒立ちで永理を見つめたまま、瞳を見開いて動こうともしない。 

 柳君への怯えにしては時間が経ち過ぎていて、ちょっと嫌な気がしてきた。


「丹下真輝。13歳。草薙中学北地区2年です」

「だったら、私の方がお姉さんね」

「お姉さん」

 薄闇に光る少年の瞳。

 でもってその輝いた瞳を俺の方にも向けてきた。

「お兄さん」 

 止めろ。

 確かに永理は人懐っこい笑顔と、愛嬌のある顔立ち。 

 物腰も柔らかく、初対面の人にも壁を感じさせない子であるが。

 もしくは、誤解を招きやすい。

「ブックメーカーってどこにあるの」 

 妹よ、お前もか。

 ただ堅実さでは俺や光の比ではなく、生涯ギャンブルとは無縁のはず。

 中等部にまで波及しているのは分かっていたが、こう身近なところにまでとは思わなかった。

「知り合いが借金に困ってるのか」

「正確には、知り合いの知り合いの知り合いなんだけど」

 これを聞いて、少しは安心をする。

 さすがに永理の直接的な知り合いだったら、彼女に対しても不安を覚えてしまう。

「どうにかなりそう?」

「浦田君は、ブックメーカー担当だよ」

 にこにこ笑い、しかし距離を開ける柳君。

 すでに危険を察知したらしい。


「予定には無かったけど、今から行くか。柳君」

「僕は行かない。絶対に行かない。あそこは悪魔が住んでいる」

「なんだよ、それ」

「そっちの、そっちの子を連れてけばいいんだよ

 でもって、生贄か。

 これがワイルド・ギースの柳司のやる事か。

「お兄さん、どこか行くんですか」

「その呼び方は止めてくれ。ちょっと、大人の社交場に」

「不良ね。私も行くわ」

 断っても付いて来るのは間違いなく、永理の友人に帰りが遅くなるよう連絡を入れる。

 万が一の場合は警察や知り合いに連絡が行き、いずれブックメーカーにも行き着く。

「わたしも、いきますよ」

 にこりと笑う高畑さん。

 社会見学じゃないんだぞ。



 引率の先生よろしく、今日は特別教棟ではなく地下鉄の駅から入っていく。

 多分これも戦中戦後の名残で、抜け穴は多数あるんだろう。

 軍事施設でもない学校にしては大げさとも思うが、戦争中なら備えすぎて困る事は無い。

 頭の上に爆弾が降って来た後では遅いんだし。


 事前に入手した地図を頼りに複雑に入り組んだ地下通路を抜け、ようやくブックメーカーへと辿り着く。

 ドアの前には警備員が何人もいて、当然俺達に目を止める。

「明日ではなかったんですか」

「色々と事情がありまして」

「どちらにしろ、入店は出来ません」

 それは助かった。 

 と言いたいが、背後からのプレッシャーが全身を焼き焦がす。

「仮に俺を通しても、ペナルティは発生しない。理由は、明日ここが消えてなくなるから」

「ご冗談を」

「俺が昨日までどれだけ勝ったと思ってる?明日は店の権利書くらいは賭けて貰うよ」

「それは」

 俺が連戦戦勝なのは、店の関係者なら誰でも知っている事。

 そして明日は今まで以上の金額が動くのも知っているだろう。

 後は打算と、袖の下だ。

「頼みますよ」

 カードを一枚渡し、頭を下げる。

 額としては少ないが、明日消えてなくなる組織に義理立てする必要は無いと考えれば話は別。

 むしろ逃げるためには、少しでも多くの金を持っていた方がいい。

「警察は?」

「証拠を幾つか消してから呼ぶつもり」

「分かりました。中へどうぞ」

 カードと引き換えに俺達を中へ通す警備員。

 これで明日失敗すれば、俺も警備員も名古屋港に浮かぶだけだ。


 店内は、昼間以上の濃い雰囲気。

 客層も生徒よりは大人が圧倒的に多く、接客もやや過剰気味。

 抱き合う撫でるは当たり前。

 店の奥に消える連中も後を絶たない。

 それも今夜までなので、バニーガールに生徒風の子がいないかだけを確かめカウンターへと向かう。

 マッチョな男は俺を覚えていたのか、無言で牛乳を出してきた。

 だから、ジョッキで出すなよ。

「夜は、学生はいないんですか」

「いるにはいるけど、指名料は5倍。その分サービスも倍にはなる」

 5倍にならないところは悲しいが、倍でも過剰。

 とりあえず、指名出来る子を確かめる。


 昼に見るのとは別リストで、中にはどうみても20才を越えてる写真も載っている。

 この暗さと酔いが回れば、判別は殆ど付かないだろうが。

「この子を」

 いつもの愛想の悪い子を指名し、永理達にもジュースを頼む。

 弟は口を開けて、ただ店内を見渡すだけ。

 高畑さんも同様。

 違うのは、俺を刺すような目で見ている我が妹だけか。

「ここで、何してるの」

「俺は何もしてないぞ」

「最低」

 何が最低かは知りたくないし、本当に死にたくなってきた。

 一体俺は何のために生きてきたのかな。


「また来たの。……なに、この子供」

「色々とね。サービスは倍って聞いたけど」

「馬鹿じゃないの」

 客ではあるが、馬鹿じゃないと思う。

 この店での俺に対するサービスって、少しでも過剰だった事はあるのかな。

「明日って聞いてるけど。大丈夫なの?」

「店ごと無くなるよ。オーナーは逮捕されるか失踪するか。二度とこの辺りには顔を出さなくなる」

「まさか」

 笑いつつ、すがりたいという思いが顔に浮かぶ。

 この時間の出勤は給料も良いだろうが、マッチョの話通りサービスも過剰。

 どれだけの借金を背負い、どんな思いで働いているのかと少し考えてしまわなくも無い。

「……生徒や学生の全リストは手に入るかな。辞めた子も含めて、中等部から大学生。専門学校生全員」

「どうするの」

「警察が家に訪ねてこられても困るだろ」

「ああ、そういう事。でも多分、無理よ。オーナーの部屋に置いてるから」

 それだけ分かれば十分だ。

 明日。それとも今日狙うか。

 バックアップもあるだろうが、それはオーナーの自宅を探せば済む話だ。


「いらっしゃいませ」

 低い、肌にまとわりつくような声。

 ふと顔を上げると、オーナーがいやらしい笑みを浮かべて俺の後ろに立っていた。

「蛇」

 小声でそう呟く永理。

 可愛らしい容姿と穏やかな物腰とは裏腹に、内面はこういう人間。

 敵に対しては容赦が無い。

「はい?」

「いえ。子供にはヘビーな雰囲気だなと思って」

 如才ない笑みを浮かべ、オレンジジュースを口にする永理。 

 オーナーは曖昧に笑い、俺の肩に手を置いてきた。

「明日の偵察か。今引くなら、許してやるぞ」

「言ってろよ。骨の髄までしゃぶってやるから」

 俺が言う台詞ではないが、やる事はやらなければならない。

 頼まれた事は果たす。

 ただ、それだけのために。

「こちらの二人を賭けるつもりかな」

「この店が10軒あっても、一人分にもならないんだよ」

 そう言い捨て席を立つ。


 後は明日。

 幾つか仕掛けてもいいが、沢さんの邪魔になっても本末転倒だ。

「お帰りですか」

「子供がいるんでね」

「自分も子供だろ」

 確かにそうだ。

 というか、俺は子供なのに何やってるんだ。

「あら。もうお帰り?」

「きゃー。この子可愛い」

「こっちの子は誰」

 気付くと周りをバニーガールが囲み、永理達をもみくちゃにしていた。

 弟はお姉さん達に囲まれしどろもどろ。

 柳君の代わりといった所か。

「少し遊んでいきなさいよ」

「そうそう。帰るには、まだ早いわよ」

「1ゲームだけでも」

 営業の台詞か。

 明日に備えての、向こう側からの仕掛けか。

 背を向けるのはたやすいが、隙を見せるのも必要か。



 ソファーに永理達を座らせ、ラビットレースを数度遊ぶ。

 賭けている額は、子供の小遣い程度。

 周りのテーブルからすれば二桁三桁違うだろうが、物珍しさもあってか反応は好意的。

 バニーを独占しているため、時折殺気めいた視線は感じるが。

「また君か。今日は大勢だの」

 バニーを引き連れ現れる主。

 彼は俺達のテーブルに座ると、カードをテーブルのスリットに差してバニーの肩に手を触れた。

「好きな数字を押しなさい」

「え、いいのー?」

「わしは、こっちを押すからいいわい」

 バニーの太ももを撫でるヒヒ親父。

 しかしその程度でバニーガールは動ぜず、どう考えても勝てそうに無いウサギに賭けた。

 これで店は儲かり、主は一層のサービスを受ける。 

 本当、大人の遊び方だよな。


 結果は当然惨敗。

 高畑さんが、1、2倍という配当を得る。

「祝儀、祝儀」

 分厚い札束をテーブルの上に放る主。 

 しかし高畑産はそれをつき返し、固い顔で首を振った。

「知らない人から、お金は、貰えません」

「いい親御さんを持ったようだな」

 一瞬鋭くなる瞳の奥。

 道楽者にしては感情が出すぎたな、今。

 刑事か、それとも別組織。ここのオーナーの関係者。

 とにかく、注意はしておこう。

「こっちはどうだね」

 指から抜かれる、ダイヤがはめ込まれた指輪。

 それは高畑さんの目の前を通り過ぎ、俺の手元へと転がり込んできた。

「何かと物入りだろう。好きに使いたまえ」

「助かります」

 断るのは簡単だが、受け取ればこっちのもの。

 逆にこっちからコントロールする事も可能になる。

「何者?」

 声を潜めて尋ねてくる永理。 

 どうやら、彼女のセンサーにも反応したらしい。

「分からんが、ただの金持ちではないだろ。特に問題は無い」

「だといいけど」

 危ぶむような視線を送り、それでも顔をテーブルへ戻した時は満面の笑顔。

 ある意味、俺以上の策士だな。


「さて。そろそろ帰るか」

「えー、まだいいじゃない」

「この子達も残りたいって」

「なんなら店に」

「帰るんだ」

 席を立ち、バニーガールを見下ろしそう告げる。

 これは懇願でもなければ、注文でもない。

 俺の意思を伝えただけだ。


 それがどう作用したのかテーブルの周りは一瞬にして静まり返り、遠くのテーブルの嬌声がうら寂しく響いてくる。

 バニーガールは全員顔を伏せ、中には泣きそうな子までいる。

 脅したつもりは無かったが、こっちにも都合や感情は存在する。

「最後にいい物を見せてもらったわ。さて、わしも帰るか」

 肩を揺すらせ、自分が連れてきたバニーガールだけを伴い去っていく主。

 バニーも仲間と見るべきだろうな。

「あ、あの。お会計は」

「全部チップにして、従業員に渡してくれればいい」

「は、はい。ありがとうございます」

 声を揃えて、一斉に片膝をつくバニーガール。

 これなら、小馬鹿にされてた方が余程良かったんじゃないのか。

「脅すから」

「じゃあ、働きたいのか」

「そう言ったらどうするの」

「お兄さんが許しません」



 今度の出口は、学校の近くにあるマンションの地下室。

 そこから地上へ上がり、教えられたコードを入力してドアを開け外に出る。

「じゃあ、またね」

「ああ」

 高畑さんを伴い、中等部の女子寮へと帰ってく永理。

 今日は彼女を泊めるとの事。 

 青春万歳だな。

「あ、あの。その。俺はその、あれ。どういったら良いのか」 

 後ろから聞こえる、歯切れの悪い台詞。

 このまま逃げたくなるが、さすがにそういう訳にもいかないようだ。

「あの。俺、誤解してました。お兄さんの事」

 その呼び方は止めろ。

 しかし、誤解を解くような事ってあったかな。

「よく分からんけど、永理達を寮まで送ってやって」

「分かりました。お兄さん」

 深々と頭を下げ、飛ぶようにして走り去る弟。

 全く持って意味が分からん。



「特に反応は無いよ。ただ、ガラス玉だけどね」

 木之本鑑定士の鑑定結果は贋作と出た。

 ただ、これを贈って来た相手の意図はなんとなく読めた。

「どうしてこんな物を浦田君に?」

「明日の賭けで、俺が無一文になるとする。そこでオーナーが「ダイヤの指輪があるでしょう」と提案。それを元手に勝負をするけど結局負け。調べてみたらガラス玉で、「お客さん、それはないでしょうという話になる」

「ああ、そういう事」

 素直に納得する木之本君。

 ただしそれは推測出来る可能性の一つ。

 ガラス玉かどうかは、宝石店か質屋にでも持っていけば分かる事。

 ただし勝負は明日なので、相手もやや策が雑になっているのかもしれないが。

「僕は、あまり賛成しないんだけどね」

 それとなく諌めてくる木之本君。

 ただ言葉で言ってくるだけまだましで、体にあざが出来る事も無い。 

「こういうやり方以外、思いつかなくてね。しかし、ショウの指輪とはすごい差だな」

 方や、贈る相手への思いが込められた。

 一方策謀以外には何も感じないガラス玉。

 泣きたい気分どころの騒ぎじゃない。


「高畑さんは、ブックメーカーをなんて?」

「うるさくて、騒がしくて、意味不明だって。健全で結構だ」

「大抵の人の感想だと思うけどね」

 そう言いつつ、かなり安心した顔になる木之本君。

 名古屋での保護者は実質彼が受け持っているようなもので、その動向を気にするのは当然。

 だったら俺も連れて行くなという話だが、木之本君もそこまでは固い事を言いはしない。

「木之本、端末の調子が」

 彼の部屋に入って来るや、俺と目を合わせるショウ。

 そして端末を預けて、こちらへと近付いてきた。

「明日の試合。出ないとまずいのか」

「出た方がブックメーカーは潰しやすい。ただ、出なくても潰す方法はいくらでもある。その気がないなら、見学してればいい」

「お前は困るんだろ」

「困るという程でもない」

 自分の事より俺を気遣うショウ。


 ただそのためとはいえ、彼の意に沿わない戦いを強いるつもりはない。

 柳君同様、彼の拳もそんな下らない事で振るう必要は無いのだから。

 それでもショウは気にしたように俺の様子を窺い、その拳を握り返す。

 人が良いのか、友達思いなのか。

 そんな彼に負担を掛けている事が、少し心苦しくなってくる。

「アンテナの調子が良くないみたい」

「直りそうか?」

「衝撃で少し形が変形してたから、今取り替えた。接着するまで、少し時間が掛かるけど」

「お風呂行こう、お風呂」

 ベットから起きあがり、勝手にタオルを持ってくる光。

 大学院生ではあるが、今は高校へ通う方が多いくらい。

 どうもこの辺りに住み着いているようだ。

 しかし寮の大浴場は、少し嫌な気がするんだが。



 無駄な肉のない引き締まった体。

 盛り上がった筋肉には汗が浮かび、そのたくましさを一層引き立てる。

 かといってボディビルダーのように過剰な発達の仕方ではなく、しかし男なら功でありたいと思わせる力強さ。

 こういうのが見られるのも、一応は男の特権か。

 湯船に浸かりながらショウの背中を眺め、自分でも笑ってしまうくらい馬鹿らしい事を考えてしまった。

 男の裸に見とれていても仕方ない。

「揃ってるな」

 タオルを肩に掛け、軽い調子で大浴場に入ってくる塩田さん。

 銭湯が社交場とは良く言った物で、まさに裸の付き合いが出来る場所。

 とはいえ俺は大して親しみたくもなく、並んで体を洗っているみんなには近付かない。

 というか、並ぶなよ。

「試合、無理して出るなよ」

「ああ」

「お前、大学院は」

「適当に頑張ってます」

「実家には帰ってるか」

「ええ。週末はたまに」

 遠くで聞こえる先輩と後輩の会話。

 風呂場独特の反響で、声はさらに遠く感じる。


 さすがに湯船から上がり、みんなとは反対側の列で頭を洗う。

 風呂は各個室に付いているが、開放感においては格別。

 逆に一人を好む人間は、ここは無駄な施設としか思えないだろう。

「思い出すな。サウナに閉じこめられた事を」

 突然背後から話し掛けてくる塩田さん。 

 あれはとっくに時効で、何より俺一人でやった事ではない。

「懐かしいなー」

 俺を閉じこめる、という話には発展しそうに無い口調。

 彼も来月には卒業。

 昔に思いを馳せる事くらいあるだろう。

「卒業前の思い出が欲しいって思うよな」

「別に」

 頭をシャワーで洗い流し、ボディソープを手の平に付ける。

 塩田さんの位置は曇っているが、前の鏡で確認済み。

 何より、そこまではしゃぐ性格でも無いと思うが。

「勝負しようぜ」



 男5人。

 サウナにこもって砂時計を睨み付ける。

 ああいう入り方をされたら「結構です」とはさすがに言えず、またすぐに出ては場が白ける。

 とはいえ、そろそろ限界。

 少しめまいがしてきた。

「卒業か、俺も」

 再びの、去りがたい台詞。

 浮かし掛けていた腰を戻し、顔からしたたり落ちる汗を手で拭う。

「そう考えると、中等部よりは大人しくなったよな」

「あの頃は何も考えてなかったんでしょう。特に、ユウやショウが」

「俺は何も」

「ひどかったからね、確かに」

「本当、本当」

 何となく笑う俺達。

 大笑いでもなく失笑でもなく。

 自然と、少しだけ肩が揺れていく。


 思い出とも呼べない思い出。

 思い出すにはまだ早い、ただきっと忘れる事もない。











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