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スクールガーディアンズ  作者: 雪野
第32話
349/596

33-3






     32-2




 良く食べて良く眠れば、何もかもが良くなっている。

 なんて、子供の頃はお母さんが言っていた。

 実際にそこまで世の中都合よくは出来てないにしろ、食べて寝る事で解決出来る場合もある。

 例えば、私の疲労程度なら。


 特に筋肉痛に悩まされる事も無く、朝のジョギングも普通にこなして学校に登校してくる。

 変わらない、制服の着用を呼びかける集団。

 それに付随した、風紀の乱れを戒める集団。 

 さらに彼らの周りには、スーツ姿の大人が何人も立っている。

 この学校の良さに自由や寛容さがあったと思うんだけど、それはすでに遠い昔になったようだ。

 ただし私は要注意人物とされているのか、声を掛けるどころか近付いても来ない。 

 勿論それに寂しさを覚える理由は無く、これからずっと無視をして欲しい。


「おはよう」

「おはよう。早いね、今日は」

「たまには」 

 朝日のまばゆさもかすむような、きらめく笑顔を浮かべる柳君。

 髪はきらきらと輝き、笑顔は甘く、声は染み入るように切なく優しい。

 ただ笑っただけなんだけどね。

 彼はもこもこしたダウンジャケットを着ていて、勿論制服ではない。

 しかし私がそばにいるせいか、制服着用を呼びかけるグループが近付いてくる事は無い。


「ちょっと懐かしいね」

 目を細め、ポツリと呟く柳君。

 彼がこの学校に来て1年以上経つが、こういう光景は最近の事。

 つまりはもっと遡った過去。

 渡り鳥時代の話をしているんだろう。

「他の学校では、朝の服装チェックや挨拶の呼びかけは良くやっててね。それに、制服は義務化されてた」

 私の考えを裏付けるように説明してくれる柳君。

 ただ懐かしいという言葉とは別に、それ程嬉しそうな顔をしている訳でもない。

「なんにしろ、押し付けられるのは良くないよ。他校では、生徒よりも教師が押し付けてくるんだけどね」

「授業を教えるだけじゃないの、教師の仕事は」

「それ以外にも色々やるんだよ。担任制は勿論、クラブの顧問、生徒会の顧問、生活指導、進路指導、テスト作成、家庭訪問」

 つらつらと上げられる教師の仕事。


 それに似たような事をやってる教師もいるだろうが、基本的に教師は授業だけに専念するのがこの学校。

 顧問は過去に運動や美術などの経験があり、かつ自分から申し出た場合だけ。

 体育系の教師が顧問になっているところも少しはあるが、大抵は外部からのコーチを招いている。

 家庭訪問も無くは無いとしてもそれは生徒指導課や進路指導課の仕事で、教師が関わる仕事ではない。


「先生と生徒の絆がここより強いよね、その意味では。担任だと、親と子みたいな関係になってる」

「先生も大変じゃないの。そんな仕事抱えてたら」

「だからやる気が無かったり、怒りっぽい先生が担任になると悲惨だよ。ここみたいにクラスを変える事も出来ないから、1年間その教師と過ごさないといけない」

 聞いてるだけで気が滅入ってきた。

 この学校の教師の良さは、良くも悪くも放任主義。

 授業をきちんと受けていて、もしくは成績さえ良ければ後は関知して来ない。

 学校に人間形成という役割があるにしろ、それは大人よりも生徒同士で育むものとされている。



 正門を潜り抜けようとしたところで、柳君が足を止めた。

 彼が呼び止められた訳でもなく、私も同様。

 その視線の先には、声高に怒鳴るスーツ姿の男の姿があった。

 年齢としては50くらい。

 記憶に無い顔で、怒ってる内容も支離滅裂。

 ただ怒られている方は、そんな事は関係ないだろう。

「止めるとか言う気?」

「注意するだけだよ」

「あまり目立ちたくないんだけど」

 とはいえこうなっては私も見過ごす訳にも行かず、彼の後へと付いていく。


 男の声は甲高く、言っている内容はおそらく本人も分かってないだろう。

 ただ怒りをぶつけ、自分のストレスを発散してるとしか思えない。

 普段の授業では、単なる教師と生徒。

 しかしここでは咎める側と咎められる側。

 一対一ならともかく、怒られている生徒の周りは大勢の大人や生徒が取り囲む。

 ここで反論したり逃げ出す勇気のある人間は、そう何人もいない。


「その辺で止めたら」

 まして、声を掛けるような子は。

「朝の貴重な時間を、こんな事で無駄にしても仕方ないよ。ほら、行って」

 柔らかい動きで人垣を割って入り、怒られていた男の子の腕を取ってそこへ軽く押す柳君。

 男の子は夢見心地といった顔で彼を振り返り、しかしすぐに我に返って脱兎のごとく駆け出した。

「はい、終わり。そろそろ、授業も始まるよ」

 何事も無かったのように、割れたままの人垣を抜けていく柳君。

 あっけに取られていた教師は血相を変え、すぐさま彼の前にと回りこんだ。

「お前、一体何様のつもりだ。俺は今、あの生徒に指導をしてたんだぞ」

「ストレスを発散させてただけじゃないの。第一、何をどう指導してたの。あの子が、何をやった」

「何って、それは。服装が乱れてて」

「怒鳴っても、服装の乱れは直らないと思うよ。なんか、無駄な人生を過ごしてきたみたいだね」

 声は優しいが、言葉は刺すように鋭い。

 男は赤かった顔を青くして、右手を大きく振りかぶった。


「失礼」

 軽く伸びる右足。

 男の振り上げた腕の肩にかかとが添えられ、平手打ちは肘だけの中途半端な動きを見せる。

「お、お前」

「殴りたければ、いくらでも」

 バランスを崩す事無く、ゆっくりと足を引く柳君。

 技術、体力、センス。

 比較の対象にすらなってないのは、誰の目にも明らか。

 第一お互いが戦ってすらいない。

「きょ、教師に逆らってただで済むと思うな」

「懐かしいね、そういう言葉。他の学校では良く聞いたよ」

 つまりこの教師は草薙グループではなく、柳君が転々としていた普通の学校から赴任してきた教師か。

 そこではこういう態度が許され、まかり通っていたのだろう。

 また今の草薙高校は、それが許されつつある状況。

 少なくとも、ついさっきまでは。

「僕を脅すのはいいけど、一応大学卒業資格を持っててね。停学も退学も、大して意味はないよ」

「な」

「それで、続きは今から?それとも、授業が終わってから?」

 愛らしい笑顔の陰に潜む獣の気配。

 男は「ひっ」と叫び、おぼつかない足取りで人垣の後ろへと逃げていった。

「じゃあ、そういう事で。用があったら、いつでも来て」




 昼休み。

 食堂でご飯を食べながら、朝の話を説明する。

「もう、聞き飽きた」

 あんかけうどんを食べながら、ストレートに告げてくるサトミ。 

 良いじゃないよ、何回言ったって。

「でもさ。さすがに退学したら困るんじゃないの」

「どう思う?」

 話を振られたケイは、ハンバーグを皿から落としてそれを睨みつつ答えてくれた。

「退学になろうと追放されようと、学校に来れば良いだけさ」

「何よ、それ」

「傭兵はそうやって施設を占拠して、勢力を伸ばす事もあるらしい。ただ退学になっても学校来るのは、冷静に考えるとかなり恥ずかしい」

 確かにそうだ。

 私が退学になってそれでも明日から学校に来ていたら、間違いなく笑い者になる。


「それに柳君が退学するメリットも無い。デメリットも無いけど。だから傭兵は怖いんだ。処分に関係なく行動出来るから」

「前言ってた、この学校の生徒と同じ権利を有するって事は?権利があれば、義務もあるんじゃないの」

「普通に考えれば。ただ、建物を爆発させたりする連中に、どういう常識が通用する?」

 そんな事を言われては、話が終わる。

 ただし、彼が言ってる事に間違いも無い。

 つい忘れがちになってしまうが、彼らにとってはそれが常識なんだと。




 放課後。

 元は資料室だった、今は私達の本部へとやってくる。

 でも本部はいいけど、支部はどこにあるのかな。

「他に借りてる場所には、誰かいるの?」

「今は、誰もいない。分散してそこを狙われたら危険だと思って。本当はそこに以前のように配置したいんだけど」

「見てきていい?」

「それは構わないけど。リストを渡すから、見られる範囲で回ってみて」

「了解。ショウ」

 リンゴを丸かじりしていたショウを呼び寄せ、インナーのプロテクターを確認する。

 さっきから減らないというか、もしかしてずっと食べ続けてるんじゃないだろうな。

「いくつ食べてるの」

「気にした事無い」

 素直に、普通に答えられた。

 体に悪いものではないけど、ダンボール一箱分食べる物でもないと思う。


 渡されたリストを確認し、一番近い支部予定地へと向かう。

「もうすぐ誕生日じゃないのか」

「誰の」

「誰って」

 私の顔を真上からまじまじ見つめるショウ。

 そう言われて、頭の中のカレンダーを確認する。

 私の誕生日は2月5日で、今は1月の末。

 最近ばたばたしてて、そんな事完全に忘れてた。

「サプライズパーティでもやってくれるの」

「どこがサプライズなんだ」

 二人でたわいも無い事を言いあいながら、廊下を歩く。

 暖房の効きが悪く肌寒いけれど、こうしていれば心は温かくなる。


「なんだかんだ言っても年は取ってるよな、俺達」

「まあね。成長してるかどうかはともかく」

 少なくともショウは、心身ともに成長した。

 特に体は、初めて出会った頃よりはかなり大きくなっている。

 あの頃から私より背は高かったけど、ここまで見上げる程ではなかった。

 もう一つ言うのなら、私があの頃からどれだけも成長してないという事になる。

「あーあ、やだやだ」

「なにが」

「色々とね」

 年を取っても変化は無く、ただ齢を重ねるばかり。

 賞味期限の切れた不老不死の薬でも飲んだ気分だ。


「通り過ぎたぞ」

「何が。私はまだまだ、これからよ」

「意味が分からん。空いてる部屋の話をしてるんだ」

 封印されたドアを指差すショウ。

 ああ、こっちの話か。

「ちょっと待って。マスターキーを預かってきたから」

 ドアの脇にあるスリットにカードを差し入れ、ロックが解除されたのを確認する。

 しようと思ったが、すでにロックは解除済み。

 良く見ると、封印のシールも剥がされた後がある。

「誰かいるかもしれない」

「俺が先に入る」

「分かった。……モトちゃん?……いや、進入された形跡がある。……ええ、大丈夫。……了解。慎重に入って」



 手動に切り替え、ゆっくりとドアを開けて忍び足で入っていくショウ。

 私もその足運びに合わせて、物音一つ立てず後に続く。

 歩幅、タイミング、呼吸。

 一つ一つを重ね合わせ、意識も共有した気になる。

 なりきる、思い込むと言うべきか。

 彼の視覚、聴覚、触覚、判断、思考。

 長い間に培われた経験と信頼。

 勿論、本当に意識を共有するなんて事はありえない。 

 だけどこの瞬間だけは、それを真実と思いたい。



 ここもおそらくは資料室か物置。

 部屋の隅にはダンボールや椅子が積まれ、何かの活動をした雰囲気は無い。

「何してる」

「わっ」

「え」

 唐突に、ダンボールの隙間から現れる人影。

 スティックを振り下ろそうとしたところでどうにか思いとどまり、それを背中へ戻して肩で息をする。

「それは、こっちの台詞なんだけど」

「逢引か」

 何時代の人間なんだ、この人は。

 けだるそうに欠伸をした舞地さんは、ダンボールの上に座り込みそのまま目を閉じた。

「ちょっと。大体、どうやって入ったの」

「あの程度のロック、開かない方がどうかしてる」

「じゃあ、もう一つ。何してたの」

「隠れ家は、多い方がいい」

 本当かどうかは知らないが、もっともらしい答えは返ってきた。

 やってる事は、寝てただけにしても。

「一応私達が預かってる部屋なんだから、勝手に入ってこないでよね」

「ああ」

 返って来る生返事。

 間違いなく寝てるな、この人。

「もういいけどさ。帰る時は、鍵掛けておいてよ」

 すでに返事は無く、その姿は再びダンボールの隙間に消える。

 毛布なんて、どこから持ってきたんだか。




 次の空き部屋にやってくるが、さすがにこっちは誰もいない。

 というか、空き部屋なのにいる方がどうかしてるんだけど。

 ただ封印は破れ、侵入された形跡はある。

「どういう事?」

「全然難しくない」

 突然後ろから聞こえる声。

 振り向くと、例によりキャップを被ったGジャン姿の舞地さんが立っていた。

 付けてたのか、この人。


「何が。執行委員会がカメラでも仕掛けてるとか?」

「向こうは封印のシールを持ってるから、気付かれるような真似はしない」

「だったら、いたずら?」

「子供には、難しかったか」

 曖昧な事を言って、私とショウの肩に触れる舞地さん。

 それこそ、駄目な子供をあやすような表情で。

「今、何才だ」

「もうすぐ17」

「玲阿と知り合って、何年経つ」

「中等部の1年だから。2年、3年。1年、2年。もうすぐ5年」

「そういう事だ」

 どういう事よ。

 皆目見当も付かないし、ショウも肩をすくめて首を振る。

 禅問答してるじゃないっていうの。

「お化けが出入りしてるとか?」

「本当に子供だな」

「じゃあ、誰が出入りしてるのよ」

「浦田に聞いてみろ。弟の方に」



 埒が開かないので、言われた通りケイを呼び出す。

 これといった予備知識は彼も無いはずで、封印のシールが剥がれている事だけを告げる。

「ああ、そういう事」

 すぐに納得するケイ。

 こういう事に関しては、妙に勘が鋭いからな。

「それで?」

「ガーディアンの数が減って、夜にもなればパトロールも手薄になる。最近ちょっと仲の良くなった良男君と良子さん。部室からの帰り道。寒さと暗さも手伝って、なんとなく指先が絡み合う」

 なんか安っぽいストーリーだけど、それはこの際おいておこう。

「ふと通りかかった廊下。封印のシールが貼られた空き部屋。なんとなく足を止める良男君。赤らんだ顔で彼を見上げる良子さん。後は、18才になってから」

 尻切れトンボで終わったが、言いたい事は十分分かった。

 でもって、この部屋を燃やしたくなってきた。


「だけど、鍵はどうするんだ。シールは破れても、合鍵が無いとどうしようもないだろう」

「そういう時に玲阿君が恥を掻かないよう、言い事を教えて上げよう」

 恥を掻くって、何を想定して話をしてるんだ。

 でもってこの子は、何を真剣に聞き入ってるんだ。

「こういうのは、斡旋組織というか仲介するグループが存在する。ほら、この間の木之本君にまとわり付いてた女。あれを部屋に引っ張り込もうとしてた職員がいただろ」

「売春組織って事?」

「そこまで露骨かは知らないけどね。部屋の合鍵を作るのは、生徒会や学校関係者なら難しくない」

 ますます嫌な気分になってきた。

 とりあえず、この部屋は絶対に使いたくないな。

「さっき、舞地さんが寝てた部屋は?」

「あそこは、私専用。キーも変えてある」

 何を言ってるんだか。




 その後も他の空き部屋を回ってみて、封印の剥がされている場所をいくつか見つけた。

 しかし考えてみると、学内の空き部屋はここだけじゃない。

 今だけは、風紀の乱れを徹底的に糾したくなって来た。

 本部へと戻り、チェックしたリストをモトちゃんに渡してケイの話を付け加える。

「そういう悪い事をする人がいたか。いいわ、部屋については変えてもらう。キーも、こっちで変更する。そういう使われ方を防ぐ以前に、執行委員会がマスターキーを持ってるのはこっちも防御面で良くないから。木之本君、お願い」

「キーごと変える?それとも、システムを書き換える?」

「キーを変えたいけど、予算がね。今は、システムだけを変更して。すぐに破られても構わないから」

「分かった」

 近くの卓上端末にカードキーを差込み、キーを叩き出す木之本君。

 その作業を見つつ、画面の端に表示されている部屋のリストを指差す。

「この部屋。舞地さんが勝手に使っててさ。キーを書き換えられない?」

「ちょっと見てみるね。……多分、キーごと換えてある。システムを突破しようと思ったら、もっと性能のいい端末が無いと」

「サトミ」

「下手に触ると、こちら側へ侵入されるわよ。データを全部盗まれて、巧妙に書き換えられるはず」

 あの人は自分の昼寝のために、そんな事をやってる訳か。

 でもそれだけ強固なプロテクトが掛かってるのなら、私達が利用する際にも安全。 

 これはちょっと、痛しかゆしだな。

「緒方さん呼んで。緒方さん」

「彼女もどうかしら。……ええ、私。……セキュリティについてね。……ええ、お願い」



 しかし緒方さんもお手上げという結果に終わる。

 私は何がどうなのかも分からないし、特に問題とは思ってない。

 緒方さんを呼んだのは、単に舞地さんへの対抗意識からだ。

「池上さんではなく、他の人が組んだシステムだと思います。あの人は、突破する方が専門ですから」

「緒方さんは、何が専門なの」

「私はこれといって。どれも平均的にこなせますけど、飛びぬけて出来る事はありません」

 小声で説明する緒方さん。

 彼女は多少それに負い目を感じているようだが、どれもこなせない私はどうすれば良いっていうのよ。

「ちょっと舞地さんに文句言ってきて」

「誰が」

「緒方さん。同じ傭兵同士でしょ」

「同じじゃありません。全然相手になりませんよ私なんて。そんな」

 冗談ではなく、本気で拒否する緒方さん。

 彼女はより現役に近いので、舞地さん達への畏怖の念が強いようだ。

 私からすると、猫娘にしか思えないんだけど。


「今は普通の生徒じゃない」

「昔の彼女達を知ってれば、雪野さん達も考え方が変わると思いますよ」

「ワイルドギース時代って事?」

「ええ。憧れの的でもありましたけど、やはり私達程度では近寄りがたい存在でしたから。強くて、格好よくて、絶対に信念を貫いて」

 少し頬を赤らめ、そして誇らしげに語る緒方さん。

 そんなものかなと思いつつ、私はお茶を飲む。

 彼女達の能力は十分に思い知らされているが、人間的にそこまで恐れる程でもないと思う。

 ただし私が知ってるのは、この学校での彼女達。 

 緒方さんの言う、渡り鳥やワイルドギースとしての彼女達ではない。

「いいや。沢さんに聞いてくる」

「舞地さんの事をですか?あの人も怖いですよ」

「そっちじゃなくて、鍵の事。これは、私への挑戦よ」

 みんなから白い目で見られたが、そんな事を気にしていたらこの年まで生きてはいない。



「僕も専門じゃなくてね。役には立てないよ」

「そういうツールとか、端末は無いんですか」

「あるにはあるけど、使いこなすスキルが無い。僕も、全てがそこそこなんだ」

 苦笑しながら、舞地さんが寝ていた部屋のシステムを卓上端末で確認する沢さん。

「ただし外部から突破される事は無いから、立てこもるには向いてるよ。内部に発電装置も備わってるし、水と食べ物さえあれば篭城出来る」

「何のために」

「なんだろうね。それに篭城は、外部からの助けが無いと意味が無い。やらない方が良いよ」

 どっちなんだ。

 仕方ないので、七尾君が持ってきたクッキーをポケットにしまいお土産にする。

 お腹が空いてないのよ。

「リスだね、まるで。だけど、そろそろ冬眠から醒める頃じゃないの」

 ひとしきり笑い、システムの画面を覗き込む七尾君。

 彼も分からないと言いたげに首を振り、画面を軽く指で触れた。


「ベーシックというか基礎の部分は共通してるんだけど、個人が組むと大抵癖が出るんだよね。俺は見た事ないから、多分学外の人間が組んだんだと思うよ」

「サトミが組んでも、その癖は分かる?」

「彼女のシステムは、一見突破可能で隙だらけ。一度入れば、そうと気づかれない内にこちらのデータが盗まれる」

 なんか、聞かなければ良かった話だな。

 でも、待てよ。

「これも、そういうシステムだってサトミは言ってたよ。でも、サトミのとは違うの?」

「彼女のシステムは、オーソドックスかつ繊細。意味も無く近付きたくなる感じなんだよね」

「そういう罠って事?」

「人間性が出てるんじゃないかな。それとも、容姿かな」

 何だ、結局はそこへ行き着く訳か。

「これは、どういう人間性が出てるの」

「一目見て、相当強固なプロテクトが掛かってると分かる。それでいて小さな隙がいくつかあって、突破可能にも思える。腕試しを誘っておいて、後からばっさりとやられる」

「嫌なタイプだね」

「システムとしては面白いよ。それに時間を掛ければ、突破も可能だしね」

 狡猾というか巧みというか。

 あるいみ優秀なセキュリティではあるんだろうけど、性質が悪いのもまた確かだ。


「すぐ解除したいんだけど」

「自警局から、何か言われた?」

「全然。でも、舞地さんに負ける訳には行かない」

「全く意味が分からないんだけどね。沢さん、何か方法あります?」

 話を振られた沢さんは顎に手を添え、おかしそうに何度か頷いた。

「傭兵には傭兵。旧クラブハウスに行ってごらん」

「私、立ち入り許可がいるんですけど」

「それは僕の方でなんとかするよ。あそこになら、どうにか出来る人間がいると思う」




 夕暮れ時。

 廃材から伸びる薄い影。

 その奥には闇が広がり、カラスの鳴き声が森に木霊する。

 あるけどあるけど人にはすれ違わず、ただ冷たい風だけが吹き抜ける。

「怖いな」

「何が」

 怯えの欠片すら見せずに尋ねてくるショウ。

 お化けに怯える彼というのも、想像は出来ないが。

「どうも私、ここが嫌なんだよね」

「だったら帰ろうぜ。セキュリティはどうでもいいだろ」

「全然良くない。あれは、舞地さんの私に対する挑戦よ」

「たまには根拠とか、理由を教えてくれよな」

 小声で愚痴り、早足で歩き出すショウ。

 置いてかれては泣きそうになるので、慌てて後を追いすがる。

 しかしこの自分の足音が、また怖いんだ。



 結局はショウの腕にしがみつき、旧クラブハウスへとやってくる。

 気付けば空は真っ暗で、しかしデート気分どころの騒ぎじゃない。

 大体来たって事は、帰るって事じゃないの。

「小谷さんいる?」

 玄関にたむろしていた、柄の悪そうな男の子に声を掛けてみる。

 彼は怪訝そうに私を見上げ、「あっ」と声を出して尻餅をついた。

「そ、掃除ならしてる」

 何の話をしてるんだ。

 私って、あの時そんなに脅したかな。

「掃除じゃなくて、小谷さん。いや。彼じゃなくてもいいけど、傭兵で情報処理が得意な人は?」

「それは知らないし、小谷さんならそこにいる」

 玄関脇に顎を振る男の子。

 上まで階段で上がるのは一苦労なので助かった。

 それとも、沢さんが事前に連絡をしてくれたのかもしれないな。


「済みません。ちょっといいですか」

「掃除ならしてるぞ」

 真顔で同じ事を言ってくる小谷さん。

 それはもういいんだって。

「掃除はどうでもよくて。いや、良くはなくて確実にやって下さい。それで、部屋のキーのシステムについて聞きたいんですけど」

「全く意味が分からん」

「意味はどうでもいいんです。これ、これ見て下さい」

 端末を取り出し、彼の端末とリンクさせて情報を送る。

 小谷さんは画面に見入り、小さく「ああ」と声を出した。

「かなり複雑なシステムだな。俺はそういう才能は無いから、良く分からんが」

「これを書き換えるか、解除出来る人は?」

「ここの情報局に行けば、すぐに終わるだろ」

 すごい遠回りをしたような気になってきた。

 というか、初めからそうすればよかったんじゃないの。

「また戻ってくるって事は無いですよね」

「傭兵のレベルがどうかは知らないが、ここの学校は大手企業とも提携して情報処理技術を高めている。それを考えれば、俺達を頼るよりは確実だ」

「でも、引き受けてくれます?」

「向こうにも傭兵は潜り込んでる。連絡はしておくから、話を聞いてみろ」



 息を切らせて特別教棟の前まで辿り着き、そこでしばらく息を整える。

 廃材の前を通ったら、物音はするは何かは光るは。

 今考えれば猫なんだろうけど、そういう冷静さは大抵後から沸いて来るもの。

 なんにしろ、冷えた体も温まった。

「情報局に行きたいんですけど」

「確認します」

 びくびくする事も無くIDカードを受け取り、専用の端末に通す女の子。

 玄関を守るガーディアンは男の子ばかりで、女の子というのは珍しい。

 いや。肩口に付いているIDは「SG」ではなく「執行委員会」

 とうとう、ここまでやってきたか。

「身元確認完了しました。中へどうぞ」

 愛想良く笑い、ドアを開けてくれる女の子。


 風を遮る透明な防護壁の中にはいるし、ヒーターもあるが夜にもなればかなりの寒さ。

 それでも文句を言わず、こうして優しく私達を迎え入れてくれる。

 普段私達に怯えていた人達も、夏の暑さ冬の寒さに耐えていた訳か。


「お茶買ってきて」

「え、ああ」

 特に聞き返しはせず、すぐに来た道を引き返すショウ。

 私はその背中を見送り、寒風の吹きすさぶ通路に立つ。

 体の芯から痺れていくような寒さ。

 指先は痛く、つい愚痴や恨みを口にしたくなる程の。

「買ってきた」

 自販機が近くにあったらしく、すぐに戻ってくるショウ。

 そのペットボトルを彼女達に渡し、飲むように促す。

「仕事中ですので」

「お酒じゃないんだからさ。文句言ってくる人がいたら、玲阿君が無理やり飲ませたって言って」

「おい。いや、いいけどさ。とにかく寒いし、飲んでも問題は無いと思うけど」

 笑いつつ、控えめに申し出るショウ。

 女の子達は顔を見合わせ、はにかみながらペットボトルに口をつけた。

 頬が少し赤いのは、果たして温かいお茶のせいだろうか。



「こういう事で、男女同権を主張して欲しくないな」

「男の方が、体脂肪は少ないんだぞ」

「女は大抵、冷え性なのよ」

 たわいも無い事を言いあいながらエレベーターを降り、情報局のブースへと向かう。


 ここは他の局を通らないで辿り着つくように設定されている特別なルート。

 だからこそ一般の生徒も、身元確認だけでやってこられる。

 私達の場合は、それとなく監視をされているようだけど。

 それは今更なので、受付にやってきてカウンターと目を合わせる。

 ここでは絶対に、物が書けないな。

「済みません。小谷さんの紹介で来たんですけど」

 カウンターに隠れている私に代わって話を進めるショウ。

 会話は全て、頭越し。

 疎外感って、多分こういう時に使う言葉だろうな。

「奥にいるって」

「生徒会長じゃないでしょうね、まさか」

「ああ、あの人も情報局か。でも、傭兵だろ」

「あの人は、傭兵じゃないの?」

 そう言われて、今その疑問に気が付いた。


 新カリキュラムではあるが、転入組。 

 過去の履歴は何も知らない。

 傭兵ではないにしろ、謎の多い人物なのは間違いない。

 未だに生徒会へは影響力を強く残しているようだし、内部では執行委員会と分裂しているのかもしれないな。



 柄にもない事を考えつつ、狭い部屋へと通される。

 部屋の真ん中に机と端末が置かれ、その周りに椅子が配置されている。

 壁には棚も何もなく、尋問用の部屋がこんな感じだったかなと思い出す。

 ここで私を搾っても、油は出ないと思うけどね。

「お待たせしました」

 ドアを開けて颯爽と入ってきたのは、背の高い綺麗な女の子。

 名前は知らないが、顔は最近良く見かける。 

 執行委員会の集会や主催の行事で司会役を勤めている女の子だ。

「そう言えば、個人的には名乗ってなかったわね。小牧祐こまき ゆうよ」

「ゆう」

「優しいじゃなくて、祐筆の祐」

 彼女もユウなら、私もユウ。

 しかし、同じなのは名前だけ。

 手足の長さも顔の作りも、何もかもが規格外。

 本当、神様なんとかしてよ。


「それで、セキュリティの突破ね。これは情報局としての仕事ではなく、私個人の仕事として引き受けます」

「お金取るの?」

「傭兵の基本だから、と言いたいところだけど。今見た限りでは、作った人間はなんとなく分かった。多分、恭夏ね」

「きょうか?」

「フルネームだと分かるかな。大内恭夏」

「ああ」 

 思わず机の上に拳を乗せて、そのまま力を込めてしまう。

 非力なのでみしりとも音はしないが、気分的には床へめりこませたいくらいだ。

「あの子との話は聞いてるけど、悪い子じゃないわよ」

「いい子でもないわよ。それに、舞地さんとは仲が良くない感じだったけど」

「仲が悪いんじゃなくて、添夏が負い目を感じてるだけ。システムを組んでくれと言われれば、断りようが無いわよ。それは添夏に限らずね」

 それって、舞地さんが大物だからって事か。

 ワイルドギースとして名を馳せていたというのは分かっているが、どう馳せていたのかは全然知らない。

 断片的な彼女のすごさは垣間見ても、私のイメージはソファーの上で寝ているか猫にご飯を上げてる姿だから。



「確かにこの学校では、舞地さん達は比較的大人しいから。それに、元々粗暴なタイプでもないし」

「どうもピンと来ないんだけど。そんなに舞地さん達は怖いの?」

「怖いというか、傭兵や渡り鳥のトップとして活躍していたから尊敬されていると言った方が正確ね。依頼は確実にこなすし、誰にも屈しない。いわば、ヒーローヒロインな訳よ」

「舞地さんがね」

 池上さんや名雲さん、柳君がヒーローヒロインというのはまだ分かる。

 でも舞地さんがヒロインというのは、なんか違和感がある。

「それで、システムはどうする?」

「いくらいるの」

「相手が相手だし、私も彼女達を敵に回すのはリスクが大きいから」

 端末に表示される、見た事も無い数字。

 こんなお金があれば、連合の復興も夢ではないな。

「悪いわね。格安で引き受けても良いんだけど、相手が相手だから」

「いいや。本人に直接言ってくる」

「あの。私の話聞いてた?」

「怖いのは、昔の舞地さん達でしょ。今は、ただの猫娘じゃない」




 端末でサトミに報告をして、舞地さん達の居場所を聞く。

 正確には分からないが、直属班のオフィスが一番確実らしい。

「行きましょ」

 何故か付いてくる小牧さん。

 少し腰は引け気味だが、怖いもの見たさという心境だろうか。

「小坂さんはどういう人なの。ずっとあそこにこもって、むっつりしてるけど」

「あのままよ。不言実行タイプ。はしゃがず騒がず、目立たず慌てず」

 私とは全く真逆なタイプと言うわけか。

 いや。似た人はここにもいた。

「あなた、普段は大人しいのね」

「俺?」

「そう。草薙高校の玲阿四葉と言えば学外でも相当有名だけど、ちょっと印象が違う」

「俺はこれが普通だから」

「もてるわけね、それは」

 明るく笑い飛ばす小牧さん。

 なんか、突き飛ばしたくなってきたな。

「サトミも有名?」

「勿論。才色兼備の天才美少女だから。でも、表立って彼女にアピールするって雰囲気では無いわね。高嶺の花なのかしら」

「ファンクラブは」

「何、それ」

 とてつもなく覚めた目で、疑うように見据えられた。 

 そんなに変な事を言ったかな、私。


「後、あなたも有名よ」

「私?小さいから?」

「小さいのに、強いから。ナノニトロって呼ばれてる」

「訂正して。お金払うから」

「いいじゃない、面白くて」

 そりゃ他人からしてみれば面白いかもしれないけど、本人からすれば最悪としか言いようが無い。

 第一そこまで小さくないし、不安定でもないっていうの。



「着いたぞ」

「あ、そう。おーい、開けて」

 どんどんとドアを叩き、やっぱりねという視線を小牧さんから浴びる。

 ああ。インターフォンがあるのか。

 どちらにしろ意思の疎通は図れたらしく、ドアが開いて細身の男の子が現れた。

「舞地さんいます?」

「奥で寝てるよ。彼女に、用?」

「恨みつらみが、色々」

「はは。俺は関知しないからね」

 笑いながら招き入れてくれる男の子。

 他の直属班の子に挨拶をしつつ、虎の巣穴へと歩いていく。


 オフィス内は入り口を入ってすぐにある待機場所と、備品を保管する小部屋。

 ここは仮眠出来るようなスペースもあったはず。

 ただ舞地さんは隊長なので、自分の部屋で寝てるんだろう。

「本当に入るの?」

「今更何よ。おーい、開けろ」

 やっぱりドアを叩き、自分の存在をアピールする。

 でもって手が痛くなったので、結局端末で中と連絡を取る。

「……開いてる?……いや、今行く」

 ドアを開け、上から物が降ってこないのを確かめて中へと入る。

 降って来ても、避ける自信はあるけどね。


「へろー」

 冬だというのに、短いシャツからお腹を出している池上さん。

 私はファッション以前にお腹を壊しそうなので、こういう真似はしない。 

「へそ出さないでよ」

「このウエストのくびれを見せ付けてるのよ。雪ちゃんは樽みたいな体だから、分かんないだろうけど」

「身長は樽でも、くびれくらいはあるって」

「どこに」

 どこにって、冷静に言われても困るけどさ。

 自分の脇腹に手を添えて、胸元から下へと触っていく。

 かろうじて膨らんでいる胸元から、あばら骨を触れ、なんかへこんだような気になって骨盤へと辿り着いた。

「おかしいな」

「ダルマか」 

 声がした方へ、近くにあったペットボトルを勢い良く投げつける。

 ソファーに寝転んでいた舞地さんは片手でそれを受け止め、「飲みたかったんだ」と言ってお茶を飲みだした。

 じゃあ、机が飲めるか試してやろうか。


「何してるの」

「投げようとしたんだけどね。全然無理だった」 

 初めから分かっているので、すぐに諦め机から離れる。

 声を掛けてきた小牧さんは入り口のところで立ち尽くしたまま、池上さん達に近付こうとしない。

「舞地さんが怖いんだって」

「ちょ、ちょっと」

「ねえ。寝てないで、何か言ったら」

 枕元に立って、上から肩を揺すってみる。

 しかし邪魔だと言いたげに、手を振られただけ。

「そのワイルドギースの舞地さんは別人で、この人は全然関係ないんじゃないの」

「何、それ。この子は昔から愛想が無くて寝てばっかりで、世の中の事を何も分かってないお嬢様よ」

「それでもリーダーなの?」

「神輿には、そういうタイプが丁度いいのよ。自分が張り切るタイプでもいいんだけど、私達は真理依みたいな子が合ってたのね」

 そんなものだろうか。


 私も一応リーダーではあったが、ヒカルが何を思って私に託したかは今でも分からない。

 こうして寝てる舞地さんも一応は思慮深いし、決断力もある。

 それに引き換え、私はいわゆるリーダーとしての資質に欠けているような気がしてならない。

「わざわざ来たのは、何か用でも?」

「色々とね。一番の悩みは、舞地さんが寝てた部屋のセキュリティ」

「ああ、添夏ちゃんに頼んだ」

「仲悪いんじゃないの」

「向こうはそう思ってるかも知れないわね。でも、私達はなんとも感じてないわよ」

 少しは感じて欲しいんだけどな。

 矢加部さん同様、彼女とは多分一生相容れないという気がする。

「えーと、部屋のキーは。これか」

 壁際にあった棚の引き出しを覗き込み、カードーキーを取り出す池上さん。

 それを私の手の平へ置いて、持って行くよう促した。

「いいの?」

「いいって、雪ちゃん達が使うんでしょ」

「まあね」

「だったら、問題ないんじゃない」

 そうなのかな。

 根本的な部分は、全く解決して無い気もするが。




 本部へ戻り、キーをモトちゃんへ渡す。

「セキュリティはそのままか。サトミ、外部から独立させられる?」

「そのシステムを生かしたままって意味?」

「ええ」

「出来るわよ。少し時間がかかるけど」

 カードキーを受け取り、卓上端末のスリットに差し込んでキーボードを叩き出すサトミ。

 モトちゃんは教棟内の地図を卓上端末に表示させ、今の部屋を指差した。

「不意に踏み込まれないように、いくつかこういう部屋を用意したいのよね」

「クレームが来るんじゃないの」

「通告無しの立ち入り検査は認めないと、取り決めてある。それに全部の部屋じゃなくて、ごく一部よ。そこをどう使うかは、ゆっくり考えて」

 私は何も思いつかないし、立ち入り検査をされても別に困りはしない。

 不快にはなるだろうけどね。

「もう一度解散するよう迫られて、それでも抵抗しようと思った時。その部屋を使ってもいいんだし」

「篭城は、助けの手がないと意味がないって沢さんが言ってたよ」

「抵抗する事に意味があるんでしょ。多分」

 適当な事を言って書類をめくるモトちゃん。

 彼女の真意は分からないが、学校や執行委員会の悪意は十分に理解している。

 こうした努力が無駄になれば一番いい。

 だけど、それはあまり期待出来ないかもしれない。












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