28-2
28-2
自宅に戻り、着替えを済ませる。
窓から見える、ささやかな庭。
初冬とあって花はなく、枯れた葉が北風に力なく揺れている。
だけど部屋の中は春のように暖かく、風も無ければ冷たさも伝わってはこない。
「あれ」
何気なくカレンダーを見ていると、下の方に可愛らしいマークを発見した。
私が書いたのではなく、元々印刷されているもの。
小さなサンタが、やはり小さなそりに乗ってトナカイに引かれている。
つまりはクリスマスという訳か。
とはいえクリスマスは、何も今年からのイベントではない。
去年も一昨年も、それこそ私が生まれるずっと前からある出来事。
由来や推論はともかく、単純にみんなが幸せになれる日だと私は思ってる。
ただ最近は色々立て込んでいて、クリスマスの事をすっかり忘れてた。
別に取り立てて何かをする訳ではないが、一応気にはしておこう。
「七面鳥は」
「あなた、去年も同じ事聞いたでしょ。本当に、大して美味しくないの。鶏の方が美味しいし、手に入りやすいわよ」
「丸ごと焼く?」
「まあね。年に1度の事だから、そのくらいしても罰は当たらないんじゃなくて」
朗らかに笑うお母さん。
ただしそれは私達の心情であって、鶏からすればまた別な感想があるだろう。
「大体、クリスマス自体まだ先の話でしょ」
「一応ね。サンタは、来る?」
「いい子にしてれば、来るんじゃなくて。ああ、駄目。この家、煙突がないから」
たわいもない事を言い合って笑う私達。
冬でも外がどれだけ寒くても、この場所は限りなく暖かい。
それは多分、暖房のためだけではなく。
「待てよ。クリスマスが12月だから。……私、もうすぐ誕生日じゃない」
「来なかったら怖いわよ。私は、もう来て欲しくもないけど」
何をしみじみと言ってるんだか。
いや。言いたい事は分かるけどさ。
「もう、17歳だって。びっくりするね」
「本当に。ついこの間まで、その辺を這ってると思ってたら」
「大げさな。赤ちゃんの時の話でしょ、それは」
「でもあなた、その時から大きくなってる?」
怖い事を言う人だな。
いくら何でも、私だって赤ちゃんよりは大きいに決まってる。
幼稚園児よりも、小学生よりも。
そこから先は、深く考えないでおこう。
「ツリーは」
「去年もあったから、今年もあるわよ。探さなくていいから」
お母さんの制止も聞かず、リビングを飛び出して捜索に向かう。
私の部屋ではないし、お母さん達の寝室にも無いだろう。
確か物置代わりに使ってる部屋が、二階に。
押し入れを開けて、中にあった収納棚を見て。
押し入れを閉める。
それ程大きなツリーではなかったし、ここにしまったという記憶も無い。
よく見ると、押し入れの上にも小さなふすまが付いている。
どうやら、この上にもなにやら秘密が隠れているようだ。
「よいしょと」
椅子を運び、その上に乗ってふすまを開ける。
段ボール、ビニール袋、小箱に除湿剤。
何か、もう一仕事やり終えた気分だな。
椅子を元の場所に戻し、部屋の真ん中で丸くなる。
暖かいし、お腹もそれなりに膨れてるし。
後は寝るしかやる事はない。
「わっ。何寝てるの」
「あ」
寝てるって、誰が。
などと間抜けた事は言わず、口元をぬぐって上体を起こす。
少しの横になるだけだったのに、すっかり寝てた。
おかげで体が軽くて、気分も爽快。
適当な昼寝も悪くはない。
「ツリー。ツリーは?」
「上の棚に無かった?」
「見たけど、どこにあるか分かんない」
「去年の話だから、私も分からないのよね。去年、ツリー飾った?」
何を言い出すかと思ったら、大丈夫かな。
そう言われると、こっちも不安になるじゃない。
「飾ったでしょ。確か玄関に置いてあった。……いや、それは中等部の時だったっけ」
「今年って、何年?」
「え?」
急に変な事聞かないでよね。
私って今、本当に高校生なのかな。
二人してカレンダーをチェックして、ようやく気持ちを落ち着かせる。
今考えれば馬鹿げた事だが、人間パニックに陥ればこんな物だ。
第一、ツリーはまだ見つかってないし。
「お父さんがしまったんじゃないの?」
「そうかもね。睦夫君も、困ったもんだ」
腕を組んで唸る沙耶さん。
しまわせたのは誰かって話だとも思うけどな。
「誰か来てるよ」
「忙しいのに、誰かしら。……あら、勝手に上がってきてる」
「泥棒?」
「もっと、性質が悪いかもね」
よく分からないまま、その辺にあったはたきを持って階段を降りる。
スティック程の威力はないが、泥棒相手ならこれで十分。
素手で立ち向かわないのは、武器を持ってると想定しての行動。
ナイフくらいならともかく、銃だと多少危険なので。
階段を降りきり、近くの部屋に入って耳を澄ます。
音の定位は左から。
どうやらキッチンにいるらしい。
忍び足で廊下を歩き、壁づたいにキッチンへ近付く。
足音は無し、気配もなし。
挟撃されないよう、背後にも気を配り打つキッチンの前に辿り着く。
包丁で、何かを叩くような音。
確かに、ただの泥棒ではないらしい。
足音と気配を消したまま、慎重に中へ入り込む。
「わっ」
かなり間の抜けた、驚きの叫び声。
包丁が床へ落ちるより早く、はたきを投げて絡め取る。
「何してるの、あなたは」
「お母さんが、泥棒って言うから」
「あの子は、全く。本当に、馬鹿なんだから」
私の後ろからやってきたお母さんを睨み、ぶつぶつ言うおばあちゃん。
でもってお母さんは私の頭を撫でつつ、楽しそうに笑ってる。
この辺りは、間違いなく血筋を感じるな。
「お母さん、どうかしたの」
「いいマグロを手に入れたから。ネギトロを作ろうかと思って」
「中落ちか。良く、手に入ったわね」
「年を取ると、お金を残しても仕方ないのよ。せいぜい贅沢して、さっさと死ぬ。それに限る」
笑いながら、何を言ってるんだか。
しかもこういう話は、私が小学生の頃から聞いてるし。
いいけどね、本当に死なれるよりは。
「ツリー、知らない?」
「クリスマスは、まだ当分先でしょ。」
「優が探してるのよ。お母さんの、可愛い孫が」
「沙耶の娘でしょうが。それより、この骨はもったいないわね」
まな板の上に残った、マグロの骨を指さすお祖母ちゃん。
普通の人なら捨てて終わりだけど、この辺りは戦争体験者の重みを感じる。
それとも単に、食へ対してどん欲かも知れない。
「だしくらい取れるでしょ。犬でもいれば、食べるんだろうけど」
小鍋に水を入れ、骨を浸すお母さん。
牛や豚の骨は分かるけど、マグロの骨なんて食べるかな。
ショウや名雲さんなら、むしゃぶりつくかも知れないけど。
「睦夫さんは」
「お米買いに行ってもらってる。ほら、私非力だから」
「小さいんだよ。沙耶も、優も」
「じ、自分だって」
二人して即座に、お祖母ちゃんを指さす。
一番小さいのは、そのお祖母ちゃん。
次に、お母さん。
一番大きいのは私。
何というのか、並んで見比べれば分かるくらいの違い。
でもって3人でため息を付き、椅子に座る。
どうしようもなく疲れてきたな。
「あ、いらっしゃい」
「こんにちは。悪いわね、お米」
「いえいえ。今日は、どうかなさったんですか」
「マグロをちょっとね。はぁ」
まだため息を付くお祖母ちゃん。
米袋をシンクの下にしまったお父さんは、怪訝そうな視線でお母さんにお伺いを立てる。
「こっちの話。お酒は?」
「買ってきたよ。辛口で良かったよね」
「沙耶。あなた、睦夫さんに買いに行かせてるの」
「この家は、男女同権。男も女も関係ないのよ」
何か、立派な事を言い出した。
やってる事は、お酒を買いにいかせただけに過ぎないけどさ。
「マグロ、もっと無いの。赤身とか」
「中落ちがあるでしょ」
「私、もっとあっさりしたのが食べたい」
「だから、優は小さいのよ。沙耶も」
ぐちぐち怒り出すお祖母ちゃん。
じゃあ自分はどうなんだと、つい言ってみたくなる。
「プリンは」
「あるよ」
「優まで」
「義母さんも、たこ焼きどうですか」
差し出されたたこ焼きを、にこやかに微笑んで受け取るお祖母ちゃん。
結局自分も食べるんじゃない。
プリンは夜のお楽しみに取っておき、家を出る。
私一人では荷が重いので、応援も要請する。
「重いな、これ」
そう言いつつ、軽々と段ボールを抱えるショウ。
手ぶらの私は、彼を迎え入れるため玄関のドアを開けて待つ。
「こんにちは」
「あら。優ちゃん、どうしたの」
優しい笑顔で出迎えてくれるお祖母ちゃん。
白木家の方ではなく、雪野家の。
「お父さんが、ミカン買い込んできたから。街頭で、子供が売ってたんだって」
「情にほだされた訳?らしいわね」
「ミカン?あいつも、訳が分からんな。やあ、こんにちは」
「こんにちは。お邪魔します」
お祖父さんに挨拶して、ミカンの詰まった段ボールを抱えていくショウ。
その背中を、険しい顔で見送るお祖父さん。
「……何よ」
「何しに来たんだ」
「見ての通り、ミカンを届けに。どうして、そんな事聞くの」
「いや。二人で一緒に来るから。結婚の挨拶かと思って」
突然、すごい事を言い出すな。
思わず、こっちが赤面するじゃない。
「あのね。ミカン箱抱えて結婚報告って、どんな状況よ」
「だって、一緒に来るから」
「もういい。とにかく意味はないの。ミカンが余ったから、持ってきただけ」
「お祖父さんも、優ちゃんの事が心配なのよ」
優しい笑顔で説明してくれるお祖母ちゃん。
そういう事なのかな、良く分かんないけど。
「ぼけたんじゃないよね、まさか」
「さあ。どうかしら」
「おい、お前ら。ったく、そろそろ孫の顔でも。いや、優が孫か」
本当に大丈夫かな。
お祖母ちゃんも、もうフォローしないし。
第一私の子供なんて、一体いつの話になるんだか。
私自身、まだ子供だって言うのに。
「お父さんって、何歳で結婚した?」
「大学に通ってた頃だから、20か21。でしたよね」
「ああ。急に沙耶さん連れてきて、結婚するって言い出して。あの時は確かに、学生結婚が流行ってたからな」
「というと、お母さんも20か21だよね」
二人は同級生なので、年齢も同じ。
つまりは後3、4年もしたら私も結婚してるという訳か。
でもって子供もいる訳だ。
ちょっと怖くなってきたな。
「何か、汗出てきた」
「風邪?」
「いや。精神的に。少し、ゆっくりと考えよう」
こたつに埋まり、ミカンを食べる。
足元が暖かくて、ミカンは甘くて。
TVはよく分からないバラエティ番組。
お茶の湯気が、ゆらゆらと天井へ立ち上る。
のんびりとした空気。
ゆったりと流れる時。
家族が集まり、たわいもない会話をして一緒に時を過ごす。
幸せとは、多分こういう事を言うんだろう。
少なくとも私にとっては。
「あんまり食べないね」
「そうかな」
ショウの前にある、ミカンの皮二つ分。
放っておけば箱を全部食べても足りないので、多少は遠慮してるのだろう。
「君は何だね。軍へ入隊するそうだな」
「え。ああ、はい。一応、そういうつもりではいます」
「そうか。でも、大変だぞ。後に残された人の気持ちを、考えた事はあるか?」
いきなり語り出すお祖父さん。
それにはショウも困惑気味に、首をすくめて頷いている。
「何の話してるのよ。大体、お父さんも軍へ入ったじゃない」
「睦夫か。あいつは軍へは行くは、シベリアで抑留されるは。本当、こっちの方が参ってくる」
「確かに、ね。死んでるのか、生きてるのか。私達もそうだけど、沙耶さんはもっと大変だったと思うわよ。あの時は、まだ優ちゃんも本当に赤ちゃんだったし」
しみじみ呟くお祖母ちゃん。
ますます小さくなっていくショウ。
いつの間にか、彼の吊し上げの場になってるな。
「もういいの。いいじゃない、軍に行こうがどこに行こうが。帰ってるくんだから」
「そうか?」
「そう?」
「そうよ。ねえ」
やはり私も、ショウに振る。
彼は少し困ったような顔をして、すぐに小さく頷いた。
微かに、よく分からないくらいに。
でも私の目には、はっきりとそう見えた。
「へへ。ミカン食べる?」
「え、ああ。食べる」
「お茶飲む?」
「飲む」
ミカンをむいて、お茶を注ぐ。
それを食べて、飲んでいくショウ。
剥くといってもオレンジ色の外の皮だけじゃない。
中の薄皮も、後ろの白い所も全部剥く。
食物繊維代わりには食べてもいいんだけど、剥いたっていいじゃない。
「過保護じゃないのか」
「何が」
「いや。なんでも無い」
顔を伏せ、お茶をすするお祖父ちゃん。
よく分からないまま、私も一緒にミカンを食べる。
なんだか知らないけど、ちょっと楽しいな。
家に戻り、夕食を食べる。
ミカンを食べたので、やや控えめに。
炊き込みご飯とわかめの酢の物。
ネギのみそ汁を少しすすり、ご飯を頬張る。
どんぶりを掻き込んでる人は、気にしないでおこう。
あれだけミカンを食べて、今もこれだけ食べて。
しかもどうやら、この家では遠慮がないらしい。
「お代わりって。噛んでる?」
「当然だろ。ご飯、もう無いんだけど」
「知らないわよ。お母さん、ご飯無いって」
「食べれば無くなるのも当然ね。うどんあるけど、食べる?」
刻々頷くショウ。
流れてくるお母さんの視線。
いいけどさ、別に。
ぐつぐつとみそ煮込みを煮込み、ネギを散らせて火を落とす。
卵も半熟でいい感じ。
少し堅めなのがポイントかな。
「お待たせ」
「ありがとう」
お礼もそこそこに、すごい憩いでうどんをすするショウ。
さっきまでどんぶり飯を食べてはずだけど、気のせいかな。
「お父さん達、元気だった?」
「ん、まあね。軍の事を愚痴ってた」
「まだ、その話?確かに、迷惑は掛けたけどね」
仕方なさそうに笑うお父さん。
だけどお父さんにすれば、自分が一番苦労した訳で。
それをこう言えてしまう事に、自分の父親ながら尊敬してしまう。
「汁は飲まなくていいの。塩分が多いから」
「だって」
「駄目って言ってるでしょ。めっ」
箸の後ろで、ショウの手を叩くお母さん。
人の子供に、何をやってるんだか。
「冷蔵庫にプリンあるから、それ食べてなさい」
「分かった」
素直にキッチンへ移動するショウ。
あれは、私のプリンじゃないの?
いいけどさ、この際は。
「あの子は、どうしてああ飢えてるの?」
「体が大きいから、カロリーの消費も激しいんでしょ。運動量も普通じゃないし」
体重は私の倍以上だし、運動量は成人男性の数倍だろう。
逆にこれだけ食べなければ、明日の朝には干からびてるかも知れない。
「ミカン食べる?」
「え、ああ」
さっき、お祖父さんの家で食べた気もするけどいいかとするか。
剥くのも結構、楽しいしね。
剥く作業自体がではなく、ショウのために剥くのが。
なんて事は、絶対口には出さないが。
冬休み間近とあって、学校に生徒の数はまばら。
連合も解体されたので、正直私も学校に来る意味をあまり感じない。
冬休みが空ければ、少しあってすぐ学年末テスト。
その後は春休み。
休み明け程ではないが授業内容はかなり手抜きで、教師がいても自習が目立つ。
テスト間近で詰め込むのもなんだし、教える方としても教えようが無いんだろうけど。
「男鹿半島ってどこにあるの」
暇ついでではなく、人が少ないので小声で聞いてみる。
文庫で英語の詩を読んでいたサトミは、さらさらした耳元の髪をかき上げて薄く微笑んだ。
「この寒いのに、北国へ行きたい?」
「そんな寒い?」
「北海道に比べればましとは思うけど、名古屋とは根本的に違うわよ。ここはここで、また寒いにしても」
若干触れにくい話題。
単純に気候の事ではなく、彼女の生まれ故郷。
決していい思い出は埋まっていない土地。
親に捨てられたと彼女が言う場所。
「雪は」
「降るわよ。ただ場所にもよるけど、風が強くてそれ程は積もらない」
「なまはげでしょ」
「いたわね、そんなのも。私はあまり好きじゃないけれど」
嫌そうに首を振るサトミ。
というか、あれを好きな人なんているのかな。
勝手に人の家へ入ってきて、子供を脅す鬼。
大人はまだしも、子供にとって恐怖の対象でしかない。
「おはよう。ミカン食べる?」
「え、ああ」
冗談も通じないのか、すぐにミカンを受け取るショウ。
でもって皮を剥いて、それを私に差し出してきた。
よく分からないけど嬉しいので、すぐに食べる。
もったいないから、まずは端の方を少しだけかじる。
少し酸味の効いた、でも私にとっては何物にも代えがたい味。
春も、もうすぐかな。
「幸せね、あなた達は」
「な、なにが」
「ミカン一つで。大体、朝からミカン食べないで」
いつ食べたっていいじゃない。
仕方ないのでショウを促し、サトミ嬢にも一房与える。
しかし彼女は別段感慨も無いらしく、一口で食べ終えてペットボトルでお茶を飲んだ。
「旅行でも行きたくなった?」
「いや。別に」
適当に返して、残りのミカンを頬張る。
家族について思いを巡らした、なんてこの子の前では言いにくい。
「木之本君」
「おはよう」
朝から教室にやってくる木之本君。
なるほど。連合が解体されたので、本部に詰めている必要もない訳か。
「今日は、自習みたいだよ」
「でも、授業はあるからね」
すぐに返ってくる、生真面目な答え。
帰り支度を整えているサトミとは、かなりの差だな。
彼女の場合は、1年中寝てても学年トップだけどね。
「何かな」
教室の前の方から聞こえるざわめき。
数少ないクラスメートが顔を寄せ合い、なにやらささやきあっている。
今、前のドアから入ってきた男の子を気にしながら。
「やあ、おはよう」
朝から元気な浦田君。
ただし、顔は似てるが本人じゃない。
いや。彼も浦田君だけど、普段高校で会ってる方ではない。
「あなた、大学院は」
「修士論文が片づいたから、たまには学校に来ようと思って。塩田さんも、暇なら来いって言ってたし」
窓から差し込む朝の日差し。
それに負けないくらいの、明るい笑顔。
ヒカルはリュックからノートを取り出し、ペンで一番上の欄に今日の日付を書き込んだ。
やる気があるのはいいけど、自習だよ。
「浦田君、じゃないの?」
興味津々という様子でやってくる眼鏡っ子。
清楚な顔は、笑いをこらえるのに必死のようだ。
「あ、僕は双子の兄の方です」
「そうよね。遠野さんと付き合ってるんじゃなかった?」
くすくす笑う、髪全体にウェーブのかかったお嬢様風の女の子。
笑い事でもないと思うんだけどな。
「世間的には、そう言われてるみたいですね」
政治家か、この子は。
しかしこういう受け答えを聞いていると、明らかにケイとは違う。
落ち着いていて丁寧で、真摯で。
本当に血を分けた兄弟かと疑いたくなってくる。
外見を見る限りは、それ以外あり得ないけど。
「でも、その顔は何?同じじゃない」
ヒカルの顔を指さし、感嘆のため息を漏らす前髪にウェーブを掛けた優しげな顔立ちの子。
遺伝子が同じだから、外見も同じ。
それは私も分かってるが、確かに不思議としか言いようがない。
「はい、席について」
教室に響く、凛とした声。
それを合図に、席へ戻る女の子達。
誰かと思ったらキータイプの教師が、黒板の前に立っていた。
「今日の予定は特になし。授業も、今更やっても仕方ないので自習にします。学年末テストへ向けて、各自努力を怠らないように。それと学内の治安が悪化しているようなので、出来るだけ一人では行動せず」
事務的に連絡内容を告げていく教師。
私には関係ない話ばかりなので、頬杖を付いて目を閉じる。
ケイじゃないけど、朝はやはりそれなりに眠い。
この二度寝に近い感覚が、何とも言えず気持ちいい。
今日のお昼は、何食べようかな。
「起きなさい」
耳元近くでささやかれる言葉。
サトミかと思ったら、教師がしゃがみ込んで顔を覗き込んでいた。
「自習でしょ、寝ててもいいじゃない」
「私は、あなたの教師です」
「……自習ですよね。寝ててもいいじゃないですか」
敬語はいいけど、この内容を言い直す必要はあるのかな。
それとも、そういう事は求めてなかったのかな。
「テストの勉強はどうしたの」
「サトミがいるから大丈夫、です。最悪、彼女のをカンニングするし」
「席が違うでしょ」
何か、冷静に突っ込まれてしまった。
朝なんだし、冗談の一つくらい良いじゃない。
「それに、あなた誰」
「浦田です」
「顔は同じだけど。ID見せて」
さすがに不審に思ったらしく、ヒカルからIDを受け取る教師。
この子達、顔は同じでも雰囲気がまるで違うからな。
陰と陽、光と闇。
全てがそうという訳では無いにしろ、初対面の彼女が訝しく思うくらいの違いがある。
「ああ、院生の。そっちの勉強はどうしたの。ここで遊んでていいの?」
あくまでも容赦ない教師。
ただそれは、教育者としての顔で。
私の対するそれとは、また違うような気もするが。
「論文のめどがある程度付いたので。一応高校にも籍がありますし」
「そう。で、あなたの弟は」
「じゃあ、テレパシーで居場所を探ってみます」
「嘘」
目を丸くする教師。
ヒカルは手の平を合わせると、目を閉じて顔を伏せた。
彼女だけではなく、教室にいるクラスメートも固唾を飲んでその様子をうかがっている。
教室内に生まれる張りつめた空気。
やがてヒカルはおもむろに顔を上げ、教師を見上げた。
「分かりました」
「どこにいるって?」
期待と不安の入り交じった顔。
いつなく熱心で、好奇心に満ちた。
ヒカルは朗らかに微笑み、机の上に端末を置いた。
「ここに連絡しろと言ってました」
即座にその頭をはたくサトミとショウ。
木之本君も、その隣で申し訳なさそうに謝っている。
双子イコール何らかのシンパシーがある、というのはこの二人にはあまり当てはまらないと実証済み。
ただそれは私達が分かっているだけで、初めて会う人達は何かの期待をしてしまうのだろう。
昔の、彼等と出会った頃の私達のように。
「弟もふざけてるけど、あなたもひどいわね」
予想に反して、怒るどころか楽しそうに笑う教師。
確かにケイのそれと比べれば、ヒカルの冗談は笑って済ませられる範囲。
かなりの脱力感を感じなくもないが。
「とにかくテストが近いんだから、勉強しなさい。みんなも、分かった?」
一斉に聞かれる返事。
なるほどねと思い、タオルを敷いて顔を伏せる。
世の中、食べる事の次に寝る事が楽しいかも知れないな。
「人の話を聞いてないの」
「だから、サトミに聞くから」
「私知らない」
何だ、その声は。
思いっきり、ヒカルじゃない。
「ほら、起きて。中間テストの結果も出しなさい」
未だに私のそばから離れない教師。
親でも無いのに、やけに熱心だな。
この学校の教師は、良くも悪くも放任というか生徒の自主性を重んじると思ってたけど。
どうやら彼女に関しては、若干違うらしい。
「国語と世界史がいまいちね」
「ケイの数学よりはましです」
「何、それ」
「0点ですよ、0点。笑えますね」
実際に笑い出すヒカル。
あなたの弟だよ、弟。
「ここにいない人の話は、しても仕方ないでしょ。テスト範囲は十字軍。この辺は分かる?」
「大体、イスラム社会に侵攻したというくらいは」
「細かな用語や人名はともかく。押さえるのは、教皇とビザンチン帝国の隆盛。イスラムとヨーロッパ文化の交流。諸侯は衰退し、絶対王政への道が開かれる点。貿易商達にとっては有益な戦いだった、という事ね」
キータイプの教師なのに、変な事にも詳しいな。
いや。別に変な事でもないか。
「そうよね、遠野さん」
「ええ。十字軍の意義であり目的は、聖地エルサレムの奪還。用語としてはクレルモン公会議、カノッサの屈辱、セルジューク・トルコ。東ローマ帝国、リチャード1世。他にもたくさんあるけど、確実に必要のはこの辺ね。少年十字軍やサラディンも、暇があったら調べておいて」
一度にそんなに言われて、覚えられるか。
十字軍は、ヨーロッパにコショウをもたらした。
それだけで十分だ。
やいやいうるさい二人からようやく解放され、休憩を迎える。
あれだけ色々言われたら、却って逆効果だと自分でも思う。
実際半分も記憶してないし。
「大変だね、高校生は」
のんきにのたまう、大学院生。
大学院は大学院で大変だと思うけど、自分の好きなジャンルだけを勉強出来るから多少は違うのだろうか。
「ハムスター、どうなった?」
「まだ元気だよ。でも動物の寿命は、人より短いからね。それを考えると、少し切ない」
「切ないって、分かってる事じゃない。待てよ、羽未は?」
あの子も犬。
ヒカルが言ったように、人よりもその寿命は概して短い。
それは彼女も無論、例外ではない。
なんか、私まで切なくなってきた。
「父さん達が言うには、後30年は余裕で生きるってさ」
「犬って、そんなに長生き?」
「昔は20年くらいだったらしいけど、餌や栄養のやり方によってはそのくらい生きるらしい」
安心しろという具合に微笑むショウ。
私も胸を撫で下ろし、小さく息を付く。
分かっている事とは言っても、やはり別れは辛い物。
親しければ親しいだけ、愛していれば愛しているだけ。
例えどんな形でも生きていてくれれば、それだけで十分だ。
「ハムスターは?」
「良くて5年。泣けるね」
鼻をすするヒカル。
別に泣いてる訳ではなく、廊下に出て寒くなったらしい。
どうしてそれが分かるかと言えば、私の鼻もぐずぐずするから。
「今日は一日いるの?」
「いるよ。僕は、いつまでもいるよ」
軽いというか、下らないというか。
陰気な弟君とはかなりの差だな。
「……何だ、お前。大学院はどうした」
「自分で来いと言っておいて、その台詞はないでしょう」
真顔で抗議するヒカル。
塩田さんは鼻先で笑い、彼の肩に手を置いた。
「そういえばそうだったな。で、弟は」
「来いとは言われてないので、来てませんね」
「だったら、お前でいいや。どうせ自習なんだし、付いてこい」
私達が連れて行かれたのは、自警局の一室。
元々縁がない場所で、連合が解体された今はむしろ疎遠な場所。
人にも寄るが、ここではあまり好意的な応対は望めない。
「わざわざ、済みません。……えと、こちらの方は」
「浦田光。あの馬鹿の兄貴だ」
「初めまして。馬鹿な弟の兄です」
下らない補足を加えるヒカル。
北川さんはどう答えたらいいのか困った様子を見せて、かろうじてぎこちなく微笑んだ。
「現在ガーディアンではない皆さんに協力をお願いするのもどうかとは思ったんですが。治安維持という観点からすれば、一人でも協力者が欲しいので」
やけに回りくどい言い方。
確かに私達はガーディアンではないが、少なくともこの学校の生徒。
言われれば大抵の事は協力するし、自分達で率先して行動もする事だってあるだろう。
しかし北川さんはガーディアンと、治安維持という言葉を使う。
つまりは、普通ではない要請という訳か。
「やがて噂として広がると思いますが、ドラッグを密売する組織が学内に存在するようです」
「まさか。いくらなんでも、それは」
「私も、信じたくないしあり得ないと思いたい。まだ確定した情報でも無いけれど。ただ、断片的な情報をつなぎ合わせるとそういう可能性が高いとしか言いようがないの」
嫌な、出来れば彼女の言う通り信じたくはない話。
神聖なと言うつもりはないが、学内に置いて組織化されたドラッグの売買が行われているなんて事は。
「噂がそれ程広がらないのは、扱っているドラッグが非合法すれすれの物だと推測してます。効果や中毒性が低くて、軽い遊び程度と思ってる人が多くて」
「それを撒き餌にして、本物を配るという事かしら」
「警察も、その点を警戒しています。現場を押さえればいいのですが、何分この学校は広くて。通常のパトロールだけならともかく、全体をカバーするのは難しいんですよね」
サトミの説明に答えつつ、現状を教えてくれる北川さん。
生徒会ガーディアンズが多いと言っても、数百人程度。
非番や事務系を考えれば、人数はもう少し減る。
その穴を以前は連合が埋めていたのだが、今連合は存在しない。
「執行委員会の指示は?」
「パトロールの強化と、人員の増強ですね。パトロールはともかく、人員はどうも傭兵の雇用を狙っているようです」
「考えたくはないけど、自作自演?」
「私も、考えたくない」
つまらなそうに笑う二人。
また、それだけの内容。
学内にドラッグが出回り、それに学校もしくはそこと連携した組織が関わっているという。
まさかとは思うし、それこそ考えたくもない。
「そんな事はないと、僕は思いたいけど」
「なあ」
頷きあう、木之本君とショウ。
人がいいのも考え物だな。
「浦田君は、どう思う?」
「僕も、信じたくないね。いくら殆ど通ってない学校でも、楽しい気はしないし。でも、その執行委員会はどういう存在?僕は、よく分からないけど」
「名目としては、生徒会長の代行的組織。今のこの学校で、一番偉い人達だよ」
「ふーん、会いたいね一度」
会いたいからと言って会えるとは限らない。
それ以前に、向こうが私達には会いたくないだろう。
無理矢理会いに行っても揉めるだけだし、下手をすれば停学だ。
「いや。僕は停学になっても困らないから」
ヒカルの首の根っこを掴み、ドアから遠ざけるショウ。
確かに委員会のブース前で暴れれば、会う可能性も出てくるけどさ。
本当に大学院生かな、この人。
「偉いと言っても、普通の高校生じゃないの?」
「新カリキュラムよ。つまりは、エリート」
「で、学年トップは?」
「さあ、誰かしら」
首を振って逃げていくサトミ。
ヒカルも監視カメラに指を指して、その後を追う。
私は少し残り、飴を取り出す。
「おい」
「いいじゃない、これくらい」
「もったいないだろ」
そういう理屈か。
でも、他に手頃なものが無いからな。
「第一、ここからだと姿が映る」
「死角からなんて、出来る?それに、何か持ってる?」
手の平を差し出すショウ。
そこに乗っているのは、ひまわりの種。
どうも、ヒカルから受け取ったらしい。
「小さいし、柔らかくない?」
「カメラは無理だろ。ほら、あそこ」
ショウが指を指したのは、ドアの脇。
カードキーを差し入れるスリット部分とコンソール。
「悪いわね」
「詰める訳じゃない。ボタンを押すだけさ」
「なるほどね」
種を握りしめ、親指で弾く。
空を裂き、コンソールの中央に当たる種。
やがてモニターに、小さく数字が表示される。
「5」
「まだまだだな」
私と同じ事をするショウ。
違うのは私よりも、より速く力強い事。
「え、3?」
「下手、下手ね。ほら8」
「二人とも、何してるの」
咎めるような視線を向けてくる木之本君。
種を飛ばして遊んでましたとは答えず、床に散らばった種を拾って愛想良く笑う。
「遊んでる場合じゃないから」
「また、そうやって真面目な事言って。この連中が何やってるか、分かったものじゃないでしょ」
「雪野さん。カメラがあるんだから」
苦笑気味に見上げられるカメラ。
勿論それに付随して、マイクもどこかに取り付けられているだろう。
「そういう事も、あるかもね。戻ろうか」
というか、今気付いたよ。
一仕事したから、食堂でご飯を食べる。
しなくても、食べるけどね。
それ以前に、あれを仕事と言うかどうかはともかくとして。
「でも、ドラッグなんてさばいてどうするの。いい事なんてある?」
「勿論、警察に捕まるというリスクはあるわ。でもそれ以上に、お金が手に入る。胴元というか、ドラッグ自体を所有してる人間は」
「売ってる人間は?」
「リスクの方が多いかもね。でも、それに気付くようなら売ってないでしょ」
身も蓋もない発言。
サトミは興味もないとばかりに、釜揚げうどんをすすった。
「でもいいか。もう、冬休みだし」
「珪的な推理をしてみようか」
「何、それ」
「冬休みだから、暇が出来る。知り合いから連絡。面白い物がある。後はこうご期待」
最後のうどんをすすり終えるヒカル。
彼自身はそれ以上語らないが、その後どうなるかは私にも想像が付く。
「それを狙って、この時期に?」
「さあ。僕は組織の人間じゃないし、実際どの程度蔓延してるか分からないから」
「面白くないな。……ねえ」
「へろー、私も混ぜてよ。で、あなたは誰」
不意に私達のテーブルへと現れ、うしゃうしゃ笑う池上さん。
勿論、ケイと同じ顔のヒカルを見下ろしながら。
「弟の代理です」
「浦田君なら、柳君と一緒にいたわよ。あの二人、仲がいいけど大丈夫?」
可愛い弟を心配する姉のような顔。
しかし、その気持ちは痛い程によく分かる。
「浦田君は、別に悪い事はしないと思いますけど」
「あなたは、本当に人がいいわね。その内、全財産あの子に持って行かれるわよ」
「その時は、こっちから回収するので」
にこやかにヒカルの肩へ触れる木之本君。
そのヒカルは、ショウの肩に手を添える。
ショウはよく分かってないのか愛想良く笑い、たらいに浮かんでいるうどんの欠片を集めている。
「だったらいいんだけど。智美ちゃんは」
「彼氏と遊んでるんじゃないんでしょうか」
ごく自然に告げるサトミ。
なるほどといった具合に頷くみんな。
「何それ、聞いてないわよ」
「ユウに言わなくてもいいでしょ」
「いや、良くない。日時と目的と場所と予定を書いて、提出。逐一私に連絡をいれるべきだ」
「じゃあ、探しに行く?」
にやりと笑う池上さん。
そんな悪趣味な事、どうかと思うけどな。
「午後も授業はあるんですよ」
生真面目な事を言って、助手席から池上さんを振り返る木之本君。
しかし、それを気にしているのは、彼くらい。
自習よりも、友人のデートの監視。
行動としては間違っていても、明らかにこっちの方が楽しいから。
「いいのよ。で、二人が行きそうなスポットは?」
「都心よりも、郊外だと思います。モトの性格や、名雲さんの好みを考えたら」
「木之本君のご意見は?」
「単純に、元野さんの実家じゃないんですか。あそこは学校から近いし、自然も多いですし」
言った後でしまったという顔。
あまりにも現実的過ぎた答えと、自分でも気付いたらしい。
「そこがあなたのいい所よ。玲阿君、実家へ行って」
「了解と」
名古屋から数十分で来られる場所だが、眺めは全くの別物。
遮る物の少ない、広大な田園風景。
しかし初冬という時季のせいか稲も野菜も目に付かず、茶と灰の地面がどこまでも続いている。
多度山系からの冷たい風。
日差しはあるが、窓を開けるとすぐそこに冬が来ていると強く実感する。
「そろそろかな」
舗装されたあぜ道を走っていく車。
点在する家の数は、それこそ数える程度。
遠目からでも確認出来るため、迷うと言う事はまずあり得ない。
「いた、いた。あれだろ」
あぜ道と並行して流れる、田んぼに水を引き込むための用水路。
その脇に腰を下ろし、用水路を覗き込んでいる男女。
「あれがデート?」
当然の疑問を口にする池上さん。
確かに吹きさらしの田んぼの真ん中で、用水路を見下ろすデートもないだろう。
「指輪、指輪落としたんだって」
適当な事を言って、車を飛び降りる。
二人のデートは許せないが、こんな所でのデートも許せない。
じゃあ何なら許せるのかは、私にも分からない。
「何してるの」
しゃがんだまま、怪訝そうに顔を上げるモトちゃん。
それに釣られるようにして、名雲さんも。
「私が言いたいわよ。こんな所で、何してるの。指輪落とした?」
「はい?」
「いや。こっちの話。で、何してたの」
「舟よ、舟」
流れの上の方を指さすモトちゃん。
それに乗り、ゆったりと流れてくる緑の舟。
笹ではないが、何かの葉。
緩やかな流れ。
日差しにきらめくその水面。
微かに聞こえるせせらぎ。
緑の舟は、二人の前を通り過ぎていく。
「何時代の遊びよ、それ」
うしゃうしゃわらう池上さん。
本当に、今時こんな事して楽しい人っているのかな。
「仕方ないだろ、子供がいるから」
「だ、誰の」
「あのね。向こうよ、向こう」
用水路のさらに下。
流れていく緑の舟。
それを見て、胸元で小さく手を叩く柳君。
なるほど、そういう事か。
その隣には暇そうに、しかし離れないでケイも立っている。
「何をやってるんだか」
そう呟き、腰を下ろして舟を浮かべる。
いいじゃない、私もこういうのが好きなんだから。
「はは、流れた」
「ユウが一番楽しそうね」
「楽しいよ」
素直に答え、モトちゃんの腕にしがみつく。
こうして遊ぶのも、彼女と一緒にいるのも。
みんなと一緒にいるのも。
私はそれが、一番楽しい。




