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スクールガーディアンズ  作者: 雪野
第20話
221/596

エピソード(外伝) 20 ~無名ガーディアン視点~






     外側からの




 机に手を付き、思わず叫びそうになった。

「どうしたの」

「その、俺には無理だよ」 

 つい漏れる、気弱な言葉。 

 丹下さんは薄く微笑み、ペンを手の中で回した。

「通常の警備と大差ないわよ。指揮権は全てあなたに一任されるし、何一つ問題ないわ」

「だけど、ガーディアン連合も組み込まれるんだろ」

「例の、ガーディアン統合案の一環としてね。でも、それはよくある事じゃない」

 あくまでも落ち着いた受け答えをする丹下さん。

 俺の意図を、十分理解した上での。

「エアリアルガーディアンズもいるのに?」

「同じ棟だもの。当たり前じゃない」

「あの子達を、指揮しろって?」

「彼女達は連合のガーディアン。指揮系統としては、当然じゃない」

 理屈としては合ってる。 

 実績と実力は、かなりのギャップを感じるが。

「別に、普通の子達よ。噂は、大袈裟に伝わってる部分が多いの」

「多いって事は、本当の噂もあるって事?」

「細かいわね。とにかく、これは決定」

 手を振る丹下さん。

 しかし、それで引き下がる気分でもない。

「俺には無理だって。そんな事」

「だから、優ちゃん達は普通なの。あなたが右へ行けと言えば行くし、運べと言えば運ぶから」

「そ、そんな」

「本当よ。何か、誤解してない?」

 訝しそうな視線。 

 誤解してるのはどちらなのかと、聞き返したくなる。 

 彼女は雪野さん達と付き合いがあるから、感覚が麻痺してるのだろう。

「だ、大体俺は2年だし。3年の人の方が」

「俺に命令してるのか」

 醒めた口調と視線。

 思わず体温が数度下がったのかと思える程の。

「阿川さん。冗談が過ぎますよ」

 明るく笑う丹下さん。 

 彼女達は、中等部以来の先輩と後輩。 

 だから、こういう軽口も叩ける。

 俺はただ、怯えて下がるだけだ。

「私は、友達と遊ぶ用事があるから。勿論G棟隊長の命令なら、慎んでお受けしますが」

「山下さん。嫌みですね」 

 やはり明るく笑う丹下さん。 

 こっちは笑う気にもなれず、肩を落としてため息を付いた。

「今さら助言という訳でもないが」

「はい?」

「雪野さんと玲阿君は、実際に大人しい。自分から暴れる事はないし、少なくとも君に喰って掛かる真似はしない。ただ」

「ただ?」

 言葉をためる阿川さん。 

 固唾を呑んで待つ俺。

「遠野さんは扱いに注意した方がいい。見た目以上に熱いから。勿論普通に接している分には、何も問題ないけどね」

「はあ。……あの、もう一人いますよね。えーと、誰だったかな」

「浦田君?あの子は放っておけばいいわ。地味で、どこにいるかも分からないし」 

 笑う山下さん。

 一緒になって丹下さんも笑っているが、目が少し怖い気もする。

「とにかく、こちらが何もしなければ問題ない。地雷と同じだよ」

「え?」

「周りを歩く分には、反応もしない。でも、踏めば終わりさ」



 警備当日。

 晴れ渡った空。

 俺の心とは裏腹な。

 学内を歩く、大勢の見学者達。

 休日はいつも一部を一般開放されているが、今日は入学希望者用の見学日。

 受験者やその父母だけでなく、学校関係者や教育庁の人間もいるらしい。

「どう?」

「問題ない」

「雪野さん達は」

「彼女達は、まだ」

 通路の先に見える幾つかの影。

 特に目を引くのは、長身と小柄な体型のギャップ。

「来たわよ」

「わ、分かってる」

「焦るな。大丈夫だ、多分」

 俺の左右でささやく二人。

 その緊張も伝わってくる。


「ガーディアン連合の、雪野優です。今日は、よろしくお願いします」

 落ち着いた表情で挨拶をしてくる雪野さん。

 彼女の後ろに控えた3人も、静かに頭を下げる。

「こ、こちらこそ、よろしく。彼女達は、俺の副隊長です」

 そちらへも頭を下げる雪野さん達。

 あくまでも自然に、おごった様子も無く。

 彼女達の経歴を考えれば俺達など相手にもされないんだが、かなり意外だ。

 簡単に警備内容を説明して、本部に待機してもらう。

「どうして配置しないの」

「パトロールをさせて抑止力にする手もあるけど、トラブルがあった場合に駆けつけて貰う方が有効だと思って」

「なんだかんだ言って、一応考えてるんだな。取りあえず、お茶でも出したらどうだ」


 小間使いのような気もするが、もっともなのでペットボトルを持っていく。

「ありがとうございます」 

 やはり礼儀正しい受け答え。

 今いる場所は、教棟の前に作られた仮設テント。

 机と椅子があるだけの簡素な場所だが、端末さえあれば実際はどこでも問題ない。

「済みません、せっかくの休日なのに」

「いいですよ。手当も出ますし」

 冗談を含んだ、優しい言葉。

 俺は思わず頭を下げ、笑顔を返した。

 だがそれは、すぐに凍り付く。

 雪野さんの隣りに座っていた玲阿君が、鋭い眼差しを俺へ向けてきたからだ。

 この二人が付き合ってるのは、誰でも知っている話。 

 だからといって、今くらいの事で怒ったのだろうか。

 それとも何か、機嫌を損ねるような事でも。

「す、済みません」

 背中から聞こえる、謝罪の言葉。

 振り向くと、柄の悪そうな男がペットボトルを拾い上げていた。

「ったく」

「そんな事くらいで睨まないでよね」

「じゃあ、殴るのか」

「馬鹿じゃない」 

 玲阿君の脇腹を指で突く雪野さん。

 じゃれているようにも見えるが、あの一撃で大男を倒す事も出来るらしい。

「お、俺、ちょっと用事があるので」

「分かりました。ここは、私達が留守をしてますから」

「お、お願いします」



 テントを出て、少し歩いて深呼吸する。

 虎の檻に入る心境が、多分さっきのだろう。

「どうだった」

「死ぬかと思った」

「大袈裟だな」

「じゃあ、代わってくれ」 

 壁に背をもたれ、そのまま地面へしゃがみ込む。 

 秋の日射し、涼しい風。

 少しだけ、気持が落ち着いた。

「状況は」

「特に問題ない。俺達の受け持ち区域は」

「よかったじゃない」

「ああ。これで、何事もなく終わればいいなんだけど」

 希望を込めて、そう呟く。

 今日来ているのは、受験関係者も多い。 

 当然、目に付くような行動は取らないだろう。

 多分。

「……端末の調子が悪いって。ネットワークが途切れがちみたい」

「休みだから、加重負荷はかからないだろ」

「知らないわよ。ほら」

「……駄目だな」

 通話程度は問題ないが、細かな処理作業は難しい状態。

 端末を単なる情報処理装置として使うだけならともかく、これでは連携が取れない。

「誰か、詳しい人は?」

「休みだからな。……そういえば、遠野さんはこういう事に詳しいらしい」

「お、怒られないかな。下らない事頼むなって」

「知るか。俺が頼む訳でもないし」


 3人で顔を揃え、彼女の前に進み出る。 

 あくまでも丁寧に、丁重に。

「私は、それ程詳しくないんですが」

 何故か苦笑しつつ、机の上にあった卓上端末を引き寄せる遠野さん。

 さらさらした耳元を髪をかき上げる仕草に、見取れそうになる。

「確かに、情報が送りにくいですね。……ああ、今日はここのデータを教育庁へ送る日です」

「え?」

「生徒の成績や評価、学校の収支、教師の勤務状況などを。休日だから、知っている人は少ないんですが」

 端末を取り出し、どこかと連絡を取り出す遠野さん。

 それが終わると同時に、情報が一気に流れ出した。

「少しだけ、回線を回して貰いました。まだ余裕があるか聞いてみますか?」

 誰に聞くんだろうか。

 目の前で凛とした笑顔を見せている美少女。

 学校と教育庁とのやりとりを制御する事の出来る。

「い、いえ。これだけで十分です。あ、ありがとうございました」

 一斉に頭を下げ、つい口ごもる。

 この後、どうなるのかが理解出来なかったので。

 回線を回して貰ったのはいい。

 しかし後で、学校からクレームが付かないのだろうか。

「あ、あの。こんな事をして大丈夫でしょうか。お、俺達は警備責任者なので、覚悟はしてますが」

 苦笑気味だった遠野さんはふと表情を和らげ、端末の画面を畳んだ。

 優しく、暖かい笑顔で。

「私は大丈夫です。何かあったら、また呼んで下さい」



 3人で、芝の上にぐったりとなる。

 さっきまでの出来事に、すっかりやられてしまった。

 取りあえず入ってくる情報に指示を返すだけで、それ以上の事は何もしたくない。

「でも、優しい子ね。もっと、怖いのかと思ってた」

「ああ。やってる事は、怖かったけど」

 二人の会話を聞きつつ、端末で状況をチェックする。

 今の所、特に問題はない。

 時間としては、昼辺り。

 見学者も、食堂へ行ってる人が多いだろう。

「……あれは」

 教棟の影。

 人気のない場所。

 先程の、柄の悪そうな連中。

 親に金があり、寄付金だけで入れると勘違いしているような。

「何かやってない?」

「恐喝って雰囲気だな」

「馬鹿が」

 全員、ここは躊躇せず走り出す。

 疲労感も脱力感も忘れ。

 今だけは。



 だがそれもつかの間。

 俺達の足は、すぐに止まる。

 地面に転がる男達を、目の当たりにして。

「どうも」

 丁寧に頭を下げてくる、地味な顔立ちの男。

 どこかで見た気もする。

「あ、あの。この連中は」

「さあ。暖かいし、昼寝じゃないですか」

 鼻血を出して、呻いている奴もいる。

 何をやったのかは知らないが、この男の仕業には違いない。

 中肉中背で、強いという雰囲気も感じないが。

「警棒」

「ガーディアン?」

 左右で上がる声。

 そこでようやく、肩口にあるIDに気付く。

「ガーディアン連合の方ですか」

「一応」

 それだけ告げ、歩み去ろうとする男。

 さすがに見過ごす訳にも行かず、すぐ前に出る。

「簡単に、状況を説明してもらえますか」

 微かに向けられる視線。

 皮肉さを、微かにはらんだ。

「見ての通りですよ」

「それは分かってます。彼等を殴った理由を聞いてるんです」

「真面目だな」

 聞き逃しそうな呟き。

 男は顎の辺りを指で触れ、視線を伏せた。

「恐喝されそうになったから、正当防衛の権利を行使しただけです。疑うのなら、聞いてみたらどうでしょう」

 地面から聞こえる、怯えた声。

 言っては悪いが、この男がこれだけの人数相手に勝てるとはとても思えない。

 しかし男達の反応は、悪魔を見上げるような表情だ。

「見学者には、慎重に対応するよう要請されているはずですが」

「済みません。人に金をばらまく程、裕福ではなかったので」

 かなりの皮肉。

 俺の言いたい事など、全て分かっているような顔に見える。

 地味な外観とは違い、中には得体の知れない何かが詰まっているらし。

「どうかしました」

 振り向くと、アメリカンドッグを手にした雪野さんが歩いてきていた。

 もう片手には、大きめの紙袋を提げている。

 食堂には行かず、外で食べる気らしい。

「……その男が何かしたとか」

 途端に険しくなる表情。

 尖った棒の先端が、男の鼻へと向けられる。

「徹底的に調べて、処分して下さい。余罪もあると思いますから」

「は、はあ。取りあえず、IDを見せてもらえますか」

「ほら、早く出しなさい」

 強硬に責めたてる雪野さん。

 ただし、足元で呻いている男達にはまるで関心を払っていない。

「どうぞ」

 丁寧過ぎる程の仕草で渡されるID。

 それを端末に通し、所属と名前をチェックする。

 2年で、やはりガーディアン連合に所属。

 名前は。

「うらた けい……」

「偽造かも知れませんよ」

「え?」

 雪野さんの後ろから声を掛けてくる遠野さん。

 隣りに影が走ったと思った途端、浦田なる男の腕が後ろで極められた。

「取りあえず、拘束しましょうか」

 指錠を取り出し、すぐにはめる玲阿君。

 男は舌を鳴らし、首を後ろに振って頭突きを見せた。

 それが避けられたとみるや、後ろ向きでの足払い。 

 ガーディアンなら、彼の実力は十分理解しているはず。 

 しかし男は、平気で仕掛けていく。

 無論どれも、軽くあしらわれてはいるが。

「危ないな。サトミ、警察へ」

「それが良さそうね。未成年への暴行で、しばらく薄暗い所へ入ってたら」

「差し入れしてあげようか」

 にこにこ笑う雪野さん。

 端末を手にした遠野さんも、明るく笑っている。

「馬鹿が」

 苦笑気味に髪をかき上げる男。

 地面に落ちる、ぼろぼろになった指錠。 

 開錠用の薬品を使ったのと、同じように。

 男は小さなスプレーをパーカーのポケットへ入れ、芝の方へと歩き出した。

 手にした何かを、遠野さんへと渡して。

「どうぞ」

「え?」

「おそらく、この連中のIDだと思います。入場記録と照合して、相手校への連絡もお願いします」

 男の後を追い、楽しそうに笑う遠野さん。

 俺は何枚ものIDをポケットへしまい、雪野さんへ視線を向けた。

「あの、一体」

「済みません、冗談が過ぎたみたいで」

「多分あいつ、映像の記録も撮ってると思います。……と、これか」

 転送されてくる、映像情報。

 アングルは胸元辺り。

 転がっている柄の悪そうな連中が、金を要求している。

 映像は、そこで終わり。 

 どうして地面に転がったかは、謎のままだ。

「あ、あの男。……いや、彼は一体」

「誰でしょうね」

 笑いを堪える雪野さん。

 玲阿君は我慢もせず、男の背中を指差して笑っている。

 そして彼等が遠野さん達の元へ走っていった所で、ようやく思い出した。

 エアリアルガーディアンズの、4人目のメンバーを。



 おにぎりとお茶だけで簡単な昼食を済ませ、ぐったりとなる。 

 あんな光景を見せられれば、疲れるなという方が無理だ。

 見学日の終了時間は、まだ少し先。

 俺の都合に構わず、物事は進んでいく。

 処理する必要のあるチェック事項と、パトロール状況、見学者やガーディアン達の流れ。

 とはいえ、特に問題はない。

 疲れ自体はたまっていくが。

「どう?」

「なんとか。雪野さん達は」

「その辺を見回ってる」

 遠くに見える、均整の取れた長身。 

 その隣りに見える、小柄な体。

 良く分からないが、こっちも問題無さそうだ。

 多分。

「浦田君は」

「さあ」

「その辺にいるだろ」

 あまり関わりたくないという顔。

 それは俺も同感なので、口を閉ざす。

 山下さんの言う通り目立たない人間に見えたが、もしかするとあれが一番危ないのかも知れないな。

 というか、他の3人が思った以上に普通だった。

 偏見というか、俺の思い過ごしていた部分が大きかったせいもある。

 実績や能力はともかく、彼女達も高校生。

 そうそう俺達と、何が違うという事はないんだろう。


 今度も勝手に決めつけて、自分の仕事へ頭を切り換える。

 基本的には事務処理と、簡単な指示。

 実際にパトロールや警備の配置に付くのは、他のガーディアン。

 案内は内局や運営企画局、学校の職員。

 それに比べれば、俺の仕事は楽な方だ。

「さてと、俺も少し歩いてくる」

「分かった。お茶買ってきてくれ」

「私、フライドポテト」


 見学者用に設置されている無料の飲食コーナーで二人の注文を賄い、本部の方へと戻る。

 まだ幼い顔をした女の子や、妙に着飾った女性、あちこちにカメラを廻すスーツ姿の男性達。

 国内でも最高水準とされる、草薙高校の教育レベル。

 俺自身に実感はないが、実際のデータでもそうらしい。

 つまりここで成績が下位な人間でも、進学校の中間くらいには位置する程度の。

 それにバックに大企業が揃っているため、設備は申し分なく充実している。

 就職や進学は向こうから誘いが来るし、各界で活躍している人間も多い。

 中等部からの編入は多額の寄付金と高難度の試験を必要とするが、それでもこういう状況がいつも見受けられる。

 本当、地元に生まれて良かった。


 買い物の品を渡し、椅子に付く。

 そこで、つい振り返った。

 気の抜けた笑い声。

 誰でもない。

 雪野さんだ。 

「寝言?」

 彼女は机に伏せ、身動き一つしない。

 肩には、さっき玲阿君の着ていたジャケットが掛かっている。

 それはともかく、今のは一体。

「起きてるのかな」

「私からは、なんとも。大体、どうして寝てるの?」

「眠いんだろ」

 不毛な会話を聞きながら、小さな体を見つめる。

 女の子にしても小柄で、中学生といっても通用するくらい。

 可愛らしい外見と、明るい笑顔。

 今こう見ていても、これといった事はない。

 秋の陽気に誘われて昼寝をする、普通の女の子だ。


 その頭にいきなり落ちてくる平手打ち。

「わっ」

 当然飛び起きる雪野さん。

「な、なっ」

「寝ないで」

 腕を組み、もっともな事を言う遠野さん。 

 凛とした姿勢を崩さず、でも暖かい眼差しで。

「ね、寝てない」

「机拭いたら」

「よだれが垂れる程は……」

「語るに落ちたわね」

 机にこぼれているのは、お茶か何か。

 雪野さんはティッシュを握り締めたまま、何やら唸っている。

「この子、寝言言ってませんでした?」

「え?」

「じゃあ、笑ってたりして」

 薄い微笑み。

 やはり雪野さんは何も言えず、彼女を睨み付けている。

 大人と子供というか、姉と妹という感じだな。

「ショウは」

「さあね」

 無愛想な答え。

 遠野さんは彼女の肩からジャケットを取り、自分で着てみた。

「袖が余る」

「誰の、それ」

「あなたのでないのは、どう見ても確かね」

 言葉に詰まる雪野さん。

 遠野さんはジャケットを丁寧に畳み、彼女へ差し出した。

「ケイは」

「誰、それ」

 嫌そうに顔をしかめ、ジャケットに袖を通した。 

 大人の服を着た子供という状態。 

 裾が、膝の辺りまで来ている。

 大柄な彼の服を着ているのだから、当然と言えば当然だが。

 また、これはこれで可愛いとも思う。

「ユウは」

「いるじゃない、そこに」

「ああ。ハンガーかと思った」

 強烈な皮肉を放つ浦田君。

 雪野さんはまなじりを上げ、ジャケットを脱ぎ放った。

「あのね」

「それより、ショウの様子でも見てきたら」

「え」

 気を削がれた顔。 

 浦田君は顎を振り、通路の先へ視線を向けた。

 中学生っぽい女の子や、スーツ姿の若い女性に囲まれている男性へと。


 火を噴きそうな勢いで歩いていく雪野さん。

 どうなるかと、つい様子を見てしまう。

 どこからか、ガーディアンでも呼んだ方がいいのだろうか。

「大丈夫ですよ。暴れたりしませんから」

「そ、そうですか」

 俺の不安を読み取ったのか、笑いながら話しかけて来る遠野さん。

 見ていると確かに何も怒らず、玲阿君が逃げるようにしてその場から立ち去って行った。

 それが女性達からのアプローチに対してか、雪野さんからかは分からないが。

「仕事中に、何を遊んでるんだか」

「あなたは、仕事自体してないじゃない」

「好きでここにいる訳じゃない」

 無愛想な答え。

 遠野さんにこう答える人間を見た事がない。

 また、そう試みようと思う者もいないだろう。

 しかし遠野さんは気分を害した様子もなく、欠伸をして卓上端末を引き寄せた。

「見学会は、そろそろ終わりですよね」

「え、ええ。それが、何か」

「いえ。私もこういう時期があったと思って」

 目の前を駆けていったお下げ髪の女の子に、懐かしむような視線を送る遠野さん。

 確か彼女は、中等部からの特待生。

 編入試験の成績は、学校創設以来というレベルだったらしい。

 入学以来学内学年トップという成績を見れば、それも十分に理解出来る。

「あなたも、そういう時期があった?」

「光と一緒に来た記憶はある。あいつのお供として」 

 鼻で笑う浦田君。

 彼の兄は、今大学院生らしい。

 見た事はないが、同じ顔とも聞く。

 少し面白いな。

「皆さんは」

 俺達に話を振っているのだろう。

 優しく微笑む遠野さん。

 細かな気遣いをしてくれる人だ。

「お、俺は地元です」

「わ、私も」

「お、俺も」

 結構間の抜けた答え。

 それでも遠野さんは、笑顔を絶やさない。

「ちっ。外面がいいな」

「浦田君、何か言った?」

「いいえ。何も言いませんよ、遠野さん。じゃあ、あの二人に会った事無いんですか?」

「面識はないです。勿論、存在は中等部の頃から知ってましたが。俺達も、南地区なので」

 遠い。

 という程でもない昔の話。

 普通に学校生活を送り、何となくガーディアンをやって。 

 気付けば今の立場にいる俺達。

 彼女達のように何かをした訳でもなく。

 するだけの力もなく。

 ただ、毎日を過ごしてきただけで。

「小等部の頃は?」

「俺は、玲阿君と一緒でした。その、言っていいのかな」

「どうぞ」

 笑顔で促す遠野さん。

 かなり楽しそうに。

「子供なのに、ちょと怖い感じで。普段は物静かで大人しいんだけど、突然ケンカをしてました。女の子には、その頃から人気がありましたね」

 友人の話に耳を傾ける二人。

 多分、玲阿君本人があまり語らないのだろう。

「格好良くて強い分、ちょっと浮いてたっていうか。……本当、玲阿君には」

「勿論黙ってます」

「私は、雪野さんと同じでしたよ」

 控えめな申し出に、二人が目を輝かせる。

「彼女は、今とあまり変わらないですね。明るくて、元気で。見た目も、それ程は」

「昔から、あんな顔?」

「え、ええ。最近は大人っぽくなった気もしますけど、昔は本当にお人形さんみたいでした。でも、なんか男の子を殴り倒したとかそんな話もちょっと」

 笑う二人。

 これも多分、本人からはあまり聞かされていないのだろう。

 また、自分から言う話でもない。


 しばらく二人の話題で盛り上がっていると、周りが騒然としてきた。

 さすがに話を止めて、状況の把握に向かう。

「どうした」

「見学者とガーディアンが揉めてるみたいです」

「理由は」

「ガラスを割ったりして、派手に暴れてるとか。それを止めようとしたガーディアンにも、刃向かってるみたいです」

 その間に友人達は、端末で情報を収集している。

 俺はすぐに現場へガーディアンを何人か向かわせ、遠野さん達に視線を向けた。

「済みませんが」

「分かりました。こういう事には慣れていますので、ご安心下さい」

「揉めてるのって、あの二人じゃないだろうな」



 一般教棟内。 

 玄関近くの廊下。

 床に散乱するガラスの破片。

 目の前に立ちふさがる野次馬達。

 良くある光景。

 俺にとっての日常とも言える。

「邪魔ですね」

 静かに呟く遠野さん。 

 確かにこれだけ人がいては、どうしようもない。

 学内の生徒だけなら声を掛ければある程度は動くし、強引に突破する事も出来る。

 ただし今は、学内の人間ばかり。

 迂闊な事は出来ないし、通用もしないだろう。

「どうします」

 俺を見てくる浦田君。

 別に皮肉っぽくでも、様子を窺うという訳でもなく。

 指示を出してくれという風に見て取れる。

 また本人も、その気だろう。

「その見学者と揉めているガーディアン達と連絡を取ってますので、彼等から周りに動くよう伝えてもらいます。後から来た俺達が言うよりは、説得力がありそうなので。お二人は、済みませんが一人ずつ説得して頂けますか」

「了解」

 余計な事を言わず、前に出る二人。

 野次馬達もそれ程盛り上がっている様子ではなく、少しずつ場所を空けてくれる。

 また地味な仕事だが、遠野さん達は地道に説得を続けてくれている。

 俺はその間に集まってきたガーディアンを使い、野次馬達を廊下から外へ連れ出すよう指示を出す。

 その暴れている見学者が怪我をするのは勝手だが、関係ない人間を巻き込む必要はない。

 自分の意思でここに来ている人間だとしても。


 どうにか前が空き、揉めている場所も見えてきた。

 野次馬達も状況を飲み込み始め、自分から動き出す。

「左右に展開。見学者をガードしつつ、現場へ」

 前に走っていくガーディアン達。

 彼等は左右に分かれた野次馬達に付き添って、道を確保しつつ彼等の安全も保っていく。

「後続も前進。当事者の確保と、ガーディアン達からの情報収集を」

 野次馬の間を走り抜けていくガーディアン達。

 俺が行ってもいいが、今の立場上指示を出す方に優先するしかない。

 警備区域は、ここだけではないんだし。

 遠野さん達ならどうするのかという考えが、一瞬脳裏をよぎる。

 たった4人だけで行動している彼等なら。

 こんなに手間を掛けず、一瞬にして片付けてしまうのだろうか。

 いや、今はここに集中しよう。

 下らない自己嫌悪に陥るのは、後にすればいい。



「議員の息子?」

 端末に入ってくる情報。

 父親が、地方議会の議員となっている。

 勿論そんな事は関係ないし、草薙グループとしては歯牙にも掛けない相手。

 ただの高校生では、ちょっときつい気もするが。 

「……分かった。俺が行くから、それ以上は何もしなくていい」

「大丈夫なの」

「大丈夫じゃないだろ。なあ」

「仕方ないさ。ここの責任者は、俺なんだから」



 壁際に追いやられ、憮然とした顔をしている男。

 見慣れない制服、横柄な表情。

 間違いなく、このトラブルの当事者。

 つまり、議員の息子だろう。

「職員を呼べよ」

「当校では、生徒がトラブルを処理する規則ですので」

「誰だ、お前」

「ここの警備担当責任者です」

 ガーディアン達を少し下がらせ、男と向き合う。 

 親の権力を笠に着た、いかにもと言ったタイプ。

 この学校にいない事もないが、親が誰だろうと関係ないといった風潮がある。

 しかし目の前にいるのは、部外者。 

 そうそう、迂闊な事はやりにくい。

「ガキに用事はない。警備員か、職員を呼べ」

「彼等は、我々が要請しない限りここへはやって来ません。そういう規則ですので」

「だったら、呼べよ」

 俺は一応愛想笑いを浮かべたまま、玄関の方へ歩くよう促した。

「事情について、少しお伺いします。そちらでなら、職員に立ち会ってもらっても結構ですが」

「俺は、呼べと言ってるんだ」

「今日は職員も少ないですし、彼等も忙しいので。済みませんが、ご了解下さい」

「ふざけるな」 

 床に唾を吐く男。

 不穏な空気がガーディアン達の間に走っていく。

 横柄な男の態度。

 弱腰な俺の対応。

 普段なら、こいつを拘束して終わっている。

 でも今は、そうはいかない。

 親が議員という事だけでなく。

 部外者に、学内の規則を過度に適用する訳にも。

「びびってるのか?」

 見下した視線と、耳に障る笑い声。 

 辺りが一気に静まり返り、その音だけが周りに響いていく。


「差し出がましいようですが、私が応対しましょうか。こちらは、今さら停学になっても大した支障もありませんし」

 静かにささやく遠野さん。

 俺を見かねたのか。

 それとも男への怒りへか。 

 どちらにしろ、そういう訳にも行かない。

「いえ。俺の方で処理します」

「大丈夫ですか。かなり、悪そうな顔をしてるけど」

 男を見る浦田さん。

 彼の方は、危険な顔に見える。

「皆さんに、ご迷惑を掛ける訳にも行きませんから……。雪野さん達は」

「多分、反対側にいると思います。必要があれば、指示を出して下さい」

「分かりました」


 俺達が揉めてると思ったのか、さらに嫌な笑い方をする男。

 いつまでも笑っていろという話だ。

「誰か、映像は」

 手を上げる、数名のガーディアン。

 彼等から転送してもらい、その映像をチェックする。

 目の前の男がガーディアンに食ってかかり、ガラスを割っている映像を。

「……大人しく付いてくるか。それとも拘束されたいか。早急に選んで下さい」

「なんだと」

「ガラスを割ったのは間違いないんです。部外者であっても、その罪は免れません」

「お前、俺が誰だか知ってるのか」

 IDをちらつかせる男。

 親のデータ、つまり自分は議員の息子だと言いたげに。

「単なる見学者でしょう」

「何」

「もう一度言います。大人しく付いてくれば、こちらでもある程度は考慮します」

「馬鹿にしやがって」

 ゆっくりと伸びる右腕。

 頬をかすめる拳。

 肘と腕を取り、懐に入って体を背負う。

 後は背中を伸ばして、腕を極めるだけだ。


 床でしたたか背中を打った男は、殺意すら感じる表情で俺を見上げてきた。

「今の件については、不問としましょう。ガラス代を学校に弁償して、すぐにお帰り下さい」

「このっ」

「いい加減にしろよ」

 耳元に顔を寄せ、多少威圧感を込めて呟く。

 演技ではなく、かなり本気で。

 男もそこから何かを感じ取ったのか、体の力を抜いて顔をそむけた。

 取りあえず、どうにか。

「お坊ちゃんっ」

 奇妙な呼び方。

 野次馬の間から飛び出してくる、スーツ姿の屈強な男達。 

 こっちは、親の護衛といったところか。

 俺は男から離れ、腰の警棒に触れた。

 相手は二人。

 動きから見て、どう見ても俺よりは上手。

 ただ、ここで引く気もない。

 もしそうするなら、初めからこの男を相手にしていない。


 そう決意したのもつかの間。

 男達は、俺のすぐ前で足を止めた。

 いや、止められた。

 やはり突然現れた、二人によって。   

「止めた方がいい」

 静かに語る玲阿さん。

 雪野さんは俺を気にしつつ、周囲にも視線を配っている。

「ガキが、ヒーロー気取りか」

「あんた達の役目も、多少は分かる。その実力も。だけど、勝ち目はないぞ」

「あ?俺に勝つ気でいるのか」

「というか、周りを見てみろ」

 変わらない野次馬の群れ。

 その前にいる、ガーディアン達。

 一人や二人ではない。

 武装をした若者が、怒りを湛えてこちらへ意識を向けている。

 どれだけ腕に自信があろうと、これだけの人数を相手にする者はいないだろう。

「あいつも、もうやる気は無さそうだし。早く連れて帰ったらどうだ」

「ちっ」

 嫌そうにショウを睨む護衛。

 しかし男がよろよろと立ち上がって肩をうなだれたのを見て、すぐに駆け寄ってきた。

 当然俺には、鬼のような形相を向けてくる。



 去っていく野次馬。

 男達の姿は既に無く、ガーディアン達も元の配置に戻っている。

「何とかなりましたね」

 明るく笑う雪野さん。

 俺もどうにか笑顔を作り、ため息を付いた。

「あれでよかったんでしょうか」

「さあ。あれ以外に、私は思いつきませんけど」 

 真顔で語られた。

 冗談、でもなさそうだ。

「見学会も、もう終わりですね」

「え、ああ。はい。ただ、後片付けとかが残ってますから」

「それも、ガーディアンの仕事なんですか?」

 特に嫌そうな顔はせず、感心している雪野さん。

 彼女の言う通りガーディアンの仕事ではないが、人手がないためその辺の融通は利かす必要がある。

「さてと、俺は帰ろう」

「今の話を聞いてなかったのか」

 襟首を掴まれる浦田君。

 露骨に嫌そうな顔で。

「俺は好きでここにいる訳じゃない」

「聞き飽きた、それは」

「大体、どうして俺達がここにいるんだ。誰かが、バックマージン取ってるんじゃないだろうな」

 物騒な発言。 

 生徒会ガーディアンズから依頼が入るのは、ガーディアン連合に対して。

 つまりガーディアン本人の意思は、そこには介在しない。

 支払われる手当に関しても。

「俺の事か」

 突然目の前に、人が現れた。

 それには誰もが、驚きの表情を浮かべる。

「あ、塩田議長」

「敬礼はいい。どうにか片付いたみたいだな」 

「え、はい。お陰様で」

 包容力のある笑顔で頷く、ガーディアン連合議長。

 彼は雪野さん達の先輩でもあるので、見に来てくれたのだろう。

「議員の馬鹿息子が来たって話だが」

「え、はい。多少手荒でしたが、お引き取り願いました」

「それでいい。部外者だろうとなんだろうと、ここで暴れたら容赦するな」

 頼もしい言葉。 

 肩に置かれる手から感じる温かさ。  

 俺達は思わず姿勢を正し、敬意を込めて彼を見つめた。

「格好付けやがって」

「あ。浦田、何か言ったか」

「いえ、別に……。と、また変なのが来ましたよ」

 廊下の先。

 小走りでやってくる、小太りの中年男性。

 推測だが、間違いなく例の議員だろう。


「私の息子を投げた奴は誰だ」

 怒り心頭という表情。 

 その息子が何をしたかは、気にしてないらしい。

「俺です」

「貴様」

「息子さんが窓ガラスを割り、さらに反省の色もなく俺に殴りかかってきたので。身を守る意味も込めてです」

「よくも、そんな事が言えたな。貴様、自分の立場が分かってるのか」

 胸元をこちらへ見せてくる男。

 はっきりとは言えないが、議員バッチだろう。

「まずは職員を呼べ。それと、警察も」

「構いませんが、お困りになるのはあなただと思います。映像記録も残ってますので」

「意見する気か。最近の子供は、しつけがなってないな。それとも、草薙高校とは所詮この程度のレベルという訳か」

 侮蔑気味に鼻を鳴らす男。

 この状況に飽きたという顔にも見える。

「分かった、分かった。貴様らのような連中に何を言っても仕方ないようだ。後で議会を通して話をするから、大人しく待ってろ」

「何をですか」

「貴様らを、どう処分するかだ。せっかく息子を入れてやろうとしたのに、馬鹿な真似をして。後で後悔する……」


 距離を詰め、男を上から見上げる。

 今にも爆発しそうな感情を抑えながら。

「俺を処分したいなら、警察にでもどこにでも行って下さい。それと、あなたの息子さんは入ってもらわなくても結構です」

「な、なんだと」

「俺を馬鹿にするのは勝手です。ただし学校について文句を言いたいなら、いつでも相手になるって言ってるんですよ」

 息を呑む男。 

 しかし青くなった顔はすぐに赤みを取り戻し、今まで以上の侮蔑的な視線を向けてきた。

「貴様。それで、脅してるつもりか。よし分かった。すぐに弁護士を呼ぶから待ってろ。学校も貴様も、これで」

「うるさいんだよ、お前」

 俺と男の間に立つ塩田さん。

 ため息混じりに、頭を掻きながら。

「き、貴様は誰だ。わ、私が誰だか」

「知るか。弁護士でもなんでも好きに呼べ」

「こ、この。……私だ。……今草薙高校に。……いや、生意気な子供がいるので相談に。……ああ、裁判を。……え」

「学内において、生徒の権限は教職員と同等とする。やるのは勝手だが、負ける裁判には荷担しない。なんて言ってないか」

 顔色を失う男。 

 塩田さんは視線を鋭くして、いきなり男の襟首を掴み上げた。

「な、何を」

「お前みたいな田舎議員を相手にする程、こっちは暇じゃないんだ。これ以上がたがた言うようなら、素っ裸にして選挙区に放り出すぞ」



 影の多くなった本部。

 のんきに夕陽を眺める塩田さん。

 先程までの激情は、その欠片も見えない。

「掃除は終わったか」

「終わりました」

 掃除道具を片付ける雪野さん達。

 塩田さんは満足げに頷き、俺へ視線を向けてきた。

「他に、何かあるか」

「い、いえ。もう結構です。雪野さん達の拘束時間も、もう終わってますし」

「使える内に使えばいいんだよ。こいつら、やれと言った事くらいはやるから」

「だったら、御自分でもやって頂けますか」

 低い、凍えるような声を出す遠野さん。

 その間にも玲阿さんは、机を畳んでてきぱきと片付けている。

 どうも、印象と違う部分が多いな。

「嫌だね。それと浦田。お前、始末書な」

「何で」

「見学者を殴っただろ」

 鼻を鳴らす浦田君。

 かなりの、皮肉っぽい顔で。

「あいつらが金を出せって言うから、俺は逆さに振っても鼻血も出でないって答えたんです。でも分かってくれないから」

「向こうに鼻血を出させたって。馬鹿か、お前」

「あんただって、議員を脅したでしょうが」

「あれはお前、子供の悪戯さ。なあ」

 笑いかけてくる塩田さん。

 俺は曖昧に頷いて、どうにかごまかした。

「まあ、いい。じゃ、俺達はもう帰っていいか」

「あ、はい。お疲れ様でした」

「いえ、こちらこそ」

 礼儀正しく頭を下げてくる雪野さん達。

 ここへ来た時と変わらない、自然で飾らない態度のままで。




 遠ざかっていく背中。

 来た時と似た眺め。

 少し違った印象を残して。

 俺達と変わらない、明るい笑顔を見せて。





                     了









     エピソード 20 あとがき



 本編は、ユウの視点。

 外伝は、その周りの人間の視点。

 という訳で、全く外部の視点で書いてみました。

 本人達は分かってない、周囲の考え方ですね。

 当然誤解や大袈裟な噂などが、彼等には擦り込まれています。

 またそれは、あながち間違いでもないですが。


 ユウは、自分が普通と思ってます。

 今回の3人も、自分達が普通と思ってます。

 また実際、誰もが自分は普通だと思ってる訳で。

 要は、その辺りのギャップでしょうか。

 ただ、ユウ達が本当に普通なのかは知りません


 内容通り、各ガーディアンの練度や志気は非常に高いです。

 生徒会同様、「自治」を自分達の手で支えている自負もあるんでしょう。

 これが草薙高校の強みであり、基礎ともなっています。

 彼等のような無名なガーディアンでも、これだけの気概を持ってますので。

 ユウ達は、言わずもがなです。

 それに比例して、行動が無茶な気もします。


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