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スクールガーディアンズ  作者: 雪野
第19話
207/596

19-3






     19-3




 コテージの前にある駐車スペースへ停まる、赤のRV車。

 下りてきたのは、モトちゃんとエリちゃん。

 彼女達は自分が所属するガーディアンの人達と、他の所で遊んでいた。

 今日からは、ここで。 

 どうにも遊んでばかりだね。

 時間としては、私も大差ないけれど。

「涼しいわね、ここは」

 タンクトップから伸びる、長い手を撫でるモトちゃん。

 私はもう慣れているので、朝晩は長袖を着てる。

「こんにちは」

 明るい笑顔で下りてくるエリちゃん。

 最近は可愛いというより、綺麗といった感じ。

 身長も高くなり、プロポーションも良くなって。

 私なんて、遠い彼方の話。

「あれ、木之本君も来たの」

「来ましたよ」

 苦笑気味に答える木之本君。

 彼女と遊んでると思ってたのに。

「ふられたんだって」

 耳元でささやくモトちゃん。

 周りに聞こえるくらいの、大きな声で。

 木之本君は寂しく微笑み、荷物を下ろし始めた。

「手伝い、ます」

 とことこと歩み寄り、バッグを降ろす女の子。

 華奢な体型と、あどけない顔立ち。

 高畑さんはおぼつかない足取りで、荷物を運んでいる。

「あの子、どうしたの」

「山の絵が描きたいっていうから。迷惑だった?」

 不安そうになる、木之本君の顔。

 私は首を振り、ペットボトルに水を汲んできたケイを呼び寄せた。

「これ、運んで」

「俺は今、下まで行って」

「少しは体を鍛えてもいいでしょ。高畑さん、後はこの子がやるから」

「分かりました」

 悪びれず、頭を下げる高畑さん。

 ケイは彼女を睨み付け、それでも荷物を運び出した。

「相変わらず、訳の分からない子ね」

「いいの、あのくらいで」

 二人でおかしそうに笑い、一緒にコテージへと入っていく。



 若い男女が、山奥の別荘に泊まる。

 なんか、怖い映画で良くあるパターン。

 ただ、私としてはそっちの方が対応出来る。

 力尽くで、倒せばいいだけだから。

 怖いには怖いけど、お化けよりは100倍ましだ。

「自炊してるの」

 キッチンの冷蔵庫を開け、一人頷くモトちゃん。

 管理人さんの都合が悪く、今の所は私達が管理中。

 家事全般も含めて。

 とはいえ普段も寮でやっているため、問題はない。 

 モトちゃんが加われば、もう少し楽にもなる。

「山奥の割には、意外と食材が揃ってるのね」

「近所の農家で買ってきたり、釣ってきたりしてるから。お肉は、さすがに買うけどね」

「その内、ここへ根を生やすんじゃない」

「かも知れない」

 くすくす笑い、床に転がっている土の付いた大根をつつく。

 スーパーと違い、葉っぱが付いたままなのが嬉しかったりする。

「名雲さんと一緒じゃなかったんだね」

「そうよ」

 妙に強く答えるモトちゃん。

 素直じゃないな。

「でも木之本君も、よくふられるね」

「それだけ、相手がいる事でもある」

「あ、なる程」

 何度も振られるって事は、何人とも付き合った事。

 ちょっと悔しいな。 

 いいんだけどさ。

「さてと。馬鹿な話をしてても仕方ないし、昼ご飯の準備でもしましょうか」

「いいよ。私がやるから。モトちゃんは、自分の荷物を片付けてて」

「じゃあ、お願い」

 キッチンを出て行くモトちゃん。

 私はエプロンを付け、大根の葉っぱを刻む。

 菜飯だ、菜飯。 

 後は大根のおみそ汁に、浅漬けと。

 安上がりで助かるな。


 いまいち不評だったので、当分は止めよう。

 たまにはこういう粗食に耐えた方がいいのよ。

 少なくとも、私は好きだし。

「肉は、肉」

 妙に切実な声を出すショウ。

 一度、断食させてやろうかな。

「猪でもウサギでも、捕ってきたら」

「ボウガンは」

 真顔で聞いてきた。

 仕方ないので鼻先に包丁を突き立て、軽く振る。

「冗談だ」

「そう。とにかく、そういうふざけた事は止めてよね」

「普段から、肉は食ってるだろ」

 ケイみたいな事を言うな。 

 最近知恵が付いてきたというか、やけに反抗的な気がする。

 それはそれで、いいんだけどね。

「理屈じゃないの。大体、捌けないでしょ」

「ああ」

 あっさりと認めた。

 気弱な、頼りない表情で。

 何よ、可愛いじゃない。

「みんなには内緒よ」

 棚を開け、奥に閉まっていたスモークハムを彼に渡す。

 ショウは何とも嬉しそうに笑い、それを振りながらどこかへ行った。

 子供だね、いつまで経っても。

「私にはないんですか」

 とことこっと、前に回り込んでくるエリちゃん。

 私は最後のグラスを綺麗に拭いて、はっきりと首を振った。

「今日のお昼は、菜飯に大根のおみそ汁」

「ショウさんが持ってたのは?」

「山で、捕ってきたんじゃないの」

 適当に答え、エプロンを外してキッチンを出る。

 エリちゃんも、すぐに付いてくる。


「優さん」

「暑いから、いや」

 妙にまとわりついてくるエリちゃん。 

 何せ私より大きくなったから、結構圧迫感がある。

 というか、私が遊ばれてる感じにも思えてくる。

「あなたのお兄さんがいるでしょう。あの子と遊んできてよ」

「珪君は、農家へ買い出しに行ってます」

「出来のいい方は」

「昼寝してましたよ。ハンモックの下で」

 それは、落ちたんじゃないのか。

 大体、ハンモックなんてあった?

 キャンプといえばハンモック、という考えに浸ってたんじゃないだろうな。

 私同様。

「だったら、サトミと遊んできて」

「聡美姉さんは、勉強中です」

 ここに来てまで、勉強ね。

 私も宿題はやるけれど、勉強というレベルではない。

 頭がいいから勉強するのか、勉強するから頭がいいのか。

 彼女の場合はその両方だろう。

「木之本君は」

「高畑さんと、何か作ってましたよ」

「絵を描いてるんじゃなくて?」

「木彫りみたいでしたね。この辺は檜の産地らしくて、途中で材木を買ってました」

 民芸品でも売るつもりかな。

 こんな、誰も通らない所で。

「じゃあ、自分の荷物を片付けてて」

「全部終わりました」

 満面の笑み。

 どうだと言わんばかりの。

「分かった、降参。裏の室外灯が消えてるから、替えるのを手伝って」

「はい」


 二人して脚立を運び、コテージの裏手へとやってくる。

 建物の正面とは違い、こちらは完全に深い森。

 下草はショウが機械で刈ったけど、空気は冷たくて日射しも薄い。

 森の深い奥には、一体何がいるんだろうと思わせるような。

「私が登りましょうか」

「大丈夫?」

「元野さん程は、鈍くないですから」

 二階の窓から顔を出していたモトちゃんへ笑いかけるエリちゃん。

 声は聞こえなかったらしく、彼女も笑顔で手を振り返している。

「これですね」

 細長い管球を持ち、軽い足取りで登っていく。 

 手足の長さを考えれば、確かに彼女の方が適任だろう。

 室外灯は、一階と二階の中央にあるひさしの先。

 取り替える行為自体は簡単で、それこそモトちゃんにも出来る。

 身長以上の高さにある場所での、軽作業でなければ。 

 私は及ばずながら、下で脚立の確保。

 仮に上からエリちゃんが落ちてきても、支えるくらいの事は出来る。

 彼女なら、支えが無くても平気だろうけど。


 手早く作業を済ませるエリちゃん。

 私は彼女が落としてきた管球を受け取り、脚立を押した。

 ストッパーの解除された脚立は、滑らかな動きで横に流れる。 

 替える室外灯は、まだいくつもあるので。

 今度は私が管球を放り、エリちゃんが受け取る。

 そして、脚立を押す。

 なんか、小間使いみたいだな。

「優さん、どうかした?」

「何でもない。それで最後だから」

「はい」

 素直に返事をして、脚立を下りてくるエリちゃん。

 私は彼女に手を貸し、最後の一段まで見届けた。

 よし、作業終了。

 やったのは彼女だけど、責任は私にある。

 万が一の場合にも。

「まだ、何かあります?」

「今の所は大丈夫かな。私も全部を把握してないから、はっきりとは言えないけど」

「誰が把握してるんですか」

「サトミとケイ。特にサトミは、小姑みたい」

 突然降ってくる氷。

 上を見上げたら、サトミがグラスを逆さにしていた。 

「本当の事じゃない」

「あなたが適当だから、私はあれこれ言うのよ」

「へん」

 再び落ちてきた氷を、管球の先で付いて跳ね返す。

 サトミは鼻の辺りに氷を当て、間の抜けた声を出して仰け反った。 

 それ程強くは返してないし、尖ってないので心配はない。 

 大体危ないのは、氷を落とされた私の方だ。

「エリちゃんも、ああいう人間にはならない方がいいよ」

「覚えておきます」

「二人とも、後で覚えてなさいよ」

 私達を指差し、窓辺から消えるサトミ。

 あの手の捨て台詞は何度も聞いた。

 とはいえ覚えていても仕方ないし、気にもしない。

 今までの経験上。

「さてと。これを片付けて一休みしようか」

「ええ」


 脚立を物置へ運び、管球はゴミ袋へ。

 後はペットボトルを持って、コテージの周りをふらふら。

 周囲は木々で、その間を一本の林道が通っている。 

 ここは行き止まりのため、来る人もいない。

 木々を伐採して多少周囲は開けている物の、若干の寂しさは否めない。

 こうして誰かが側にいなかったら、余計にそう思うだろう。

「何彫ってるの?」

「鯨」

 丸太で作られたテーブルの上に置かれる、小さな木片。

 角を削り、多少彫り込んだだけの造形。

 ただそれは間違いなく鯨で、むしろその素朴さが心に何かを訴えてくる。

 この山奥で何故鯨なのかは、ともかくとして。

「器用ですね、先輩」

 くすくす笑うエリちゃん。

 木之本君ははにかみ気味に微笑んで、ジーンズに落ちた木くずを払った。

「僕は、こういう事しか出来ないから」

「珪君なんて、こういう事も出来ません」

「浦田君は浦田君で、いい所がたくさんあるよ」

「例えば?」

 答えない木之本君。

 私だって答えようがない。

「出来た」

 ぽつりと。 

 思わずといった具合に漏れる声。

 彼の正面にいた高畑さんも、テーブルの上に木片を置いた。

 そこでようやく、私達と視線を合わせる。

 多分今まで、その存在すら気付いてなかったのだろう。

 羨ましい程の集中力で。

「これは?」

「熊です」

 森らしいテーマ。

 木之本君が素朴さなら、こちらは繊細さ。

 森の王者でもある熊。

 太い手足と、たくましい半身。

 微妙に丸まった背中と、下の方に下がる腕。

 顔は上を向いていて、小さく口が開いている。 

 強さと。

 切なさを感じさせる、素晴らしい出来。

「先輩よりも器用ね」

「私は、全然」

 顔を赤くして、髪に触れる高畑さん。

 エリちゃんは熊を指先でつつき、日射しの中へと入れた。 

 テーブルに落ちる、熊の影。

 薄くなる背中と、照らされる顔。

 より生き生きとなる、熊の表情。

「やっぱり、才能ね。羨ましい」

 素直に、感慨深げに呟くエリちゃん。

 私もすぐに頷き、木片と彫刻刀を手に取った。

 対抗する訳ではないけど、自分の能力も試してみたいから。


 結構難しい。

 というか、上手くいかない。

 手先を使うのは、むしろサトミ達の方が得意。

「ネコ?」

「違います。カバです」

「ヤギじゃないの?」

「鹿よ」

「ああ、そういえば」

 わざとらしく手を叩く木之本君。

 余計気が滅入るから、止めて欲しい。

「これは、フクロウかな」

「ええ。少し、不格好ですけど」

「上手です」

 二人に誉められるエリちゃん。

 少なくとも、誰の目から見てもフクロウに見える木彫りの前で。

「面白くないな。ケイは」

「またそうやって」

「俺が、どうかした」

 いいタイミングを外さないね、この人は。

 即座に木片と彫刻刀を彼へ渡し、椅子に座らせる。

「何でもいいから、彫って」

「どうして」

 私のプライドのために。

 なんて事は言わず、机を叩いて彼を促す。


 ジャガイモを削り終えた所で、木工の時間は終わり。

 ケイはカブトムシって主張するけど、そんなの誰も信じない。

「雨」

 山特有の夕立だろうか。

 大粒の雨が窓を濡らし、流れになって伝っていく。    

エアコン無しでも十分に過ごせる涼しさ。

 こうなると、むしろ寒いくらいだ。

「クシュッ」

 鼻をこすり、トレーナーを着込む。

 下はジャージをすぐに履く。

 これで晴れたら、また脱ぐんだし。

 本当に山っていうのは、難しい。

「少し大きいな」

 余る袖。

 引きずる裾。

「それ、私のです」

 袖を引っ張る高畑さん。

 どこかで見たと思ったら、中等部の体操服か。

 というか、どうして大きいの?

「じゃあ、私の着て」

「……少し、小さいですね」

 私とは逆で、彼女の場合は袖も裾も短め。

 私が持ってきたのは、高等部の体操服。

 かなり複雑な展開だ。

「あら、似合うじゃない」

 ころころ笑うモトちゃん。

 サトミはもっと、意味ありげに微笑んでいる。

 何もかも今更なので、気にもしない。

 そう、自分に言い聞かせる。 

「それより、洗濯物は」

「全部取り込んだ。天気予報も、当てにならないわね」

「山の中だから、仕方ないわよ」

 激しく窓を揺する雨。

 突然の稲光。

 数拍遅れて飛び退くサトミ。

 ここに落ちてたら、間違いなく当たってる。

 電気より早く動ける訳も無いけどね。

「大丈夫かしら」

 激しくなる雨脚。

 窓はさらに揺れ、景色は全く見えなくなった。

「誰か、外にいる?」

「ショウが、魚釣りに行くって」

「流されてないでしょうね」

 すぐに端末を取り出し、彼へ連絡を取る。

 防水性は高いし、災害時にはネットワークが特殊回線を経由する。

「あ、ショウ?……もう、川から離れたの?」

 さすがに危険を察知するのは得意らしい。 

 それにどれだけ体を鍛えても、増水した川に流されてはひとたまりもない。

 もし流された後でショウが戻ってきたら、まずは彼の足を調べたい。


 ずぶ濡れの、川に落ちたみたいなショウが玄関先で服を脱ぎ出した。

 下は水着を着てるけど、ちょっと嫌だ。

「急に降ってきてさ」

 そうショウが言った途端。

 開け放たれた玄関のドアから差し込む日射し。

 玄関にたまった水たまりがきらきらと輝き、爽やかで乾いた風が吹き込んでくる。

「……なんだ、それ」

 間の抜けた呟き。

 玄関を出れば青空が見え、黒い雲はみるみる遠ざかっていく。

「よかったじゃない。川に流されるよりは」

「そうだけど」

 不満げな表情。

 それは雨に濡れたせいか。

 クーラーの中に、氷だけが浮かんでるせいか。

 いいや。

 夕ご飯は、また菜飯にすれば。



 さすがにそういう訳にはいかず、モトちゃん達が途中で買ってきた馬肉で桜鍋をした。

 朝になって適当に煮詰まり、これがまた美味しい。

 というか、こっちの方が好きだ。

 後片付けと掃除に洗濯。

 一通りを終えて、遊びに出掛ける。

 まだ日は昇り始めたばかり。

 今日という一日は、どれだけでも残ってる。


 ソースカツ丼を食べた帰り。

 渓谷沿いに走る、開けた林道。

 時折走るトラックに道を譲りつつ、奥へと進む。

 見上げる程の木立。

 空を行き交う、小さな鳥。

 渓谷は激しい飛沫を上げて、私達を導いていく。

「あれ」

 車を停めて、降りるショウ。 

 私も降りて、彼の隣りに並ぶ。

「熊でもひいた?」

「あのな」

 トラックが出入りする、林道の脇道。

 そこに掛かる、大きな看板。

「矢加部林業……。って、これは」

「あの女の実家が経営してるんだろ」

 ぽつりと呟くケイ。

 普段通り、興味なさげに。

 ちょっと待てよ。

「そうすると、ここは矢加部さんの土地?」

「あの子というか、お父様の土地ね」

「どこから、どこまで」

「推測だけど、見渡す限り」

 私達がいるのは、山の中腹辺り。

 どこをどう見ても、木々ばかり。

 つまりこの一本一本が、全部あの子の物なのか。

「すごいね。でも、木って高いの?」

「ここに植えてあるのは殆どが檜だから、想像を絶すると思うわ」

「おじさんは、没落してるって言ってたのに」

「太陽がいつ消えて無くなるか、あなた知ってる?」

 諭すように笑うサトミ。

 そのくらいは、私でも知っている。

 今は私達を照らし輝く太陽も。

 数十億年後にはこの宇宙から、その存在を消してしまう。

 私には想像も出来ない、遠い未来に。

「最近は発展する産業に関わってないだけで、地盤は頑として揺るがないのよ」

「だったら、この山全部?」

「一山どころか、この辺の山は大半だろ。農地改革で、山林地主は生き残ってるから」

 鼻で笑うケイ。

 要は、こうして私達が立ってる場所もか。

 ここまで来ると、訳が分かんないな。

「勝手に入ってきていいの?」

「林道は開放してるって、道の入り口にあった」

「ふーん」

 足元にあった石を拾い上げ、何となく見つめる。

 これも、矢加部さんの物なのかな。

 持って帰ったら、泥棒だろうか。

 帰らないけどさ。


「その辺の檜の皮でも剥がして、持って帰ろう」

 悪い顔になるケイ。

 そんな彼の目の前を過ぎていく、大型のRV車。

 助手席に見える、綺麗な女性。

 向こうもこちらを認識したらしく、車がゆっくりと下がってきた。

「どうかされました」

 一応は車を降りてくる矢加部さん。

 紺のスーツと、足元はさすがにパンプス。

 髪は後ろでアップされて、普段以上に大人びて見える。

「近くの別荘を借りてて。ここは、矢加部さんの会社?」 

 私達の中では、最も彼女と良好関係にあるショウが尋ねる。

 最近は色々あったけど、私よりはまだましだ。

「ええ。といっても、山林部門の一つに過ぎませんけど」

 平然と答える矢加部さん。

 それが冗談や自慢でないのが、また怖い。

「今日は、何を?」

「父の代わりに、視察を兼ねて。私も、別荘に来てるんです」

 彼女の場合は借り物ではなく、矢加部家の所有だろう。

 それにしても、父の代わりか。

 人間性はともかく、頑張ってはいるようだ。

「よかったら、別荘へいらして下さい。私も、すぐに戻りますから」

「え、ああ。モト達もいるから、呼んでいいかな」

「構いませんよ。ナビへ情報を送りますので、それに従って下さい」



 別荘というか。

 山の中に現れた御殿というか。

 派手な作りではないけれど、その全てが一級品という感じ。

 建材は全て檜。

 石は大理石や御影石。  

 家具は北欧、食器はイギリスといった具合。

 生まれた時からこういう暮らしをしていれば、ああいう性格になっても仕方ないのかな。

「すごいな、これ」

 リビングの窓から見える渓谷を、子供のような顔で眺めるショウ。

 似たような暮らしをしていても、こうなる場合もある。

 多分、こっちが例外だろう。

「どうぞ」

 お嬢様手ずから置かれる洋菓子。

 果物をゼリーで包んだ、見た目にも涼しいお菓子。

「気前いいね」 

 何か言いたげなケイへ、小声で話を振る。

 彼は鼻を鳴らし、細工の施されたグラスのお茶を飲んだ。

「貴族っていうのは、寛容なんだよ。相手がどうとか、自分の感情がどうとかじゃなくて」

「だから、私達でももてなすって訳?」

「よきに計らえ、ってな事さ」

 口を閉ざすケイ。

 お菓子を置いていく矢加部さん。

 高畑さんとエリちゃんの分を置き、最後にケイの分を置く。

「……どうかなさいました?」

「なんか、みんなのと違うなと思って。いいんだけどね」

「丁度一つだけ足りなかったんです。申し訳ありません」

 慇懃に頭を下げ、トレイを抱えて出て行く矢加部さん。

 彼の前にあるのは、おまんじゅう。

 この別荘にはあまり似合わない、温泉旅館のお土産みたいな。

「やっぱりあなたは、嫌われてるのよ。私以上に」

 何とも楽しそうに笑い、ゼリーを頬張るサトミ。

 ケイは舌を鳴らし、箱に詰まった小さなおまんじゅうを食べ出した。

「……済みません」

 不意に手を上げる高畑さん。

 矢加部さんは意外な程優しく微笑み、彼女の前で腰を屈めた。

「どうかなさいました?」

「美味しいんですけど、まだあります?」

「え、どうして」

「お父さん達にも、食べさせてあげたくて」

 子供っぽい。 

 純粋で、素直な気持ち。

 矢加部さんは顎に手を添え、少し小首を傾げた。

「後で、聞いてみます。私の分でよかったら、一つ持って帰って下さい」

「え、でも。それは」

「よろしいんですよ」

「はい、頂きます」

 にこっと微笑み、両手で受け取る高畑さん。 

 それを、やはり優しい笑顔で応じる矢加部さん。

 だが私の視線に気付いたのか、すぐに澄ました顔でショウの前に座る。

 いいんだけどね。

「どう思う?」

「甘い」 

「矢加部さんが、じゃないよね」

 顔をしかめて、お茶を飲むケイ。

 一つ食べただけで、もう飽和量に達したらしい。



 冷蔵庫にしまわれる、ゼリー3つ。

 言い換えると3箱分。

「浦田君は?」

「さあ。まだ、おまんじゅう食べてるんじゃないの」

 それももらって帰ってきたが、食べるのはショウくらい。

 または、子供かな。

「矢加部さんも、最近丸くなったね」

「体型が?」

 分かっていつつ、陰険に返す。

 この辺は木之本君も分かっているので、たしなめては来ない。

「それにしても、父の代理か。大人を相手にしてるんでしょ」

「雪野さんも、付いていったら」

「本当に、子供扱いされるじゃない」

 箸を水ですすぎ、軽く振って水を切る。

 当たり前にやってるけど、管理人さんっていつ来るんだろう。

「これで全部だね。お疲れ様」

 箸を拭き、タオルの上に置く木之本君。

 私も水を止め、シンクの周りに飛んだ水滴を拭いてそれをもう一度すすいで終わる。

「ちょとは、見直したけど」

「ああ、矢加部さん。確かに、頑張ってる」 

「だからといって、今までの事は忘れないわよ」

「そう」

 優しい、温かな微笑み。

 少し恥ずかしいので、冷蔵庫に顔を突っ込む。

「何よこの、馬肉の薫製って。私にもくれたっていいじゃない」

「高畑さんにって、矢加部さんは言ってたから」

「やっぱりあの女は、むかつくな」

 美味しそうな薫製のパックを指でつつき、仕方ないので棚を開けてジャーキーを取り出す。

 ありかを知ってるのは、私かモトちゃんくらい。

 迂闊に出しておくと、どれだけでも食べる人がいるから。

「でも、美味しい」

 思わず浮かぶ笑み。 

 苛々なんて、遠い世界の話。

 ちまちまジャーキーをかじっているだけで、ここは幸せの国になる。

 本当、安上がりな体質に生まれてよかった。

「木之本君も食べる?」

「僕はいい。浦田君にでもあげて」

「いいの、あの子は」

 何がいいのか知らないけど。

 とにかく、隠すに限る。

 忘れて来年見つける可能性も、この際忘れるとして。

「木之本君は、矢加部さんに甘いよね」

「甘いというか、あの子もそう悪くはないよ」

「そうかな」

 疑わしげに彼を見て、ジャーキーをかじる。

「それに僕は、しがらみというか対立点が無いから」

「何が」

「言っていいのかな。その、あれ」

 言い淀む木之本君。

 その素振りで、大体分かった。

 私と彼女の間に存在する問題。

 先日の出来事。

「もしそういう事がなかったら、もう少し冷静に矢加部さんを見れるんじゃないかな」

「サトミは?あの子も、仲悪いじゃない」

「努力しても敵わないから、苛立つんだと思うよ。お金や地位があっても、遠野さんにはなれないから」

 冷静な分析。

 それもまた、彼らしい一面。

「じゃあ、ケイは」

「さあ。それは、僕も知りたい」 

 笑う木之本君。

 そこに現れる地味な顔。

 話題の本人ではなく、そのお兄さんの方。

「何の話?」

「矢加部さんの話」

「ああ、お嬢様の」

 頷くヒカル。

 ケイのように皮肉めいた事は言わないが、彼にしては距離のある感じ。 

 サトミの絡みで色々あったので、多少は考える部分もあるのだろう。

「悪い子じゃないけど、いい子とも言えないからね」

「ケイみたいに?」

「あれよりはましだよ」

 妙に力強く言い切る、実の兄。

 大体、あれって。

「でも、お父さんを手伝ってたじゃない」

 何故か、彼女をフォローしている自分。

 言う気はなかったし、誉める気はもっと無かったのに。

「とにかく誰だって、少しは良い所があるわよ」

「僕にも?」

 小首を傾げ、私を見てくるヒカル。

 木之本君も同様に。

 ヒカルのいい所。

 頭が良いのは、長所という物ではない。

 性格は、少し気が抜けてる。

 器用だけど、変に雑。

 後先を考えなくて、笑ってごまかす。

 第一サトミと付き合うなんて、ふざけた事もやってる。

 沈黙のキッチン。

 重苦しい空気。

 夏の夜は長い……。


 翌朝。

 来客を告げる端末。

 セキュリティは作動しているので、おかしな人間だとしても入っては来られない。

「こんな山奥に、誰かしら」

 怪訝そうに、玄関前の映像をTVへ映すサトミ。

 管理人さんが来るという連絡はないし、誰かが来るという話も聞いてない。

「誰もいない。故障、でもないのか」

 彼女の隣で腕を組むモトちゃん。

 木之本君は自分の端末を操作し、顔をしかめた。

「誰かが入ってきてる。セキュリティを、外部から解除して」

「ショウ」

 サトミの言葉を待つより早く、警棒を担いで玄関へ急ぐショウ。 

 私もスティックを取り出し、二階へ続く階段とリビングの窓へ視線を向ける。

「わーっ」

 突然の絶叫が、玄関から響く。

「サトミ達は、ここに。沙紀ちゃん、みんなをお願い」

「分かった」

「ケイ、木之本君」

 すぐに私の後に続く二人。

 ショウにあんな声を出させる相手。

 正直、私達だけで対応出来るかどうか。

 ただ、サトミ達を逃がす時間稼ぎくらいは出来る。


 玄関先に、俯せで倒れるショウ。

 その傍らに立ち、彼が持っていった警棒を担ぐ男性。

 大きくはないが、服の上からも分かる鍛えれた体。 

 辺りの空気を裂くような威圧感。

 私はスティックを構え、男性の首元を薙いだ。

 あっさりと受け止められるスティック。

 斜めに構えられた警棒をそのまま滑らせ、素早く引き戻し喉元を付く。

 下がる男性に合わせ、さらにもう一度。

 その先は土間で、一段下。 

 しかし男性は体勢を崩す事無く、柔らかい動きで土間に降り立った。

「危ないな」

 ワイルドに微笑む男性。

 私はスティックを畳み、ため息を付いて床に屈んだ。

 小さく聞こえるショウの呻き声。

 どうやら、意識はあるらしい。

「どっちが危ないんです」

「親に殴りかかるなんて、言語道断だろ」

 ショウのお父さんは警棒を息子の背中に置いて、もう一度微笑んだ。

 さながら、子供のように朗らかに。


「管理人がいないっていうからさ。暇な俺に、話が来たんだよ」

RASレイアン・スピリッツはいいんですか」

「俺はおまけだから」

 大笑いする瞬さん。

 笑い事ではないと思うけど、本人がいいなら放っておこう。

「セキュリティを解除しなくても、言ってくれれば」

「昔を懐かしんでね。君、システムを組むの得意だろ」

「得意なのと、それをやるのとはまた違います」

 やや強くたしなめる木之本君。

 瞬さんは苦笑して、首筋を押さえているショウに顎を振った。

「俺が賊だったら、お前死んでるぞ」

「うるさいな」

「つまり、子供だけじゃ危ないって事だ。今日からは俺がいるから、安心だけど」

 もう一度笑う瞬さん。 

 みんなも笑う。 

 多分、それぞれなりの思いを込めて。



 瞬さんが持ってきてくれた牛肉で、冷しゃぶを作る。

 お昼から少し贅沢とはいえ、美味しいから問題ない。

「どうした」

「コルク抜きが、見つからなくて」

 ワインボトルを持って、小首を傾げるモトちゃん。

 瞬さんはそれを受け取り、箸でコルクを押し込んだ。

 とはいえ入る訳が無く、穴が開いた。

「あの」

「大丈夫、大丈夫」

 何をするのかと思ったら、ボトルの口に手刀を当てた。

 ボトルの口は綺麗に切れ、彼の手の中へ収まった。

「これでいいだろ」

「ええ、まあ」

 小首を傾げたまま、ボトルを受け取るモトちゃん。

 瞬さんは満足げに、キュウリをそのままかじっている。


 後片付けを終え、コテージの前でぼんやりする。

 風は気持ちいいし、空は青いし。

 お腹も一杯で、何も言う事はない。

「いたいた」

 私の横を走り過ぎ、木にしがみつく瞬さん。

 何がいたのかは知らないが、妙な早さで上へと登っていく。

 気付けば、コテージの屋根より高く。

「やった」

 遥か高見から聞こえる、歓喜の叫び声。

 やがてその姿が大きくなり、地面へと降り立った。

「どうかしました?」

「これ、これ」

 喜々として手の平を開く瞬さん。 

 その上でじっとする、細長いクワガタ。

 よくこんな小さい物を、見つけられたな。

「糸は」

「え」

「糸を付けて飛ばすんだよ。楽しいぞ」

 軽い足取りでコテージの中へ戻る、自称大人。

 沙紀ちゃんと高畑さんは、どうしたものかという顔で立ち尽くしている。

 私はもう慣れてるので、何とも思わない。

 あの人に管理人が務まるなら、日本は猫が首相になっているだろう……。



「起きて下さい」

「え、もう朝?」

「夕ご飯です」

 ソファーから起き上がり、大あくびする瞬さん。

 遊び疲れて、そのまま寝入ったらしい。

「悪い。今手伝うから」

「後は、食べるです。おじ様を待って」

 優雅に、迫力を込めて微笑むサトミ。

 瞬さんは小さく身構え、彼女の隣を通り過ぎた。

「手も洗って下さい」

「あ、はい」

 キッチンへ消える背中。 

 サトミはため息を付き、床へ落ちているタオルケットを畳んだ。

「大変ね。ああいう人がお父さんだと」    

「ショウが?」

「あなたがよ」

 そういう事か。

 とはいえ私は困ってない。

 お父さんでもないし。

「サトミがお母さんになった方が、私は怖いけど」

「大丈夫。自分の子供には甘いから」

「知らないわよ。駄目な子になっても」

「それも大丈夫。私の子供だから」 

 自信を込めて言い切るサトミ。

 それも私の子供ではないので、何も言わない。

 ヒカルとの子供だったら、どうなるか分からないし。

 でも、ケイとの子よりはましか。



 夕涼みがてら、玄関先にしゃがみ込む。

 すでに日は沈み、空は藍色。

 風も冷たく、鳥の鳴き声が妙に物悲しい。

「聡美ちゃんは?」

「お風呂に入ってます」

「よかった」

 心底という具合に呟く瞬さん。

 手には缶ビールが二つ。

「お酒を飲んでも、怒りませんよ」

「そうなんだけどね。妙にちくちく来るから」

「言い返せばいいじゃないですか。大人に、文句言うなって」

「どっちが大人なんだって話だから」

 缶ビールを受け取り、軽く重ねて口を付ける。

 苦みと炭酸の、独特の味わい。

 お風呂上がりの火照った体には、何とも言えない。

「四葉よりはましかなと思ったけど、やっぱり俺は駄目だな。細々した事には、むいて無くて」

「木之本君やケイが、例外なんですよ。ヒカルなんて、放っておけば一日中川を見てますよ」

「それがあの子の良い所さ」

 静かな、大人の微笑み。

 私は缶を玄関の階段へ置き、膝を抱えた。

「そういえば、親父から名誉勲章を見せてもらったって?」

「ええ。でも、どうして」

「水品が愚痴ってた。私はまだ見てないのに、雪野さんだけって」

「はは」

 水品さんはお祖父さんの直弟子だから、そういう感情になるんだろう。

 それはそれで、師弟のつながりを感じさせる。

「正直言えば、俺も見てない。多分、兄貴も」

「そうなんですか?」

「親父からすれば、優ちゃんは孫みたいな存在だからね。別に深い意味ではなくて、水品の弟子っていう事でも」

「はい」 

 素直に頷き、ビールを少し口にする。

 喉に広がる、炭酸の刺激。

 少し熱くなる、体の奥。

「それに親父だけでなくて俺達も、勲章を人に見せる趣味はないし」

「ええ」

「……悪い。変な話をして」

「いいえ」 

 首を振り、姿勢を正して頭を下げる。  

 その意味は自分でも分からないし、瞬さんはもっと分からないだろう。

 でも私は彼に、頭を下げた。

「いいよ。俺なんかに、そんな事しなくても」  

 恥ずかしそうに手を振る瞬さん。 

 本当に、子供のように。

 大人とは思えない事ばかりやって、すぐみんなに怒られて。

 だけど私は、この人が好きだ。

 ショウのお父さんだからという事だけではなく。

 明るい笑顔と、突拍子もない行動。

 優しさの中に時折見える厳しさと、寂しげな表情が。


「それよりケイ君は、あの綺麗な女の子と付き合ってるのかな」

 一転する話題。

 私の感慨を遠い彼方へ追いやるような。

「さ、さあ。でもお互い、そう悪い感情は抱いてないと思いますよ」

「ふーん。いいね、最近の高校生は。俺の頃なんて戦争が始まるっていうから、愛だ恋だって話じゃなくて」

「おばさんとは、いつ知り合ったんです」

「え」

 不意に口を閉ざす瞬さん。

 どうやら、高校生の時。

 もしかすると、もっと前かも知れない。

「昔から、のんきなんですね」

「そ、そうじゃないって。俺はそういうのじゃなくて、真剣に」

「ふーん、へーえ」

「俺の話聞いてる?」

 苦笑した所で、笑顔を強ばらせる瞬さん。

 彼の前に立ち、腕を組むサトミ。

 風呂上がりの火照った顔が、艶やかさと異様な迫力を感じさせる。

 照明で出来た陰影は、さらにそれを引き立てる。


「どれだけ飲むおつもりですか」

「い、一本は優ちゃんに」

「ソファーの下から、見つかりましたよ。ごろごろと」

 薄い、凍り付くような微笑み。

 立ち上がり、表情を強ばらせてサトミを睨む瞬さん。

「お、俺が持ってきたビールだから。どれだけ飲もうと」

「飲もうと?」 

 地の底から聞こえる、怒りの凝縮された声。

 おじさんは背を丸め、手を腰の辺りで組んだ。

「済みません」

「分かって下さればいいんです。今日は初日だから大目に見ますけど、次に見つけたらどうなるか分かってますね」

「はい」

「よかった。裏にまた雑草が生えてきてますから、明日刈って下さい」

 用件を告げ、厳かな足取りで去っていくサトミ。

 一体、何者なんだ。

「あー、怖かった」

 額から汗を垂らし、肩をさする瞬さん。

 かなりの、真剣な表情で。

「甘い顔するから、サトミも調子に乗るんですよ。一度、怒ってやったらどうです」

「優ちゃんは出来る?」

「……出来たらいいですね」

「そうだね」

 玄関先にしゃがみ込み、二人でちびちびビールを飲む。


 夜の風に吹かれながら。

 暖まっていく体と。

 心と共に。






  





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