16-10
16-10
目の前を行き交う車の列。
対照的に、背にした後ろは音もなく静まりかえっている。
生い茂った葉に囲まれた、広い敷地。
街灯の当たらないその奥は、完全な闇に閉ざされている。
「……早く、犯人を捕まえて」
今まで、何度と無く口にした言葉。
だがそれに含まれた意味は、そのどれとも違う。
自分自身の気持。
もう、今までとは違う。
サトミの気持ちを裏切っても構わない。
彼女が、どう思おうと。
例え私を嫌ってもいい。
それでも、これ以上は……。
「捕まえただろ、今日」
熱田神宮を囲む石垣に腰掛け、車の流れを見つめるケイ。
ヘッドライトに映し出される顔は翳りを帯び、闇に消える。
「あれは違うって、分かってるでしょ」
「そう決まった訳じゃない」
「でも、メールや写真が」
「それは聞いた。生徒会全局と、学内の全組織にばらまかれた。勿論、事前に全部差し止めてある」
淡々とした口調。
天満さんが差し止めたというのも、彼から事前に何かを聞いていたからかも知れない。
「だったら」
「馬鹿が、自分で居場所を教えてるんだ。もう少しすれば、完全に特定出来る。俺達が偽の犯人を捕まえて油断してるのを、揺さぶってるだけさ」
「私は。私は、サトミがそんな対象になってる事自体許せないの」
思わず震える声。
青いショートスカートから覗く膝も、小刻みに揺れている。
今にも全てが吹き飛んでしまいそうな感覚。
「それは無理だよ。あの外見で歩いてれば、大抵の男は何かを思う」
「分かってる。分かってるけど」
「人間誰だって、心の中を覗けばやましい事の一つや二つはある。そこを走ってる車の運転手が何を考えてるか読みとれたら、気が滅入るどころの話じゃない」
冷静で、もっともと思える指摘。
理屈ではそうだろう。
それが正しいのだろう。
でも、私の気持ちは違う。
そんな事は関係ない。
どういう形であれサトミを侮辱する人間は、何があろうと許さない。
「やる気がないならいい。私一人でも……」
「だから、落ち着けって言ってるだろ。輪は確実に狭まってるはずなのに、向こうは俺達が何も出来ないと思ってる所だ」
「実際に、そうじゃない」
苛立ちを隠さず、早口でそう告げる。
ケイはやはり車の流れを眺めながら、顎を引いた。
満足げに、確信に満ちた顔付きで。
「今から、最後の一手を打つ。これで、全部終わる」
「犯人を捕まえられるの」
「そのために、この何週間かを掛けてきた」
はっきりとした、彼には珍しいくらいの自信に満ちた答え。
低い塀の上に置いてあったヘルメットを私に放り、歩道のバイクを指差す。
「行こうか」
「どこへ」
「勿論、サトミの所」
女子寮の一室。
笑顔で私達を出迎えるサトミ。
今日あった出来事を知らない様子で、天満さんからもらったというお菓子を出してくれた。
「ショウはいないの?」
「実家で、家族とお食事だってさ。いいね、おぼっちゃまは」
鼻で笑い、クッキーをかじるケイ。
先程までの冷徹な態度とは違う、冗談を言う時の彼の姿。
私は気のない振りをして、雑誌に視線を向ける。
「あなたも、一度実家へ戻ったら」
「そのまま、同じ事を言いたいね」
「私は、その。取りあえずは、一度戻ったもの」
逆に切り返され、少し慌てるサトミ。
ケイは手を振り、自分の端末を取り出した。
「……ずれてる」
「どうしたの」
「時間がおかしい。ちょと、貸して」
「はい」
差し出される、サトミの端末。
それと自分のを見比べ、目を細めている。
「壊さないでよ」
「自信ない」
「言ってなさい」
苦笑してキッチンへ向かうサトミ。
ケイは彼女の端末を掴み、ぎこちない動きでボタンを幾つか押した。
「時間は合ってる?」
不意に、キッチンから掛かる声。
慌てる私とは違い、ケイは適当な冗談を言って笑っている。
「……よし」
「何やったか知らないけど、もう済んだの?」
サトミに冗談を返しつつ、頷くケイ。
端末はローテーブルに戻され、自分の端末もポケットにしまっている。
「サトミが狙われてるし、俺もここに泊まろうかな」
こちらが慌てるような言葉。
勿論、前者の意味で。
「最近は、何もないわよ」
トレイにマグカップを乗せ、部屋へ戻ってくるサトミ。
私達を安心させようとして、という顔ではない。
「もう、飽きたんじゃないのかしら。私なんかストーキングしても、面白くないでしょ」
「それは、それ。マニアの心理は深いから」
「あなたが言うと、本当に聞こえるわ」
「悪かったな」
真顔で突っ込み返すケイ。
私は正直言葉が無く、黙って雑誌を読むしかない。
「今日は大人しいわね」
「ん、ちょっとトレーニングをやり過ぎたから」
これは本当なので、自然に答えられる。
答えられるように、敢えてした訳でもあるが。
「さてと、そろそろ時間だし帰るかな」
「あら、泊まっていくんじゃないの?」
「いやいや、お兄さんに悪いから」
「な、何よ。それは」
簡単にサトミを黙らせ、自分のリュックを背負い出ていくケイ。
私はその背中を見送り、固めた拳を膝へと寄せた……。
薄闇の室内。
隣で、健やかな寝息を立てるサトミ。
その穏やかな寝顔を確認して、ベッドから滑り出る。
音も振動も、殆ど無い。
勿論彼女が目を覚ます事も。
部屋を出る前に、一度サトミを振り返る。
安らかに、今日一日の疲れを取る彼女を。
少し丸まった体。
薄闇の中、可愛らしく上下するタオルケット。
寝返りと同時に、微かな寝言が聞こえる。
平穏な、悪い事など何一つ想像も出来ない光景。
それを乱す者など、存在していいはずがない。
私はTシャツの上からパーカーを羽織り、玄関へと足を進めた。
そのために、自分の成すべき事をするために。
女子寮から少し離れたコンビニ。
今も遅くまで起きている女の子が、何人か雑誌を読みふけっている。
そこの駐車場に止まる、一台の車。
後部座席のドアに手を掛け、中へと滑り込む。
「サトミは」
「寝てる」
「そう」
短い受け答え。
シートに深くもたれていたケイは、体を起こして膝の上にあった端末を手に取った。
「夜中にやる事じゃないし、俺一人でやれるんだけど。二人も知りたそうだったから、一応」
「何やる気だ」
「サトミのアドレスが変わった事を、それとなく伝える。後は、返信を待つ。もう、走っていい」
辺りを確認して、車を走らせるショウ。
その間にケイは小さなキーボードを端末とリンクさせ、慣れた仕草で指を動かしていく。
「さてと」
送信されるメール。
誰に送ったのか、またその意図は言おうとしない。
「……早いな」
「誰から」
「その内話す」
例の答え。
こちらもそれ以上は尋ねず、彼の対応を待つ。
「……はいはい、お休みなさいと」
「ストーカーとやりとりする気か?」
「誰も、犯人に送ったとは言ってない」
「全然分からん」
あっさり諦め、シートにもたれるショウ。
私は黙って、ケイの様子を窺い続ける。
「大体向こうの人間が、それをサトミのアドレスだって信用するのか?」
「最初に送った変更を告げたメールは、あの子のアドレスを使ってる」
「そんな事、どうやってやるんだ」
「サトミに聞けよ」
確かにあの子は、本来なら変えられないアドレスの変更を平気で行える。
一つの端末で、複数のアドレスを取得したりも。
そんな彼の冗談はともかく、有効な手ではあるだろう。
「……来た」
着信を告げるメロディ。
しかし微妙に音が違う。
「馬鹿が、掛かった」
「犯人って事か」
「今までサトミ宛てに来たメールや、今日届いたのと文体が似てる。アドレスの特定は出来ないから、木之本君か名雲さん達に頼むかな」
ケイは軽く伸びをすると、キーボードをリュックへしまい首を回し出した。
一仕事をやり終えたとでもいう具合に。
「これだけ?」
「言っただろ。輪を狭めてるって。っと、その前に一応女子寮も」
すぐに端末を手に取り、車のTVとリンクさせる。
小さな画面に分割して映される、さらに小さな画面。
殆どの場所には人影はなく、パトロールをする警備員さんが時折映されるだけだ。
「今は、そっちに任せればいいんじゃないのか」
「だからお前は、人が良いって言われてるんだ」
「誉めてるのか」
「けなしてるんだよ」
すぐに答え、憮然とするショウをよそに画面へ見入る。
冗談めいた口調とは裏腹な、かなり真剣な表情。
私には分からない、大切な何かを確かめたいようだ。
「……ここが、サトミの部屋だった?」
「うん」
「じゃあ」
画面を固定して、その付近の映像も映し出す。
誰もいない廊下。
ストーカーは勿論、寮生の姿もない。
何の変化もない、単調な時間の流れ。
普段ならここで、眠気に襲われる所。
だが今は、幾つもの感情がそうさせない。
ケイに付き合ったのはサトミが気になるのと、気持が高ぶって眠れそうになかったからでもある。
30分も経っただろか。
画面の隅に、辺りを注意しながら歩く警備員さんが現れる。
丹念に、ドアや階段をチェックしていく彼女。
その足が、サトミの部屋の前で止まる。
「色々あったから、特にチェックしてるのかな」
「勿論、そういう指示はされてるだろ」
「……なんかやってるぞ」
それほど鮮明ではない画面。
そう指摘したショウが、サトミのドアを指差した。
「あ、何が」
「お前は目が悪いな。ユウは」
「確かに、変な動きをしたように見えた」
「……巻き戻すか」
画面の左半分が今の映像、右半分が警備員さんが歩いてきた時からの映像。
「この辺じゃなくて。……そう、ここで袖に手が入って」
「全然分からん。確かめるか」
「今からなんて、行けないだろ」
「俺達はそうさ」
ドアの前を去っていく警備員さん。
何とも言えない、歯がゆい思い。
「これなら、自分があそこにいればよかった」
「ユウがいないって分かってるから、何かしたんだろ」
「本当に、そう思う?」
「そう思ったら」
慰めているのか、少し笑うケイ。
私もすぐに頷き、画面に見入る。
「……渡瀬さん」
待つ事数分。
辺りを気にしつつ、渡瀬さんがサトミのドアの前に立った。
カメラの位置も分かっているのか、ドアを指差している。
「そう。まずは撮影、次に危険がなければそれの保存」
言われたままに行動する彼女。
普段の慌てた態度からは想像出来ない、落ち着いて機敏な動き。
「映像はDDに保存。一つを自分が、残りをモトと丹下に。……それは構わない。……そう、それも丹下に」
彼女以上の冷静な指示。
最後に画面からフェイドアウトする渡瀬さんにお礼を言って、ケイは息を付いた。
「取りあえずは、こんな感じかな」
「何が」
「それを確かめるんだよ。勤務が終わるのは明日の8時だから、それまでどうする」
「寝るんじゃないのか。俺は寝れそうにないけど」
眠そうな素振りも見せないショウ。
対照的にケイは欠伸をして、腰をひねった。
「今から張り切ると、明日が辛いぞ」
「何だ、それ」
「犯人を捕まえる時に」
自然に、そう答えるケイ。
しかしその言葉と態度とは裏腹に、彼もその鋭い瞳を閉じようとはしない。
「もう少し、やるかな」
再び取り出されるキーボード。
その上を滑らかに滑っていく、意外と細い指先。
「ったく、今頃あの女は寝てるんだろうな」
「サトミの事?当たり前じゃない」
「ここまでやっといて、お前何言ってんだ」
呆れるショウを横目で捉え、指で前を指す。
「どこに行くんだ」
「敷地内に入ってくれ」
門をくぐり、玲阿家の駐車場に向かう車。
ケイは手を出し、すぐに止めさせる。
「何だ」
「ここなら完全にセキュリティが働いて、盗聴も何もしようがない」
「じゃあ、さっきはどうしてコンビニから連絡したんだ」
「寮で寝てる子が、軍施設並みのセキュリティに守られてたらおかしいだろ。向こうがそこまで判別出来るシステムを持ってないとしても、万が一という事がある」
先程の言葉とは一転した、労を厭わない姿勢。
本人すら半ば無意味だと認めている事なのに。
多分彼は、こんな事をずっとしてきたんだろう。
周りからあれこれ言われ、寝る間も惜しんで、身の危険を感じまでして。
「……問題ないと。後は明日というか、今日頑張るとするか」
キーボードを畳み、目を抑えるケイ。
「よく、そこまでやるな」
「自分だって、こんな時間まで起きてるだろ」
「俺は、ただ起きてるだけだ。何かを考えたり、何かしてる訳じゃない。サトミが襲われてから、ずっと」
言葉の端からにじみ出るような、彼の悔しさ。
ハンドルを握る手に、力がこもっていくのが分かる。
「俺からすると、逆だけどね」
「何が」
「こんな真似するなら、サトミを心配して我慢してる方が人間としてましって事」
自嘲気味な言い方と、虚しそうに緩む口元。
私からすれば、そんな訳は無いと言いたくなる。
でもケイは、自分が何をやっているかを知っている。
私達にすら教えない事、教えたくない事。
どうして私達に言わないのか、やらせないのか。
言わなくても分かる、彼の気持ち。
彼の強さと、優しさ。
「……これが終わったら、サトミに何かおごらせようよ」
「どういう理由で」
さすがに、難しい顔で問い返すケイ。
私はヘッドレストに手を掛けて、二人の間に顔を付き出した。
「理由なんてどうでもいいのよ。あの子が、私達におごってさえくれれば」
「無茶苦茶だな。俺は、知らんぞ」
完全に呆れるショウ。
ケイも鼻で笑い、母屋の方を指差した。
「何か、馬鹿馬鹿しくなってきた。無理して徹夜する事もないし、少し寝かせてもらおう」
「ああ。俺も、眠くなってきた」
「何よ、二人して」
逃げるように車を降りていく二人を追いかけ、すかさず抜き去る。
今の、この思いを大切にしよう。
そして、明日に備えよう。
誰のためでもない、サトミのために。
後ろで笑っている、二人の思いと共に……。
グローブ、レガース、アームガード、エルボーパット、プロテクター。
そして、スティック。
全てのチェックを終え、息を整える。
「別に、難しい事はやりません。今から、サトミが彼氏と別れたという情報を広めます。情報局の推定では、1時間内にほぼ学内全域に広がるとの報告を受けています」
モニターと、各自の端末に転送される情報。
ケイは室内にいる全員を見渡しながら、卓上端末を操作していく。
「現時点で、サトミはここに。書類提出のため、学内の約半分を横断してこちらの教棟へ入ります。その際彼女に声を掛ける人間を事前に補足し、話を聞いて下さい」
「抵抗したら」
「拘束するなり、実力行使してもらって結構です。その許可は、生徒会と学校。警察からも得ています」
顔色一つ変えず、説明をするケイ。
尋ねた名雲さんは小さく頷き、目線で彼を促した。
「気を付けて欲しいのは、リストアップされた人間。彼等は武装している可能性があり、咄嗟の感情で反撃する可能性があります。質問自体は各自でお願いしますが、危険と判断した場合は各所に配置したガーディアンかSDCの応援を要請してもらって結構です」
「聡美ちゃんが、そのルートを歩くという保証は」
「彼女の知識と行動パターンから、これが最も頻度の高いルートです。またルートを逸れる可能性がある場合は、人を使ってそこを封鎖します」
「一体、何人動員してるのよ」
苦笑する池上さんに曖昧な笑みを浮かべ、すぐに表情を引き締める。
「サトミの歩行速度と現在の学内状況から見て、時間は10から15分間。各自の持ち場は、事前に配布した通りです。基本的には持ち場を離れず、バックアップのガーディアン達と連携してお願いします」
一旦言葉が切られ、再び全員に視線が向けられる。
「一度シュミレーションしますので、外に出てもらえますか」
G棟からH棟へ伸びる、渡り廊下。
その左右には木々が生い茂り、初夏の日差しを遮っている。
遠くまで見渡せる眺め。
授業時間中だが、今も時折生徒や教職員らしい人の姿が見られる。
「今歩いているモトを、サトミと想定して下さい。そこに、小谷君」
「あ、はい」
無造作に、渡り廊下を歩く彼女の方へと歩いていく小谷君。
ケイは即座にその間に入り、肩口のIDを指差した。
「不用意なトラブルを避けるために、まずは身分を証明。次いで、相手がリスト対象者か確認。これは胸元のカメラが捉えて、本部にいる木之本君達が判別します。対象者なら、その場で拘束。違う場合はサトミとの距離と他に近付く者がいないか確認しつつ、質問をして下さい」
さらに細かい説明がされ、位置取りや連絡方法、緊急時の対応と続けていく。
「ガーディアンとしての規則にのっとった基本的な行動ですし、全員問題ないと思います。何か、質問はありますか」
首を振る者、短く答える者。
一人として、質問はしない。
「では、配置位置にお願いします。それと、出来るだけサトミには気付かれないように……」
「そんな事、出来る訳無い」
低く、吐き捨てるような口調。
歩き始めていた全員が、足を止めて振り返る。
「こんな子供だましな手に、誰が引っかかる。彼氏と別れたからといって、その時声を掛けてきた人間がどうして怪しい」
「あなたには分からないでしょうけどね。この学校にいる人間は、サトミに声を掛ける事すらためらう場合もあるんです。特に恋愛に関しては、面と向かって何かを言う奴はまずいない」
小馬鹿しているとしか思えない表情。
距離を詰め、険悪な態度で睨み合う二人。
しかし今日は、どちらも目を逸らそうとはしない。
今までの怒りを全てこの場で晴らす気なのか。
この、大事な時に。
「真理依、ちょっと」
「浦田も、落ち着け」
その間に割って入る、池上さんと名雲さん。
肩を押さえられた二人は、彼等の肩越しにお互いを睨み付ける。
「一応、舞地さんに倣って囮にしましたよ」
「監視されてると分かってる学内で、手を出すはずがない。そんな甘い考えで、よく指揮を執ろうと思ったな」
「サトミを危険な目には遭わせないと言ったはずです。自分こそ、感覚が麻痺してるんじゃないですか」
「勝手に言ってろ。……それともここで恩を売って、遠野といい仲にでもなる気?いや。これ自体が、狂言とか」
熱を帯びていた周囲の空気が、一気に冷え込む。
目を細め、パーカーの袖口に手を入れるケイ。
舞地さんも腰を落とし、池上さんの手をそれとなく外しに掛かる。
「あまりふざけた事を言うなら、女だろうが先輩だろうが覚悟しろよ」
「お前は、女しか殴れないんだろ。今度はそれをだしに、遠野を騙してる訳か。確かにそういう意味では、頭は良い」
「警告はしたぞ」
「だから、どうした」
体を沈み込ませ、名雲さんに極められていた腕を抜けるケイ。
そのまま彼の手を逃れ、フェイントを掛けつつ舞地さんの元へ駆け抜ける。
腰から抜かれる警棒。
池上さんを下がらせ、警棒へ視線を向ける舞地さん。
それは彼の手を離れ、彼女の足元へと落ちた。
その間に、二人の距離が一気に縮まる。
二つのフェイントに惑わされず、舞地さんは顎を引いてアッパーをかわす。
ケイもそれが目的だったらしく、さらに距離を詰めてローを放つ。
バランスを崩し、後ろへ傾く舞地さん。
しかし。
膝でローを受け止め、タックル気味に上体を突っ込ませたケイの顔に拳を突きつける。
「くっ」
顔を仰け反らせ、地面に転がるケイ。
押さえた手から漏れる、赤い色。
「だから、甘いと言った」
振り上げたかかとを鼻先で止め、彼を見下ろす舞地さん。
さすがにそれ以上はやり過ぎと思ったのか、それともケイの動きを気にしたのか足を引き戻す。
「真理依」
「後は任せる」
「ちょっと」
池上さんの制止を振り払い、振り返りもせず去っていく。
彼女を追った方が。
でも、ケイは。
「……あの人の分は、違う人に頼むからいい」
鼻を押さえ、手で血を拭う。
鼻血と、少し口が切れているようだ。
「大丈夫か」
「少し切れただけだ」
口に溜まった血を吐き捨て、バンドエイドを鼻と口元に貼り付ける。
かなり痛そうだが、本人は殆ど気にしていない様子に見える。
「じゃあ、配置について下さい。それと、適時本部へ連絡を。お願いします」
私がいるのは、先程のG棟とH棟をつなげる渡り廊下。
見通しもよく、また隠れる場所もあるため監視には向いているといっていい。
イヤホンから聞こえる、サトミの移動状況。
今の所、これといったトラブルは起きていない。
数名声を掛けてきそうな人間がいたが、全員興味本位との事。
そろそろ、私の所へ差し掛かる時間だ。
H棟の出口。
封筒を抱え、落ち着いた仕草で歩いてくる黒髪の少女。
凛とした姿勢、木漏れ日に輝く切れ長の瞳。
涼しげで、透き通るような佇まい。
いつもと変わらない。
いつものように綺麗なサトミ。
そちらへ目を向けているばかりではない。
本来の私の役目も、勿論果たす。
木陰に揺れる影。
サトミに気付かれないよう、腰を落とし教棟の側を駆け抜ける。
前傾姿勢で木に手を掛け、木陰から覗き込んでいる男。
彼もまた、こちらには気付いていない。
独特の、近付きがたい感覚。
嫌な、気分が滅入るような。
男はただ、サトミを見ているだけ。
しかしその意図は、はっきりと伝わってくる。
「……そこまで」
スティックを首筋に近付け、低い声で警告する。
すぐに自分の立場を理解したらしく、両手を上げる男。
意外と長身で引き締まった体型だが、抵抗する様子もない。
「ここで、何をしてるの」
「見てただけだよ、雪野さん」
「どうして私の名前を」
ゆっくりと、スティックとは反対側から振り向く男。
凛々しく、甘い顔。
見覚えのある、どこかで見た。
「そう。ハンド部の副部長だよ」
「ど、どうして」
「さあ、どうしてかな」
横へ緩む口元。
これにも、見覚えがある。
暗闇の中。
廊下へ出ていく時、微かに見えた口元。
全身を総毛立たせる、異様な笑顔。
ただ笑っただけの。
だけど、決して忘れようのない光景。
人の暗い部分だけを表に晒した、あの時の。
スティックを構え直した私に、男は一歩下がって手を振った。
「俺は見る専門だよ。君達が探してる人間とは違って」
「誰が、そんな話を信用するの。大体、ケイに近付くなって警告されてるでしょ」
「範囲外さ。見てるだけなのに、なんでああ怒るのかな」
甘い笑み。
先程よりは普通の、彼の意図を知らなかったら嬌声を受けてもおかしくはない程の。
「大丈夫。浦田君を怖がって、おかしい連中は絶対に手出ししないから」
「どうして」
「死ぬより怖い目に遭わされれば、誰だって言う事を聞く」
一瞬浮かぶ、凄惨な表情。
少なくとも、それだけは信じて良さそうだ。
「じゃあ、犯人は誰なの」
「浦田君から聞いてないなら、俺は知らない。また何かされても困るし」
「分かった。それとこの先まだ何かする気なら、ケイの代わりに私がやるわよ」
「君に出来る……」
スティックを眉間に近付け、スタンガンを作動させる。
飛び散る火花。
男は血相を変えてのけぞった。
「な、なにを」
「もう一度、同じ事を聞きたいの」
泣きそうな顔で首を振る男。
私はスティックをしまい、彼を見下ろした。
「文句があるなら、次は私の所へ来なさい」
「い、いや」
「二度と顔を見せないで」
こちらを見る事もなく、這うように逃げていく男。
その背中が完全に消えるのを確かめ、端末で連絡を取る。
「……不審者が一人。……大丈夫、うん。……サトミは。……分かった」
やりきれない思い。
だが、ここで気持を途切らせている場合ではない。
やるしかない。
どうなろうと、どんな結果になろうと。
今は、もう……。
渡り廊下を後にして、生徒会の仮眠室へ戻る。
ケイが今回の本部として、抑えていた場所だ。
「お疲れ様」
「サトミは」
「無事に着いた」
それとなくケイへ視線を向けるモトちゃん。
勿論喜ぶ事ではあるが、逆を返せば犯人は来なかったという訳だ。
舞地さんの指摘通りに。
「襲われなかっただけで、良しとするか」
ショウは拍子抜けという感じでそう呟き、珍しく付けていた警棒のフォルダーを机の上へと置いた。
他のみんなも、一様に安堵感と気の抜けた様子で佇んでる。
ただ一人を除いては。
「さてと、次のアクションに移行しましょうか」
「声を掛けてきたのは普通の奴ばかりで、犯人どころか怪しい奴もいなんだろ」
内心で一人だけいたと思い、ショウの言葉に頷く。
しかしケイは小さく手を振り、自分の端末を指差した。
「有力な目撃情報を得てる」
「私の所には、何もないわよ。ねえ、木之本君」
「うん。……もしかして、舞地さんの持ち場にいた人から?」
「鋭いな、なかなか。盗聴かどこからか見てて、そこが穴だと思ったんだろ。言葉通り、怪我の功名って事かな」
何の驚きもない、全てを当たり前の事として受け止めているケイ。
彼にとってはあのアクシデントすら、予想済みだったというのだろうか。
「誰が、あいつの場所にいたんだ。ここにいる奴以外だろ」
室内にいる全員を見渡し、名雲さんは彼へと視線を向ける。
それぞれに持ち場と担当があり、急な配置転換は難しい。
だから彼があの場で言ったように、補充の人間を当てない限り舞地さんの穴は埋まらない。
「阿川君と、山下さん?あの二人は最初から……」
「集まってるな、また」
「こんにちは」
軽い挨拶と共に入ってくる、その二人。
深く被ったキャップと、制服姿の多い彼等が普段着ないような服装。
そういえば、こんな姿を見た気もする。
「これだけの人間が監視してたんだから、俺達が後を付けなくてもよかったんじゃないのか」
「監視といっても、サトミとの距離がありますから。その点お二人は彼女との付き合いが一見薄いし、初めからこの話に加わってない」
「相手も、私達を頭数に入れてないって?君も悪い人間ね。みんな、文句言ってたわよ」
苦笑する山下さん。
みんなとは、誰の事だろうか。
「風間さん達こそ、本当に縁が薄い。そして、腕が立つ。影で守るには、申し分ありません」
「誰だ、それ」
「俺の先輩です。良くやるよ、本当に」
感心とも呆れともつかない呟きをする七尾君。
それは彼の先輩達にか、やはりケイに対してか。
「囮でも何でも使って、手っ取り早く掴めればいいと思うがね。君は、そういうのが得意だろ」
「否定はしませんけど、俺にも事情がありまして」
「そうか」
関心なさげに頷く阿川君。
山下さんが何か注意するが、彼もケイも気にした様子はない。
感情と、成すべき事。
その二つを交えた方がいいのか、それとも離した方がいいのか。
どちらも正しく、どちらも違うように思える。
彼等の態度もまた。
私が感情のみで行動しているのは、ともかくとして。
「モトと木之本君は、ここに。阿川さん達も。名雲さん達は、もう帰って結構です」
「お前の作戦は失敗。今日はこれで終わりって思わせるために?」
「代わりに、この子達が動くって訳」
「そんな所です」
真顔で会釈するケイ。
名雲さん達は苦笑気味にそれを見届け、部屋を出ていった。
「僕も?」
「柳君は、あの人を捜してくれるかな」
「真理依さんを。……いいけど」
「大丈夫。もう揉めないから」
不安そうに出ていく柳君を今度はケイが見届け、私達を振り返った。
その手を、テーブルの上に置いた警棒のフォルダーに伸ばしながら。
「準備は」
「いつでも」
「俺も」
即座に答える私達。
ショウもさっき外したフォルダーを、すでに腰へ付けている。
「丹下も、いいかな」
「あなたがいいなら」
棘のある口調。
さっきの舞地さんのような。
手の平に汗を感じつつ、恐る恐る彼女を見上げる。
「逆でしょ、それ」
「あ、何が」
「フォルダー」
冷静に指摘する沙紀ちゃん。
抜き方の違いで、右利きだからといって左に警棒を差す訳ではない。
抜いて攻撃へ移るまでのタイムロスを考え、右に差して逆手で抜く人もいる。
またグリップも前を向いている人、後ろを向いている人と様々だ。
「付いてるだろ」
「どうやって抜くの」
「あ?」
苛立ったように尋ね返すケイ。
沙紀ちゃんは変わらず、醒めた眼差しを彼に送る。
「そんなのこうして……」
その視線を跳ね返すように、険しい顔でフォルダーに手を伸ばす。
「こうして……」
抜けない警棒。
下向きのグリップ。
フォルダーからはみ出た打撃部位を握るケイ。
警棒はグリップに掛けて太くなっているため、当たり前だが抜ける事はない。
「馬鹿だな。俺はこうして、みんなの緊張を解こうと思って……」
「みんな、行きましょ」
「そうね」
「笑えないぞ、その冗談」
ケイを残し、沙紀ちゃんを先頭に部屋を出ていく私達。
本当に、ショウの言う通りだ。
そして、この先にかなりの不安を感じずにはいられない。
それは待ち受ける犯人に対してだけでなく、そんな彼に従わなければならない自分に対しても……。
後ろの方で文句を言う彼を促し、行き先を尋ねる。
「そこだ、そこ」
ぶっきらぼうに呟き、顎を振る。
行く手の先にある、小さな建物。
「医療部じゃない。拗ねてないで、本当はどこに行くの」
「だから、医療部だよ」
やや改まる態度。
全員の訝しげな視線を感じたのか、ケイは一旦足を止めた。
「引き返すなら、まだ間に合う。絶対に後悔するから」
「怪我人か?それとも医者や看護婦とか」
返ってくるのは、重い沈黙。
一人一人の気持ちを確かめるような、鋭い視線。
勿論、引き返す者は誰一人いない。
「一応断ったからな」
彼も初めから結果は分かっていたのか、少し笑って歩き出す。
切なさと、凄惨さを感じさせる横顔と共に……。
授業中という事もあり、人気の少ない医療部内。
職員と、看護婦さん達の姿を時折見かけるだけだ。
受付でケイが適当に答え、奥へ進む私達。
ロビーを抜け広い廊下を少し歩いた所で、彼が階段を指差した。
「ここから降りる」
診療室のある今のフロアとは違う、言い表しようのない薄暗さ。
実際には同じように照明が灯り、壁の色はむしろ明るいのに。
「何か表示されてるぞ」
「入っていいって事さ。それとここからは、向こうに監視されているからそのつもりで」
上よりもやや狭い廊下。
明るい照明と壁とは対照的に、独特の薄暗さは否めない。
壁際に活けられた花も何となく物悲しげで、鮮やかな色もくすんで見える。
左手に並ぶ、幾つものドア。
それぞれにはプレートが掛かり、「空室」、「外出中」などと表示されている。
「監視されてるのに、普通に行ってもいいのか」
「駆け引きって奴さ。俺達はまだ何もしてないから、向こうも表面上はこっちを拒めない。立場上」
「全然分からん」
首を振り、ケイの耳元から口を離すショウ。
私は手の汗をスカートで拭い、息を整えた。
「優ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫じゃない。でも、大丈夫」
「そう……」
肩に置かれた沙紀ちゃんの手を握り締め、気持ちを引き締める。
この先に待つ人物。
この先訪れる結果。
自分達の行動。
そのどれにも後悔すると分かっているから。
それでも私は、自分の成すべき事をやってみせる。
必ず……。
インターフォンを押すケイ。
すぐに答えがあり、ドアが自動で開く。
ショウへの目配せ。
彼が頷き、自然な仕草で先に入っていく。
例え待ち伏せされていようと、彼なら対処出来ると考えての判断だ。
またそれを、ショウは自分の役目でもあると思っているだろう。
特に、今は。
「失礼します」
すぐに聞こえる、彼の挨拶。
後ろで揺れる指先。
問題ないとの合図だ。
ケイの視線が、私にも向けられる。
ショウの時とは違う、案ずるような様子で。
私も問題ないとばかりに、微かに顎を引く。
ここまで来て引く訳には行かない。
自分自身の気持ちとして。
何よりも、サトミのために。
「……失礼します」
すり足気味に室内へ入り、肩の力を抜きながら進んでいく。
壁の棚に収まる、たくさんの本。
デスクにも本やDDが積まれ、アンケート用紙らしい書類が幾つも並ぶ。
室内の端には大きな、人が横たわれる程の椅子も。
「今日は、大勢出来たね」
「ええ。先生に話を聞いて欲しくて。いや、聞きたくてかな」
「僕に答えられる事なら、構わないよ」
「そうですか。……ショウ」
ケイの言葉と同時に、デスクごと相手を飛び越える。
相手が呆然とするのを構わず、ショウは背後に回って腕を取った。
空いた手が引き出しに伸びそうになるのを察知して、そちらもすぐに掴み上げる。
「い、一体何の真似?ガーディアンのシュミレーションにしては、ちょっと大袈裟だね」
「訓練でなく、ここが現場です。先生」
「穏やかじゃないな。僕が何か悪い事に関わってるとでも?それとも僕の関わった生徒が何かやったとか」
「まさか。対象者は、あなた一人ですよ。吉澤先生」
ついこの間までは、考えもしなかった事。
でも、こうなった今となっては思い当たる出来事。
ケイのように理屈ではなく、感情として。
また内心では、少しは疑ってた気もする。
サトミの気持を考えて、それを打ち消してはいたけれど。
あのハンド部の男が浮かべた、人とは思えない微笑み。
それはここで彼が窓に映した物と、全く同じ物だった。
考えたくはない、今でも信じたくはない。
しかし彼がショウに取り押さえられ、机に押し付けられた彼を見下ろしているのは間違いない現実だ。
それがケイの独断によるものだとしても。
「ちょ、ちょっと手を緩めてくれないか。僕は何もしないし、君に勝てるはずもないのは分かるだろ。それに、僕が何をやったか聞いたのか?」
「いや、何も」
平然と答えるショウ。
それでも彼はケイの一言で、全くの迷いも見せず動いてみせた。
彼への信頼、サトミへの思い、今回の犯人への怒りを込めて。
「大体僕は教師とスクールカウンセラーで、君達ガーディアンが拘束出来る対象じゃないんだよ」
おどおどとケイを見上げる吉澤先生。
頼りない、気弱な素振り。
自分が言っている通り、無理に捕まえなくても何の問題もないだろう。
しかしケイは彼を拘束し、ショウもその手を離さない。
「大丈夫です。学校と警察には、許可を得てありますから。今回の容疑者の身分にかかわらず、拘束していいと」
あくまでも敬語で、冷たく言い放つ。
吉澤先生の方は怯えた仕草を止めず、そんな彼を上目遣いで見上げている。
ぶつかる両者の視線。
事情を知らなければ。
いや。知っている私ですら、止めに入りたくなる光景。
それでもケイは彼を見下ろしたまま、机の上にあった本を手に取った。
「ショウ、指錠」
「分かった」
手早く親指がビニールのロープで締められ、膝の辺りにも同じくロープが巻かれる。
「盗聴して、盗撮して。カウンセラーの職業倫理に抵触してませんか」
「そ、そんな事する訳無いだろ。いい加減にしないと、僕も」
「警察を呼ばれたら、困るのはあなたですよ」
見慣れない小さな箱を取り出し、それを室内全体へと向けていくケイ。
「さすがに最近は取り付けてませんか。隠しカメラを」
「は、初めからそんなのは無い。誤解してるんだ、君は」
「そう信じたいですね、俺も」
冗談めいた、しかし真実みを帯びた呟き。
沙紀ちゃんも室内を探し回っているが、これといった物は何一つ出てこない。
もしかして本当に誤解ではないかという考えが、脳裏をよぎる。
とんでもない事をしてしまったのではという思いと共に。
「ここに無いとは分かってましたけどね。ここと地理資料室は警察に任せて、自宅へ伺いましょうか」
「ま、まだ勤務中だ」
「気にしないで下さい。今日地理の授業はないし、カウンセリングの生徒は全員キャンセルしてます」
いつの間にか彼の端末を手にして、その画面を見せている。
今日のスケジュールは終日キャンセルされていて、多忙により連絡が出来ないとも。
「い、今ならまだ間に合う。僕も、この事は誰にも言わないから」
「これ以上罪を重ねるなって?」
私を見つめるケイ。
彼が答えを待っているのが分かる。
「止めよう」と言えば、これ以上は思い留まるのも。
教師でありスクールカウンセラーである、彼の立場。
ケンカした生徒を拘束するのとは、根本的に違う問題。
その処分は学内だけでなく、場合によっては刑事事件にすらなるだろう。
何の証拠も無い、手がかりすら見つからない現状。
「……連れて行って」
顔を上げ、はっきりと答える。
この判断は、誰の責任でもない。
私自身が取る。
そう伝えるためにも。
サトミのために。
それを理由にはしない。
そのために頑張っても。
やっているのは、自分だから。
私が決め、行動する。
結末がどうなろうと、自分がどうなろうと。
サトミが何と思おうと。
揺らぐ気持。
不安と焦り。
何も出来ない自分。
それでも出来る事はある。
目を背けていた現実と向き合う事は。
彼女を取り巻く環境。
自分にも向けられている、想像もしたくない事。
それを最後まで、見届けてみせる。