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スクールガーディアンズ  作者: 雪野
第15話
163/596

エピソードWW3-1   ~ケイ・渡り鳥編~




     友達




     前編



 琵琶湖岸に停まる、二台のバイク。

 その前に佇み湖を眺める、二人の少年。

 一人は地味で、どこにでもいそうな顔立ち。

 もう一人は可愛らしい、同性でも振り返るだろう顔立ち。 

 共通しているのは、お互いを信頼しあう表情。

 楽しげな笑顔である。

「鮒はいないな」

 湖を覗き込み、鼻を鳴らすケイ。

 柳はくすっと笑い、その背中を少し押した。

「お、おおっ」

「冗談だよ」

「お、落ちかけたのは俺だ」

「いいじゃない、もう暖かいから」

 無邪気な笑顔で語られる、のんきな台詞。

 ケイは仕方なさそうに鼻を鳴らし、湖から飛び退いた。

「さてと、そろそろ行こうか。俺達だけっていうのが不安だけど」

「浦田君でも、そう思う時があるの?」

「きついな、随分。知らない所に行くんだから、多少は緊張するよ」

「大丈夫。ただ僕も、何をするかは聞かされてないから」

 首を傾げる柳。

 ケイはその肩にそっと触れ、歩道に置いてあったヘルメットを被った。

 彼がまたがったのは、白と青と赤のトリコロールカラー。

 テール部分のロゴは「CBR1000」

 柳もヘルメットを被り、赤地に黒いラインが入ったバイクへまたがる。

 鋭角的なデザインのバイクに記されたロゴは「RC411V」

 こちらは純正レーサーで、騒音や燃料系を公道用に改良されたタイプ。 

 ケイのもベースはレーサーだが、あくまでも公道用に開発されている。

「どっちにしろ、行けば分かるか」

「じゃあ、競争する?」

「腕もバイクも、差があり過ぎる」

 ゆっくりと走り出すバイク。

 もう一台が、その隣へと並ぶ。

 きらめく湖面を眺めながら。 

 それに包まれた、一つの光になって……。



 湖岸から程近い、住宅街の一角にある高校。

 塀の向こうには小さな校舎が幾つか見え、それ越しに彦根城がそびえ立っている。

 狭い正門の正面には銅像と花壇があり、ほのぼのとした雰囲気を醸し出している。

 正門の脇に停められるバイク。 

 二人はタンデムシートからリュックを降ろし、それを背負った。

「いつもは、どうしてる?」

「大抵は名雲さんか池上さんが、学校や生徒組織と事前に交渉してる。だから初日は顔だけ出して、すぐ戻ってる」

「その二人がいないとなると」

「困ったね」

 言葉とは裏腹に、にこやかに笑う柳。

 ケイはそれに微笑み返し、端末を取り出した。

「沢さんが責任者だし、聞いてみる」

「ちょっと待って」

 素早く、そうと分からないぐらいの動きで柳がケイの前に出る。

 しなやかに動く右腕。 

 肘の先が警棒を受け止め、返った手首がそれを掴む。


「女の子にも、手加減無し?」

「いきなり殴りかかるような子には、手加減しないよ」

「だから止めろっていったのに」

 警棒を握ったまま笑う柳と、可愛らしい顔立ちの少女。

 その間に割って入った綺麗な顔の女性が、警棒を二人から受け取る。

「久し振りね、柳君」

「うん。三村みむらさんも」

「私もいるわよ」

「もう挨拶しただろ、吉家よしいえさん」

 警棒を指差して笑う柳。 

 吉家と呼ばれた少女は鼻を鳴らして、その視線を彼の後ろへと向けた。

「今日は大人しいのね」

「……ああ、名雲さんの知り合い」

「鼻は削がないの?」

 挑発的に顔を突き出す吉家。

 ケイは曖昧に笑い、後ろに下がって塀へもたれた。

 彼女達と出会った時のように。

「止めなさい。この子、性質が悪いようだから」

「浦田君は、何もしないよ」

「私もそう思いたいわ。挨拶も終わったし、またね」

「え、もう?」

 寂しそうにする柳に向かい、胸元を拳で叩く二人。

 柳もそれに倣い、薄く微笑む。

「相変わらず、あちこち行ってるんだね」

「あなたも、昔はそうだったでしょ。他の子に会ってる時間もないし、よろしく言っておいて」

「うん。二人も、元気で」

「柳君も。それと、後ろの子とは縁を切った方がいいわよ」

 真顔でそう言い残し去っていく吉家。

 三村は一応「冗談よ」と付け加え、その後を追った。

「……結局、彼女達は誰?」

「渡り鳥の仲間。前に会ったって聞いてるけど」

「ああ、鼻を削ぎ損なった」

 あくまでも姿勢を変えないケイ。

 それに柳が何かを言いかけた所で、二人の前に白のワゴンが横付けされた。


「今、誰かいなかった?」

「三村さん達がいたよ。挨拶しに来たって言ってた」

「そう。君も、久し振りね」

「どうも。白鳥しらとりさん、でしたっけ」

 うっそりと頭を下げるケイに、鷹揚とした態度で頷く白鳥。 

 艶やかな黒髪と、凛とした顔立ち。

 その態度は大人の女性を思わせ、ふくよかなボディーラインが彼女の魅力をより強調する。

伊藤いとうさんは」

ひろ

 静かに、しなやかに車を降りる綺麗な女性。

 落ち着いた物腰と、モデル並みの体型。

 切れ長の視線が一瞬二人を捉え、すぐに逸らされる。

 興味がないとでも言いたげに。

「愛想がないわね、あなたは」

「愛想を振りまく相手でもない」

「ですって。ごめんなさい」

「いいよ。あ、日向ひゅうがさん、きし君。」

 後部座席から降りてくるショートカットの華奢な少女と、メガネを掛けた少年。

 どちらも伊藤同様落ち着いた態度ではあるが、彼女よりは明るく柳に挨拶をした。

「みんな、どうしたの」

「沢君に呼ばれたの。あなたもでしょ」

「僕達二人じゃなかったんだ」

「喜ぶのはいいけど、その分取り分が少ないわよ」

 釘を差す白鳥。

 しかし柳は全然聞いて無く、はしゃぎ気味に岸や日向と話し込んでいる。


「悪いわね。知り合いがいない所に、一人にさせて」

「いえ。俺は皆さんの言われた通りに動くだけですから」

「意外と謙虚ね」

 何気なく、独り言のように指摘する伊藤。

 ケイは塀から離れ、姿勢を正して首を振った。

「皆さんは渡り鳥としての経験を積んでいて、年齢的にも上。特に俺は、こういう事は全く素人ですし」

「だそうよ。さつき、色々教えてあげて」

「あなたは何するのよ。とにかく、学校に入りましょうか。森山もりやま君、車停めてきて」

 助手席へ手を差し入れる白鳥。

 その途端飛び出てくる、端整な顔立ちをした細身の男性。

「ど、どこに停めるんですか」

「知らないわよ。そのくらい、自分で考えなさい」

「でも」

「仕方ないわね。ごめん、浦田君。ちょっと、この子に付いていって」




 バックミラーを気にしつつ、学内に車を乗り入れる森山。

 助手席では伊藤が、つまらなそうに校舎を眺めている。

「勝手に入っていいのか」

「今まで、それで揉めた事は?」

「無いけど」

「だったら、聞くまでもない。俺達は交渉責任者じゃないから、外に停めただけだ」 

 気のない返事。

 むっとした森山は校舎裏の開いている駐車スペースに車を停め、後ろを振り返った。

「あのな。俺だってそのくらい分かってる。ただ、今回は……」

「森山」

「なんです」

「誰か来た」

 助手席側に来た、スーツ姿の男性を指差す伊藤。

 自分が一番近いのだが、応対する気はまるでないようだ。

「ったく。はい、何か」

「そこは来賓用のスペースで……。君達は、誰だ」

 当然の反応を示す男性。

 どう見ても高校生の3人。

 駐車スペースの広さから見て、生徒用の場所など初めから存在しないだろう。

「え、えと。その、外に停めたら路駐になるかと思って」

「生徒の自動車通学は禁止されてる。君達は、転校生か」

「そんなようなものだけど。でもすぐ出ていくから」

 はっきり言えば、要領を得ない説明。

 当然男性は、矢継ぎ早に問い詰めてくる。

 それこそ警備員や警察を呼びかねない勢いで。


「何か」

「こういうのは、得意じゃないの」

「交渉事は伊藤さんが専門と、池上さんから聞かされてますが」

「こんな事はしたくない」

 気力の失せた表情。

 ただ高くとまっている訳ではなく、どうして揉めるのか考えたくもないという顔に見える。

「ほら」

「俺だって、やりたくはないんですけどね」

 仕方なさそうに後部座席から降りるケイ。

 彼はそのまま運転席側へと周り、森山に説教を始めていた男性に何かを見せた。

 その後少しの会話があり、助手席のドアを開ける。

 男性が立ち去ったのを見届ける事もなく。

「女には優しいの」

「相手によります」

「あなたに見込まれても、あまり嬉しくないわね」

 笑いもせず、車を降りて歩き出す伊藤。

 ケイはそっとドアを閉め、その後ろに付いた。


「ま、待てよ」

 校舎に入った所で、ようやく二人に追いつく森山。

 伊藤は全く反応せず、静まり返った廊下を歩いていく。

「おい、さっきの人に何言ったんだ」

「別に。渡り鳥、あの人には分かりやすく学校外生徒って教えただけ」

「え?」

「俺達を呼ぶくらいだから、多少は荒れた学校だと思う。だから、その学校外生徒がどういう人間か知ってるんだろ」

 淡々と答えるケイに、森山は言葉を詰まらせて足を止める。

 その間に先を行く二人。

 森山は思い直したように、すぐ後を追う。

「お、脅したんだろ。それは」

「車はすぐ動かすんだし、あれだけ空きがあれば来客が来ても停める場所はある。伊藤さん。渡り鳥っていうのはみんなこう真面目というか、固いんですか」

「その子は特別。真面目じゃなくて、良く分かってないだけ」

 辛辣な指摘。

 しかも森山の顔も見ないままの。

「……ほら、もう車は動かせる」

「話は終わったわ。ホテルへ行くわよ」 

 大きな封筒を振りながら、廊下の反対側から歩いてくる白鳥。

 その後ろには柳達もいる。

「森山君、どうかしたの?」

「いえ、車の準備をしてきます」

 肩を落とし、来た道を引き返す少年。

 当然疑問の空気が、辺りに漂う。



 彦根城と琵琶湖を視界に収められる、ホテルのスカイラウンジ。

 建物自体は小さく作りもビジネス客用だが、このスペースはバーも兼ねていて観光客も対象にしているのだろう。

「確かにあいつは、なってない」 

 白鳥以上の辛辣な指摘。

 岸はメガネを外し、それをシャツの胸ポケットに入れた。

 それでも理知的な面差しは変わらない。

「ケンカが強ければどうにかなると思ってて、交渉事や駆け引きは人任せ。勿論それを補うだけの強さがあるにしても」

「僕も、何も出来ないよ」

 申し訳なさそうに呟く柳。

 すると岸は優しく微笑み、彼の胸元を指差した。

「そうしていれば、大抵の人間は言う事を聞いてくれる。自覚がある無いに関わらず」

「でも」

「柳君は、そういう自分を弁えている。森山とは違って」

「言い過ぎだ、岸」

 鋭くたしなめる日向。

 顔付きは幼く、体の線も細い。

 しかし今の迫力は、辺りの空気を一瞬にして張りつめさせる程。 

 とはいえ、それを気にするか弱い人間はここにいないようだが。

「君は仲が良いのに、森山に厳しいね」

「友達思いと言ってくれ」

「補い合って助けるのが友達だ。陰で文句を言ってるだけでは始まらない」

「だ、そうだ。これ以上いると殴られそうだから、森山を慰めてくる」

 多少は冗談っぽく笑い、岸はその場を立ち去った。

「日向さんも、言い過ぎじゃないの」

「本当の事を言って、何が悪い」

「そうだけど。岸君も歯がゆいんじゃないかな」

「私だって歯がゆい。でも森山は何も考えてないし、岸は何もしてやれないし」

 あどけない顔に宿る、苦悩の表情。 

 だがそれは一瞬にして振り払われ、照れ気味に窓へ顔が向く。

 赤く染まり始めた湖面。 

 かすみ出す城。

 夕刻だけの。

 綺麗で、だけど一瞬の切なさ。

「浦田君だったっけ。君は、どう思う」

「さあ。今まで問題なかったんだから、いいじゃないの。後2年も経てば、渡り鳥も終わりなんだろうし」

「冷たいというか、根本を付いてくるね」

「人の世話を焼いてる余裕もないんで。渡り鳥でもなんでもない、ただの素人としては」 向けられる、厳しい視線。 

 それを平然と受け流すケイ。

 むしろ、楽しんでいるようにすら見える。

「……私も、森山を見てくる」

「あ、日向さん」

「怒らせたかな」

「大丈夫だよ。でも、部屋には鍵を掛けておいた方がいいね」

 楽しそうな笑顔。

 修学旅行の夜を満喫する子供にも似た。

 友と同じ時を過ごせる事を、心から喜んでいる……。



 琵琶湖や彦根を見渡す側とは逆の、市街地を窓の外に映す部屋。

 小さな机の上で卓上端末と向かい合っていた白鳥は、画面を畳んで軽く伸びをした。

「荒れてるにしてもたかが知れてるし、柳君もいるから問題ないわ」

「沢が言うには、あの浦田とかいう子の研修らしいけど」

 Tシャツにショートパンツというラフな出で立ちの伊藤。

 それは白鳥も大差なく、女性二人の気楽さからだろう。

「あの子は真理依達を顎で使うような人間よ。それに今日見た限りでは、人間性はともかく能力としては問題ないと思う」

「そうなると、誰を研修するって」

「森山君かな。岸君達はまだいいとしても、あの子はいつまで経っても成長しないから」

「世話を焼き過ぎなのよ、周りが」

 素っ気ない口調と態度。

 それに白鳥が何か言いかけた所で、ドアがノックされた。

「インターフォンくらいあるでしょうに。はい、誰」

「僕、柳だよっ」

「何慌ててるの。今開けるから」

 開けられたドアの向こう側にいたのは、可愛らしい顔を青くした柳。

 白鳥の指摘通り落ち着きはなく、今にも泣き出しそうである。

「う、浦田君が怪我して、病院に」

「相手は」

 その動揺を沈めるようにか、ドアに手を掛けた伊藤が低い声で問い返す。

「と、とにかく。僕も、病院に行って来るから」

「相手は誰って聞いてるの」

「そ、それは」

 口ごもり、背を向ける柳。 

 伊藤はその襟首を掴み、強引にこちらを向かせた。

「……もう一度聞くわよ。相手は、誰」

「え、えと」

 泳ぐ視線と、刺すような視線。

 柳は観念したようにうなだれて、小さく口を動かした。

「も、森山君」



 白い壁と白いカーテン。

 清潔なシーツ。

 綺麗だが、無機質な内装。

「あ、起きた」

 安堵感の漂う小声。

 布団越しの体へ置かれる、綺麗な手。

「……ここは」

「病院だよ」

「え」

 彼にしては、珍しく戸惑うケイ。

 その顔を間近で覗き込んだ柳は、不安げに頬を撫でた。

「大丈夫?」

「あ、ああ」

 赤みの差す頬、戸惑いとは違う表情。

 前髪が緩やかに揺れ、彼の鼻先を過ぎていく。

「誤解しそうだな」

「え?」

「こっちの話。でも、俺は何で病院に。それと、どうして頭が痛いのかな」

 包帯の巻かれた額。

 頬にもガーゼが貼られていて、腕からは点滴のチューブが伸びている。

「ぼ、僕じゃないよ」

「だったら、俺は誰かに殴られたって事?」

「あ、今の嘘。転んだんだって、階段で」

「廊下を曲がった所で、記憶が途切れてるんだけどね」

 状況はともかく、楽しげに交わされる会話。

 意識が回復したのをモニターでチェックしたのか、病室に入ってきた医師が簡単な診察を済ませて帰っていく。

「意外と弱いんだな」

 メガネを押し上げ、冷静に告げる岸。 

 その隣では日向も頷いている。

「俺の資料を読まなかった?」

「こっちの買いかぶりという訳か」

「見れば分かるだろ。誰だよ、俺を試した馬鹿は」

「分かってるだろ、君も」

 ペットボトルを置き、ラックをベッドへ寄せる日向。 

 ケイは礼を言ってそれを取り、手の中で転がした。

「大した恨みを買った覚えはないけど」



「別に、恨みとかそういう訳じゃなくて」

 ケイが入院している同じフロアの待合室。

 ソファーに座り小さくなる森山。

 白鳥と伊藤は仁王立ちとなって、彼を見下ろす。 

 弾劾、もしくは糾弾という言葉がそのまま当てはまる態度で。

「柳君に勝った奴とやりあったって聞いたから、どのくらいかなと」

「あのね。あの子はケンカが強いんじゃなくて、ここで勝負するタイプなのよ。そのくらい分かるでしょ」

 頭を指差す白鳥。

 伊藤は言葉も無いという顔で足を踏みならす。

「軽い脳しんとうと打撲。怪我の程度は大した事無いって」

「勿論、手加減はしましたよ」

「当たり前じゃない。治療費は、全額あなたが払ってね。勿論、慰謝料も」

「は、はい」

 彼を一瞥し、エレベーターへ向かい廊下を歩いていく二人。

 夜更けの病院に響く、靴の音。

 その心にも響く……。




 翌朝。

 ホテルのロビーに集まる渡り鳥達。 

 そこには、深くキャップを被ったケイの姿もある。

 目元や口元にはあざがあり、半袖のシャツから出た腕にも包帯が巻かれている。

「大丈夫?」

「俺は、ケンカする訳じゃないから」

 皮肉ではないようだが、森山は伏し目がちにその場を離れる。

「なんだ、あれ」

「浦田君が、嫌みを言うから」

「そのつもりはないけど、言ってもいい立場だろ」

「まあね」

 同情半分という視線を、森山の背中へ向ける柳。 

 しかし彼は振り返る事無く、玄関を出ていった。

「気にするなら襲うなという話だが」

「岸」

「間違ってるか」

「いや、私もそう思う」

 笑いもしない日向。

 岸は肩をすくめ、彼女の肩越しにケイを見やった。

「怒ってないのは、少し意外だな。大物なのか、森山を相手にしてないのか」

「怯えてる可能性は?」

 言っている自分が信じていない様子。

 ただそのあどけない顔には、わずかだが和やかな表情が浮かんでいる。

「どうした」

「司君が、何故あそこまでなついてるのかなと思って」

「確かに、妙な取り合わせではある」

「世の中分からない事が多いと思ってたけど、私は何も分かってないみたいだ」

 自嘲とも、ケイを馬鹿にしているとも取れる発言。

 それに対して岸は、メガネを押し上げて応えた。

 朝から明るい笑顔を見せる、古い友人を眺めながら。




「はっきり言えば、これだけの人数もいらない仕事。生徒を扇動してる馬鹿がいて、学校経営陣と生徒組織トップの退陣を要求してる。学生運動を引きずってるのか、それを利用してるといった所ね」

 小さな、会議室風の部屋。

 彼等7人が向かい合わせとなった机を囲んだだけで、若干の狭さを覚える程の。

 白鳥はホワイトボードに幾つか箇条書きをして、姿勢を全員へ向けた。

「方法は幾つかある。単純に首謀者を確保して放逐。その後で、ある程度意見が傾きつつある生徒達を説得。もしくは先に生徒達を説得して、首謀者を孤立させる」

「首謀者の影響力は」

「一部生徒には、かなりの支持者がいる。その半数は買収されているようだけど、徐々にムードが作られてると言った所」

 岸の質問に答え、ボードに首謀者の名前が書き込まれる。

「つまりこの馬鹿をどうするか。今回私達は学校側に雇われてるから、権限についてはかなり許されている。逆に生徒からの支持は、あまり期待出来ない」

「では、そいつの能力は」

「扇動するくらいだから、口は立つ。資金はおそらく京都系の高連から出てると推測出来る。ただ事前に問い合わせた結果、全高連は関係を否定。それは信頼出来て、出資は京都の独断か非主流派が動いてると思う」

「全高連が関わってないのは助かるわね。関わっても、面白いけど」

 口調とは裏腹な、気のない態度。

 伊藤は面倒げに資料へ視線を落とし、いい加減な仕草でそれをめくった。


「俺からもいいですか」

 手を上げるケイ。

 白鳥は軽く頷き、彼の言葉を待った。

「全高連って、まだ存在するんですか?昔の、高校間の交流を目的とした組織ですよね。無論それは名目で、実際は社会主義系の学生運動組織だったらしいけど」

「一部では未だに、それなりの勢力を保ってるわ。特に京都では、かなりの力を持ってる。面白い人も多いけどね」

「そこの異分子だか知識だけかじった奴が、この学校を支配しようと企んでると」

「推測としてはね。。地理的に、京都から東へ抜ける橋頭堡と考えてる可能性もあるわ」

 ホワイトボードの文字の下に映し出される、琵琶湖周辺の地図。

 南西へ下れば京都。 

 北は北陸、東は名古屋。その先には東京がある。

「戦国時代ですね、まるで」

「時代錯誤と言いたいんでしょうけど、地方へ行けば行く程こういう話は多いの」

「勉強になりました」

 うっそりと頭を下げるケイ。

 白鳥は満足げに頷き、途中だった話を続けていった。



 人数が減る会議室内。

 その片隅で、卓上端末を前に腕を組むケイ。

 画面には学内の見取り図と、生徒組織の概要。 

 例の首謀者や、学内で影響力のある生徒のプロフィールが表示されている。

「悪いわね。資料を見てるだけだと、面白くないでしょ。自分で、あれこれ考えないと」

「いえ。言われるままに動くだけなので、気楽ですよ。別に、嫌みではなく」

 言葉通りの、落ち着いた物腰。 

 白鳥は自分の卓上端末を眺めたまま、口を開いた。

「草薙高校では、色々やってたんでしょ」

「皆さんに比べれば、全然。特に俺は、何もしてませんから」

「真理依達から聞いた話とは違うわね」

「考えるより動く人間がいるので、その補佐をしてるだけです。その点ここは、みんな思慮深くて助かります。例外もいるみたいですけど」

 怪我だらけの顔で笑うケイ。

 それも恨みがましい物ではなく、楽しんでいる様子である。

「雪野さんと玲阿君?」

「ええ。ただ俺より出来のいい人間が何人も付いてるから、問題はありません」

 その顔に浮かぶ微かな自信と誇り。

 普段は、特に友の前では見せない表情。

「そう。だったら君は、書類の整理や学校との受付をやっておいて。ここへ連れてきた沢君の思惑とは違うかも知れないけど」

「分かりました」



 そこからドアを隔てた廊下。

 正面で向き合う、柳と森山。 

 張りつめた、重い空気。

 それにためらう様子もなく、柳が口を開く。

「もうあんな事は、やらないで」

「分かってる」 

 投げやりに近い返事。

 柳は即座に顔色を変え、拳を握り締めた。

「僕は、冗談で言ってるんじゃない」

「分かってるって言ってるだろ。それとも、俺とやる気か」

「いつでもいいよ」

 草薙高校での。

 普段の彼とはまるで違う、好戦的な態度。

 わずかに前へ出された左足は浮き気味で、それは瞬間に頭上の上まで跳ね上がるだろう。

「岸君が強いのは認める。僕だって、怪我じゃ済まないかも知れない。でも浦田君をないがしろにするようなら、覚悟は決めて」

 低く、鋭い声。

 戦意のみしか感じられない表情。

 久し振りに出会った古い友を前にしているとは、とても思えない。

 周りが認めるように、森山も自信はあるのだろう。

 だからこそ、強いと想定したケイへ不意打ちを仕掛けた。

 しかし今は完全に気圧されたように視線を逸らし、構える素振りもない。

 柳の迫力に押され、自分の行動に自信を失ったように。



 遠ざかっていく丸まった背中。

 それを苦そうな顔で見つめる日向。

「司君、言い過ぎだよ」

「僕は、そうは思わない」

「どうして」

「僕は、一度浦田君を助けられなかった。危ない目に遭うって分かってたのに」

 噛みしめられる口元。

 だが視線は下がらない。

 固められた拳は胸元へ上げられ、さらに力が込められる。 

 その決意と共に。

「もう二度と。そんな目には遭わせないと思ってた。でも」

「気に病む事じゃない。少なくとも、今回に関しては」

「岸君」

「大体彼は気にしてないようだし。違います、伊藤さん」

 壁にもたれていた伊藤はだるそうに顔を上げ、醒めた顔をしている岸と向かい合った。

「分かってるなら、聞かないで」

「一応、リーダーの意見も拝聴しようかと思いまして」

「リーダーはさつきよ。そんなポジションがあればの話だけど」

「ですね。それより俺は、森山の方が心配だな。みんなには怒られる、役立たず扱いはされる。実際に、役に立ってない」

 きっと睨む日向。 

 岸は肩をすくめてそれに応え、会議室のドアを指差した。

「意外と、トラブルメーカーとか」

「岸君」

「俺も殴る?」

「場合によってはね。でも、それはあながち間違ってない」



 琵琶湖のほとり。

 そこにしゃがみ、湖を眺める森山。 

 すれ違った10人が10人ともすれ違うだろう、端正な容姿。

 今こうして佇んでいるだけでも、さながらファッション雑誌の1ページ。

 逆にその物憂げな態度が受けるのかもしれない。

 本人もまた、その容姿や自分の持っている雰囲気に自信を持っていただろう。

 軽さだけではない、あの柳ですら認める実力と共に。 

 だが今は、それがわずかにも意味をなさない。

 きっと彼自身が気付いていた。 

 ただ、あくまでも問題となってこなかった問題。

 周りが。

 そして彼自身が。

 表現はともかく、その手のつけはいつか回ってくる。

 彼の場合は、今。     


 突然翻る体。 

 膝が受け流す前蹴り。

 森山はため息を付き、指を前に突き出した。

 ニコニコ笑っている柳の鼻先へと。

「浦君の仇でも討とうかと思って」

「あれだけ殺気を出してれば、誰でも分かる」

「浦田君は気付いた?」

「弱い奴は別さ」

 その指の前へ出されるペットボトル。

 すでに口は開いていて、半分程が減っている。

「何でミルクセーキなんだ」

「僕が好きだから」

「子供だな」

「子供だよ」

 鼻で笑い、それを口にする森山。

 無愛想に、恥ずかしさを隠すように。

「どうかした?」

「いや。良く、俺の好みを覚えたなと思って」

「忘れる訳無いよ、友達の事を」

「そうか」

 戻されるペットボトル。 

 柳は残りを一気に飲み干し、舌を出した。

「甘い。牛乳の方がよっぽどまし」

「好きなんだろ」

「岸君が泣きそうだったから、合わせたんだよ」

「ありがたいね。余計泣けてくる」

 声を揃えて笑う二人。

 たなびく湖面。

 潮の香りを含まない、水面からの風。  

 二人の髪を揺らす。

 爽やかで、心地よい……。




 あまり広くはない、また綺麗でもない廊下。

 適当に掃除された感のある窓、少しホコリの見える床の角。

 大きなゴミ自体はないが、手入れが行き届いているという訳でもない。

「いいね、この雰囲気」

 昨日までとは打って変わった、軽い表情。

 すれ違う女生徒へ視線を向け、恥ずかしそうにする彼女達に微笑んでも見せる。

「何が」

 対照的に、昨日までと何ら変わらない日向。

 あどけない顔に表情は無く、あるのは無機質とも言える醒めた視線。

「敵意というか、邪険にされてる空気が」

 平然と答える森山。

 先程の女性は例外で、彼等とすれ違ったり追い抜いていく他の生徒達は全く違う。

 彼が言う通りの敵意、恐れ、もしくは無視。

 友好的な空気、歓迎されている様子はまるでない。

「仕方ない。今回は学校側。生徒からしてみれば、悪の手先だから」

「古い表現だな。せめて体制側って言ってくれよ」

「どうでもいい。めぐみ、何してる」

 彼等の後ろで立ち止まり、その行く手を指差す日向。

 普段は岸の事を苗字だが、名前を呼ぶ事もあるらしい。

「俺はパス。任せる」

「だったら、私も。やすし

 二人の視線を受け、仕方なさそうに肩を回しだす森山。

 その端正な顔に宿る、強い意思。

 戦いに挑む者としての。



 廊下の行き止まり。

 そこに追いつめられている、数名の男女。

 彼等の周りを取り囲む、10名以上の人間。

 激しい詰問。 

 吊るし上げと言ってもいい言葉の連続。

 さらにそれを遠巻きに見守る野次馬達。

「その辺で止めたらどうだ」

「誰だ、貴様」

「学校外生徒って奴さ」

「学校の狗か」

 侮蔑の視線と嘲り。

 森山は優雅に髪をかき上げ、むしろ心地よげに受け止めた。

「野良犬だよ。理由は知らないけど、よってたかっていじめる事はないだろ」

「これは、俺達の問題だ。貴様には関係ない」

「こういうのを無くすように、俺達も雇われてる」

「力尽くでか」

 長い棒と、文字の書かれたヘルメットで武装した生徒達。

 中にはサングラスを掛け、マスクやタオルを口元へ巻いている者もいる。

 ある年代の者にとっては懐かしい出で立ちで、戦後の学生運動の名残でもあるのだろう。

「全高連から通達は来てないのか。暴力よりも議論をって。武装自体、規則で禁じられてるだろ」

「これは自衛のためだ」

「大勢で取り囲んでおいて自衛か。お前らの頭を革命した方がいいんじゃないのか」


 警告無しで、左右から振り下ろされる棒。

 かつての角材とは違い、明らかに金属。

 一瞬浮かぶ笑み。

 同時に腕が、上へと向けられる。

「なっ」

 中央辺りで二つに折れる棒。

 金属とはいえ、強い力が加われば折れない事はない。

 ただそれは固い物に叩き付けた場合や、金属疲労などが理由である。

 人を殴って、その結果として折れる物ではない。

 森山は破片の付いた肩を軽く払い、愛嬌良く微笑んで見せた。

 獣にも似た迫力を込めて。

「お前らの主義主張はどうでもいい。分からないといった方が正確だけどな」

「な、なにが」

「オルグだか脅してるのか知らんが、同じ事をもう一度やってみろ。今度はお前が、こうなるぞ」

 床へ転がった棒の破片へ向けられる指先。

 思わず息を呑む武装グループ。

 森山は足先でその一本を拾い上げ、腰にためた。

「治療費は持ってやる。看護婦が好きな奴から掛かってこい」

「くっ。おい、行くぞ」

「貴様。顔は覚えたかな」

「反動分子が、いつまでも大きな顔を出来ると思うな」

 陳腐な捨て台詞を残し去っていく武装グループ。

 森山は棒を壁へ立て掛け、廊下の行き止まりで震えている男女へ視線を向けた。

 礼も言わず、むしろ疎ましそうな顔をする彼等へと。

「恩を着せるつもりはない。俺は自分の仕事をしただけだ」

「よ、余計な真似を」

「この学校で何が起きてるのかは興味がない。ただ人に助けられて礼も言わないようじゃ、先は見えてるな」



 壁にもたれていた日向は、微かに口元を緩め彼を迎えた。

「格好いいじゃない」

「今気付いた?」

「まさか。普段のいい加減さよりはましかなという程度」

「好きに言ってくれ。しかし本気で革命なり、社会主義になるって思ってるのか?」

「夢は誰でも抱ける。100年間、どの国でも成功しなかったシステムだとしても」

 暗に否定する日向。

 森山は下がってきた前髪をかき上げ、岸へ顔を寄せた。

「お前はどう思う」

「戦前の日本は、結果的に社会主義的な要素もあったらしい。ただ、理想は理想だ。ひなの言うように、実現はしないさ」

「じゃあこいつらは、何でやってる」

「出来ると思い込んでるか、それを利用して力を得ようとしてるのか。どちらにしろ、夢はいつか覚める」

 冷静かつ、微かな怒りのこもった台詞。

 戦後から数年に渡って盛り上がりを見せた学生運動はすでに下火となり、今ではごく一部の地方で穏健なグループが残っているだけである。

 またかつて学校と対立し政府や自治体を否定した学生運動家達は、卒業と共に身元を隠し大企業への就職を果たしている。

 中には政治活動に身を投じた者もいるが、それは希なケースで国政への影響力も非常に限定された物だ。

「でも柳のいる高校は、生徒が自治権を持って学校を動かしてるんだろ。つまり、ここの連中がやりたいように」

「急に、どうした。今まで、そんな事気にもしてなかったのに」

「その内知恵熱が出るんじゃないの」 

 鼻で笑う日向。

 森山はむっとして、彼女の顔に指を向けた。

「あのな、俺は」

「知りたいなら私達より、本人に聞けばいいでしょ」



 説明するのが面倒なのか、詳しくないのか。

 それともそれ以外の理由があるのか。

 彼女の指摘通り、森山は柳の前に座っていた。

「そんな簡単な話じゃないよ。あそこは中央政府と中部庁、大企業からの出資とバックアップを受けてる。学校を運営する人員やノウハウもね」

「物と人か」

「それだけじゃない。生徒自身に自覚がある。この学校は自分達の居場所で、自分達の手で守るんだっていう。中等部から繰り上がってくる生徒は特に」

 すらすらと説明する柳。 

 外見は子供のようで言動も同様だが、内面は違う。

 学校外生徒と呼ばれる者は粗暴で、学力が劣ると思われがちである。

 ただ実際は逆で、学校へ通わなくても問題ない程の能力を持っている。

 だからこそ転校を繰り返す事が出来、また高校卒業資格を所持しているのが前提である。

 ちなみ彼の場合は大学卒業資格を持っている。

 さらに付け加えるならば、そういう人間の頂点に立つ、ワイルドギース。

 外見や言動はともかく、その能力については語るまでもない。


「仮にここで生徒が自治を確立したとしても、いつまで持つかって話だよ」

「金もない、人もいない。あるのはやる気だけか。でも、それで十分じゃないのか」

「まあね」

 曖昧に答える柳。

 森山はそれも気付かないのか、一人でしきりに頷いている。

「気楽な奴だな」

「確かに」

 苦笑気味に呟き合う岸と日向。

 駄目な弟を見守るように。



「どうしたのっ」

 血相を変えてドアへと駆け寄る柳。

 額から血を垂らしたケイは顔をしかめ、ドアを後ろ手で閉めた。

「いきなり襲われた。身代わりみたいな事を言ってた」

 全員の視線が森山へ集まり、それはドアへ手を掛けた柳へと向けられる。

「柳君、いいよ」

「でも」

 悲痛な、苦しげな表情。

 目の前にいるのは傷付いた友人。

 自分が守ると決めた、だけど今度も救えなかった。

 その怒りは誰よりも、自分自身へと向けられている。

「じゃあ、病院へ」

「病室が一緒になったら困る」

「え。もしかして」

「さあ、どうかな」

 子供のような笑顔。

 ケイは血の付いた口元を手の甲で拭い、室内を見渡した。

「切り傷と軽い打撲だけなんで、救急箱でもあれば」

「日向さん」

「こっちきて」

「どうも」


 会議室の隅で手当を受けるケイ。

 日向は傷口にガーゼを当て、固まった血を拭き取った。

「痛いんですけど」

「襲った相手は」

「保険は下りないかも。ただ綺麗な看護婦さんとは、毎日会える」

「ろくでもないな、君は」

 吹き付けられる消毒。

 ケイは顔をしかめ、鎮痛剤を水で流し込んだ。

「医者に行けば良かった」

「どうして泰……、森山には抵抗しなかった」

「気付いたら病院にいたのに、どうやって。今度も不意は突かれたけど、相手がぬる過ぎた」

「だから容赦無しに?やっぱり、ろくでもないな」  

 手荒に巻かれる包帯。

 額に浮かぶ脂汗。

 無論それは、彼女の治療のせいだけではないだろう。

「森山の事は、どう思う」

「知り合いに、ああいうのがいる。もっとストイックで、真面目だけど」

 一瞬浮かぶ微笑み。

 遠い視線。

「そいつは突然自分で何でもやりたくなって、でも全然上手くいかなかった」

「それで」

「反省して、心を入れ替えた。元に戻ったのかな、多少は成長して」

「そういう顔もするんだ」

 意外そうに呟く日向。

 ケイはペットボトルを傾け、彼女の視線を避けた。

「そういう自分こそ、あの子には優しいね」

「優しい?」

「口調や台詞はともかく、態度が。岸君も含めて」

「鋭いね。人間性はともかく」

 余計な事を付け加え、頬にガーゼを貼り付ける。

 少し優しく。

 あくまでも、それまでよりはという注釈付きで。

「3人とも、同じ学校の出身なの」

「幼なじみか」

「君にもいる?」

「中学校からの知り合いはいる。でも、向こうはどう思ってるかな」

 やるせないため息。

 それに笑う日向。

 子供っぽく、年頃の高校生のように。



 自分という存在。

 意識もしない事。

 でもそれに気付く時がある。

 その先がどうなるかは、自分自身に掛かっている。

 または出会った人に。

 友と呼べる存在にも。






 











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