15-7
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やっぱり自宅が、一番いい。
旅行帰りのおばあさんみたいな感想を抱き、リビングのソファーに横たわる。
テーブルには、寮に届いていたサトミからの絵はがきが。
思った通りだった。
自分も出して良かった。
「あー」
何となく叫んでみる。
全く意味はない。
ただ、気分はいい。
「片付けは済んだの?」
「さっき終わった。後は寝るだけ」
「まだお昼過ぎよ」
「琵琶湖なんて、すぐだね」
小さくあくびをして、クッションに顔を埋める。
柔らかくて、何の心配もなくて。
いつまでもこうしていたい気持。
「夕ご飯はどうする?」
「鮒寿司買ってきた」
「止めてよ」
露骨に嫌がるお母さん。
私も、あれは嫌だ。
「だって、お父さんが買ってきてって」
「こういう好きだったかな。妊娠してたら、どうしよう」
「馬鹿じゃないの」
ぐっと伸びて、テーブルの上にあった近江牛のジャーキーを取る。
何もしなくて、のんびりと過ごす時間。
向こうでも何もしてなかったつもりだったけど、自分で思った以上に気を張っていたようだ。
明日も休みだし、身も心もゆっくりと休めよう。
「琵琶湖、か。私も行きたかったな」
反対側のソファーに寝転び、大きく手足を伸ばすお母さん。
といっても短いし、何してるんだか。
「ご飯作るのも面倒だし、お寿司でも取ろうかな」
「いいね、それ。私、ちらし寿司。少なめで」
「あなたは小食で助かるわ。お父さんは、鮒寿司があるし」
「あれは、お酒の肴でしょ」
二人して笑い、ジャーキーをかじる。
旅行もいいし、寮も楽しい。
でも、ここに優る場所はないと思う。
生まれ育った街、短いけど自分の人生の大半を過ごした我が家。
自分を育んでくれたお母さん。
何の心配もなく、心おきなくくつろげる今という時間。
でも私が出会ってきた人は、どうなんだろう。
複雑になる胸の内。
自分だけが、という思い。
ただ、だからといって今の気分を否定するつもりもない。
悲しさや寂しさがあるように。
楽しさや、喜びがある。
私が今度の事で、経験したように。
人は信じられるという、思いと共に。
第15話 終わり
第16話 あとがき
学校外生徒編、でしょうか。
古いキャラもちらほら。
ちなみにこれはその一部で
「沢義人・長野編」
サトミ達の分と、ケイ達の分が外伝としてあります。
今回は、こちらがメインかも。
沢の怖い面が見えたり、清水と小泉がまだ一緒に行動してたり。
なんだかんだといって、この辺の人達は仲が良いようです。
詳細は、その内書くワイルドギース(渡り鳥・傭兵)編にて。
いつ書くのかは不明ですが。
ユウも少しは成長したのかも。
色々気付いた、とでもいうんでしょうか。
まだまだともいいますけどね。
何にしろ、16才の女の子。
それで十分なんでしょう。