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スクールガーディアンズ  作者: 雪野
第15話
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     15-5




 いつも通りに待機室へ入り、気の進まないオンライン授業を受けていた時の事。

 机に置いてある端末が音を立てた。

 机から目を離す私とショウ。

 沢さんは静かに端末を取り、耳元へ当てる。

「……ええ。……はい。……今行きます」

 ポケットへしまわれる端末。

 その冷静な眼差しが、ドアへと向けられる。

「かなりの人数で睨み合ってるらしい」

「それって」

「生徒会の主導権争いが、表面化したと考えていい。ガーディアンも出てるが、団体での行動はまだ不慣れだから」

 立ち上がる沢さん。

 舞地さん達も支度を整え、表情を引き締める。

 無論、私達も。

「これを抑えるのが、僕達の呼ばれた理由の一つだ。まずは、契約を果たそう」

「はい」

「その後で何が待つかは……。いや、今は急ごうか」



 教棟の裏側。

 学校を囲む塀との間の、意外と広いスペース。

 障害物は殆ど無く、常葉樹が規則正しく並んでいるくらい。

 乱闘にはもってこいの場所とも言える。

 多少の距離を置いて睨み合う、何十人もの人間。

 警棒などを持ってはいるが、腰は引け気味。 

 また、どう見ても素人同士。

 だからこそ、限度を知らない怖さがあるともいえる。

 ガーディアンが中央と周囲にいてかろうじて押しとどめてはいるが、時間の問題だろう。


「はい、そこまで」

 軽い調子で、その間に割って入る林さん。

 当然、戸惑いとも苛立ちとも付かない雰囲気が全体に広がっていく。

「誰だ、お前」

「警務委員会に雇われた人間。ガーディアンのサポート役だ。それは、聞いてるだろ」

「傭兵っていう、あれか」

「一応」

 頷く林さん。

 リーダー格らしい人間達が声をひそめ、何やらささやき合う。

 緊張感が漂う彼等に対し、それ以外の者は訝しげに彼を睨んでいる。

 場違いな笑顔と、軽い態度。

 大柄とは言えない体型を。

「揉めるのは勝手だが、こっちも仕事だ。止めさせてもらう」

「やれるなら、やって……」

「いいのか」


 喉元に突きつけられる警棒。

 反対側のグループの背後から現れた清水さんと小泉さんが、声を上げた男の側に張り付いている。

 こちら側には、私とショウが。  

「ふ、ふざけるな。これだけの人数相手に、何が出来る」

「心配するな。お前は最初に倒れるから、何も見えない」

「そ、そんな」

「そのくらいの心構えはあるだろう。これだけの準備をしてるんだから」

 男の手に下がった警棒。

 膨らみ気味の服のラインは、プロテクターかそれに類する何かをを示している。

「揉めたいなら、話し合いで解決しろよ。いい年して暴れるな」

 他人事のような、しかし耳の痛い言葉。

 林さんの視線をリーダー格の人間は、悔しそうに睨み返す。


「それとも、勢いだけで殴り合うつもりか。その後どうなるか、教えてやりたいね」

「ど、どういう意味だ」

「これだから、平和な学校は困る。俺は傭兵だと分かってるだろ。そこから察しろよ」

 謎掛けのような台詞。

 再びささやきあう、両グループのリーダ格達。 

 何名かは、何かに気付いたらしい顔をしている。

 青く震え気味に。

「それでもやるというのなら、俺達は止めない。契約には反するが、馬鹿を助ける真似をしたくない」

「ど、どういう意味だ」

「誰か、教えてやれ」

 苦笑する林さん。


 声を上げた男の耳元でささやく仲間。

 その男も顔色を変え、手にしていた警棒を地面へと落としてしまった。

「演技派だな。気持は、分からなくもないが。で、まだやりたい奴はいるか」

 校舎裏を吹き抜ける、初夏の熱い風。

 なびく髪と、隠れる視線。 

 微かに緩む口元は、肉食獣のそれに酷似する。

「清水さん。まずはそいつから」

「分かった」

 喉にめり込む警棒。

 上がる呻き声。

 腕も上がらないのか、喉を押さえる事もままならず声だけが響く。

「や、止めてくれ」

 即座に警棒を引く清水さん。

 地面へ崩れる男。

 小泉さんはその背中をさすり、彼の仲間に連れて行くよう指示を出している。

「そっちばかりだと不公平だから、次は反対側も行くか。そうだな」

 コンビニでお菓子を品定めするような視線。

 子供のように無邪気な、残酷な表情。

「その女の子なんてどうだ」


 集団の最後尾。

 今にも逃げ出しそうな顔で付き従っていた、ボブカットの女の子。

 誰の目から見ても数合わせで、周りもまた彼女自身もそう思っていただろう。

 そして今、その甘さを知らされる。

「雪野さん……、は酷か。俺がやってもいいが、耐えられるかな」

「ひっ」

 息を呑む女の子。

 砕ける腰。

 彼女はよろよろと集団を離れ、頼りない足取りで駆け出した。

「逃げられないんだな、これが」


 常葉樹の木陰。

 そこに差し掛かる女の子。 

 突然現れる人影。

 警棒が頭上高く振りかぶられ、ボブカットの頭へと降り注ぐ。

 全員。

 仲間だけでなく、反対側のグループからも上がる声。

 しかし警棒は当たらず、その数瞬前に女の子は自分から地面へと崩れ去った。

「今のは女の子だから、こっちも手加減をした」

 ふと緩む空気。

 だがそれは、次の瞬間凍り付く。

「抵抗すれば、容赦はしない。無論、性別を問わず」

 紛れもない事実を語る口調。

 表情は変わらない。

 その物腰も。

 だが彼がその気になれば、全ては現実になると誰もが気付いただろう。

「やりたいなら、自分達だけでやれ。俺達は止めない」

「し、しかし」

「俺の言ってる意味が分かる?」

 小さく上がる声。

 そこを中心に輪が出来、言葉が伝えられていく。

「そう。誰かに聞かれたら、そう言えばいい。やり合おうとした寸前に、俺達に脅されたと。2人をいきなり失神させられて、どうしようもなかったと」

「だ、だけど」

「俺達にもメンツがあるように、君達にもあるだろ。力尽くで殴り合うだけが、それを保つ事じゃない。時には引くのも大切って訳さ」

 全員が、不意打ちを食らったように林さんを見つめる。

「そ、その。それって」

「どう解釈してもらっても結構。殴り合うより、この方がお互い楽だろ」

「ま、まあそうですが」

「この調子で、自分達のトラブルも話し合いで解決してくれ」

 思わず声を上げたくなる程の、話の持って行き方。

 使う力は最小限に、見せる力は最大限に。

 モトちゃんの誠意を込めた交渉とはまた違う、優れた交渉術。

 力尽くで抑えた方が早く、その力もあるというのに。

 傭兵。

 そして林爽来という人の力を、改めて実感した。

「ガーディアンは両方を連れて、それぞれの居場所へ連れて行って」

「は、はい」

「取りあえず今日は、全員が帰るまで監視。悪いが、頼む」

「わ、分かりました」

 林さんに敬礼して、両グループを連れて行くガーディアン達。

 私達は離れていく彼等を見送り、それが見えなくなってようやく一息付いた。



「何とかなりましたね」

「清水さんが脅したから」

「私だけじゃない。あの子だって」

 顎を振る清水さん。

 木陰からこちらへ歩いてくる、小さなシルエット。

 赤いキャップにジーンズとGジャン。 

 舞地さんは警棒の位置を直し、キャップの鍔に手を触れた。

「やれと言われたから、やったまでだ。それに、当ててない」

「私だって、相手が女の子なら」

「まあまあ、2人とも。上手く行ったし、いいだろ。なあ、小泉君」

「ええ。ここは、上手く行きました」

 あまり勝れない表情で答える小泉さん。

 まだ何か言い合っている、舞地さんと清水さん。

 林さんは苦笑気味に、それを見守っている。

「何もしなかったね」

「たまには、いいんじゃないのか。見学でも」

「うん」

 手持ちぶさたという気がしないでもないが、ショウの言う通りだ。

 学ぶ点は多々あり、反省する部分も多かった。

 確かに、力尽くでやればいいというものでもない。

 真似をしろと言われても難しいけど。

「沢さんは、何を」

「俺達のチェックさ。上」

 教棟の屋上辺りを指差す林さん。 

 逆光の中、どうにか見えるシルエット。

「声は、端末で全部伝わってる」

「はあ」

「大丈夫。真面目な公務員だから、もう次の手を考えてる」

 それも聞こえたらしく、微かに手を振るのが見えた。

「これで契約は、どうにか果たしたかな。後は金をもらって帰るだけだ」

「沢さんは、まだ何かあるって言ってますけど」

「物覚えがいいな、君は。嫌な事は見ないで、さっさと逃げればいいんだよ」

 そういう割には、自分が逃げる様子がない。

 彼もまた最後まで残り、全てを見届けるつもりなのだろう。

 彼自身も分かっているはずの結末を。

「今から状況は一変する。それだけを、覚えておけばいい」

「は、はい」

「取りあえず終わったんだ。今日は、焼き肉でも食べようか」

「中国人なのに」

 苦笑する小泉さん。

 私も少しだけ笑い、上を見上げた。

 かろうじて見えるシルエット。

 視線は重ならない。

 だけど、間違いなくこちらを見ている沢さんを。

 その意図を、改めて確かめるようにして……。




 翌日。

 特別に許可された学内の駐車場に車を停め、教棟の方へと歩いていく。

 通学時間。

 当然この学校に通う生徒とも、顔を合わせる。

 簡単な朝の挨拶と、短い会話。

 いつもなら、それで終わる。

 ただ今日は、少し違う。

 視線、態度、雰囲気。

 何もかが。

 熱をはらんだ、高揚した空気。

 それは紛れもなく、私達へと向けられていた。

「どうかしたのかな」

「さあ。急に、誰かが格好良くなったとか」

「馬鹿じゃないの」

 それ以上格好良くなりようがない。

 という言葉を飲み込み、ショウの体越しに向こうを窺う。

 正門から教棟の玄関へと続く、広い通路。

 今も私達と並ぶ格好で歩く生徒達が、何人か。

 明らかにこちらを見て、何かささやき合っている。

 ただ悪意は感じられず、思い過ごしではなく好意が伝わってくる。


「どう思う?」

「それが分かったら、俺はここまで苦労してない」

「なるほどね」

 頼りにならない子だ。

 自分の事は棚に上げ、後ろを振り返る。

「ねえ」

「少しは自分で考えろ」

 冷たい一言。

 深く被られたキャップ。

 口元は厳しく引き締められている。

「頼りにならない先輩ね」

「私は、お前のお守りじゃない」

「聞いた事に答えるくらい、いいでしょうが」

「朝からうるさい、もう」

 面倒げに手を振る舞地さん。

 こっちはくっと唸り、彼女に飛びかかる準備をした。

「何を遊んでるの」

 涼しげな声で間に入ってくる清水さん。

 少し、笑っているようにも見える。

「あなたも、この子相手だと結構感情的になるのね」

「呆れてるだけ」

「そう。とにかく雪野さん」

「はい」

「静かにして」

 何だ、それ。

 すたすたと歩いていく清水さん。

 こっちもすぐに追いかける。

「付いてこないで」

「行き先は同じじゃない」

「ちょっと。舞地ー」

「自分こそ、静かにしてよ」

 勝ち誇ったようにそう言って、足を止める。

 当然、ショウ達に追いつかれる。

「こっちが恥ずかしいから、止めてくれ」

「私は全然、恥ずかしくないわよ」

「だから、俺達が恥ずかしいんだ」

 完全に、言い切られた。

「あのね。恥ずかしいっていうのは、こういう……」

「わ、分かったから」

 踊りだそうとした人の手を掴むショウ。

 何よ、その方が恥ずかしいじゃない。


「朝から楽しそうだね、君達は」

「私は別に」

「俺だって」

 お互いに睨み合い、すぐに飛び退く。

 意味はない。

 強いて言うなら、猫のケンカだ。

「注目を浴びてる理由は簡単だよ」

 周囲へそれとなく視線を向ける沢さん。

 私はショウの脇へ伸ばしかけていた手を止め、彼を振り返った。

「昨日の一件。あれの噂が、もう広がってるんだ」

「ケンカの仲裁が?」

「一歩間違えば学内が混乱するのを、完全に抑えきった転校生達。申し分ない見た目と、限りない強さ。規則にこだわらない柔軟さと優しさ。人気も出るさ」

 沢さんは芝居の台詞のように言葉を並べ立て、「僕は違うけど」と付け加えた。

「つまりは学校に平和をもたらした正義の味方。ヒーローだよ」

「まさか」

「そう思う?」

 沢さんの視線が、再び辺りに向けられる。

 熱い眼差し。

 紅潮した頬。

 熱気と高揚感。

 否定は出来ない。

「困ったな」 

 真っ先にその言葉を口にするショウ。 

 嬉しいとか、得意げになる感覚はないらしい。

 この間の突っ走り方は、力試しの一つに過ぎなかったし。

 本当に奥ゆかしい人だ。

 無論私も、そう嬉しくはない。

 自分自身何もやってない事もあるが、注目を集めるのは苦手だ。

 ひっそり地味に、大人しく生きていたい。

 何か、ケイみたいになってきたな……。


「これから、どうするんですか」

「今までと変わらず、ガーディアンのサポート。生徒会のトラブルを収束させるのもそうだが。契約期間は2週間。今週末までだ」

「早く戻った方がいいと思うんですけど」

 遠慮気味にそう言うと、沢さんははっきりと首を振った。

 そしていつにない厳しい表情で、私の瞳を覗き込んだ。

「ここにいる限りは、傭兵として振る舞うよう言ったはずだ。だから当然、契約も守ってもらう」

「はい」

「清水さん達も含め、僕は必ず契約を遵守するようにやってきた。例え何があろうと」

 すごみを増す佇まい。

 しかし、それに気圧されないくらいの気構えはある。

 私も負けずに、瞳へ力を込める。

「上手く言えないけど、今のままだといい事は起きないんじゃないですか。契約期間は、短縮も出来るはずですよね」

「トラブルを収めるのが、僕達の仕事だ。それを忘れないように」

「忘れてません」

「だったら、いい」

 すっと気を抜く沢さん。

 こちらはまだ感情が高ぶったままで、すぐにはそれに付いていけない。

「君は、そのくらいの方がいいのかもね」

「え?」

「理屈より感情で動く方が、らしいっていう意味。他の人にはとても言えないけど、君はその方が似合ってるのかな」

 一応は誉めている、のだろうか。

 沢さんはそれ以上何も言わず、早足で歩いていってしまった。


「どういう事」

「もっと怒れ。なんて訳無いか」

「当たり前でしょ」

 がっとショウに怒り、鼻を鳴らし気味に腕を組む。 

 我ながら、ひどいな。

「沢君も人がいい」

 笑いを堪えたような口調。

 林さんはすっと私達の前に出て、顎を教棟へ消えた沢さんの背中へと向けた。

「どこにも組みせず、孤高の存在であるフリーガーディアン。それが、あれだ。笑うね」

「はあ」

「君達には、分かんないか。なあ、舞地さん」

「だから、どうして私に振る。沢も色々あって、丸くなったんだ」

 遠くなる、鍔越しの眼差し。

 初夏の空を見上げる、澄んだ瞳。

 体に押し付けられた拳が、一瞬震える。

「人は変わる。沢も、私も。自分だって」

「俺は別に」

「草薙高校に行った後、柔らかくなったんじゃない」

「それは清水さんだ。いい先輩がいて、小泉君に会って。変わらない方がおかしい」

 訥々と語る林さん。

 彼にしては珍しい、切ない表情で。

「俺は今も昔も、お茶目な中国人さ」

「自分で言うな」

「はは」 

 くすっと笑う舞地さん。

 林さんも、楽しげに笑う。

 私達も、勿論。

 つかの間の温もりの中で。




 お昼頃から雲が出て、空が暗くなり始めた。

 エアコンを入れたくなるくらいの寒さ。

 ホットコーヒーの温かさが、心地いい。

「降ってきたね」

 マグカップを持ち、窓辺に立つ。

 窓を伝う雨筋。

 重なり合い、一つになって落ちていく。

 現れては消え、現れては消えて。

 風も出てきて、打ち付けられる雨と同時に窓が揺れる。

「傘は」

「ありますよ」

 ロッカーを開ける小泉さん。

 ずらりと並んだ、何本もの傘。  

 初めて見たし、この間までは何も入ってなかったのに。

「週間予報で、そろそろ降るって言ってたから」

 私の視線に気付いたのか、照れ気味に説明してくれる。

 本当に気が利いて、細やかで、優しくて。

 男の子にしておくのはもったいないな。

 それこそ、いっそ彼氏にするとか。

 そう思いたくなるくらいの人だ。

 可愛らしくて、ふとした瞬間の厳しい表情も含め。 

 また切ない顔をする時があって、それがもう。

「何やってんだよ」

「あ」

 拳を固め、机を叩いていた私。

 間の抜けた音が、辺りに響いていた。

「か、雷」

「春の雷?訳が分からん」

「分からなくて結構」

 勿論、私だって分かっていない。

 雷を落とされない内に、この辺りで黙っておこう。

「さすがに、雪は降らないか」

「はい?」

「い、いや。こっちの話」

 珍しく慌てる沢さん。

 窓の外には大粒の雨が降りしきるだけで、勿論白いちらつきなんて見えはしない。 

 滋賀の北部という場所柄、冬にはそれなりに雪が降るらしいが。

 ただ、その事を言った訳でもないようだ。

「分かんない人だな」

「ユウ程じゃない」

「あ、そう」

 さすがに机は叩かず、自分の手足を軽く叩く。

 別におかしな趣味じゃなくて、解してるんだ。

 寒いしね。


「雪野さん、背中が見えるよ」

「見ないで下さい」

「そう言われても、僕も男だから」

 怖い事をいう人だな。 

 取りあえず屈んでいた体を起こし、まくれていたセーラー服を引き戻す。

 しかし振り返った先に小泉さんはいなく、舞地さんと清水さんが並んでこっちを見つめていた。

「な、何よ」

「子供じゃないんだから、少しは気を付けたら」

「清水、心配ない。年齢が言ってるだけで、体も心も子供だから」

「なるほど」

 納得するな。 

 面白くないが最もなので、身だしなみを整える。 

 しかしこれ、一番小さいサイズなのに緩いから。

 着ているというより、着られてる感じ。

 草薙高校は、オーダーメードも受け付けたのに。

「私服にしようかな」

「悪くないと思うけど」

 少し残念そうな顔をするショウ。

 そうされると、こっちも嬉しくなってくる。

 いいじゃない、セーラー服も。

 これは持って帰って、たまに着よう。

 いや、おかしな意味じゃなくて。

「舞地さん達は着ないのかな」

 くくっと喉元で笑う林さん。

 2人は微かに頬を赤らめ、口元で「似合わない」と呟いた。

「似合うって、2人とも。ねえ、小泉さん」

「僕に振られてもね。清水さん、どの学校に行っても制服着ないんだ」

 さっきのショウよりも残念そうな小泉さん。

 多少演技の感も否めないが、惜しいと思ってるのは確かだろう。

 全く、男の子っていうのは。

「着ない」

 先手を打たれた。 

 舞地さんなんて大袈裟に肩を抱き、首を振っている。 

 この人クールに見えて、案外こうなんだよな。

「似合う似合わないより、着たいって思わない?」

「さあ」

「どうだろう」

 はっきりしない返事。 

 転校転校では仕方ない面もあるのかな。

 私なら行く先行く先で、制服を手に入れていくけど。

 いや、待てよ。

「どうした」

「ううん、別に」

 へへと笑い、再び体を叩き出す。

 そうか、そうだよ。

 一人で納得して、笑い気味に体を解す。

 肝心な事を忘れてた。

 これで、名古屋に戻る楽しみが一つ増えた。



 気分がいいと、ご飯も美味しい。

 悪くても美味しいけど。

 食べられない分のポテトサラダをショウの皿に置き、お茶を飲んで一息付く。 

 残り物もなくなって、一石二鳥。

「このくらい、食べろよ」

「いや。もう、いらない」

 彼の手にフォークを突き立て、手を引き戻させる。

「ったく。……なんか、妙に酸っぱくないか」

「さあね」

 メニューの下にあった 

 「琵琶湖名産の鮒寿司が入ってます」

 という、小さな説明書きは教えないでおく。

「ん」

「骨でもあった?」

「何の話してるんだ」

「い、いや別に。で、どうしたの」

 顎を私の肩辺りに向けるショウ。

 私は伸びをする振りをして、それとなく後ろを振り返った。


 8人掛けくらいのテーブルに付く、数名の男性。

 服装は制服で、外見はそう目立つ物ではない。

 腰に下がっている警棒を除いては。

「何、あれ」

「さあな」

 曖昧に答えるショウ。

 ただ彼の表情は、それを否定する。

「大体、あんなのいた?」

「俺は、初めて見た。少なくとも、ガーディアンの中にはいなかった」

「だよね」

 彼等が時折放つ、剣呑な物腰。

 それは食堂に人が入ってきた時、人が側を通った時。

 物音が聞こえた時に。

「ちょっと、やばめだな」

「うん」 

 それに気付く私達も、どうかと思うが。

「さてと」

「どこ行くの」

「逃げる。揉めたくないだろ」

「大人じゃない」

 トレイを持ち、カウンターへ向かう私達。

 ショウが大きくて私が小さいので、見た目では目立つ。

 ただ気配を断つくらいの事は、塩田さんから習っている。

 それにこれだけの人のため、姿は見えにくい。

「とっとと逃げようぜ」

「おうよ」

「何だ、それ」

「なんとなくね」

 くくっと笑い、壁際を一気に駆け抜ける。

 ショウも屈み気味に、後を付いてくる。

 何をやってるのか分からないが、たまにはこういうのもいいだろう。

 久し振りに、とも言えるが。

 とにかく、何かが動き出したのは間違いない……。 



 待機室へと戻り、今見た事を報告する。

 しかし反応は、特になし。

 全員、もう知っていたという顔だ。

「見たの?」

「見なくても分かる。パターンだから」

「え?」

「軽くレクチャーしようか」 

 腕と足を組み、背もたれに身を任せる沢さん。

 私達もそうは構えずに、楽な姿勢で聞きに回る。

「敬意はともかく、僕達は学内の混乱を収めた。その結果、学内での人気は上がり支持が集まる。いっそ、これからも学校に残ってくれと。その時困るのは?」

「悪い連中」

「確かにそうだ。それ以外には」

 探るような視線。

 私は首を振り、自分の中でそれを否定した。

「現実だよ」

「でも」

「すぐに分かる。人という生き物が、どういう存在かを。もしかして、君達とは別種かもしれないね」

 一瞬だけ冗談っぽい笑みを浮かべ、沢さんはすぐに表情を改めた。

「とにかく、僕達みたいのを雇うのは善し悪しなんだ」

「どういう意味です」

「僕達という存在が気にくわないために、他の傭兵を雇って排除を試みる。今度はその連中を追い払うために、別な傭兵をと。気付けば学内が、傭兵だらけになる訳さ」

「そうなると、私達が見たのは」

 細い顎が引かれ、その眼差しが真っ直ぐにこちらを向く。

 確信と、自信を込めた表情で。

「間違い無い。僕らの影響力が大きくならない内に、先手を打ったんだろう」

「でも、どこもそうなる訳じゃないですよね」

「勿論。傭兵に対抗出来る人材と気構えがあれば、何の問題もない。例えば草薙高校は、逆に連中を壊滅にまで追い込んだ」

 すごみを感じせる笑い方。

 それは清水さんと林さんも同様だ。


「使い方さえ上手くすれば、傭兵を雇ってもいい。過信せず、怯えず。自分達の足りない部分を補ってくれる人達、くらいに思えるのなら」

「はあ」

「ただ中には誤解して、自分達の権力基盤を奪われると思う人もいる。その場合は別な傭兵を使って、追い落としを狙うのさ」

「その典型的な例という訳。今回は生徒が敵に回らないだけ、まだましかな」

 面白く無さそうに笑う舞地さん。

 今自分が置かれている状況は理解してるようだが、慌てたり怒ったりする様子はない。


「沢、どうする」

「生徒に危害を加えたら困るし、打って出よう」

「分かった」

 キャップを被り、素早く立ち上がる舞地さん。

 そのまま腰の警棒に触れ感覚を確かめ、オープングローブを付け始めた。

「まだ、何もしてないのに?」

「した後では遅い。責任は、僕が取る」

「あ、はい」

 いつになく積極的な沢さん。

 そこまで言われては、こちらも準備をするしかない。

 当然、元々その気だったが。

「君は、どうする」

「行きますよ」

 ごく自然に答える小泉さん。 

 沢さんは鋭い眼差しで彼の綺麗な顔を捉え、仕方なさそうに口元を緩めた。

「怪我をしても、それは自分で責任を取ってくれ」

「はい。今までも、そうしてきましたから」

 普段通りの、落ち着いた物腰。

 彼の実力は、ガーディアンの平均レベルに達しているかどうかだと思う。 

 私から見ても、無謀とも言える考え。

 しかし彼は、自分の行動に何の疑問も抱いていない。

 それは清水さんが行くからという理由だけではなく。

 彼もまた、傭兵と呼ばれる人間なんだと私にはっきりと教えてくれていた。


「さてと、準備は……。林君」

「俺はいいだろ。昨日頑張ったんだし」

「だったら、責任は君にある」

「はいはい。仕方ないな」

 返る手首。 

 一瞬とも呼べない間に見える、指先辺りのきらめき。

 暗器、それともナイフ。 

「どうしたの、雪野さん」

「え、いえ」

「林さんの手?確かに、刃物は危ないよね。相手にとっても、自分にとっても」

 優しく声を掛けてくれる小泉さん。

 またそれは、間違いなく林さんにも向けられているだろう。

「持ってて損する物じゃない。少なくとも、俺にとっては」

「譲れませんか」

「勿論。これを手放す事は、一生涯無い」

「だって、雪野さん」

 処置無しという顔。

 ただ彼も、その答えはあらかじめ分かっていたようだ。

 それだけ危険な目に遭ってきたという事とはまた別に。

 気持を和らげてくれる部分があるのだと思う。

 背中に装着したスティックに触れ、自分の中でそう納得する。

「みんな、準備は」

 すぐに返る応え。

 沢さんは小さく頷き、ドアへと歩き出した。

「まずは、表を叩こうか」




 他の教室とは離れた一画にある、薄暗い廊下。

 資材置き場というより、材質的に捨てられない物を集めた感じの廊下。

 例の、旧クラブハウスへ続く道にも似た雰囲気。

 ただこの先に待っているのが、学校のために全てを懸けた先輩でないのは確かだ。

 インターフォンを押し、やや腰を落とすショウ。

「はい。誰」

 無愛想な応対。

 ドアの上にあるカメラが、周期的に左右へと動く。

「警務委員会から来たんですが。手続きに不備があって、書類を幾つか持ってきました」

「そういう話は、聞いてないが」

「自分は、行けば分かると言われただけなので」

 ぎこちない台詞回し。

 ただそれは、この場の雰囲気に緊張しているとも取れる。

 カメラでは、彼の存在感もはっきりはしないだろうし。

「分かった」

 小さな音がして、ドアがわずかに開く。

 その隙間に警棒を突き立てる林さん。

 ショウは強引にドアを横へ動かし、火花を立たせた。

「雪野」

「了解」

 かろうじて開いたわずかな隙間を滑り込み、内側のコンソールでドアを開ける。

 相手に背を向けているが、心配はない。 

 私の後に続いた舞地さんが、そこに立っているから。


「動くなっ」

 厳しい声が、後ろから掛けられる。

 一気になだれ込んできた私達に戸惑うことなく、素早く反応する傭兵達。

 ゆっくり振り向いた先には、すでに警棒を構えて舞地さんの周りを囲んでいる彼等の姿があった。

「お前、舞地か」

「林、沢、清水」

「なんだ?」

 そこでようやく、困惑と焦りの声が上がる。

 怪訝そうな表情と、彷徨う視線。

 目の前の光景が信じられないとでもいった具合の。

「お前達がいるなんて、聞いてないぞ」

「傭兵がいるのは、聞いてるだろ。そいつらを追い払えという契約と一緒に」

「ちっ。騙したな。いや、お前らに騙されたのか」

 舌を鳴らす、大柄な男。

 警棒の先端がこちらに向けられるが、沢さんは全く動じず話を続けた。

「選択肢は、幾つかある。逃げるか、契約を破棄するか、僕達とやり合うか」

「ふざけるな」

「その言葉は、最後を選んだと取ってもいいのかな」

 静かな、しかし圧倒的な威圧感。 

 それでも大柄な男は怯む事もなく、警棒を持ったのとは反対の手をパーカーの胸元へ入れた。

「お互いの自信はともかく、やり合えば怪我人が出る。林君の暗器は、君達も嫌だろ」

「俺に振るな」

「失敬。人間、引き際も肝心だ。今回は明らかに契約違反のケース。君達の経歴に傷が付く事もない」

「こいつらに、経歴なんてあるの?」

 醒めた口調でそう言い放つ清水さん。

 男達の顔色が瞬間にして変わったが、それ以上の反応は見せない。

 かなりの自制心と、また彼女の性格を理解しているようだ。

「引くか、進むか。早く選んでくれ。こっちも、予定が詰まってるんだ」

「なんだと……」

 再び険しくなる物腰。

 ただそれは沢さん達にではなく、こちらへと向けられている。 

 私とショウと、小泉さんに。

 ショウはともかく、私達は明らかに小柄で頼りない外見。

 狙うとしたらここだとでも思ったのだろう。

 いつもの事なので、大して気にはしないが。

 ただその選択は、自分達の体で思い知ってもらうとしよう。

 傭兵、それもかなりの使い手だとは思うが。

 それに引くくらいなら、初めからここに来ていない。


「いっそ彼等とやり合って、僕達を倒したというステータスでも得る気かな」

「悪いか」

「いいや。僕は止めないよ」

「彼等の経歴を教えてやる」

 私の前に出て、微かにこちらを振り返る舞地さん。

「この大きい子は、玲阿四葉。草薙高校の三島と、私の所の柳司にも勝った男だ。噂くらい、聞いてるだろ」

「話くらいはな」 

「この小さい子は、その玲阿四葉を抑えられる唯一の人間でもある」

 一斉に身を引く連中。

 例えが悪い。

「彼も同じ」

「何が」

「清水を抑えられるという意味で。例の、おかしな金髪頭。あれを気絶させた事も、あるらしい」 

 少し笑う舞地さん。

 小泉さんは小声で「後ろから、棒で殴ったです」と訂正している。


「それで、まだやるか」

「……分かった。今回は、貸しだ」

 しまわれる警棒とナイフ。 

 手早く私物がまとめられ、彼等はリュックを背負いバッグを手にした。

 ドアを出ていくその背中に、沢さんが声を掛ける。

「近所の学校には名雲君達が散ってるから、そのつもりで」

「ワイルドギースもフリーガーディアンも止めたって聞いたぜ」

「僕らも、色々と事情があってね。また、いずれ」

「ああ。その内な」

 すごみのある笑みを浮かべ、部屋を出ていく傭兵達。

 その拳が、胸元を軽く叩く。

 彼等に倣い、胸元を叩く林さん。

 小泉さん、舞地さん、沢さん。

 厳しい言葉を発していた清水さんも。


「何、それ」

「傭兵の挨拶」

 小声で説明してくれる舞地さん。

 そういえば、以前聞いたような記憶がある。

「お前らは」

 ドアの向こうで、笑い気味に話を振ってくる傭兵。

 私も釣られて叩こうとしたが、痛そうなので止めた。

「ごめん。この子は、叩く程の胸がない」 

 嫌な説明もしてくれる舞地さん。

 ふざけるなとばかりに、拳を胸に……。

「エヘッ」

 笑ってる訳じゃない。

 むせた。

 みんなには笑われたが。

「何者だ、お前は」

「う、うるさいわね。私はふらふらほっつき歩いてる、あなた達とは違うのよ」

 がーっと吠え、代わりにショウの胸を叩く。 

 裏拳で。

「はい、終わりっ」

「俺を叩くな」

「いいじゃない」

 2人で言い合ってると、すでに傭兵の姿は消えていた。

 残っているのは、胸の痛みのみ。

 少し意味が、違う気もするけど。



 そして部屋には、平静さが戻ってくる。

「同じ傭兵として、もう少し真面目にやって欲しいよな」

「何が」

「清水さんが、そう言いたそうだったんで。なあ、小泉君」

「ええ」

 あっさり認める小泉さんをつつき、清水さんは林さんを軽く睨んだ。

「余計な事は言わなくていい」

「はいはい。で、沢君。次は」

「勿論、雇い主へ話を聞きに行く」

「嫌な話になりそうだ」

 そう言ってる割にはのんきそうな林さん。

 他の人達も、態度にこれといった変化はない。 

 対照的に私は落ち着きが無くなり、気持が重くなってくる。

 これ先に待つ結末を予想すると。



 待機室へと戻り、頬杖を付いて欠伸をする。

 今ここにいるのは、二人だけ。

 だからという訳でもないが、普段以上にくつろげる。

「どう思う」

「なるようになるさ。嫌な事があるとしても、ここにいる限り俺達は傭兵なんだし」

「契約に従って、行動するって?真面目ね、相変わらず」

「変わってもおかしいだろ」

 彼らしい、生真面目とも言える答え。

 また、私にとっても頷ける言葉。

「帰りの準備でもしようかな」

「気が早くないか」

「契約は2週間。もうすぐよ」

「どっちにしろ俺は、リュック一つだ」

 気楽な口調と、気楽な答え。

 確かに、深刻ぶる必要はない。

 彼は、そう言いたいのかもしれない。

「絵はがきでも書こう」

「まめだな」

「もう帰るんだし、ショウも書いたら」

「そういう柄じゃない」

 即座に彼の前に絵はがきを出し、ペンを添える。

「誰に書くんだよ」

「お父さん、お母さん。友達、お世話になった先輩」

「お歳暮じゃあるまいし」

「いいから、書くの」

 私もペンを取り、宛名を書いていく。

「琵琶湖は広くて、海みたいです」

「子供みたいな事書くなって」

「じゃあ、何書けってのよ」

「鮒寿司は、酸っぱいです」

 どっちが子供だ。

 しかし、手が痛くなってきた。

 面倒だな、結構。


「おい」

「休んでるだけだって」

「慣れないからって、もう止めたって言うなよ」

 エスパー並みな指摘をするショウ。

 机に伏せてれば、誰でも分かるけど。

「別にこれ出さないからって、義理を欠いた訳でもないし」

「自分で言っといて」

「いいの。直接会って、口で言えば……」

 さすがに、そんな訳にもいかないか。

「なんか、最後になって嫌な思い出」

「どっちなんだよ」

「私は、こういうのに向いてないの」

 長くここにいたからと思ったんだけど、やはり私には無理なようだ。

 まるで、夏休みの宿題をやっている気分になってくる。

「仕方ない。まずは、サトミにでも出そうかな」

「どこに」

「あ、そうか。でも、出さないと出さないで文句言われそうだし」

「そんな訳無いだろ」 

 明るく笑うショウ。

 あの子の本質を理解してないな、おぼっちゃんは。


 「お父さん達に出して、塩田さんにも出して。私にはない?」

 ここで、ふっと微笑む。

 あごを反らして、目を細めて。

 「そうよね。私なんかに出さないわよね。ええ、分かってるわ。私?勿論出したわよ。あなたの分を、真っ先に。いいの、気を遣わなくても。ええ。そんなのを期待した、この私が馬鹿なだけだから」


 ……非常に気分が悪い。

 まだ会ってもいないし、何も言われてないのに。

 ただこの手の予想は、外れた事がない。

「仕方ない。遅れるかもしれないけど、寮に出そう」

「もう止めろよ」

「いいから。ショウも書いてね」

「え」

 しっかりと釘を差し、追加の絵はがきを渡す。 

 これは必要経費として、沢さんに申請しておこう。

 駄目なら送料は、着払いだな。



 下らない事を考え、気を紛らわす。

 この先訪れるだろう、結末を意識しないように。

 結局はやってくる、逃れられない最後を少しでも遠ざけたくて。 






 







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