第3話
ボクの家では今年のGWにイベントがありません。今年はおじぃちゃんも遊びに来ません。なにもないので、父は祝日だというのに平日通りに仕事へ出かけちゃいました。
「折角の休みに、朝早く起こさないで頂戴」
出かけた父にまだ文句を言っている母。ちょっと不機嫌です。
「夏美は、今日、どうするの? たつお君のところ、今年も御呼ばれしているの?」
「『御呼ばれ』って、なんか小学生みたいな言い方、やめて。もう中学3年なんだから」
「あら、大人でも『御呼ばれ』って使うわよ」
「あ、そう?!」
ゆっくり朝ごはんを食べていたボクを急かすようにか、母は片付けを始めました。
ボクは対抗してゆっくり食べることにしました。自分で片付けしたらいいんでしょ。そう思って、TVを見ながらゆっくりパンにジャムを塗りたくろうと思ったときです。
「夏美……」
片付けながら母が落ち着いた声でボクを呼びます。あまり聞いたことのないトーンでした。
「んー?」
ボクは生返事。
「たつお君と付き合っているの?」
母の突拍子もない問いに、ボクは左手に食パン、右手にリモコンの状態で固まってしまいました。
動きが止まったボクに母は疑問系で声をかけます。
「夏美?」
「えーーーーー! なんでーーーー?」
ボクは思いっきり母のほうを振り返りながら声を出しました。ちょっと首が痛かったです。
「あら、違うの? たつお君、結構しっかりしているし、礼儀正しいし」
母よ、どこからそんな情報を……。
「な、なんでボクと?」
「いつも一緒じゃない。たつお君なら反対しないわよ」
「……一緒なのは、のぞみちゃんもだよ」
「あら、のぞみちゃん、最近来ないわね。元気? 相変わらずカワイイ?」
「入学式で会ったばかりじゃん。相変わらず、ぽわぽわしてカワイイよ」
「夏美もずっと一緒にいるんだからもう少し似たらいいのに」
「ほっといて」
「じゃあ、たつお君は、のぞみちゃんの事が?!」
「わ、わかんない、そんなこと。まあ、そんな気はするけど、そんな素振りは見たこと無いし……。でも、たつおにはもったいないから、ボクが阻止してやるんだ」
「ふー」
母のため息。
「女の子の取り合いする様にはならないでね」
母の心配はそっちに行ってしまいました。ボクだってそんな気はないです。そう思いながら食パンにジャムを乗せました。たっぷり乗っちゃいました。
「夏美、私に似てカワイイんだから、もう少し女の子らしくしたら?!」
今日の母はよくしゃべります。ストレスがたまっている時は時々こうなります。
ボクは確かに母似のはず。……将来、母のように女らしくなれるのかな……、ボクはパンに乗せすぎたジャムをスプーンですくって食べながら考えていました。
「夏美、つっこむところあるでしょ? もう……なんか恥ずかしくなってきた」
放置。