第2話
春うらら。窓際のボクの席はぽかぽか。でも、それが逆に授業の妨げになってしまうこともしばしばです。
「なつみぃ、目が寝ているわよぉ」
前の席にのぞみちゃんが居なかったら、ボクも先生に何度も怒られていたことでしょう。
授業と授業の間の休み時間は5分。15分仮眠すると効率が上がるらしいですよ、文部省様。
「なつみぃ、よだれよだれー」
「あ、ごめん。もう眠くて。春眠暁を覚えず、よね」
「なつみぃ、それって、春は眠いって意味じゃないわよぉ?」
「え、そうなの?」
後で調べてみてね。
*
「おーい、のぞみー、なつみー」
放課後、ボクたちが帰り支度をしている時、後ろから声をかけられました。
「たつおくんだぁ」
「あ、掃除の時、怒られた人だー」
「怒られてねぇよ。ちょっと先生に声をかけられただけだよ」
「ほっほー」
「たつおくん、どうしたのー?」
たつおはちょっと言いにくそうな顔をした後、何事もなかったように話しはじめました。
「えっと、今年も端午の節句、うち来るだろ?」
「え?」
「うーん、どぅしよっかなぁ。今年のひな祭り、たつおくん、来てくれなかったしねぇ」
「だって、さすがにこの年で女のお祭りに行くのは、ちょっと、なぁ……」
たつおは、らしくなく照れているようです。ボクにはそんな顔見せたこと無いかなあ。何となく、たつおはのぞみちゃんが好きなのかな、って最近感じてます。
「そんなこと言ったら、端午の節句だって女の子は行けないじゃない。ね、のぞみちゃん」
「そうねぇ。端午の節句って男の子の健康と成長と出世を願う風習ですものねぇ」
なんとなく、ボクはのぞみちゃんをたつおから守りたくなってきました。たつおにはもったいない。うん。
「でも、『♪ちいさいひごいはこどもたち~』って、歌っているじゃないか。別に男子ためだけの風習じゃないし、……」
「……」
「……」
なんか変な空気になっちゃいました。毎年行っていたんだし、ボクは別に行きたくないわけじゃないのです。
「わかったよ。じゃあ、ボクは行ってあげるよ」
「なつみぃ、ずるーい。じゃあ、私も、行ってあげるぅ」
「な、なんか上から目線じゃね? ま、でも、よかった」
そんなGWの前の日でした。