第1話
ボクの家では特にGWにイベントがありません。いっぱい休みが連続すればたまに家族旅行に行く程度。
普通、GWの5月5日のこどもの日と言ったら何かしてくれますよね?
「夏美、なに言っているの、あんたは女の子でしょ?」
「子供の日だよ、男の子の日じゃないよ?」
「3月3日は女の子の日でしょ? だったら5月は男の子の日にしてあげないと」
そう言って母は持論を述べます。ボクも負けずに続けます。
「でも3月、なにもしてないし」
「ちらし寿司パーティしたでしょ? 雛人形はあんたがいらないって言ったんでしょう? おじいさん、ガッカリしてたよ」
共働きの両親、父はさっき出かけました。母はまだ朝食を食べている私にお構いなく片づけを始めています。
「だって、見るだけの人形なんて貰っても……」
「じゃあ、5月5日に何かしたいの?」
そう言われると今は無かったりします。昔はおっきい鯉のぼりが欲しかったかな。家には飾るところがないしね。
「ほら、早く食べ終わって」
「もう中3だよ、片付けておくから、先、行っていいよ」
そう、ボクはちょっとすねた風に言ってしまいました。
「もう。じゃあ、お願いね」
母はボクの態度にちょっとあきれた風にそう言って、台所を離れました。
*
「ね、ボクの母、おかしいでしょ?」
朝の掃除時間中に、クラスメイト3人で教室の窓辺あたりでほうき片手におしゃべりです。
「確かに4月4日はなつみの日だもんな」
こんな失礼なことを言うのは短髪の田中達雄です。
「えぇ、なんでぇ?」
ちょっとテンポの遅い台詞は遠山望です。細くてやわらかすぎて短いボクの髪の毛と違って、長くてちょっとカールしているのが可愛くてうらやましいです。
二人とも、小学校からの友達。
「ちょっと、どういうこと!」
のぞみちゃんは疑問、ボクは否定でたつおに返します。
「ちょうど間ってことだよー」
「ちぃっ、なにー」
ボクは右のコブシに力を入れます。
「こえー」
そう言ってたつおは廊下に逃げていきます。ボクとは、何かと今みたいに衝突、と言うか、怒らされている感じです。
「面白いねぇ、たつおくん」
「まあ、3月3日が『のぞみの日』、5月5日が『たつおの日』となったら、ボクは……って、わかるけどね」
「ふ~ん」
のぞみちゃんから間の抜けた返事を貰った時、廊下から先生の声が聞こえました。
「コラッ、たなか!!」
「先生、オレ、なにもしてませんよ!」
「なにもしてないから怒っとるんだ! 掃除せんか」
「あ、なるほど」
先生が正しいよ。