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将校女物語  作者: 千野梨
2/7

プロローグ2

読み飛ばし可

 悲劇を打ち破った結果、惨劇が待っていた。死が緩やかな家内制手工業から大規模な工業的大量生産に変移し、歴史上類を見ないほど溢れかえる時代が到来した。


 この国に圧政を敷いていた女帝を、市民が立ち上がり打ち倒した。女帝の支配下で数多くの子供が餓死した悲劇。そんなことはもう二度と起こらないだろうと誰もが思った。しかし、本当の地獄はここから始まった。地獄と呼ぶことすら生ぬるい惨劇であった。

 市民が自国の王制を滅ぼしたことが、周囲の王制国家に危機感を与えた。

「次は自分の番かも知れない」各国の王族がそう思うのも当然であった。決め手は女帝の夫となっていた隣国の皇太子も処刑したことだ。危機感は確信へと変わった。

 結果として、この国は周囲全ての王制国家から攻め込まれることになる。彼らにとってこの国に芽生えた市民革命は自身と国家を食いつぶすガン細胞に等しいものであった。今まで家庭の台所事情に収まっていた死が、戦争という工業的大量生産の裏付けを持つものに変わった。


 国内も国内で悲惨極まりない状況と化していた。当時、政治家、官僚ほかインテリ階級の大部分を貴族が占めていた。彼らの多くが処刑されるか、亡命してしまったのだ。この国は大量の人的資源を失った。腐敗した貴族を打ち倒すという大義名分を進めた結果、右も左もわからない素人市民が政治指揮を取ることになり、経済は混乱、餓死者はむしろ増大するという皮肉な結果となる。自由と平等、そして正義の名の下、惨劇は加速した。

 護国の軍も似たようなものであった。将校はやはり大部分が貴族であり、今彼らのほとんどは国土の外にいるか、国土の下に埋まっている。これまでは中佐までに留められていた市民兵を高級将校に取り立てたが、それでもまだまだ指揮官クラスの軍人が足りない。

 男という資源を使い果たした結果、それまでの封建制ではほとんど社会進出することのなかった女という資源に目が向いた。国家存亡の危機はありとあらゆるイデオロギーを覆す。当時はまだ数が多いといえない学のある女性に急ごしらえで将校教育を施した。

 その中のひとりがセラリスであった。彼女は戦争で全てを失い、戦争でそこそこの救済措置を施された。無論、本人はその救済をまるで喜んではいなかった。

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