第五話
~意味腐(不)生徒会~ 第五話「会長、直ぐに発見!?」
朝の淡い太陽の光が射す、駅前に…。
【ビュンッ…!】
顔に掠める弱い風が一気に強い風に、変化して2人の女の子を包み込んだ。
そっと地面に下ろされる女の子達。
「う…こ、此処が…。」
「保元駅…!?」
真っ白な建物の周りには、緑豊かな木々が沢山有る。
しかし、何か変…?
「ちょ、何あれ!」
「歪み…?」
変わらない風景に、不思議で不気味なモノが有った…。
それは、まるで空間が斬られている様で…。
「美優…近付かないで…。」
「う、うん…。」
鋭い刀で斬られた様なモノは、歪みと言われているらしい。
此処の空間の用語的な言葉は、何故か分かる…。
「この歪みを避けて探すしか無いね。」
「せやな。」
私と美優が歩き始めた時、怒りが籠った声が聞こえた。その声は、凄く怖かった…。
立ち止まっていると、声は段々と大きく成り、此方に向かって来ている。
「芙美、もしかして…!」
「う、ん…会長さんが居る…!」
声がする方に全速力で走る。
保元駅より離れた所に有る郵便局で、私は見付けた。
「あ、あの子が…会長さんっ…!?」
「やな…。」
郵便局の前に男女数人に囲まれ掛けている女の子。
何処から如何見ても…小学生低学年くらいの大きさ…。
「で、でも、急がないとっ!」
「うん!でも、どないする!?」
「えっと…えっと…。」
頭を急回転して、会長さんを助ける方法を考える。
すると、閃きが!
「こう言う場合は、通信だねっ!」
「そうやな!」
美優は、通信機に手を伸ばして、豪上院先輩と桐橋君に連絡する。
そして、直ぐに繋がり…。
「鎌倉と鈴木です!会長さんを見付けたで!」
≪場所は、保元駅西方向側の郵便局。会長様は、無事か?≫
「はい、ですが第一生徒会らしき人達に囲まれてます!」
「どないしましょう!?」
≪豪上院です。その時は、1人犠牲に成るしか有りません。≫
犠牲っ…!?そ、そんなの…絶対、美優にさせたく無い…!!
だったら、犠牲を出さない方法で会長さんを助けてやる…!!
「美優、此処に居て!」
「ふ、芙美っ!?」
私は犠牲って言う言葉に反応し、駆け出した。
そして、通信を無理矢理オフにして、美優を残した。
後ろで私の名前を叫び続ける美優を無視しながら、必死に走って行く。
会長さんを囲んでいる第一生徒会に突っ込んで、私は女の子を抱き抱える。
「会長さん、じゃなくて会長様、私は鈴木芙美です。助けに来ました。」
「…!」
びっくりした顔に私は、安心付ける様に笑顔で振舞う。
ゆっくりしてる暇は無く、小さな隙間を見付け、其処に目掛けて走り、美優の所へ行く。
「馬鹿かいっ!心配させよって!はよ、行くでっ!」
「う、うんっ!」
走りながら、私は通信をオンにして、美優と豪上院先輩の通信に入る。
「会長様を助けました!此の侭、瞬間移動して戻ります。良いですか?」
≪鈴木さんですね、無事で何よりです。身勝手な行動の件については、会長様が帰って………≫
「は、はい…分かりました…。」
「それより、指示を!」
美優は、私を見て口パクで『一応、逃げる事を考えな』と動かす。
会長さんを抱えていて、両手は無理なので片手で謝りポーズ。
美優は、ニコッと笑い前を向く。
通信側の豪上院先輩から溜め息らしき物が聞こえ、話が進む。
≪瞬間移動は駄目です。其処は、空間の歪みが有り、万が一別の空間に移動されたら助かりません。≫
「なら、如何したら良いですか?」
「走り回るしか…。」
「そんなの体力の限界で疲れてしまうわ!」
≪保元駅付近から離れて下さい。保元駅北東方向側に、バス停が有ります。≫
「バスに乗り込んで、危機を逃れって事ですか?」
≪そうです。≫
《了解しました!》
通信が途切れ、走りに集中する。
すると、会長さんが声を出した。
「芙美と美優だな?」
名前を言われて、私と美優は肩をビクつかせた。
『はい』と答えると、会長さんは少し暗い声で言う。
「そうか…。すまないな…。私のせいで…。」
声は幼いのに…此処に来る前の声と全く違う…。何で…?
「いえ、会長様のせいでは有りません。」
「そうです。会長様は、悪くないです。」
「すまない…本当に…。ありがとう…。」
声も身体も震えていた…。
私は、ギュッと優しく抱き締める…。
会長さんは、自分より他人を思う子なんだ…。
「それにしても、此れ…前、進んどる?」
「え?だって、足動いてるし…。」
感動的な空気が美優の一言で、掻き消された。
確かに、足は動いてるのに…前に行っている感覚が無い…。
「其れに、少しずつ…足が重くなってんねんなー…。」
「うん…重い…。」
下半身が可笑しいくらいに重く、上半身が逆に軽い…。
気持ち悪い…。
「此れは、気の歪みが影響してる。」
会長さんが、落ち着いて言う。
何でも、気の境目と言うのが有るみたい。
地区が変わる所では必ず、気の境目いわゆる歪みが発生する。
「こ、此れ…いつまで、続く、んですか…?」
進むつれ下半身の重みが倍に成って、苦しい…。
特に…足が、やばい…。
「あそこまでだ。」
《え…!?》
会長さんが指差した所は、少し距離が有る旅館前の電柱だった。
走ったら、直ぐに着く所が…今では、走っているのに、何分も掛かる所だ…。
「か、会長様は、苦しくない、ん、ですか?」
スイスイと言葉を発している会長さんが、羨ましい。
美優も物凄い顔をして、前に進もうとしている。
「此処の空間は、全生徒会の会長が支えている物だからな。」
「そ、うです、か…。」
聞くのが辛くなってきた…。
出来るだけ早く、前に行きたいんだけど…き、つ、いぃぃぃ…。
「ふ、芙美っ!」
「えっ!?」
私より前に居た美優が、振り返って叫ぶ。
すると、私の肩が捉まれた。
「きゃっ…!」
身体を小さくして、震わす。
会長さんを隠しながら、警戒する。
「瑠璃…なのか…?」
「へ…?」
優しい声が聞こえ、私はゆっくり振り向く。
背が高く、眼鏡を掛けて、見た的には賢い感じがする。
“芙美っ!コイツから逃げろっ!”
頭の奥に響く、怒りが籠った声。
咄嗟に会長さんを見ると、前に向いた侭だった…。
しかし、豪上院先輩と桐橋君の言葉を思い出す…。
『第二生徒会しか、会長様の声を聞いた事が有りません。それに、会長様には特別な力が有ります。』
『此処では言えないが、近い内に会長様直々に、お前等に言うと思う。』
『会長様の声と力は、第一生徒会の会長様が欲しがっていますからね…。』
『会長様の声を聞いて、そして空間までも飛んだお前等は、完全に標的って訳だ。』
そうだった…。
会長さんは、声を出したら駄目なんだ…。
(私も美優も狙われてる…。この人は、敵…。)
私は再び、男の子を見て、声を出す。
「私は、貴方の知ってる人じゃないです。私は…鈴木芙美、です…。」
男の子の顔は見る見る内に、笑顔に成っていく。
そして、何故か涙を出された。その涙は…嬉しさで流したのか…?