成金義賊
豪奢な邸宅の朝
コツコツと当主カーセルの
無駄に装飾の多いブーツの音が響く
メインダイニングの扉が開く
朝食を温め直し
盛り付けているメイドのシュスリン
「おはよう爽やかな朝だなシュスリン」
白い歯を見せて微笑むカーセル
「…もう10時を回っております
重ねてお起こししたのですが」
ポーチドエッグにオランデーズソースを
掛けているシュスリン
「やぁそうだったか
すまないな
どうしたのかまるで世のため
人のために夜中に活動して
起きれなかったみたいな心地だ」
カーセルは手元の新聞を
わざとらしく広げる
「何て事だシュスリン
このところ町を騒がしている
義賊が大活躍じゃないか
こう、胸が熱くならないか?」
どこです?
とシュスリンが新聞記事を
覗き込むと
ほらここだ、この漬け物石譲りますの
横に書いてあるじゃないか
と指を差すカーセル
「義賊活躍子供笑う」
声に出して読むシュスリン
「…記事というより
市民が新聞に載せた一文のような?」
「仕方ないだろう
たまたまその欄しか取れなかった
…いや、明日を担う子供らの為
悪名高い成金から金を奪い
孤児院に寄付とは流石だな~」
チラチラとシュスリンを見るカーセル
「…カーセル様も一代で財を築き
巷では成金の分類入っていると
思われます」
エッグベネディクトをサーブする
シュスリン
「何を言うか私は全うに商売し
金を稼いでいる正統派成金だっ」
「口元にソースが付いております」
…ん、と顎を上げシュスリンに
ソースを拭き取って貰いご満悦なカーセル
義賊っぽい衣装や仮面を
あからさまに放置するカーセル
其れを片付けるシュスリン
柱の陰から眺め
(シュスリンは私が義賊だと
気付いてしまったのではないか?
惚れてしまったかも知れない)
ワクワク、ソワソワしているカーセル
当主は何の遊びを始めたのだろうか?
と思ってるシュスリン
好みのタイプを聞かれ
世のため人のために尽力出来る方と
言った事をカーセルなりの解釈で
体現されているとは露知らず
元来運動が苦手なカーセルが
夜中にアワアワしながら
屋根を伝い自身の商売の儲けを
困ってる者達に配り歩いている
のは知ってるシュスリン
何故ならその後ろから
着いて周り不審者ではありませんと
丁寧にフォローしているのは
他ならぬシュスリンだから
純粋な方ではあるのですよね
もう少しお時間を考えて下さると
良いのですけれど
小さな欠伸をするシュスリン
欠伸も可愛いらしいと
柱の陰から身悶えるカーセル
邸宅の外には御礼の手紙をしたためた
子供達が笑顔で呼び鈴を鳴らそうとしていた




