第4話 エチケット袋もチャラいおせっかい??
今回は“田中さん目線”です。
集合場所にはもう和田くんが居た。
「えっと!これ!」
和田くんから……
目の前にグイっ!と突き付けられたのはどこかのショップの可愛い紙袋だ。
「何? 似合わないものを持って……」
「ウチのねーちゃんが『クラス委員の相方さんに』って」
私はその言葉にほんのちょっぴり『ゲッ!』となる。
頭の中で……
和田くんに『なんでやねん!』とツッコミを入れる自分の姿が浮かんでしまったからだ。
「いやいや勘弁して! アンタと漫才やんないから」
「あったりまえじゃん! なにボケてんの?」
「あっ! ツッコんだ!! そういうノリやめてよね!!」
和田くんは
『はあ~っ??』って顔をしたが、あくまでもいけないのはカレのほうなのだ。
断じて私ではない!!
自問自答する私に和田くんは余計な事を言う。
「……紙袋持って、何、胸張ってるの??」
「またあ!!」
カチン!と来た私は和田の野郎の手の甲をパンっ!とはたく。
「くだらないこと言ってないで、さっさと説明してよ!!」
「いや、説明も何も……何が入っているかオレ知らんし……ねーちゃんから『中身見るな』って言われてるから……結構 角っぽいから……BL本とか??」
「和田!! てめえいい加減しろよ!! 人の趣味チャカすな!!」
ともう一度腕を振り下ろしたが、
和田の野郎!!ヒラリと身をかわして
腕は虚しく空を切った。
「じゃ、そういう事で!ヨロシク!!」
逃げられた!!
相変らずチャラいヤツだ!
で、和田が残していった紙袋……
口を閉じている可愛いシールを剥がして開けてみると
手紙……私宛??と……
薬……酔い止め、止瀉薬、便秘薬……痛み止めなんか4種類もあるし……
あ、エチケット袋だ。
こっちのチャック袋は……シュシュだ!可愛い!!
ん?これは……“サニタリー”??
和田くんのお姉さんは私たちのセンパイで今は生徒会の役員さん……去年はクラス委員やっていたって、カレ言ってたな……
私は小さな封筒に入っていた手紙を広げた。
◇◇◇◇◇◇
和田くんに頼まれてバスに戻ると、力なくうなだれていた揣摩さんが顔を上げた。
「田中さん……?」
疑問形で『タナカ』って呼ばれるとますます“ニガテ”な感じになるのだけど、今はそうも言っていられない。
「気分悪いの?」
「ん……そうじゃなくて……」
言い掛けた揣摩さんの目から涙がポロリと零れる。
「……今日、かなり重くて……ここまでとは……思わなかったのに……」
ありがとうお姉さま
感謝です。
さっそく使わせてもらいます。
私は荷物棚から“お姉さまの紙袋”を引き下ろして揣摩さんの前に“痛み止め”を並べた。
「頭痛がある場合がこっちで……吐き気を伴う場合はそっちみたい」
薬を飲んで少しは落ち着くかと思ったのに揣摩さんは涙ぐんで顔を覆ったので……そんなに辛いのかと私の心も痛んだ。
「これ使って」
まず“お姉さまの紙袋”から使い捨てカイロを出して渡した。
「足りないようだったら和田くんに電話して買いに行かせるから」
そう言うと揣摩さんは顔を抑えたまま頭を振った。
その様子に違和感があったので思い切って聞いてみた。
「ひょっとして……和田くんと何かあった?」
すると揣摩さんはもっと激しく頭を振ったので……私は確信した。
「和田のヤツ!! チャラさの度が過ぎて揣摩さんにセクハラまがいの発言をしたに違いない!! アイツのお姉さまには感謝だけど……アイツは成敗せねば!!!」
で、私は猟犬のように和田を探し始めたのだった。
◇◇◇◇◇◇
早とちりで和田くんを蹴とばしてしまった。
でもやっぱりアイツがいけないんだ。
だってその後、
やっぱりチャラい事言って
私のスカート覗いた!!
ちくしょう!
ハーパン履いときゃ良かった。
でも上履きでぶっ叩き過ぎたかなあ……背中に靴跡付けちゃったし……
靴跡が付くって事は……汚れてたんだよね上履き……それでパコパコ叩いちゃった。
ああバカバカしい!! 和田くんって何よ? ただ、クラス委員の相方ってだけじゃん! 友達でもないしさ! そう言えば……和田くんの名前を出した時……揣摩さんの反応、何かヘンだった……
ひょっとして
揣摩さん……
アイツの事……
う~ん
そういう事か!
一日中、和田くんを見ていられるから無理にでもオリエンテーション旅行に行きたかったんだ……
そうまでして好きな人を見ていたいなんて……
すごいなあ
私には到底ムリね
“リヴァイ様”が降臨でもしない限り、そんな事できないわ。
もちろん和田ごときには……
あり得ん!!
でも……お姉さまはヤツよりはるかに気が利く人だなあ うん今日は本当に助かった。
私は枕元に置いたままの“お姉さまの紙袋”から手紙を取り出し、スマホのライトで読み直した。
。。。。
田中千景 様
弟の芳政からあなたがクラス委員になったいきさつをを聞きました。
あんなふうに立候補する心意気、私は好きです。
でも、実際なって見ると……クラス委員は色々と煩わしい事も多いでしょう? 芳政は……きっと足を引っ張るだけの存在だろうし……
なので、私から……心ばかりの支援グッズを贈らせていただきます。
この中の物たちは……オリエンテーション旅行の時、私が持って行って役立った物と……あれば良かったのにと思った物を集めました。
旅行中、クラスの誰かが困っている時に……先生より先に、そしてスマートに……困りごとの解決の手助けをしてあげれば……
あなたの信任はきっとうなぎ上り!!(^O^)/
これからの1年がきっと楽になります(^_-)-☆
まあ、こんなものは使わずに済むのが一番だし……あなたも色々準備しているかもしれないし……要らないようでしたら芳政に返し下さい。
でもシュシュは……可愛いけど“校則は”キッチリとクリアしているから…あなたが使えるようでしたら使ってあげて下さい。
p.s. 面倒を掛けて申し訳ないのですが…芳政の事、指導してやって下さい。 アイツ意外と頑丈だから……ぶっ叩いて力仕事でもなんでもやらせて下さい(*^^)v
。。。。
そう言えば……お姉さまは、なんで私の名前知ってたんだろう…
和田くん経由から??
という事は……
和田くんは私の名前知っていたんだ。
私、和田くんの名前知らないって言ってしまった。
悪いことしたなあ~
まあ、いいか
どうせ“チャラ男”だし……
でも、羨ましいかも……
私は一人っ子だから……
こんなお姉さんが居るカレが
やっぱり羨ましい。
私もこんなお姉さんが欲しい……
あっ!
和田くんと結婚したら
そうなるんだ……
ここまで考えて……私はお昼間の……あの“揣摩さん”以上にブンブンと頭を振った。
無い無い無い!!!
あり得ない!!!
死んでも
無い!!!!
バフッ!と布団を被ったが
なんだかドキドキして……
布団蒸しになっちゃうし……
頭をモゾモゾ出して
慣れない部屋の天井を眺めた。