第20話 ああ!! もう!! 田中さん……もとい!千景は……
朝、田中さんが職員室に居るのを見掛けて、実は凄く気掛かりだった。
昨日オレがひまわりの花束を渡した事が原因だったらどうしよう……
メッセで聞く内容でも無いから……
田中さん宛のメッセでは、ランチを一緒する約束だけを取り付けて、まんじりともせずに昼休みを待った。
で、昼休み。
屋上のベンチで待っていると田中さんは上機嫌でやって来た。
その温度にオレは取り敢えずホッ!とする。
「和田くんがお昼誘ってくれる予感がしたんだよね~! ジャジャーン!! 手作りのお弁当!! 和田くんの分だよ! 」
「ええっ?! 」
「購買のパンなんか後でおやつにすればいいじゃん! さっ! 食べよ! 食べよ! 」
ランチボックスの蓋を開けてみると、綺麗な色のだし巻き卵が目に飛び込んで来た! ほかにも……ミニハンバーグやタコさんウィンナーやアスパラのゴマあえやプチトマトが色鮮やかに、しかも整然と並んでいる!
「美味しそう!! 」
「ありがと! ま、冷食が多いんだけど……だし巻き卵は私の自慢の一品だよ」
「凄いよ! 朝から大変だったでしょ?! 」
「アハハハ !別に大丈夫だよ! 今朝は早起きしたから」
この言葉にオレの心にまた一抹の不安が……
「そう言えば……今朝、職員室に居るのを見掛けたけど……」
「そうそう!! その事で和田くんに報告があるんだ! 」
「まさか! 昨日の件で怒られたとか?? 」
「うふふふ! 和田くんの素敵なプレゼントの件は先生方も知ってたよ! だから話も早かったんだけど……」
「やっぱ何かあったの?! 」
「うん! とってもいい事!! 私、来年は和田くんと同じクラスになるよ! これ決定事項ね!! 」
「ええええ???!!! だって、田中さんは文系だろ?! 」
「そうだよ! 文系だった! でも私は……『文系』『理系』のどっちでも良かったんだよね」
「なんで??!! 」
「和田くんに言わなかったのはホントに申し訳なかったんだけど……私、大学へは行かないんだ! 」
「行かないって! どうするの?? 」
「うん! メイクアップアーティストの専門学校を出て、ゆくゆくは詩音さんの弟子になるの! 」
「うええええ!!! それは凄い!! 」
「ありがと! もちろん両親の許可は取ってあるけど……和田くんに言ってなくて本当にごめんなさい!」こう言って田中さんは深々と頭を下げたのでオレは慌てて言葉を継いだ。
「そんなの謝らなくていいよ! オレは田中さんが自分の進路をしっかり決めているのが嬉しい! 」
「私と一緒のクラスになれるのは? 」
「もちろん嬉しいよ!! 本当にありがとう!! 」と今度はオレが頭を下げる。
「えへへへへ…… 頭を下げられるのは照れますね~ けどね! 和田くん! ひとつクレームがあるの! 」
「えっ?! 何??!! 」とオレは恐れおののく。
「和田くんさぁ~私の事、また『田中さん』って呼んでるでしょ?! 」
「あっ!! 」
「あのさあ! 私たちはもうしっかり恋人同士なんだから!! ちゃんと“千景”って呼んでよね! 」
「ハイ! 」
「来月から同じクラスでまた頑張ろうね! 」
「おう! 千・景も……メイクアップアーティストに向けて頑張って! 」
「もちろん! バッチリ手に職付けて……和田くんに何かあっても養ってあげられる様にするよ」
「えっ?! それってプロポ……」
言い掛けたオレの口にヒマワリ色のだし巻き卵が放り込まれた。
「まずはだし巻き卵で養ってあげよう! 」
ウィンクしてクスクス笑う愛しい千景がそこに居た。
次話へ続く




