第18話 ホワイトデーにひまわりを
ヤバくなって来た。
クラス替えで和田くんとは離れ離れになり、もうすぐ1年が経とうとしている。
和田くん、今は揣摩さんとクラス委員やってて……『おしどり夫婦』なんて言われている。
揣摩さんは去年のバレンタインデーにハート型のチョコサンドクッキーを和田くんに贈って告り、断られたのだけど……今年はチョコマカロンを作って再チャレンジし、その手作りのレベルの高さに仰天した美珠帆姉様が心配して私にその事を教えてくれた。
「カノジョ、芳政の事ホンキよ!! 」って
頭の中の半分は“腐女子のお花”がポンヤリと咲いている私は、「まずいなあ~」と思ってはいたのだけど、何の対策も打たないでいた。
そして今日は3月14日!!
3限の授業中に揣摩さんから『和田くんからもらった♡手作り! 』と勝ち誇った様なメッセが来た。
添えられた画像は可愛い箱に収まったチョコマカロン……
美珠帆姉様に手伝ってもらったとしても、バレンタインデーに彼女からもらった物と同じ手作りのチョコマカロンをお返しするなんて、不慣れな和田くんにとってどの位大変だったのか……
和田くん、私には何も言ってくれなかった……
そりゃ言えるはず無いよね。
私なんて……推しイベントとコス衣装作りで予算も時間も無かったから、バレンタインは“義理チョコ”レベルの物しかあげなかったし……
私達……
いや、私が……
もうダメなのかなあ……
『ここチェック、目を通しておけよ! 』って先生の声が『チェックメイト! 』って聞こえてしまう……
思えばいつも
和田くんは優しかった。
チャラくみえて
凄く誠実だった。
なのに私は“腐女子”のスタンスを固持したままで……
呆れられて当然だよね。
雨模様の顔を皆には見られたくないから……お昼休みは、独り屋上でサンドイッチを齧った。
今日は風もなく温かだ。
でも……
『春まだ遠からじ』だなあ……
見上げる青空が眩しくて
涙が一筋こぼれた。
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『青空に一人佇む雨女』
田中“腐女子”千景 作
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自虐の川柳を詠み、ため息をついて視線を落とすと……屋上の際の手すりが見えた。
なんとなく引き寄せられて手を掛けてみる。
私は……恋に恋する“腐女子”だけど……恋破れて身を投げるなんて柄じゃない。
枯れた笑いで遠くに目をやると国道から可愛らしいワンボックスカーが校門へ向かって来る。
あれれ、学校に用事? ……花屋??
ああ、きっと入学式とかに飾る花束の打ち合わせなんだ……
と、ガタン! と屋上の鉄の扉を開ける音が響いた。
「居た!!」
声の主は和田くんの親友の桜井くん??
「ちょっと来て! 」
グイッ! と手を引っ張られ
『えっ?! えっ?! 今日ホワイトデーだし、和田くんの親友の桜井くんから告られたらどうしよう??!! 』
と手を引っ張られながら考えている図々しい私は……救いがたいヤツだ!
桜井くんに連れて行かれた先には……この時期には珍しいひまわりを一輪持った和田くんが立っていた。
私はその前に据え置かれる。
どういう事だろう……ポツポツとギャラリーが集まり始めて
私はまるで、これから叱られる生徒みたいだ。
「オレ、チャラいからさ! チャラい事言うよ! 一輪のひまわりの花言葉は……一目惚! 」
そう言って和田くんは私のブレザーのポケットにリボンの付いた一輪のひまわりを差した。
「あ~!! 乙女の胸に勝手に触った!! 」
心とは裏腹の私の憎まれ口を背に、和田くんは目隠しの布が掛かった籠に歩み寄り、ファサッ! と布を取った。
その瞬間、私の目に飛び込んだのは籠から溢れんばかりに咲き乱れるひまわり!!
「そして99本のひまわりの花言葉は……永遠の愛!! 」
とても重くて……
和田くんに支えてもらいながら持つ99本のひまわりの花束……
いつの間にかギャラリーは鈴なりになっていて拍手や歓声が飛び交う中
私は号泣して
和田くんのほっぺにキスしてた。
こうして“腐女子”は……
生まれて初めて
ヒロインになった。
次話へ続く




