第2話 チャラいおせっかい
今回は“田中さん目線”です。
「この人と組むのはイヤだなあ」
学級委員の立候補で手を挙げた時、不意にそう思った。
“そいつ”は誰かから推薦されていたから……
マッシュショートに校則で禁止のはずのパーマ(これは、くせっ毛なんだと随分後になってからカレに教えてもらったのだけど)、あと『じゃね?』を連発するチャラいヤツというのが“そいつ”の印象。
いるんだよね、“厨房”の時は地虫なのに、いきなり高校デビューを目論むヤツ!
めちゃイタイ。潔さのカケラもない。
だから私らは誤解され、見下されるんだ。高校生になったって厨二病で何が悪い。
まあ人が何をしようと自由だから余りは言えないけどさあ……
うん、やっぱり私は潔くないのがキライなんだ。
それからするとこのクラス!! もったりと覇気がないと言うか……それが歯痒くて!!
私、学級委員に立候補なんて想定外な事、しちゃったんだけさ。それこそ“高校デビュー”なんてする気、さらさら無いのに!
それをこのチャラ男が!!
『―ん、なんかさ、田中さん自身も今、“いつも的”な感じじゃないじゃん。オレもさ、学級委員って柄じゃないし、考えもしなかったんだけど、期待されるとやってみようかなって気分になる。そしたらさ、みんなも手を貸そうかなって雰囲気になんじゃね?』
なんて分かったような事を言うからさぁ
「ああそうですよ!アンタらが情けないからだ!」って言葉が喉から出そうになってたんだけど……
和田のヤツ、何だかニコニコしちゃってさ、クラスの雰囲気も彼になびいているから……
ここはガマンしよう!!と
“言葉”をゴクリ!と飲み込んだんだ。
でもなんだかなぁ
なんだか モヤモヤ悔しいのよ!!
◇◇◇◇◇◇
『田中さん』 『た~なかさん』 『た!なかさ~ん!』
ヤツは私の事、一日中呼び付ける。
私はネコかあ??
ただでさえ『たなか』っていう音の響きが私、苦手なのに
いちいちイントネーションとか変えて来るし……
今も
『たなかさん』って!!
漫才イントネーション??!!
「なにっ!!?」って言葉をぶっ刺すように投げ付けてやったら、ようやく引いたけど……
人をおちょくるのもいい加減にして欲しい!!
あれ?
ちょっとぉ~
そんなにシュンとした顔しないでよ……
こっちが罪悪感っぽくなっちゃうじゃん!
だったら中途半端にチャラくしないでよぉ~
やりづらいなあ!!
◇◇◇◇◇◇
でもまあ、カレ、学級委員としての仕事はマジメにやってると思う。
あと、チャラチャラしながらも何となく皆の調整役をやってる。
たぶんそれらはクラスの雰囲気が良くなって来ている事に繋がっていると思う。
だから
悪いヤツでは無いよね。
スパイラルマッシュショートのアタマの中はお花でも咲いているかと思ったら、結構しっかり勉強もしているし……
きっとあれだね、それは友達の影響
あの『ガリ勉桜井』が同中のツレって言ってたし……
そう
だからカレとやる学級委員の仕事は
苦ではないんだ。
◇◇◇◇◇◇
「よいしょ!!」
盛大な掛け声で両手に紙袋を提げた。
うわっ!!
ノートって重い
手提げヒモが食い込む指より、紙袋の方が破れてしまわないかと心配だ。
手間取りながらガラガラとドア開け廊下に出たら、後ろから聞き慣れた声がしたんだ。
「手伝うよ!田中さん!」って
振り向いて見た和田くんは、頭と体操着にグランドの砂がきなこのように振りまかれていて、ちょっとオトコの子している。
へへ、渡りに船じゃん!
いつもネコのように呼び付けられている(って思っていたのだけどね、この当時は)から猫の手以上の働きをさせてやろうと、カレに紙袋を二つとも持たせちゃった。
あ~楽ちん♪楽ちん♪
「なんで全部、オレが持つの?」ってカレが言うから
「私が女の子だからだヨ」と返してあげた。
スケベな和田くん!
言葉だけでなく、逞しさでも
女の子に頼られるようになりなさい!
私が鍛えてあげるから
ほら! そんなにノロノロ歩かない!!
ガンバ!
和田くん!