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4日目-①

「ここは何!?」

「ここは俺の馴染みの服屋なんだが。なんでも、新しい女性服のモデルを探してるそうなんだよ」

 やってくれるかい、と青緑色の瞳を見下ろした。彼女は少し考えるようなポーズを取っている。

「…まあ、貴方の頼みですもの。しょうがないわ。やってあ……ん…ん……やりますわよ……?」

「やってくれるのかい?」

「……どこかに張り出されるの?」

「いいや。カタログ用」

「…カタログ?」

「…服なんて事前に作っとく訳にもいかねえから、こういう服が作れますよって写真の載った本を店に置いとくんだよ。そこから客に服を選んでもらって、作って、金をもらって服を渡す。それ用の写真だな」

「…そういえば。服を買ったこと、一度だけあるわ」

「そうかい」

「確かにそんな本があったわ」

 15ならそのくらいかもなあ……買い物経験なんぞ……。

「私でいいの?」

「それをこれから聞いてみるんだ。おーいキャシー!モデル候補の子連れて来たぞー!」

「はいはーい!少々お待ちを…」

 金髪ツインテールのキャシーが店の奥から飛び出してきた。

「お顔見せてね」

「!」

 おお。フードを跳ね飛ばした。欠片も容赦がない。

「…ケープ脱げる?ちょっとサイズは合わないかもだけど試作品があるから。それ着てみようか」

「おい。いいのか悪いのかってところを……」

 ああもう連れて行かれた……手が早いというかある種の職人気質というか……美術家気質という方が近いのか……

 …そういうところが……良いんだよなあ……。

「何ちゃん?何ちゃん?シルフィーちゃん。うん良い感じ。髪少し梳かそうか。ついでに少しまとめて…うん!そう!良い良い!とっても美人さん…サイズは少し小さいね。直そう。採寸するからそこのメジャー取ってくれる?」


「うん満足!大正解!それじゃあちょっと見てもらえる?」

「モデルとしてあの子でよかったのか?」

「うん。綺麗な子。体型も標準だし。バッチグー!問題なし!」

 ハンドサインを掲げられる。やっとか……。

「それじゃああの子連れて、2番通りの写真屋さんに向かってくれる?私の店の写真撮って!って言ったらわかってくれるから。馴染みだから。私その間に他の新作の手直ししてるから……」

「おい勝手にどっか行くな!」

「はいシルフィーちゃん。このお洋服のままあのオジサンについていってね。くれぐれも出来るだけお洋服を汚さないようにね」

「わかったわ」

「おじさ……」

 世の30代が泣くぞ俺のことをオジサンなんて言ったら。俺20だぞ。

「貴方ってそんな年齢が上だったかしら」

 シルフィーが店の奥から出てきた。

 襟付きのノースリーブのワンピース。金の髪は腰ほどまであったらしい。威圧するようなふくれっつらの表情。スカートの丈はだいぶ短い。膝の上ほどまでしかない。白い肌が全面に露出されている……

 ……それを、しばし、シルフィーであると認識できなかったが。それこそが、恐らく、いや確実に、本来の、シルフィーなのだ。

 腕を組んで肩幅程度まで存分に足を開いて立っている。そういう性格なのだろう。青緑色の瞳がぴかぴかと光っている。

「あなたについていけばいいのね?」

「……そうなるな」

「わかったわ。……行かないの?」

「…いや。」

 行こうか、と店の扉を開いた。少し何故か不満そうな顔をしながら、シルフィーは店の扉の敷居をくぐる。

 よく見ると頭の後ろに三つ編みがされていた。元々だろうか?いやそういう性格ではなさそうだな……

 あんなことは本人は出来なさそうだ(本人に言うと怒るかもしれないが)、キャシーがやったのだろう。恐らく。

 シルフィーは店の前ですぐ止まる。

 二度は言わんぞとでも言いたげにむすっとした面でこちらが扉を通るのをじっと待っていた。わかりましたわかりました。

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