3日目-③
「それほどの人なら、ちゃんと対価を払うべきなんじゃないかって思うの」
あっ変わってた。
「付き合わせているのが申し訳ないわ。一人で行ける!」
「駄目です」
「いーっ」
後衛職として雇ってくれるところを……探そうかとも思ったがこんな研究家肌唯我独尊をどこかに……?どこぞに預け……?
…その方が迷惑じゃないか?
……謎が多いこの少女を、どうしてやったらいいものか未だに悩んでいる。とりあえず放逐したら危険そうなので構っているが。どうしたらいいものか。
「あ。夕方」
日が暮れかかっている。彼女が出たがったので持ち上げていたところをそっと地面の上に下ろした。大人しい猫の扱いだなあこれは……。
「……帰るわ」
帰るのかい。彼女は踵を返す。
「おうちに帰るのかい」
「ええ」
「お家はどこに?」
「……」
彼女が門番にギルドカードを見せる。内緒、だろうか。
「言ってもなんにもしねえよ」
「…………………ダメ」
「……」
頭の後ろで手を組む。
「信頼されてねえかい?俺は」
「ええ」
「…わたし、貴方と一緒にいるの、楽しいわ。貴方と一緒にいるのに、お金が必要なら…わたし、頑張って、…できるだけ、用意してみようと思う」
「要らねえよ」
「…そうなの?」
「……別に金になんか困っちゃいねえ」
「……どっちなの?」
くすくすと彼女が笑う。
「じゃあ、そうだな。一つ、お願い事を。アンタに」
「……わかったわ。なあに?」
「来週までに考えとくよ」
くすくすしている。むん!とした。
「私!出来るだけのことはするわ!」
「……」
頭を撫でたくなる。撫でる。そういう生き物だなあ……。
「他ではあんまり言わないようにな」
「はあい」
「本来誰かに頼み事をするときはな。ちゃんとそれ相応のお金を持ってくるんだぞ。まあ一概には言えねえけど……」
……?
どういう表情だ?それは……うわっこの子美女だな……美少女だな……
将来はどえらい美人に育つぞこれは……
…説教くさいだろうか?こんなんだからお兄ちゃんめんどうくさいと言われるのかもしれ…いや……
はっとした表情をして、撫でていた手を持ち上げられる。…呆けていたのか?
「今日はありがとう。それじゃあ…また来週。」
「…ああ。」
胸元で小さく手を振られる。彼女は去っていった。
きっとどこに住んでいるのかも、恐らく、教えてはもらえないのだ。教えてもらえていなかった気がする。
……来週。
何をしてもらおうか。