3日目-①
「あら。今日は早いのね」
「…また2時間待たれちゃたまんねえんだよ……」
15分前に着いたがめちゃくちゃ頑張って起きた。いつも大抵昼過ぎまで寝ていられるというのに——
「それじゃあ。早く魔法の練習——」
「待て」
あからさまに嫌そうな顔をするな。不貞腐れるな。腕を組むな。
「早く来てもらったんだから沢山魔法の練習が出来るって思わない?」
「思わねえ」
「……」
まあ貴方はそれはそうね……という顔をしている。椅子に座って脚を組んで膝の上で頬杖を付いている。
「何をしてほしいの?」
あからさまに早くしてくれという態度。う〜〜んここで言ったら何でもしてくれるのだろうか…いやそんな事は無いだろうな……二度と顔見せてもらえないんだろうな……。
「まあちょっと。素性が聞きたいんだよ」
「…………」
「どこに住んでるんだい?」
「………………内緒」
「……じゃあ、年齢。年はいくつだい」
「15歳。あなたは?」
「20。名前はシルフィーだったよな。苗字は?」
「……………………」
「………………」
視線が痛い。怪しまれている……。ナンパおじさんか王国警備隊の声掛けにでも思われたのだろうか……。
まあ大体正解といえば正解だが……。
「安心しな。とっ捕まえたりはしねえよ。別にそれくらいの年のやつこの辺でうろうろしてても全然おかしかねえ」
「……貴方は、よく喋るのね」
言葉のキレが凄まじい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
と……特徴を述べただけか……?それとも完全な皮に……
「どうしてそんなに口が回るのかしら」
暴言だなこれ!?!?!?!?!?!?
嫌そうにしている。いやそりゃ……今……ウン……魔法実験のおあずけを確かに食らわせているのだろうけど……。
1.暴言に耐えて情報を聞く。
2.実験に戻させる。
……このどちらか………………………………
「もういい?」
「はい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
やったあ!という顔をしているやったあという顔をするんじゃない。失礼だぞ…気付いているのかハッと頬を叩いて平常に戻した。
「ありがとう!」
俺はもういいに……耐えられなかった……。
……試合してるときはご機嫌なんだけどなあ……。
るん♪るん♪としている。スキップしてるじゃないか。
「ねえ。貴方がいたらまた城門の外に連れて行ってもらえる?」
……色々語弊があるぞ?まずシルフィーは既に冒険者なわけで自由に街の外にでも……いや……あれを1人で放り出すのはやはり危険……
つまり結局そうなれば俺が連れて行くとかついていくとかそういうことに……エッ……それすら見越して……!?
…この少女案外かしこいのかもしれない。かしこいのかもしれない……とは思ったのによたよた歩く赤ちゃんのようにしか見えない。不思議なものである。
「……まあ。危険だよ。よしといた方がいい」
「街の外が一番結界の影響を受けないって聞いたの!!!!!!!!具体的には街の中の結界解除区域が魔力制限0.2%程度に対し街の外は完全に0%なの!!!!!行きたい!行きたい〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!」
やっぱりかしこいなこの生き物!?!?!?!?
「貴方今日空いてる!?!?!?!?」
「落ち着け」
「落ち着けない……今行きましょう。すぐ行きましょう」
ああ……もう……ついて行くしかないじゃないか………………
「…いいかい。これが自衛手段だ」
手持ちナイフを渡す。
「魔術師は近接になると弱い。一個だけでもこういうのを……」
「私こういうのって持たされたことがないの。持ったことがなくて」
「…どうして?」
「自分の手や指を切りそうに見えるんですって」
…………………………………………
……………………取り上げた。
懐に入れていても胸元を怪我しそうだこいつは。
「……俺がついて行きます」
やった!という顔。
「貴方がいればとっても安心ね!」
……………………………………まあ…。
一応。これでもAランクですから。まあ……………………………………
…まあ………………………………………………………………………………………
……悪くない。