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シルフィー様は魔法実験がお好き

「魔法実験を行うわ!」

 いきいきとしている。

「こんなに器具揃えて。どこから持ってきたんですか」

「買ったわ。私のお小遣いよ」

 ……

 俺の感想は、まあ片付ける場所が大変そうだ、というくらいに留めておこう。

 というかこれリビングに置いて。どこに片付ける気だ?

 俺が片付けるのか?

「この前授業で魔法薬やポーションの基礎を学んだの。回復効果があるものがポーションで、基礎的なものなら作り方も学んで実験して材料もここにあるし作れるから……」

「これから作ると」

「そう!ポーションは微小魔力をそのまま込めてあるものが多くて、たとえば一番基礎的なマジックポーションは専用の器具により微小魔力を専用の液体の中に注入するのだけれどこの専用の液体というのは効能が続く時間を長くするか短くするか、あるいは効果そのものを強く……強くというよりは液体に強める効果は……いえ強めるための……!?」

「はい」

「こうしちゃいられないわ!ポーションとポーションを混ぜるの!」

 なんかそういうのって専門の先生の監督が必要なんじゃないか?

「専門の先生の監督は必要ないんでしょうか」

「監督が必要なものはそもそも購入できないもの。必要なら聞くわ。ダニー。昔の魔法座学の先生と、それから学校の魔法座学の先生にいつでも連絡を取れるようにしておいてね」

「かしこまりました」

 それから棚も購入しておこう。




 


「はい。それでは必要に応じ、学内実験室の使用許可を出させていただきますね。その際はもちろん監督も行います。それから」

「はい」

「魔法実験クラブへの加入は考えましたか?」

 魔法実験クラブ。

「自分が顧問ですので、クラブ生徒は放課後は自由に実験を行うことができますよ。…是非一度ご検討を、勧めてみてください」

 なるほど。

「わかりました」


「ということだそうなのですが」

「……」

 反応が鈍い。あんまりだろうか?

「……わたし、そういうところって、あんまりすきじゃないの」

「ほお」

「…浮いちゃうから」

 浮く?

「……人の多いところも、あんまり、好きじゃなくって……皆が、わたしを、噂しているみたいに聞こえないかしら」

 いや噂はしていると思うが……

 ……

「いえ、公爵令嬢ですもの。バージリアン公爵家の一人娘ですもの。多少の視線や悪評は、もちろん当然のことなのだけれど」

 ……前々から、どうも、薄々感じていたのだが。

 この人。

 自分の容貌に自覚がないのか?

 金色でさらさらした髪。つんと整った顔立ちに大きめの瞳、長い伏目の睫毛、小さな唇。華奢な体つき、肌は色白で骨細、手首や足首にはわずかに血液が流れている様子が見えて……

 お人形さんのようというか。飾りたいというか。ただてくてくと歩いているだけで視線が吸い寄せられてしまうというか……

 そういう容貌をしているのだが。

 …自覚がないのだろうか?

 ええと。何の話だったか。そうだ。魔法実験クラブの話か。

 浮くから苦手……そうか……

「まあじゃあやめときましょうか」

 こくんとお嬢様は頷いた。…………………………………………っス…………………………

 その時もう一度ときめきが蘇るのだ……青春のような……いやクサイな……

 カッコつけすぎたな……

 ただ。ここ数日はまだ楽をして、兄ぶっていられたものだが。

 そうもいかなくなった、ということを言っておこう。

 仕事に移ろうと、ハンガーにかけてある今日のぶんの制服を手に取る。洗濯するのだが。

 ……もうこれだけで可愛いもんな……

 あっソファーで寝ようとしている!ソファーで横になって丸まって寝ようとしている!めっ!可愛い!

「お嬢様。おねむなら寝室の方に行ってくださいね」

「……はあい……」

 はこんで、と言われた。もうしょうがないお嬢様だなまったくも〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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