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どうも運命の日ではなかったらしい

 お嬢様の寝巻きは薄手のワンピース一枚である。

 そう何度も言うことでもないような気もするが………なんと、いうか……

 ……本当に、だいぶ、薄手なので。だいぶ体のラインが露わにというか……

「それじゃあ、ダニー。おやすみなさい」

「……はい。おやすみなさい」

 よかったよ早めに寝室に行ってくれて……という、思いと、ちょっと男一人女一人の状況にそぐう物ではないので何か新しい寝巻きを買ってやった方がいいんじゃないか寒さ避けのためとか理由を付けて……という思いがある。

 といってもおやすみなさいとは言ったがまだまだ夜は長い。屋敷内での忙しさに比べると今はだいぶ仕事が少ない……少し、休んでいようか、とも、思うが。

 ……あまりそういう夜は得意でない。久々に煙草でも出そうか。

 大切なお嬢様に何かあってはいけない……位置的には……風呂場の横、あたり、だろうか。

 それとも残っているものを片付ける方がいいか。




 ……吸おうか、と、思ったのだが。

 ……お嬢様、あれ、起きてるな?

 時々ぱたぱたと物音や足音のようなものがかすかに、しかも断続的に……聞こえてくる……あれ起きてるな……起きてるときの物音だな……

 明かりがついているときの物音である。夜更かしはいけないと叱りにいこうか……俺が言えたものではないが……

 恐らくノックをするのが礼儀だが……まあするか。

「……もしもし。お嬢様」

 ……返事がない。

「……失礼しますよ」

 室内はまあ盛大に明るい……ん。んん……。

 ……確か、この部屋は。

 俺が数時間前にきっちり掃除したはずなのだが。

 ベッドの上に白紙やら何か書き込まれた紙やらがてんでバラバラに広げられている……お嬢様の肘で潰れている紙がある……その他にも、本やら、ベッドの横の開けられた鞄やら、お嬢様はベッドにうつぶせになってでろでろと何かを書き記している……

 ……インクはないな?ベッドの上に。大丈夫だな?

 どうして数分でここまで汚せる……お嬢様はベッドの上でごろごろ横に転がっていく……

 ……お……むくりと起き上がった。

 部屋の扉の方へ向かう。開けた。

「ダニー!何か暖かい飲み物をちょうだ……」

 こっちですね。

「……ダニー?」

 探し回っている。

「ダニー?」

 こっちですね。



 視界が狭くて思い込みが激しいらしい。どうも。

「お砂糖を入れて。たくさん」

「高いんですよ砂糖も」

「……そうなの?」 

 まあ経費で落ちるだろうが……。

 ……ううん。どう説得したらいいものか。

「あんまり摂ると体に悪いって聞いたことがあります」

「どう悪いのかしら……」

 そこまでは知らないよう……。

「まあほどほどにしましょうという話ですよ」

「……仕方がないわね。説得されてあげるわ」

 やった~~

 温めた牛乳に砂糖を少しだけ入れる。

 一人分の牛乳をカップに注いだ。お嬢様はそれをじーっと見ている。

「……こんなに手間がかかっているのね」

「お嬢様もやってみますか」

「それはいいけれど……」

 断られた。

「これをなんとか改良できないものかしら」

 そっちに行くんだなこの人は。

「火が強くなったらいいの?」

「そういうものではないですね。そうですね……注いで、温めて、そうですね……」


「焦げなくなったら便利だと思いますね」

「焦げる……」

「お嬢様そもそも焦げるって知ってますか?」

「火を当てると物は焦げるのよ」

 知識としては知っているらしい。

「そうですね。火にかけてる間、混ぜ続けてないと焦げちゃうんですよ。それはちょっと面倒ですね」

「火に当ててるから、物が、今回はミルクが……焦げるのよね……」

 いや折角のミルクを放ってどこかに行くな。今の俺の労力。

「火に当てるんじゃなくて、ミルクそのものの温度を上げて……水魔法で氷にするのの、反対……でも液状のものだからってそれは水じゃなくて地で……」

 ぶつぶつ。寝室の方へ向かう。せめて机でやってくれたら……散らからないんだが……

 一応持っていこうか。


「どうなりましたか。冷めますよ」

「3案思いついたわ」

 速いな。

「一つ目。水魔法で温度を上げる魔道具。これは水しか入れられないけど温度は簡単に上がるし保てる」

「見たことありますよそれ。厨房で」

「そうなの……じゃあもういらないわね……ふたつめはね。」

「はい」

「どうにかして、板の温度を上げるの。それから三つ目はね、あったかい氷を入れるのよ」

 ………………????

「お嬢様眠いですか?」

「眠いわね」

「寝ましょうか……明日も学校ですよ。」

「そうね……復讐……」

 こらと言われずともわかっている表情だなあそれは。

「……しないわ……」

「寝ましょうね」

「……」

 じたばたしている。……。

「そんなに悔しいんですか」

「とっても!!!!」

 ずーーーーーっとお嬢様の心の中で何か燃え上がっている……

「私魔法は一番だって育てられてきたのよ。魔法はこの国でも指折りだって」

「指折りってことは数人上がいるかもしれ……そういうことではないと。はい。申し訳ありません」

「……魔法以外ないのよ」

 ……。

 ……なるほど。

「それ以外ないの。だから、絶対に、負けたく、ないの」

「……そんなことないと、俺は思いますが」

 じょうずではあるのだろうが。

 それ以外ないなんてことはなかろう。

「お嬢様はとっても魅力的ですし、いいとこ、まあいくつかは。あると思いますよ。そういうことではないのか……?いや……んん……」

 俺も眠いな?これは。

「……ねえ。ダニー」

「はい。なんでしょう」

 ねむ……

「勝負したいの。アイリと。だめ?」

 んんんん…………

「……白黒つけたいだけよ。負けたら、ちゃんとありがとうって言うわ」

 んんんん……ねむ……

「……わかりました。」

「どういうわかりました?」

「明日聞きます。」

 それからにしよう。

 

 




 


「アイリ・マドレシア嬢!こちらにいらっしゃる!?」

 俺はもう既に許可を出したことを後悔し始めているよ。

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