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運命の日-①

「さて!ダニー!今日は何が起こるか知っている?」

 随分とご機嫌である。お嬢様はその角に皮の張られた四角い鞄が似合うなあ……かといって振り回さないでください。

「何が起こるんですかね」

「私は入学にあたって入学試験を受けたわ!科目は国語・数学・歴史・魔術・そしてなにより魔法実学!」

「鞄持ちましょうか」

「いらないわ。護衛の両手は開けておかないと困るのは私よ」

 ハ~~~~~~~~最高の上司………………

「魔法実学の試験があるということは!すなわち!」

「すなわち?」

「魔法実学の試験で一位を取っているのは確実に!この私だということよ!」

 そうかなあ……。

「魔法実学の点数は魔力量・使用可能属性・魔法の威力その他様々な項目で厳正に審査される……と聞いたわ!以前!つまりこの!国内随一の魔力量を誇りかつ全ての属性の魔法が使用可能でありかつ魔法の鍛錬も欠かさないこのわたくしが!魔法実学で一位であるということは!もはや自明!」

 そうかもしれない……と思ってきた。

「これはわたくしの輝かしい実績の1ページ目よ!」

「まあとりあえず試験結果を見てから、そういう話はしましょうか。どちらに試験結果が」

「あそこよ。校門の後ろにほら、大きな掲示板があるでしょう」

 なるほど。国語・数学・歴史・魔術、魔法実学……

 歴史以外はお嬢様の名前があるが……



 魔法実学試験 順位

 1位 アイリ・グーテンバーグ

 2位 シルフィー・ド・バージリアン

 3位 グレア・ド・キルシュタイン・ルステンベルグ

 4位……


「…2位ですね」

「はあああああああ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 えっお嬢様そんな大きい声出……お嬢様淑女!淑女!淑女!

「そんな訳がないじゃないこの私が!この私公爵家嫡子シルフィー・ド・バージリアンが!魔法実学の試験では必ず一位になっているはずなのよ!」

 未来でも見たのか?

 あんまり大きい声を出すから周囲がざわついている。またお嬢様の人気下がったなこれは……悪役令嬢脱出するんじゃなかったのか……。

「あり得ない、あり得ない、あり得ない……ダニー!」

「はい」

「校長室に抗議をしに行くわよ!」

 権力の使用を。

 一応ついていく。

「……お嬢様はそんなに魔法がお上手だったんですか?」

 好きなのは知っているが下手の横好きという場合もいくらだってある。

「……魔力量は格別って、ずっと言われてきてるわ。それに属性の魔法を全部使えるし、魔法技術だって、ちゃんと訓練してきてるし……それに何より!」

「はい」

「私の!プライドがそれを!許さないの!」

「1位がですか」

「違うわ!」

 

「私より魔法が上手な人がいるという状況よ!」


 ……お嬢様もまだ若いなあ、と。

 止まりそうにない。ここは一旦放置しておこう。


  

「学園長様。こちらにいらっしゃるかしら。申し遅れましたわたくしバージリアン公爵家息女シルフィー・ド・バージリアンと申しますの」

「……なるほど。シルフィー君か。入りたまえ」

 学園長室の中にいらっしゃったのは一見すると魔法使いらしい三角の帽子を被っていること以外は頭のてっぺんがうすら広くなっているようなごく普通に見える男性である。俺よりはだいぶ年がいっている、恐らくオジサンと言っても社会には怒られないだろうが本人には怒られる程度の年齢に見える、男性。

 大きな板張りの机の上に肘をついて手を組んでいる。

「きみの噂はかねがね聞いているよ」

「あら。それは大変なご光栄ですわ。学園長先生にまさか名前を覚えていてもらえているなんて」

「魔法の実力と……それから、だいぶ行儀の悪い素行で有名だね」

「あら」

 ……あ~~~~っ素行で点落とされたな……これ……

「わたくしは、入学試験において、実力に対して正当な。審査が行われていたのかどうかを聞きに参りましたの」

「……確かに君の魔法の実力は一年生の中ではずば抜けているね」

 へえ。本当にそうなのか。

「しかし、わざわざこんなところに足を運びに来る傲慢さが。君の悪いところでもある」

「あら、それでは先生は、”試験において正当な審査を行っていない”とお認めになりますの?」

「実力に対して、正しい判断をした結果が、あの結果だ。君は魔法実学の順位に対して不満があるようだね」

「……ええ」

「試験を自分も見学していたよ。君は試験の時も同じ態度だったね。自分が一番たること以外あり得ないという表情、仕草、それに魔法だった」


「君は少しアイリくんから学んでくるといい」

「……へえ?」

「良い学びになる。彼女は全教科満点の成績で、平民ながらこの学園において初となる特待生の座を勝ち取っている」

「……」

 わたくしに平民に頭を下げろと……???????と言わんばかりに頭の血管をばしばしいわせていそうな表情をしている。

「魔法の実力も申し分ない。彼女の魔法実学の試験で大きな加点要素となったのはね、威力もそうだが、何より非常に希少な光魔法に対する適正を持ち、それを強く、正しく、明確に扱ったことだ」

「……」

「きっときみの助けになることがいくらもあるだろう」

「そう。大変貴重なご意見ですわね。…………」

「……?」

 ……退出する雰囲気なのに退出しないのは……

 …お嬢様に耳打ちする。

「……お嬢様」

「……」

「……『ありがとうございます』って言ってください。……言わないと終わりませんよ」

 どっちかというとこれ負けず嫌いなんだな……嘘を吐かないの元が……

「……………………大変貴重なご指導!感謝しておりますわ!それでは!」

「……?ああ。精進したまえ」

 お嬢様が閉めた扉は珍しく大きめの音がした。……。

 

「ダニー!」

「…はい。なんでしょう」

「……わたし、この怒りを、どうしていいかわからないわ」

 爪を噛んでいる。……。

「あのアイリっていう……女かしら。男かしら。まあそんなことはどうだっていいわ……ダニー。そのアイリについて調べてきなさい。何とかして魔法勝負に持ち込んで……」

「……お嬢様」

「なあに?」

 ……溜息を吐く。


「失望しましたよ」







「えっ」

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