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試験終了

 そもそもお嬢様と私の関係はけして長くはありません。

 ——じいやなのに?それはその通りです。しかし余所見をしない。

 私がバージリアン家に仕え始めてからは2年、お嬢様のいるこの別邸の管理を任されたのは1年ほど前というところです。けして貴方に誇れる程ではない

 …お嬢様の外聞は、非常に悪うございますな


 パーティーでの一件を思い出す。


 しかし悪い人ではないのです。貴方はそれをわかっているでしょうか


 ……剣の捌きとしては指導に近い。一手一手が明瞭だ。

 それを捌ききるくらいしか能のない自分と、痺れはじめる腕の感触は嫌になってくる。剣は本当に能がないのだ。自分は。

 何故この国の強さの指針は剣術と魔術に偏っているのだろう。弓術も加えてくれたらいいのに。

 ……考えていても仕方がない。やれるだけのことをやろう。


 ……わたくしが配属されるに至った理由として、ひとつの事件がありました

 屋敷の別邸から、貴金属その他高価な宝石、装飾品が消失するという事件が発生したのです

 正確には、書面上では交友のある周辺貴族への贈り物とされ。しかしその貴族名・屋敷はどれも架空のもの、結果としてお嬢様の両親が気付いた頃には宝物庫からほとんどの宝石が消え失せていました

 そして少し前からばらばらに、不自然ではない程度に、屋敷からは退職する使用人が数名程度増えていました。合計で約10人ほど、その中には以前の執事も。誰しも十全すぎる容疑者ではありますが、誰がやったのかはわかりません

 重要な証言となったのはお嬢様の言葉でした。あの頃から傍若無人で知られてはいましたが。……7~8歳ごろ、でしょうか

「あげたのよ」と。


 ……。


 はじめは周辺貴族に贈ったということを指しているのかとも思われました、送り状にはお嬢様の署名もありました、しかしそれでは辻褄が合いません。詳しく問いただすと、このような証言が

「欲しいって言っていたから、あげたの。いけないことだった?」

『……どちらに?』

「じい!それから、他の皆も」

 

 


 顛末はおそらくこうと推測されました。

 宝物庫の管理をしていたのは元来屋敷の執事です。そして前職の執事は、温厚な性格ではありましたが、その時家庭内の借金に苦しんでいたという調べも付いています。

 管理を任されるような立場の者です、そんなことはしないという信頼の元選ばれてはいます。……しかし。

 ほんのわずか、目が眩んだのでしょう。

 そしてそこをたまたま見つかった。

 

 

『じい』

『あ……お、お嬢様……お嬢様………!ど、どうか、お許しくださ…』

『ねえ。それが欲しいの?』

『は……』


 

『欲しいならあげる!』




 ……そこまでで終われば。本当に。良い話だったのでしょう。

 


 


「……不器用なお人なのです。血筋ですな」

 きん、と何とか弾き返せた剣筋が鈍る。

「……それから、騙されやすいお人でもある。利用されやすい、とでも言うのでしょうか」

 ……あんな所に行って!そして、と。

「こんな男に騙されて」

「……」

「私はこの屋敷の執事として、お嬢様を悪漢から守る役目がございます」

 執事は剣を型通りの位置へ持っていく。

 まあその通りなのだろう。

 悪い男だろう。怪しげで、得体が知れなくて、信頼もおけない裏通り育ちのいち庶民だ。

 でも。

 そんな男に、あの子は毎週毎週会いに来てくれていたんじゃないのか。

 人の目利きができないほど、あの子は愚かでも、瞳が曇ってもいないはずだ。

 ……そう。されることを。

 願っていたんじゃないのか。

「疑心暗鬼もほどほどにしねえと、腕が鈍るぞ」

 感情的な生き物ほど御しやすいものはない。

 やめだ。片手剣の振り方で振るからいけないのだ。

 刃渡りを偽装しろ。気迫で誤魔化せ。

 身長よりも高く、長く、刃渡りは数m、持ち上げるにも気力のいる鈍い色の鉄の塊であると。

 相手に勘違いさせろ。

 ぶん、と大きく一縷を振る。ひょいと避けられる。

 その程度はそりゃあそうだろう。思っているのと間合いが違いすぎる、せめてもう1m……

『――威力に上昇効果を乗せるのが剣術に使う魔法、それ以外の魔法は、”自分で何かを作り出す”ことに魔力を使うの』


『属性は火・水・風・土。創成魔法の詠唱をするときはまず最初に属性を唱えてから、殺傷能力のあるものなら”闇の精霊よ”、殺傷能力のないものなら"光の精霊よ"って語り掛けるの。』

『それはなんか意味があるんですか』

『ないわ!』


『きっと身体強化に詠唱は使っていないでしょう?魔法は正確にイメージできれば何一つ問題はない。詠唱はその手助けを行うためにやるもので、もう少し高度な詠唱になると魔力ひゃくのにを用いって唱えて魔力量を調節してどれくらいの大きさかどれくらいの威力かを調節したりするのだけれど』

『わかりましたわかりました』

『むう!』

「……土の精霊よ、光の精霊よ」

 つくる。普段通りのもの、普段通りの獲物。

 魔力ひゃくの……ああこれ以上聞いていない。ああクソ。もっと聞いておけばよかった。

 それじゃああとはイメージの勝負だ……ぷちっと魔力の流出が止まる感覚がある、これ以上はまずい!

 途中でもいい、振り抜く!

「おっと」

 ……執事の後ろに引く一歩が少し大きくなった。

 途中までしかできていない。両刃の剣だというのに片側の刃のみが妙に伸びたような形になった。しかし。

 それだけでもマシだ。……間合いは伸びた。

「ふむ」

 踏み出す、いちから二、交差の剣筋を並べて――

「ここまでにしておきましょうか」

 えっ!?!?!?


「……何だよ。怖気づいたのか?」

「そうではなく。これは試験でございますので」

 ……そういえば。そうだった。

 ……軽く剣を振る。そういえば。これどうやれば戻るんだろう。

 あとでお嬢様に聞いてみよう。

「本来は試験といいましても、これだけ行えばよいものなのです。戦い方には性格が表れます」

 性格診断だったのかこれ。

「私も貴方のことがよくわかりました。……基本的な剣の腕前はからきしだということ」

 ぎくり。

「それから。一定以上の間合いを保たないと平静が保てないようですな」

 ………………………………

 見透かされると認めたくない気持ちにならないか?

「そんな言わなくたっていいだろ」

「逆にきちんと間があれば十分すぎる実力でしょう。……この戦い方からわかるのは」

 何で俺に言うんだ……受けたくもない性格診断の結果を何故俺につきつける……

「……貴方は、悪事を企むような度胸は持っていない。」

 俺ちょっとずつこの人のことが嫌いになってきた。

「………………よろしい。貴方に、お嬢様の専属護衛としての地位を与えましょう」

 ヤッタ―――――!!!!!!!!

「じゃあもう今から専属護衛ですね?」

「そうなります」

「それでは不詳私このアーバンクライン、専心誠意お嬢様の護衛としての任務勤めさせていただきます」

「どうぞ」

「お嬢様~~~~~~!!!!!!!!!!!!」

 お嬢様の部屋は2階A棟階段上って前から二番目!もう覚えた!

 報告してヨシヨシしてナデナデ……ゲホゲホ……

 とにかくお褒めの言葉を貰いにいこう!ヤッター!!!!!!!!!!!!!!!!!

 走れ!屋敷内!







「…………お嬢様」


「良い拾い物をなさいましたな。」 









 

「お嬢様~~~~~~!!!!!!!!」

「声が大きくてよ」

 そんな……………………

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