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悪役令嬢シルフィー・ド・バージリアンについて-③

 ……警備兵に感謝を伝えて、頭を抱え、お嬢様の心配をしながら庭を彷徨いていると、2階へと階段の繋がるテラス席に出た。2階部分が僅かに賑やかしくなっているのが聞こえる。

 ……恐らく、あそこがパーティー会場だろう。丁度いい。この辺りで警備の真似事でもしていよう。

 ……色々情報がありすぎて忘れていたが。そもそも身分差というものがあるのである。頭を抱えていても、心配になったとしても、そもそもあちらに口を出せるような身分ではない。

 ……そもそも。今日限りかもしれないのに。何故そんな事を考えてしま…

 ……そんな事を考えると悲しくなる。けれど事実だ。

 テラスの窓を見上げる。今は少しでも、ただ、彼女の姿を見つめていたい——

「……おい。これはどういうことだ」

 …何か2階の様子が賑やかしい……

「…バージリアン嬢。僕は貴様に招待状を出したつもりなど微塵もない」

「あら。そう。手違いでしたの?それでしたら贈り物だけでも貰っていただければ幸いですものよ。とっても大事な贈り物ですもの」

「…皮肉も通じないのか?貴様のような冷血な女、僕はこの会場に入る資格すら与えていないと言っている」

「…坊っちゃま!お戯れを……」

「……あら。」


「酷い言い様。私がこの事をお父様に伝えたら、一体どうなってしまうことかしら」

「贈り物を拒否するくらいは自由だろう?貴様のような女から施しを受けるほど、僕は落ちぶれてなんかいない」

「あら、そう。…貴方の無知は、ちっとも、構わないけれど」


「……『受け取らない』。それで構わないのかしら」

「…貴様の、そういうところが!!!」


「僕は貴様の姿も見たくない。声も聞きたくない。即刻この会場から出て行きたまえ。まさか主賓に従わないほど愚かではあるまい」

「あら。うふふ……」


「酷い人。貴方のこれからに、きっと少し悪い事があると思うけれど」


「私はそのために祈らないでいてあげる。私、貴方のことが嫌いよ」


「それでは。ごめんあそばせ」


 かつ、こつ、と……ヒールが床を叩く音がする。それが……近付いてくる。

 壁際に隠れる。小さな手のひらが、丁寧にテラスの扉を開いた。

 ドレスが変わっている。夜の闇のような、胸元のざっくりと開いた長いドレス。肌の白さが際立つように思う。彼女はテラスの欄干に頬杖を付けて……ふと、こちらを見た。

 ……二度見した。

「…………………………っ、ふふ、ふふ、うふふ……」

 彼女は口元を抑え隠してくすくすと、笑い声を押し殺すように小さな声で笑い出した。

「………どうしたの?ダニー、そんなところで……」

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