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彼女について

 あんなにきらきらした目をして酔うまで馬車の中で本を読んでいるので恐らく彼女だ。

 ……本当に、そうだろうか…

 僅かに馬車の中から声が聞こえる。

「…ねえじいや?パーティーだからって。道中まで腕輪を外している必要はないと思うの。会場では着けないわ。いえ着けたいけれど……」

「なりません」

「……あっ!そうよ!今はもう街の外なのだから!魔法が使えるじゃない!」

 彼女だな………………

 執事も頭を抱えている。大変なのかもしれない……

「……お嬢様。なりません」

「……………わかったわ」

「お嬢様は、外出を始めるようになってから、悪い影響を受けすぎています」

 僅かに視線がこちらに向いているように思う。

「淑女として皆の手本となるような行動を。よろしいですね?」

「…ええ。わかっていますわ。」

『お仕事』だもの、と。彼女は……やけに、大人しくなる。

 ああ。

 得意では……無いのだろう。

 金の髪はくるくると豊かに巻かれている。豪奢なドレス。指先の大きな宝石の指輪。高いヒール。

 ……不機嫌な表情。

 服装による自己主張が何一つ統一されていない。ただ不機嫌であるという印象を相手に与える。

 ……そんなところに居たんだなあ、と。

 彼女が彼女のままであると思うのであれば。なんとも、窮屈な所に居たのだろう。

 彼女は執事に文句を伝えている。たまに口が止まるが、椅子が硬いだの、揺れが億劫だの、寒いだの。

 執事は冷静にそれに準じた対応をする。……彼女の気持ちがわかる、なんて、そんな軽々しく言える立場でもないしそもそも言うべきでは無いとは思うが。

 けれども。今。彼女は。どんなことを考えているのだろう。

「あ……!あれはC級モンスターのロックバード……!しかも群れ……!」

 弓を持つ。

 矢を放つ。

 終わり。

「終わりましたよ」

「えっ?えっ。あっ。はい……?えっあっ落ちてる…えっあっすみませんこのまま進ませていただきます!」

 何かに怯えているような表情……ん?

 ……馬車の中から、きらきらした視線がこちらを見つめている。

 はっとした顔をして、すぐに座り直した。

 ……こんなに、可愛らしいのに、なあ。そうですね。ちょっとだけ魔術を使っていますね。

 何故そんなところに居なければならないのだろう……生まれ、だとか、そういうものだろうか。

 ……ギルドに居た頃の方が、ずっと可愛らしく見える。

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