公爵令嬢、シルフィー・ド・バージリアンについて
大通り、から、東。
左……右、……左。
………………わ〜〜〜〜〜〜〜〜でっけ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜家…………………………………………
家か?これ。もはや城じゃないか?城っていうか学校とかそのレベルの大きさじゃないか?
何も見えない。塀と正門しか見えないぞこれ。どうなってるんだ……
正門の内側に門番の詰め所があるのが見える。怪しげな男を見るような目つきを向けられていたので事情を説明する。
門の横の比較的小さな扉を通って、ここで待つように伝えられた。
中に入ると、広大な庭がよく見えた。
道が大通りの半分くらいはある。白い石の固く敷き詰められた長い道。整備された庭園。あっ噴水……噴水がある……?
遥か遠く、に、大きな大きな屋敷が地平線を埋めるように建っている。あそこから……ギルドまで、走ったり…歩いたりしながら、来ていたのだろうか、と。
大変だったろう、と思っているうちに、ふと、靴の踵を鳴らすような足音が聞こえた。
…見覚えのある顔である。それはお互いに同じらしいが。
「……冒険者ギルドの、ダニー・アーバンクラインさん。……で、よろしいですかな」
「はい」
「本日貴方にお願いしたいのは馬車の警備。これからあちらの馬車は屋敷を出て遥か北のゴーデュロイ辺境伯の領地へ向かいます。貴方はその行き帰りの道中、馬車の警護を」
あまりこちらと話をする気はないらしい。話を遮るようにつらつらと説明をしてくる。
「魔物は退治を。盗賊は捕えることを優先、ただし最優先事項は“お嬢様”の命です。お嬢様と、お嬢様の乗っている馬車を、必ず守るように。それ以外はどうなっていても基本的に問題はありません」
あちら、と指された方…屋敷の玄関らしき所に視線を向ける。立派な馬車が一台、止まっていて……
……ああ。
「…貴方は御者の隣に座るように。よろしいですかな?」
「はい。仕事はきちんと、真っ当させていただきますよ」
「…よろしい。一度止めて!」
玄関から走ってきた馬車が、正門の前、目の前で止まる。中に座っている、金髪の女性。
……ああ。それは本来、そうなっているべき髪型なのだ……
……本当だろうか?
別人じゃないか?だってあの女の子がこんなに大人しくしているとは思えない……いやそれも…失礼なのか……?
執事が馬車の中に乗り込み、自分は御者席へ座る。少女は視線で僅かにこちらを追っている……視線を戻した。
……本だ。
……あれが、魔法の本であれば。恐らく。確実に。彼女だろうなあ……。




