終わりたくない
それきりであり。
「……なあダニー…そろそろ……そろそろお前家に帰った方がいいよ……」
「……そうかい?」
「いや駄目だってお前。こいつこの前からこれしか言わないんだよ。そっと。そっとしておいてやるべきなんだって。」
「……」
「でもよ…こいつ5日ここにいるぞ……ちょっと……ちょっと問題というもんが…」
「なんでギルド側で追い出さねえんだろう」
「か゛わ゛いそうじゃないですか!!!!!!!!!!!!」
「私情だ」
「絆されてる」
帰ろうかな……という気分になってきた。
「何で居るんだよそもそも。流石に身じろぎもできねえ衝撃が5日続いてるってことはねえな?ねえな?」
「俺動いてるのは見た。風呂も入ってたし飯も食ってたし外出してたのも見た。何で?」
……
まだ、頭がうまく働かないことを、衝撃が続いていると言われれば、そうなのかもしれない。
あまりに当たり障りのない言葉しか出てこない。
「……もう一回来て。」
「……うん」
「そんで会えなかったら。なんか。悪いんじゃねえかなあ……って……」
「……………ダニー!!!!!!!!」
むさ苦しいなおい。筋肉の塊が……筋肉を頬に感じる……気持ち悪いな
「お前は忠犬だ。お前は忠犬だよダニー……」
「犬なのかよ」
「いや……でも……真実ってもんが。真実ってもんがさ……いや衝撃なのは、衝撃だったのは。仕方ねえけど…」
……あの騒動は暫く騒ぎになった。
シルフィーは家名は入れずにギルドに登録していたらしい。冒険者ギルドでは偽名仮名を使うのは自由である。
…公爵家、なんていうのは、そもそもこの国には4家しかなく。
まあこの国でそりゃもうむちゃくちゃむちゃくちゃ偉い人であり。雲の上の人。触るどころか見るのも烏滸がましいようなレベル。
何故だろう。思いたくないのだ。
泣きそうになる。
「だってあの…だってあの……“人生そんなこともあるさ”派閥!をここに!結成すべきだと!」
「もうちょっと!もうちょっと彼には時間が必要だ!俺もうちょっと優しくしてやっていいと思——」
走馬灯がこれでもいいかもしれない。
人生でいちばん幸せだったとき、として、彼女と過ごした思い出を、挙げたとしても——
——ああ。
……思っていたより。ずっと。
立ち上がる。
「帰るよ」
「……ダニー…」
「世話かけたな」
大の男が泣くな。そんなに。
「ダニー……!!!俺はお前を……俺はお前を……!!!」
「あの〜大変大変な空気のところ恐縮…なのですが……」
「なんだよ」
「ダニーさんに指名の依頼が来てまして……」
「今どう見てもそれどころじゃねえだろ。そっと……いや放って。時間を渡してやるべきだろ今『彼』にはよ…」
「いえですから。あの。……ここだけですよ。内緒ですよ。本来本人以外には依頼主の情報はちょっとでも渡しちゃいけないんですからね」
その、こちらの紙を、と。
「……あの。こちらの、依頼主の家名。…わかりますか?」




