幾日目か
「新しい魔法を考えたのよ!」
「はいはい。何でしょう」
「見ててね!」
……シルフィーが宙に浮かんでいく。
いやどちらかというと。透明な巨人に後ろ襟を摘まれているかのように。持ち上げられているような体勢で浮かんでいる……。
…猫ちゃんか?
「これは第一段階よ!」
毎回この手順を踏むのか?と、思っているうちに、吊り下げられているような状態から、確かに、浮き上がっているような体勢になっている。お。
まあ、確かに、これはすごい、のだが。
ここはギルドの受付である。ものすごく注目を集めているぞ。
「降りてきな」
「はあい。ん、えっ……」
…どうした?
「…どうやるのかしら」
えっ。
「…が、頑張るわ」
一瞬にして観衆全員に緊張が走った。ものすごくゆっくりとした速度でシルフィーは高度を下げてゆく……屈強な男どもはシルフィーの下にスクラムを組み始めているし自分は一応弓を用意する……ああなんかバランスが危ういような……
「あ、わわ、コントロール、」
下に降りる筈なのに右に動いていくのでもうなす術がない!矢を放つ。首のすぐ横、ケープを縫い止めるように矢は放たれて今度こそシルフィーはギルドの壁に宙吊りになる。金の髪がぱらぱらと多少下に落ちていく。
「……魔力解きな」
「はあい。ありがとう!」
「女の子の髪を切っちゃよくないと思います!」
「ぶー!」
「やかましい命と髪どっちが大事なんだ!脚立!」
受付嬢の評価は案外悪い。屈強な男どももばらばら散開していった。脚立でシルフィーを取り外す。抱っこする。
「ありがとう!」
「…いや」
「改善を頑張るわ!」
まあやる……やるんだろうなあ……こいつは……。
「……それを外しな」
腕輪を指差す。
イヤイヤじゃない。首を振らない。
「どーして流通しねえのかわかったよ。危険だからだよ。外しな」
「ふ、浮遊魔法は……わかったわ。浮遊魔法は……やらないから……」
「よし」
「……」
…なんか体重が軽くなってないか。
「……おい」
「や、やらないと思ってたの…コントロールが……コントロールが……」
「試合中以外禁止な」
「勝手に魔法がぶわぶわっとなる……」
「外しなさい」
しょんぼり……としながらシルフィーが腕輪を外す。
「あれはなんというか。私。最初。あそこ恋愛色あるのかな〜、って思ってたんだけど。」
「うん」
「あれどっちかっていうとさ。育児だよね」
「ね」
聞こえてるんだぞこっちは。




