4日目-②
「そんなに隠れることがあるかい?」
「隠れていた方が怪しくないでしょう」
「隠れてた方が怪しいよ。」
隠れ方がわさわさこそこそしているので。背中の後ろにちょこちょこと隠れながらシルフィーは自分の後を追ってきている。
「……何だか知らんが、堂々としてねえと怪しく思われるぞ。なんならとっ捕まるぞ」
「……」
シルフィーは大人しくなった。それでも少しこちらの二の腕を引っ掴んで隠れるようにしている。……。
……今。自分たちは。一体どう見えているのだろうなあ…、と。
お兄ちゃんと妹とかだろうか。そうかもしれな…
「最近はこういうドレスが流行りなのかしら」
「……ワンピースじゃねえ?」
「…最近はそうとも言うのね!」
そんなに古い言葉か……?と。思うが…何かを勘違いしているのではないか……?
シルフィーはスカートの丈をつまむ。
「……こら」
「?」
「短いんだから気をつけな」
「!」
ぱっとシルフィーが顔を赤くする。くっ……
……なんか色々考えたいことを可愛さで押し切られる……
シルフィーのファッションの出来は。まあ。………非常に……出来の良い出来であると言っても過言では……
……まあ。有り体に言えば。めちゃめちゃかわい……
大通りをこんな子と闊歩してるんだぞ…俺……いや別になんなら知り合い以下だろうけど……
ちょっと姿勢を正したくなる…いや妹だな。これ外から見ると妹だな。多分そうだろうな……
「どうしたの?」
「……ん?」
「さっきからあんまりおしゃべりじゃなくなってる」
……そうかい?と尋ねる。不思議そうな顔をされているが……
咳払いをしたくなる。…そういう心境だろう。
「……不満!」
「…ん?」
「不満があるわ!」
何だ。服のサイズが合わないとかか。それともまだ季節にそぐわないとか。寒いとか。まだちょっと袖のない服を着るには寒いよな……
「い……いつまでこんなことを……」
「要求を言いな」
「魔法!」
もう煙草とか酒とかそういう部類の何かなんじゃないか?依存性があるのか?
魔法が切れたからカリカリしてるのか?魔法が切れたって何だ?
「じゃあお前さんに身体強化の魔法を教えてやろう」
近い近い近い近い。
俺でも出来る簡単な魔法である。
「魔力は矢印ってイメージは知ってるな?」
「ええ」
「その力を、外向きじゃなくて自分向きに使う。終了。」
こんなんで楽しいのだろうか……ああぶつぶつ考え込んで……
とんと前方向きにシルフィーがジャンプする。
普段では考えられないような距離、跳躍し、着地……しきれずに地面に転ける。
…習得が早い、が。
「街中でそういうことしねえように」
「……はあい」
砂まみれじゃないか。…ん?
『服を汚さないように——』
……染みはない。特に汚れも付いていない……と、思う……砂を払う。
これくらいなら平気……
平気……か……?
「平気じゃない!」
「ハイ……」
「汚さないでって言ったのに!まあ他の服は何とかなるからいいけど……」
「ハイ……大変申し訳ない……」
気軽に街中で魔法を教えるべきではなかった……シルフィーは写真屋の椅子に座って膝を揃えてしょんぼりしている。
「シルフィーちゃんその服着替えて!洗っちゃうから!ああおじさん店の奥借りるよ!」
「かまわんよ」
「ごめんなさい……」
「いいのいいの!代わりにいっぱい働いてもらうから!ん!こっちよし!それじゃあおじいさん!写真機お願い!」
「はいはい」
戻ってきたシルフィーは服が変わっていて、それでもまだ気を落としたままでいる。店主の爺さんは写真機をいじくって撮影の準備をしている。
かがみこんでシルフィーの様子を見る。
「…ちいさい……」
そりゃ屈んでるからだよ。こら触るな。犬じゃないんだぞ俺は。
「……さっきのは俺に責任がある」
話を振ったというか監督責任を見誤っ……いや……
俺に監督責に……いや年上なんだから……
持っててやるか!監督責任!
「アンタは悪くねえよ」
ぷるぷるとシルフィーは首を横に振った。
「……わたし、いつもこう。だから、なんとかしなくちゃ、いけないのに…」
持とう!監督責任を!
「頼ってくれって言ったろ。大丈夫だよ。俺がなんとかしてやる……出来るだけ。」
「……」
「甘えな。ちょっとは。」
「……ええ」
それにしても犬みたいにワシャワシャするのはやめてくれないか。やめてくれちょっと。これでも髪型には気を遣っているんだぞ……
「……ありがとう」
ちゅ、と。
前髪を掻き分けて、額の上に唇が降りてくる。
シルフィーは椅子から立ち上がった。
「行ってくるわね」
にこっと。ふわりと妖精のような表情で彼女は微笑む。
……可能性。
1.好意(対人)。
2.
……好意(対ワンちゃん)。
……『前途多難』の四文字が頭の中に浮かぶ俺は床を叩けばいいのかどうなんだどうなんだそれは!
前途!多難!!!!!!!!!




