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元魔王の楽しいお茶会




「お嬢様、テーブルが出来ました」


「こちらもおめかしが終わりましたよ」


ギルが土魔法でテーブルセットを作り、私が動けないお客様の装備を剥ぎ……いや預かって、席にご案内します。もちろん暴れぬよう手足を縛る……、ブレスレットやアンクレットでお洒落も忘れません。

初めてのお茶会にしては、首尾よくできているのではないでしょうか。お母様には殿方ばかりだと怒られそうですけれど。


「この男がお嬢様の隣席でいいんです?」


「ええ、おそらく彼がリーダー格でしょう」


総勢十五人の中で一番魔力も多く、私の対抗呪文で起こした水蒸気爆発も一人だけ対処が出来ていました。多重詠唱も彼が主導でしたし、見張りに撤退を素早く命じて私を抑え込もうとした動きからも明白です。

小隊の動きも素人にしてはよく動けていましたが気配を隠そうともせず、彼等からみれば子供である我々に躊躇していることからも対人戦には不慣れな様子でした。

まあ、私たちが反撃に出るとは思わなかった事もあるでしょう。

ギルも見た目は細身ですから人数でどうにかできると踏んだのでしょうが、私や騎士団で鍛えられている彼に素人が敵うはずありません。


「さて……、狸寝入りとはいい度胸だな。それとも、まだ我々をどうにかできると思っているのか? 貴様の判断で隊は全滅したぞ、ドレーホフ?」


「──俺を知ってるのかい? さすが天下のモンテクレール家ご令嬢だ、なんでもお見通しとは」


「ドレーホフ……? 帝国で指名手配されていたガッティ・ドレーホフがなぜエクレール領に!?」


ガッティ・ドレーホフ。

十数年前にエクレール領と隣の帝国リ・アルセ領の抗争にて、両国の諜報員に情報を流した罪で帝国内で処刑されたと王国では報道してました。

新聞に載っていた手配書の写真より若干老けて、いえ、窶れているのでしょうか。


「そりゃおめェさん、ここが無法地帯だからさァ。俺みてぇな流れ者なんざいくらでもいらぁ」


「じゃ、じゃあエクレール夫妻やモンテクレール家の文官は……?」


「少なくともエクレール夫妻は関係なさそうですよ。文官の方は、どうでしょうね?」


「ふん」


大叔父上がエクレール領に送られたのは三十年以上前のことで、付いた文官も高齢化で一度代替わりしています。恐らくですが、そのタイミングでこの男かお仲間が成り代わっていたのでしょう。


「まあ、文官の事は一先ず置いておくとして」


「お嬢様!?」


「黙れギルバート。大叔父上が殺された事は公にせねばなるまい。しかしな、屋敷がこの有り様では父上に何と報告するべきか」


私に睨まれたギルバートは何か言いたげでしたが、ドレーホフは面白そうに笑いながら私を見ています。最悪、仲間を捨て縄を解いて逃走できると思っているのですね。


そう侮られてはモンテクレール侯爵家の、いや魔王の名が廃るではないか。


「そうだ、折角目の前に国賊がおるのだ。全てこの男のせいにすればよい」


「はァ!?」


「興奮するなよ、茶でも飲め。貴様の懐かしき帝国の茶葉だ。私もそちらの国のが好きでな、懇意にしている商人もおる」


戸惑いがちにギルバートが手足を縛られたドレーホフの前にカップを置く。

帝国の茶葉や商人云々はもちろんハッタリだ。

だが帝国を口にした途端、ドレーホフの顔色が変わった。帝国で指名手配されていた男がここに居るのは十中八九、帝国貴族の後ろ盾があるからだ。そして伸びているお仲間たちは帝国民だろう。大方リ・アルセ領を拠点にエクレール領への侵略作戦の真っ最中なのだ。領主がおらず文官が数人常駐していただけの場所を占拠し乗っ取る事は造作もなかったろう。

しかし、ここで私の告発で計画が頓挫すれば王国どころか帝国でもこの男の居場所はなくなる。後ろ盾の帝国貴族は連座を恐れてドレーホフを切り捨てるだろうし、帝国も処刑されたはずの重罪人が実は生きていて取り逃がしていたとなれば、怨敵である王国から追及される事を恐れまず助けないだろう。帝国の威信に関わる事だ。

ここで伸びている連中も集落にいるであろう帝国民も、減刑の為に真っ先に名が知られているこいつを売る。

王国もモンテクレール侯爵家も、エクレール領の杜撰な管理が露呈すれば王国貴族から非難は必至だ。王国は草の根をかき分けてでもドレーホフを抹殺し作戦が動いていた事も闇に葬ろうとするだろう。

何かと敵の多いモンテクレール侯爵家への攻撃を避けるなら私も先の発言を実行するだけだ。

文官の殺害と不法入国くらいなら身分を偽って帝国に助けを求められただろうが、貴族殺しとなれば帝国に引き渡しなどせず極刑だ。

どう転んでも待つのは死だけ。


「っへ、……それで? 俺にどうしろってんだ?」


「ふふふ、話がわかるやつは大好きだ。──我が臣下となれ、ガッティ・モンテクレール・ドレーホフ」


気丈に振る舞っていたドレーホフは今度こそ青白い顔となって、私を見つめてきた。

雨に濡れた子犬のように震えて可愛いではないか。


……ギルバート、顔が百面相してうるさいですよ。

下僕第二号さんが出ました。


あとお気づきかもしれませんが、ここまで来て彼等の容姿に全く言及してません。

ノリと勢いで書いているのですが、変に設定を凝りだすと筆が止まっちゃうのであえて書いてません。

そこは皆様の豊かな想像力にお任せしております(つまり丸投げ)。


補足を前話で入れてますけど怒涛の展開(?)でなんのこっちゃって思われないかガクブルしてます。

後日ガッツリ加筆修正してたら笑ってください。

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