プロローグ
「アシュリー・フランツ・モンテクレール! 君の悪行には愛想が尽きた! 王太子としてここに君との婚約破棄を──」
「かしこまりました」
「──えっ」
とある王国の舞踏会。
会場である大広間がどよめく中、渦中の人物──アシュリー・フランツ・モンテクレール侯爵令嬢は食い気味に了承するとその場を後にした。
名も覚えていない婚約者だった王太子も側にいた名も知らない令嬢も、騒ぎ立てる周囲の貴族たちも、アシュリーにはどうでもよかったのだ。
そして、一時間後のモンテクレール侯爵家屋敷前。
「アシュリー、本当に行くの? ずっと? 噂が収まるまででもいいのよ?」
「いいえ、お母様。もう決めたことです!」
「私はお前のやりたいことがずっと理解できなかったが、アシュリーを応援するよ。こちらの後始末は任せてやりたいことをやりなさい」
「はい、ありがとうございます! お父様、私──悪の領主になります!」
「……普通の領主で頼むアシュリー」
「あねうえーおてがみくださあい!」
「書きますよ、ルシー! お返事待ってます! ちゃんと剣の腕も磨くのですよ!」
「あいー!」
「元気でねアシュリー……」
両親と弟ルシアンに見送られ、アシュリー・フランツ・モンテクレール改めアシュリー・エクレールは悪の領主になるために生家を出た。
モンテクレール家領地であるエクレール領へと。
辺境のこの地は王都からもモンテクレール領都からも遠く交易も殆ど無い未開拓の地。
そこで彼女は、魔王として悪の領主になるのだ。
勇者と出会うために。
初投稿です。
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