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3-2.領主の権限

城の控えにて 名工の弟子


 「そこ、"我が城へ案内しよう"だと思う。」ぼそっともらした。レミが大人の美女でないのが残念なところだ。

 気が付くと、全員の注目が集まっていた。「すみません。」頭を下げて黙った。


領主の権限 レミ


 「レミには聞きたい事ができるかもしれないから。私の馬車へ乗って。」とクリス様に言われました。

「レミ一人じゃだめだ!」と言ってきかないネロと共に、私はクリス様達の馬車に乗りました。

他の皆はダルトンさんと、もう一台の馬車で後ろに付いてきています。

もちろん全員、馬車に乗るなんて初めて。ネロははしゃいで外を眺めています。

 ダルトンさんが買ってきてくれたパンを食べてから、気になっていた事を聞いてみました。

「あの、クリス様は本当に、ご領主なんですか?」

「そうだよ。そうは見えないかな。」クリス様はにっこり答えてくれました。

「だって、おばぁさんが新しいご領主は、私より一歳年下の男の子だって・・・。」

クリス様達が驚かれて「え、レミって16歳なの!?」

「はい。」

クリス様が「僕は15歳だよ。でも、自分の事を僕というと子供みたいだから、領主になった時に私にかえたんだ。偉そうだろ?」

「はい。」と答えつつ、私はクリス様が歳下というのに驚きました。

「15歳なのに、そんなにデカイのかよ!?」ネロも驚いて聞きました。

「14歳までにいろいろ食べ過ぎたんだよ。ねぇ。」最後はデイジー様に声をかけました。

「そうね。私が初めてクリスに会った時は、物凄く太ってたわ。」笑いながら答えました。

「今より太ってたのかよ。」ネロが驚いています。

「そうだよ。」クリス様が苦笑いしていました。


 「ご領主なら、あの家を私達にくれるように、命令できたでしょう?」

「私はそんな事はしない。」

「なんで?ご領主って偉いんだろ?」ネロが私の聞きたい事を聞いてくれました。

「さっき君達が食べたパンはダルトンが買ってきたんだけど、お金を払わずに持って行こうとするとどうなるかな。」

「ご領主なら良いでしょう?」私が答えた。

「そうか、領主なら良いかぁ。」クリス様が顔をしかめました。。

「この間、剣の名工が来たんだけど、彼の作る名剣も領主なら持って行っても良いかな?」

「良いでょう?」私はネロとうなずきあいました。

「うーん、もしかするとあの家より値段が高いんだけどな。家と同様に簡単にできる物じゃないんだよ。自分が一生懸命作った物をタダでもってかれたら嫌じゃないか。」

「ご領主が命令したら、あげなきゃいけないんでしょう?」

「しまったぁ。説明が難しくなった。」クリス様が頭をかかえました。体が大きいクリス様がやると何か可笑しい。


 「この前、来た名工は、他の所の貴族に剣を持っていかれたから、キングストンに来たのよ。」デイジー様が言いました。

「キングストンなら、持って行かれないの?」私が聞きました。

「そう。クリスは他人の物を領主だからと言ってタダでは持っていかないの。」

「そうなの?」私はネロと一緒にクリス様を見ました。

「そうだよ。他人の家を私が欲しいからくれ、なんて言わないよ。正しい事とは思えない。」

「じゃ、私達はどうなるの?」私は不安になりました。

「叔父さんと従兄とも相談して、中古の家を買う。問題はその先だ。」

「その先って?」

「考えるから、暫くほっといてくれるかな。」クリス様は窓の外を眺めだしました。

「クリスが、なんとかしてくれるから大丈夫よ。」デイジー様が私達に言いました。

私とネロは顔を見合わせ、デイジー様にうなずきました。


 私は話相手を変えました。「デイジー様は、クリス様の婚約者なんですか?」

「そうよ。」

「婚約者って?」ネロが聞いてきました。

「結婚を約束した人の事よ。」私が答えました。

「クリス様と結婚するの?」ネロがデイジー様に聞きました。

「えぇ、まだ日取りは決まっていないけど、来年には結婚するかもしれない。」少しはずかしそうにデイジー様が答えました。

「来年ってクリス様は16歳ですよね?」私は確かめました。

「そうね。貴族ではそう珍しい話でもないわ。」

「ふーん。」


 「んん!」クリス様が咳払いしました。皆でそっちへ向くと。

「なんか、私が余興をやって、お金を集めるしかない感じだな。レミ、貴族の紳士、淑女にお茶を注いで回る気ある?」

「私にメイドをしろって事ですか?」

「それに近いかな。あ、あれが叔父さんの家だよ。」クリス様の指さす先にはお城がありました。

「あれって、お城ですか?」私が驚いて聞きました。

「そう、キングストン城。」にっこり答えられました。

「すげぇ!お城に泊まれるんだ!」ネロは大はしゃぎ。そういえばクリス様はご領主だと言ってました。ようやくわかりました。


 城に入って広間で全員集まりました。いかにもという感じの王様と、王子様が広間に入ってきました。

「これはご領主、たくさんの客人を連れて戻られましたな。」王様がクリス様に笑顔で言いました。

「みんなようこそ、いらっしゃい。」王子様が言いました。

 全員、ほけーとしています。王様、王子様にお話しされるなんて!

「皆に紹介するよ。キングストン領主代行をしている私の叔父のダグラス・マイルストン子爵。」

子爵がお辞儀をしました。

「その長男、従兄のバージル。領主代行の補佐かな。」

「よろしく。」バージル様もお辞儀しました。

「こちらは"エリーナおばあさんの家"のみんな。」

「こんにちは!」皆が口々に挨拶しました。


 「客室を一つ使いたい。一週間でどうにか目処をつけたいと思っている。」クリス様が二人に言いました。

「以前から言っているとおり、この城はクリス様の物ですから、ご自由にされてよろしいのですよ。」子爵が答えました。

「まぁ、そうですけど普段、住んでいるのは叔父上ですから。」クリス様が頭をかきながら言いました。

 「この城ってクリス様の物なんですか!?」私は思わず聞いてしまいました。

「すげぇ!」ネロ達も驚いています。

「まぁ、そうなんだけど。住んでいるのは叔父さん達だから。あの家だってエリーナおばあさんの物で、住んでいるのは君達だったじゃないか。勝手にされちゃ困るだろ。」

「えー、でも、家とお城とじゃ違う。」私の意見に皆がうんうん頷いています。

 「と、とにかく部屋へ行こう!」クリス様が歩きだしました。

「まずは接客に専念して、話は今夜ねー。」バージル様が手を振って言いました。

クリス様は半分振り返りつつ苦笑いして、手を降りました。


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