表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元商人の伯爵は領主初心者!?  作者: 川崎 こうじ
第十章 グルメ伯爵のパーティー
41/41

エピローグ 未来

野原にて デイジー


 クリスに誘われて馬車ででかけました。

「どこへ行くの?」

「キングストンの領都から少し離れたところに、視察に行く。景色は悪くないそうだよ。」

「視察?何の?」

「今は野原だそうだ。まずは見てから。」


 先程から馬車が、野原を進んでいきます。

「あそこに行ってみよう。」クリスが丘を指しました。

馬車から降りて、ダルトン達を待たせて、二人だけで行きたいと言われました。

クリスに手を取られて、丘を登っていきました。

 一面、野原。そこかしこに花が咲いていて、美しい景色です。「すてきな眺めだわ。」

「そうだね。バージルは、ここを畑にしたいそうだ。」

「畑に?」

「収穫量を増やして、キングストンをより豊かにしたいんだって。」

「そう・・・。」

 私は一面が畑になった風景を、想像しました。作業中の手を止めて、私達に向かって手を振る農民達を幻視しました。

「素晴らしい事だと思うわ。」

「そう思ってもらえて良かった。」クリスが再度、野原へと顔を向けました。

「一通りの領地経営が理解できたから、本格的に領地発展の施策を考える事にしたんだ。」

「現状維持は叔父上にまかせて、私は主に商業と領民の生活に関わる事柄を、バージルが主に農業の発展を考える。」

「最終責任は領主の私にあるし、バージルも先には叔父上の後を継いでもらうので、お互いに何をやっているかは、解るようにする。」


 クリスが私に向き直りました。

「そして君にも芸術関係について、施策を考えて欲しい。」

「私も?」驚きました。

「ニコルに協力してもらってもいい。あまり力は入れられないけどね。」

「施策って言われても。」私はとまどいました。

「私がぱっと思いくのは、コンクールを開くとか。」

「イベントでいいの?」

「そういうところからでいいと、思うんだ。」

「わかったわ、考えてみる。」

「絵だけじゃなくて、音楽等もね。食文化については、グルメ伯爵が担当する。」

「そちらは、まかせて大丈夫ね。」私が笑って言うと、クリスは苦い顔をしました。

無理そうだと、言った方が良かったでしょうか?


 「今お願いした事には、重要な前提があるんだ。」クリスが、真剣な顔をして言いました。

「まぁ、何なの?」私も真剣に、聞き返しました。

クリスは私の手をとって、真剣な眼差しと共に言いました。「君が、私の妃になる事だよ。」

「もう、クリスったら!」私は赤くなって、俯いてしまいました。

クリスは、意外そうな声で「あれ?ここは"はい"と言われるとこだと、思ったんだけどな。」

はっとして顔をあげました。もしかして、今のプロポーズだったんですか?

クリスは、バツが悪そうに「じゃあ、やり直して。」

息を整え「私と結婚してください。」

「はい。」真剣に答えました。

「よかった。」にっこりして、手にキスをしてくれました。


 クリスが馬車の方を向いたので、私もそちらを見ました。執事やメイド達が、にこやかに待っています。

「さぁ、行こう。」クリスが、手を取って歩き出しました。

「はい。」私も歩きだしました。


エピローグ 現代の、ある食堂の息子


 学校の教壇で先生が、歴史の授業を始めた。

「私達の住むキングストンが、"食の都"と呼ばれるようになったのは、グルメ伯爵と呼ばれる、クリスハート・キングストン伯爵が、開催したパーティが始まりと言われています。」

先生は伯爵の名を、黒板に書いた。

「この伯爵は、スイーツ伯爵とも呼ばれ、パーティーよりも先に開催したお茶会から、という説もあります。」先生が教室を見渡した。

「いずれにしても、クリスハート伯爵が、始めた事に違いありません。」

 うん、食堂の息子の僕は良く知っている話だ。多分、お金持ちの伯爵は、あちこちの料理を取寄せたりしたんだろう。この伯爵はそれを、庶民が食べられるように広めたんだ。今も、そのメニューは少し形を変えて残っていて、ウチでも出している。

「このおかげで、キングストンの主産業である、農産物の流通が増えました。農地拡大で生産量も増え、キングストンがより豊かになったのです。」

 ありがとうグルメ伯爵。おかげで美味しい生活ができてます。

「てへ、ぺろ。」と落書きされた、教科書の肖像画が、笑いかけてきたような気がした。


拙い文章を読んでいただき、ありがとうございました。

当初、続編を書く気はなかったのですが、書き出してみると恋愛じゃなくて、平民の感性が抜けきらない領主の話になりました。テーマが違うので別作品にしてシリーズとしました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ