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元商人の伯爵は領主初心者!?  作者: 川崎 こうじ
第十章 グルメ伯爵のパーティー
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10-3.パーティー開催宣言

宣言 デイジー


 キングストン城で、食後に皆でくつろいでいた時に、クリスが言い出しました。

「そのうちやる事になると、思っていたけど。」

一拍置いて「グルメ伯爵のパーティーを、開催しようと思う。」

子爵は、お茶を吹き出しそうになり、私を含め他の皆が、氷つきました。

バージルが、いち早く立ち直りました。「何が目的なんだい?」

「キングストン農業特産品の、販売拡大。私の知る料理に、特産品を使ってアレンジをシェフに作ってもらい、パーティーに出す。希望者にはレシピも提供する。」


 「新しい料理が出回る程、特産品の需要が増えるわけだね。」

「そうだ。まず領都の商人、料理店を招待して広める。周辺の領地にも売りこんで、王都へも売っていきたい。」クリスが、一度言葉を切りました。

「通商が増えれば、警備の強化はいるだろう。街道のさらなる整備まで必要なのかは、様子をみる。」

「シェフとは、話をつけてあるんだね?」

「あぁ、快諾してもらった。」

「警備、街道の件もパーティーで商人から意見を貰おう。パーティーの経費は?」

「初回は完全にこっち持ち。次から商工会と折半したい。参加者から費用を取っても良いし、成立した商談から紹介料を取るなんて手もある。手段はあるから、商工会に決めて貰おう。打ち合わせの為に昼食会を開く。」

「そこまで詰めてあるなら、私達に何をしろと?」

「まず、昼食会と初回のパーティー費用を出して欲しい。農産物以外の話も出ると思うから、バージルも同席して。パーティーの出席者は、農産物業者に限らなくていいからね。後、メニューの試食を。」


 バージルが子爵を見ると、うなずかれました。

「承知しました。聞くまでもないんだろうけど、美味しいんだよね?」

「ここのシェフが作るんだよ、保証する。」

「まぁ!楽しみだわ。」ニコルが喜びました。

「そうね、どんな料理が出されるのかしらね。」オリビア様もにっこり。


 私は心配事がありました。「クリスは、グルメ伯爵と呼ばれても、構わないの?」

「私がどう思おうが、茶会同様にそう呼ばれるよ。もう、称号認定貰えるぐらい頑張るしかないね。」皆が笑いました。

「私も何か手伝えるかしら。」

「貴族も呼ぶから、接待を。小母様とニコルもよろしく。」

「よろしいですよ。」「はい。」


登城 ハーシー議員


 城へ向かう途中「本当に何も聞いてないのか。」商工会議長に、もう何度目かわからない質問をされた。

「しつこいですね。全く、何も、聞いてません。」強調して答えた。

 「クリス様に、嫌われる事をしたんだろ。」副議長にからかわれた。

「何をして、嫌われたと思うんですか。」呆れ混じりに聞き返す。

「罵詈雑言を浴びせた、とか?」ニヤリとして言われた。

「ありえねー。」俺は頭を振った。

 「この食品卸数名とシェフ数名との、昼食会をどう見る。」議長が、真面目な話に戻した。

「一番無いのは、美味しい物を作って貢げですね。」

「無いものを予想してどうする。」副議長が笑った。

「食べ物のイベントでも、やるんじゃないですか?あの方は、常にこちらを上回って来るから、予想するだけ無駄ですって。」

「達観だな。」

「とんでもねーご領主ですから。」

「それを楽しんでるくせに。」副議長の言葉は無視した。

「ヘタすると、お茶会より高くつくかもしれませんよ?なんたって、グルメ伯爵の昼食会ですから。」

「タダですまないのは、覚悟の上だ。」どうやら、副議長は緊張しているらしい。戯れごとがいつもより多い。


 長テーブルに議長、副議長、食品卸二人、末席に私。反対側に職人組合長、シェフ三人がついた。

クリス様が、デイジー様とバージル様を引き連れて現れた。バージル様がおられるのは、金銭等の実務か、クリス様が詳しくない分野の補佐のためか。

「皆、良く来てくれた。心配しなくて良い、損はしない話だ。まずは味わってくれ。話は魚料理が出てから。」


 前菜が運ばれて来た。

「キングストン特産の野菜を使ったサラダです。ドレッシングには・・・」

料理の簡単な解説がされた。これは都のキングストン邸で行われているという方式か。

確かに特産品にこだわったサラダだ。

 スープも「キングストン特産の・・・。」、魚も「キングストンの湖だけに住む・・・。」

 クリス様が皆を見渡した。

「キングストン特産品の販売拡大の為に、グルメ伯爵のパーティを開催する。皆に協力して欲しい。」

クリス様が、自らグルメ伯爵と言い出すなんて!

「食べながら話そう。」魚を食べ始めた。

料理と共に、話の全貌が明らかになった。いくつかのお言葉を列挙すると。

「この件で、私自身が大儲けする気はない。私抜きでもできる事だからね。城とグルメ伯爵の銘を使いたいか、だ。」

「先行して始めても構わない。需要拡大が目的だから。」

「他の産業も、パーティーを利用して欲しい。」


 「特産品の増産計画は、あるのですか。」発言できる機会に、クリス様に聞いてみた。

「品薄になる程までに、売れるかな?」苦笑いぎみに答えられた。

「物によっては。」

「第一回のパーティーの反響を見て、私から提案させて頂くつもりだ。」バージル様が言われた。

「商工会は、動向に注意していて欲しい。」

どうやら、既に増産するつもりがおありらしい。


 昼食会の終わりに議長、副議長共々クリス様に呼ばれた。

「ハーシー議員。今回は食品販売に関わるから、忖度、優遇が無い事を示す為に、あえて事前に話をしなかった。わかってもらえるね?」

「はい!御配慮ありがとうございます。」頭を下げた。

「いやぁ~。嫌われたかと思いましたよ。」副議長を横目で見ると、そっぽを向かれた。

「何か、私に嫌われる事をしたのかな?」ニッコリして言われた。

「実は、この二人にグルメ伯爵の昼食会は、高くつくに違いない、と言いました。」真顔で言った。

クリス様はニャッとされて「そうだね。そちらがパーティー代を負担するだけで終わるかもね。」

「やり方は、検討させて頂きます。」議長が割り込んだ。


 馬車の中で議員の一人が、言い出した。ちなみに、職人組合の面々は別馬車だ。

「要するに、場所と料理は用意するから、後はお前達でうまくやれ。と言う事だろ?」

「あちらだけが、ボロ儲けする条件を強要されなくて、良かったじゃないですか。城も銘も利用しなくても良いんですよ?流石に販売拡大に協力しなかったら、怒られるでしょうけど。」

「あちらの肩を、持つんだな。」軽く睨まれた。

「私は、クリス様贔屓ですから。」にこやかに返した。

「それで品薄間違いなしなんて、ゴマすりをしたんだな?」

「ゴマすり?いいえ、私は確信してます。バージル様も、そのおつもりのようでした。まぁ、第一回の終了まで保留して頂きましょう。」

相手が反論しないところで、議長が発言した。

「数日中に議会を招集する。各自、今日の内容を検討しておくこと。」


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