4-6.支援者
支援者 デイジー
お茶会の後で、レミ達三人とハーシー議員に、控え部屋へ残ってもらいました。
ゼブはもう一回、ケーキセットがいただけて喜んでいます。
「三人共、ご苦労様。」クリスが三人と握手しました。「ハーシー議員、役目、大義であった。」ハーシー議員には偉ぶって言いました。
「ははっ、お役にたてて光栄でございます。」ハーシー議員も、それに合わせて返事をしました。
私はあまりにしらじらしかったので、冷めた目で二人を見てしまいました。
「私としては、あまり貴殿を呼びたくはなかったのだが、他の者が"キングストンの家"の話をしてもらえと勧めるので来てもらった。おおげさな話はしていないだろうな?」
「けっして、そのような事はしておりません。レミさんからの話を、聞こえ良くお伝えしましたら皆様、感激しておいででした。」
「クリスはソイツが嫌いなのか?」ゼブが聞いてきました。
「いや、大好きだよ。今のは冗談だよ。冗談が言えるくらい親しいんだ。私の支援者と言っても良いくらいだ。」
「ありがとうございます。そこまで言っていただけると光栄です。して、そちら様は?」
「紹介が遅れた。私の友人のグレイシャー伯爵の長男ゼブルン殿だ。ゼブ、この者はキングストン商工会のハーシー議員。」
「ゼブルンだ。ゼブで良いぞ。」
「ありがとうございます、ゼブ様。」
「ゼブは歳の近い"領民に親身な領主"を見に来たんだ。」
「何とも勉強熱心な。それで"領民に親身な領主"はご覧になれましたか。」
「おう、見たぞ。今日、お茶会で話した事を話そうか?」
「ぜひお願いいたします。」ゼブに頭を下げた。
「ちょっと待った。ハーシー議員それ、ただで聞くつもり?」クリスが止めました。
「え、でも王子様にどの様な対価をお支払いすれば良いやら。」ハーシー議員が戸惑っています。
「菓子で良いんじゃない?どう?」クリスが最後はゼブに聞きました。
「菓子をくれるのか!?それで良い!」ゼブは喜んでいます。
ハーシー議員はクリスを横目で見ながら「ゼブ様のご家族は何人でしょうか。」
「家族?」ゼブはピンとこないようです。
「両親と妹の四人だろ?」クリスがフォローしました。
「そう、四人だ!」ゼブが嬉しそうに答えました。
「では菓子を四箱進呈しましょう。いつお帰りですか?」
「明日の朝、帰る。」
「出発までに待に合わせます。では、お話をお願いいたします。」ハーシー議員はこれ以上割り込まれたくないと、思ったようです。
ゼブがジュディと会って、"キングストンの家"で別れるまでを話ました。
「今回もたいへん親切なご対応を、ありがとうございます。テーブルにいた皆様も感激されていたでしょう?」クリスに話すハーシー議員も、感激したようです。
「とっても感激していたよ。たくさん、寄付してくれたんじゃないかな。ゼブ、ありがとう。」
「えへへへ。」ゼブが照れています。
「今日はそのジュディさんは?」ハーシー議員がレミに聞きました。
「ジュディは家でお留守番です。まだ、お茶注ぎができないので。次回は、クリス様がメイド服を用意してくれるって。」レミが答えました。
「お茶注ぎができるようになっていたら、の話だからね。」クリスが念をおしました。
「はい。皆で練習します。」レミが元気に答えました。
「ナンシーさんは、もちろん馬車で市場まで送られたのですよね?」ハーシー議員がゼブに聞きました。
「家まで一緒に行ったぞ。ナンシーの家はパン屋で、パンを買って皆で馬車で食べたんだ。」
ゼブが嬉しそうに答えました。
「そうですか、馬車で皆さんで。おいしかったですか?」
「うん、おいしかった!」
「クリス様?」ハーシー議員が、営業スマイルをクリスに向けました。
「パン屋におじゃましたら、パンを買うのが礼儀だろ。」クリスが顔を背けながら答えました。
店の前で別れても良いですよね?とは言わないでおきましょう。ハーシー議員も言わないで済ませました。
「他にもとんでもない事を、されたんじゃないでしょうね?」ハーシー議員が聞きました。
「"貴族らしからぬ事をする、とんでもねー領主"というのは伝えてあるから。」クリスが顔をそむけたままで答えました。
「だからって遠慮なしですか?」
「私は自分のしたいようにする、我儘な領主なんだ。」
「開きなおりましたね。もしかして又、水浴びを一緒にされたとか?」
「そうだ、クリスは俺を洗ってくれたぞ!」ゼブが答えました。
「貴族のお客様相手にも、されたんですか!?」ハーシー議員が、飛びあがりそうになりながら驚きました。
「お互い楽しいから、いいじゃないか。」クリスはあいかわらず顔を背けたままです。
「はいはい。あー又、弟の面倒を見た事あるから、とか言われたんでしょ。」ハーシー議員がぐったりしました。
「そうだ、良く知ってるな。」ゼブが答えました。
「そりゃ、この前"キングストンの家"の子達を客室に入れて、自ら男の子達を・・・」
「ハーシー議員。」クリスが睨みつけました。
「失礼しました。」ハーシー議員が頭を下げました。と、ジェームズに向かって「お疲れ様。」
声をかけました。ジェームズが軽く礼を返しました。
「いいよ、いつもの言葉を言っても。」クリスがハーシー議員に言いました。
「え?あぁ、とんでもねー。」ハーシー議員は、頭をゆるゆると振りました。
私達は前回同様、"キングストンの家"へレミ達を送る為に立ちました。ゼブも同行します。
「ハーシー議員。」立ち上がった議員へ、クリスが声をかけました。
「何でしょう。」
「このまま菓子を買いに行くのであれば、馬車を貸すけど?」
「えっ、そんな・・・。はいっ、お願いします。」ハーシー議員は、とても嬉しそうです。
「ヨーゼフ、一番小さいのでいいから出してあげて。」
「承知いたしました。」
私達は揃って馬車へと向かいました。